神風・愛の劇場スレッド 第130話『帰還』(7/1付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 01 Jul 2001 22:45:47 +0900
Organization: BIGLOBE dial-up user
Lines: 415
Message-ID: <9hna1u$s17$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>
References: <9gce6k$rhg@infonex.infonex.co.jp>
<9gie7k$1tb$1@news01ch.so-net.ne.jp>
<9gupha$s9d@infonex.infonex.co.jp>
<9h7fs5$3f7$1@news01db.so-net.ne.jp>
<9hhf8m$ltl@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<9hhf8m$ltl@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

 こんにちわ。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を基にした、妄想スレッドで
す。そういうのが好きな人だけ、お読み下さい。


>>> >>> ★神風・愛の劇場 第126話『生存本能』
>
>裏返って表に出てくる日は来るのでしょうか。^^;

 某所に置くとか(謎)。

>>> >★神風・愛の劇場 第127話 『雨のあと』
>
>>> #なかなか「低い」話は書くのが難しいですよね。
>
># ええ。表現の"遠慮のサジ加減"が難しくて。(爆)

 表現的には既に相当踏み込んでしまっているような。

>ツグミさん抹殺担当は呪符が直接化けた鎌状の爪を持つ"手だけ"のナニか。

 成る程、見た目そのままな訳ですね。

>ゆっくり見せ付けられるのは結界の内と外で時間の流れが変えてあるからで、

 ああ、やはり結界の中は時間の進み方が遅いのですね。

># どうも表現的に第125話&第127話は概ね失敗だったらしい。

 私の読解力不足が悪いのだということで(汗)。

>書いている当人ですらメモを見ないと過去に何があったか判りません。^^;

 時々、書いている時間より設定を確認するのにかかる時間の方が長かったりします
(滝汗)。

>その辺、私の中のツグミさんはえらく淡泊です。

 案外、自由恋愛志向だったりして(違)。

>## つまり「どっちにも解釈出来る」という。

 で、当然佐々木さん的には続きありですか(笑)。

#読者はほぼそう妄想しそうです(爆)。

>>> ★神風・愛の劇場 第128話『処分』
>
>アクセスの監獄日記。(違います)
>何気なく天界の設定の解説編にもなっていますね。

 アニメでは語られない部分で、しかも原作とも微妙に変えています。
 原作では人間の食べ物は食べる必要が無いと書いている割には、聖気の源となる果
実を栽培していたりと曖昧な部分がありますので、こちらも曖昧に。

>さて、ついにラスボス(ぉぃ ^^;)の神様の登場か…引っ張りますね。^^;;;
>どんな人物(人じゃないですけれど)が現れるのか楽しみです。

 期待を裏切っていないか心配です(笑)。

>★神風・愛の劇場 第129話 『誰の為に』

 ツグミさんと再会した後は泊まって行くとは妄想していて、前回余裕があったな
ら、そこまで記述しようと考えていました。
 まろんちゃんが泊まるのに何やかやと理屈を付けています。
 こうして理屈付けをしておけば、仮にツグミさんの愛情が自分から離れていても
(外面的には)自分がそれ程傷つかないですむということなのかな。

 一方のツグミさん。イカロスの件(まだ解決していませんが(笑))の時に、まろ
んちゃんに頼ってはいけないと頑張って、結果としてまろんちゃんを傷つけてしまっ
ていただけに、まろんちゃんに頼らず、それでいて友達として側にいて貰えるように
振る舞っていますね。
 単にまろんちゃんに頼らないでもやっていける事を示すだけでなく、他にまろんち
ゃんの力を必要としている人がいる事を指摘して、まろんちゃんの「誰かの為に役に
立ちたい」という気持ちに答えています。

 しかしまろんちゃん達から見れば犯人は誰か判りそうなものなのですが、流石に全
君に疑いを抱くことは無いか(笑)。

 「刻印」がついていないのか、ツグミさんの服を捲って確かめているまろんちゃん
ですが、某氏辺りならば捲るついでに色々とやっている妄想をしそうです。

#某氏って誰だよ。

 では、本編です。


★神風・愛の劇場 第130話『帰還』

●天界 大天使リルの執務室

「神様との謁見は無事に済みましたか?」
「はい」

 『神殿』の奥深くで神との謁見の儀を終えたアクセスは、事前にリルに命じられて
いた通り、復命のために彼の執務室を訪れていました。

「これで貴方も、神の祝福を受けた者の一員となった訳ですが」
「…」
「月並みな質問ですが、謁見の感想は?」
「確かに神様は、フィンの言った通りの方でした」

 アクセスが言うと、リルは少し驚いた顔になりました。

「フィンが神様について何か言ったのですか!?」
「いえ、大した事は言ってないです」
「では何と」
「ただ…美しい人とだけ」

 そう答えると、リルはため息をつきました。
 アクセスには、それが安堵のため息に聞こえました。

「貴方にも念押ししたように、本来は…」
「口外出来無いですよ。あんな事」
「あんな事!?」
「え」

 アクセスの何気ない一言に、リルは怒ったようでした。
 使う言葉を間違えたかと少し慌てました。
 ここでリルの機嫌を損ねても、何も得は無い。
 それ位の計算はアクセスにも出来ます。

「神聖な儀式だというのは判ってます。ですが、この事を知ったら不愉快に思う者も
居ると思います」

 アクセスがそう続けると、リルの表情が和らぎました。
 どうやら、リルの機嫌は損ねないで済んだようだ…とアクセスは胸をなで下ろしま
した。

「はい。神様が謁見する天使を選ぶのはその為です」
「そうでしょうね」
「神様に幻滅しましたか?」
「いいえ。ただ…」
「ただ?」
「寂しい方なんだろうなって」

 リルの表情に再び変化が現れました。今度は先程とは逆の方向に。

「そうですか。そう感じましたか」
「おかしいですか?」
「いいえ。それを感じられれば上出来です」
「…」
「それで、神様は貴方に何と?」
「はい」

 そこで、アクセスは一度言葉を切りました。

 神に謁見する前、色々と聞きたい事、頼みたいことがありました。
 しかし実際に謁見してみると、神様の方から色々と教えてくれた上に、更に色々頼
まれました。
 話の中には、全く知らなかった出来事が多くありました。
 それで理解したのです。
 いえ、理解した積もりなだけかもしれません。
 それでも、全く理由が判らず、ただ彼女をこちら側に引き戻そうとしていた頃に比
べればましでした。
 その事を話しても良かったのですが、躊躇いがありました。

 もしも神の頼みがリルに話しても良い性格のものであれば、既にリルから話があっ
ても良さそうなものです。
 それを敢えてアクセス本人に直接話したという事は。

「フィンの事をくれぐれも宜しく頼むと」

 ここに来てから、心の中に『壁』を作っていました。
 リルに心を読まれないように。
 そうしておいて、それだけを答えました。確かに神の言った事を要約すればそれに
違いはありませんでした。

「…そうですか」

 リルの顔が一瞬曇った気がしましたが、すぐに元の落ち着き払った表情に戻りまし
た。

「さてアクセス。貴方には引き続きこれまでの任務を遂行して貰うことになります」
「はい」
「出発は明日の晩。それまでは身体を休め、聖気の回復に専念するように」
「今すぐ行きたいのですが」
「許可できません。それに、今の貴方が行って出来る事は無い筈です」
「ですが」
「今の貴方の身体の調子は、貴方自身が良く知っている筈です」
「俺は別に…」
「これまで貴方は聖気を多く消耗している筈です。本当は立っているのも辛いのでし
ょう?」

 そう言うと、リルは仕草で後ろにある椅子をアクセスに勧めました。
 素直にアクセスはそれに従いました。

「ご存じだったのですか?」
「私もそうでしたから」
「成る程」
「それからアクセス。貴方に良い知らせがあります」
「良い知らせ?」
「これは決定事項では無いのですが、天界より新たに増援を送る事になる筈です」
「増援ですか? 一体誰を。それに」

 フィンの裏切りは秘密の筈なのに。
 そう言いかけたアクセスですが。

「大丈夫です。貴方の心配はもっともですが、それを考慮に入れた上での人選です」
「また、心に触れましたね」

 知らず知らず、思考が漏れていたようでした。

「はい」
「掟に反するのでは」
「貴方は知らないでしょうが、私はこれでも、昔は『掟破りのリル』と呼ばれていた
頃もあるのですよ」
「良くそれで出世できましたね」
「失礼な。これでも努力したのですよ」
「すみません」
「ですから、貴方にも見込みはあると言う事ですよ。そうで無ければ、貴方が神様か
ら祝福を受ける筈などありません」
「そうですか」

 天界での出世など、昔はアクセスは考えた事はありませんでした。
 アクセスと同じ「花」の期に生まれた天使達の間では、早く準天使に出世できた方
とは言え、今回の地上界の実績が無ければ、それすら難しかったでしょう。
 しかし、より上の階級へと進まない限り、人間として新たな生を受ける事は叶わな
い事も事実です。
 正直なところ、フィンさえ一緒ならば天界にずっと留まっても良いとすら思った事
もありました。
 しかし、天界の多くの天使がそうであるように、フィンもいずれは人間としての転
生を望んでいるらしい事に気付いてからは、フィンと一緒に人間として転生しよう。
そう心が動いて行ったのです。
 しかしそれも、フィンが天界にあって、共に天使として神に仕えていればこそ。

 だからこそ、フィンを元の準天使に戻す事に全力を尽くしていたのです。

 ですが今、その考えに若干の迷いが生じているのもまた事実です。
 真実を知り、その迷いが強くなっていくのが判るのです。

 ひょっとして、今のままの方がフィンは良いのでは。
 どうしても一緒に居たいのならば、フィンの元に走れば良い。
 そう、アクセスに囁く声があります。
 悪魔の囁きとは、こういう事なのかと思います。

 しかし今のアクセスには、フィン以外に彼を信じて待つ者達が居ました。
 稚空、セルシア、トキ、そして天界の友達。
 彼らを裏切る事もアクセスには出来ませんでした。

 今はフィンの真意を確かめるべきでした。
 これまでにも確かめようとはしたのです。
 しかしそれは的外れだった事に気付きました。
 自分の思いをぶつけてみよう。
 自分がどうするべきかを決めるのはそれからだ。

「アクセス」

 リルに呼びかけられ、アクセスは今の状況を思い出しました。

「考えが筒抜けですよ」

 思考障壁を行いつつ考えを巡らせるのは、やはりアクセスには荷が重いようでし
た。

「げ…」
「全く不用心な」

 何と答えて良いのか判りませんでした。
 天界への裏切りとも取られない事を考えていたのです。
 最も、どこまでリルが思考を読んでいたのかまでは判らなかったので、アクセスは
再び心の中で障壁を作り、大天使の次の言葉を待つことにしました。

「貴方の考えは、それで良い」
「え?」
「貴方の思うとおりに行動なさい。神様もきっと、それを望んでいる筈です」
「良いのですか?」

 リルは相変わらず目を瞑ったまま、黙って頷きました。
 そうしてから立ち上がり、仕草で会見の終了をアクセスに告げました。



 釈然としない表情でアクセスが出て行くと、入れ替わりに秘書役の準天使が入って
来て、アクセスとは別件の事件に伴う幹部会が間もなく始まる事を告げました。
 すぐに行くと答え、支度があるからと秘書を退出させました。

 そうしてから部屋に鍵をかけ、部屋の壁にかかる鏡の前に立ちました。
 その鏡は一見普通の鏡ですが、不思議なことに前に立っているリルの姿は映らない
のでした。

「神よ」

 リルが呼びかけると、暫くして鏡の中から返事がありました。

「リルか」
「本当にこれで良かったのでしょうか」
「良いのです。誤解されたままよりは」
「そうですか。それと例の事件の件ですが」
「私の指示した通りにして下さい」
「『掟』に従いしかるべき処罰を下すべしとの意見が大勢を占めていますが」
「私の命と言えば逆らう者は居ないでしょう。然るべき書類も届けます」
「しかしそれでは神の定めた掟の権威が」
「良いのです。元はと言えば、私が悪いのですから」
「神は間違ってなどいません!」

 リルが叫ぶと、再び鏡の向こうが沈黙しました。

「有り難うリル。しかし私も過ちを犯す事はあるのです。いえ、この世界そのものが
私の過ちなのかも知れない」
「しかしこの世界を必要としている者、救われた者は決して少ない数ではありませ
ん」
「しかしそれは」
「その先は仰らないで下さい」
「判りました。そうでしたね。貴方にはもう何度も話した事でした」
「差し出がましい事を言いました」
「良いのです。ところで話は変わりますが」
「はい」
「多忙な所申し訳ないのだけど、今夜私の所に来て下さい」
「え…あ、はいっ」

 リルはとても嬉しそうに返事をすると、それに満足したのか鏡の向こうの神は、再
び声をかけて来る事はありませんでした。



 神の気配が鏡の中から消えても、また何か声をかけて来るのではとリルはじっと待
っていましたが、やがて鏡の前から離れました。
 幹部会に出かける為には、それなりの衣装を整える必要があるので、リルは別室の
ウオークインクロゼットに入り、衣装を取り出しました。

 天界で天使達の身につけている「服」は、別にわざわざ着替えずとも神に与えられ
た力により「着る」事も出来るのですが、多くの天使達はやはり、人間の頃の記憶に
従っていました。
 リルもその例に漏れません。

 クローゼットの中でついでに、今夜着て行く衣装をどれにしようかと考えました。
 少し迷った末に、決めた衣装を手にして、例の鏡の前に立ちました。
 それでリルの姿がその鏡に映ることは無いのですが。

「今日はこの服で良いでしょうか」

 身体の前で服を広げて見せ、そう呟きました。
 元より返事など期待してなどいませんので、再びその服を元に戻しました。
 そうしてから、今度は本来の役割を果たしている鏡の前で幹部会用の服に着替えま
した。
 着替え途中で手を止めてリルは、自分の姿を鏡に映してみました。

「三日とは早かった」

 そう呟きました。
 矢張りフィンの事が気になっているのが原因なのだと思います。

「(私の時は一ヶ月でしたが)」

 その頃の事は、今でも良く思い出します。
 最近はやや疎遠がちでしたが、想いは変わりませんでした。
 むしろ、真意を知るに連れて、益々その念は強くなって行ったのです。
 しかし同時に、皆に強制する事は出来ないと思っています。

「(上手く伝わると良いのですが)」

 そう心の中で呟くと、リルは再び着替えを再開するのでした。


●桃栗町 桃栗タワー

 雨上がりの夜。
 ノインが去った後も、フィンはじっと蹲ったままの姿でいました。
 この一週間、活動をしなかった訳ではありませんが、ある種の空しさを同時に感じ
ていました。
 その原因も判っていました。
 自分の周りでちょろちょろ五月蠅い彼。

 作戦を遂行する度に邪魔をしに現れる彼を見る度鬱陶しく思いつつ、実は彼を待っ
ていた。
 その事に、今更ながら気付かされました。
 昔のフィンであれば、迷わず彼の所に行った事でしょう。
 でも今は違いました。全てはあの時から変わってしまったのです。

 彼の事は良く知っていました。何しろ同期なのです。
 でも彼は、自分の事を判っていませんでした。
 判って貰おうとも思いませんでした。
 それを知っても、決して彼の為になるとは思わなかったからです。

 その彼が天界に戻ってから一週間近く。
 彼が戻って来た気配はありませんでした。
 本当に処罰を受けたのでは。
 まさか「消去刑」? 幾ら何でもそんな馬鹿な。
 何か下手打って、懲罰牢にでも入れられている。きっとそう。
 そう思ったのですが、一つだけ気がかりな点がありました。
 アクセスが居なくなる前、隣町で大規模な聖気の放出を感じたのです。
 ミストも隣町に行った気配を感じていたので、戦いの最中に放出したのだろうと想
像していたのですが、別の理由に思い当たりました。
 そうであれば、事は重大な筈。
 かと言って、今更ミストにその事を聞くのも、彼の事を気にしているようで腹立た
しく、結局独りで悶々としているしかありませんでした。

 もう寝よう。そう思った時、天空よりなじみ深い気配を感じました。

「…!」

 気配はこちらに向かって段々と近づいてきました。
 それにつれ、個体識別すら可能となりました。
 最早、間違えようもありませんでした。
 思わず彼の名前を叫ぼうとして、辛うじて思いとどまりました。
 しかし、こみ上げてくる熱いものは押し止めようも無く、頬を涙が伝っている事に
気付いたのは、暫く経ってからなのでした。

(第130話 完)

 結局何の謎も明らかになっていない気が(笑)。
 2/12の夜までです。

 では、また。


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Keita Ishizaki (E-mail:keitai@fa2.so-net.ne.jp)
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