神風・愛の劇場スレッド 第114話『帰結』(4/13付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 13 Apr 2001 16:21:02 +0900
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佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。

この記事は神風怪盗ジャンヌのアニメ版から派生した妄想小説です。
そういう代物に拒否反応の無い方のみ、以下をどうぞ。

# 第113話までの感想・他は別記事<9b69ct$oh9@infonex.infonex.co.jp>にて
# 流していますのでよろしく。



★神風・愛の劇場 第114話 『帰結』

●桃栗町郊外

その朝、ツグミは身体に纏わりつく寝間着の不快感で目を覚ましました。
着ている物がびっしょりと濡れていました。そのままでは風邪を引いて
しまいそうだと感じ、布団から抜け出てすぐにバスルームへと向かいます。
肌に張り付いた寝間着と下着を引き剥がす様に脱いでシャワーを浴びました。
ボディソープをたっぷり使って朝の入浴にしては念入りに身体を洗います。
ぬるぬるとした感触が何時までも肌に残っている様に思えました。
やっと満足してシャワーを止めた頃にはすっかり身体が温まっていて、
逆に汗をかいてしまいましたが、寧ろその方が爽やかに感じます。
それでも、湯や汗が滴らない程度に身体を拭くとタオル一枚を巻き付けて
浴室を出るとそのままリビングへ向かいます。
椅子に座って身体を冷ましてから服を着ようと思ったのです。
頬杖をついてじっとしていると、色々と頭に浮かんできました。
今朝も思い出せます。昨夜の夢の事を。身体の熱は中々冷めませんでした。
そんなツグミを飛び上がらせたのは玄関の扉をノックする音。
慌てて玄関先まで行ってから、ツグミは自分の格好を思い出します。
一瞬迷ってから扉越しに声を掛けました。

「どなた?」
「私、判る?」
「勿論よ」

聞き知った声に思わず扉を半分開いてしまうツグミ。

「あら、ゴメン。出直そうか?」

そう言われてツグミは改めて大事な事に気付き、扉の陰に隠れます。

「御免なさい。すぐ服を着て来るから、中に入っていて」

ツグミはそれだけ言うと扉を開いたままにして、そそくさと家の奥へ
逃げるように入って行くのでした。
ものの一分としない内にゆったりとした部屋着を身に付けて戻ったツグミ。
髪の毛を乾かす暇は無かった様で、頭に小さめのタオルを巻き付けています。
客が勝手に椅子に座っている事を見て取ったツグミは、向かい側に立って
別の椅子の背に手を掛けた格好のまま言いました。

「何時も突然ね、フィンは」
「そう言えばそうね。迷惑?」
「いいえ。でも予め連絡貰えると、おもてなしの用意が出来るんだけど」
「電話とか持ってないのよ」
「あっ、成程ね」

くすっと小さく笑うツグミ。そんなツグミをじっと見ているフィン。

「そうそう。朝御飯は?」
「私は別に要らないんだけど」
「食べないの?」
「…食べない訳じゃないわ」
「それなら食べて行って。一人分も二人分も同じだから」
「じゃ、そうする」
「それじゃ、ちょっと時間頂戴ね」

ツグミはそう言うとキッチンへと姿を消します。それから暫くの間、
炊事を行う微かな物音と断続的なツグミの鼻歌が聞こえていました。
突然、玄関の扉、そして窓が何度かカタカタと音を立てます。
ふっと顔を窓の方に向けたフィンは一瞬凍り付き、椅子から転げ落ちる様に
離れるとテーブルの陰に屈み込みました。そして顔をそっと覗かせて
引かれたままのレースのカーテン越しに外を眺めます。
やがて慌てた事が杞憂だったと判ると、それでも恐る恐る椅子に座り直しました。

「珍しく早起きね。でも良い事は無いみたい」

フィンの呟きは窓に向かって行って、何処かへと消えてしまうのでした。
やがてテーブルに皿とカップが並べられ、フィンの目の前で料理が
取り分けられました。

「お待たせ。さ、どうぞ」
「…キッシュね」
「あら、嫌いだった?」
「中身、何?」
「ほうれん草とベーコンだけど」
「それなら平気」

そう言うと早速フォークで端を切り崩して口に運ぶフィン。
初めの一口を飲み込むと、後は黙々と一切れ目を食べ終えてしまいました。
ツグミの方は半分も食べていませんでしたが、手を止めてフィンにもう
一切れを切り分けました。それもあっと言う間にフィンは食べてしまい、
結局全体の四分の三はフィンのお腹に収まってしまいました。

「もう少しあるけど」
「充分よ、御馳走様」
「気に入って貰えたみたいで良かった」
「美味しかったわよ」
「どうも有難う。でも、結構手抜きよ」
「そうなの?」
「ええ。冷凍のパイ生地使ったから」
「ふ〜ん…」

朝食を済ませて二人はゆったりとした時間を過ごします。

「ところで、何か用があったんじゃ無いの?」
「ツグミの顔を見に来ただけよ」
「あらそう」
「調子はどうなの?」
「…ちょっと、すれ違い中…かしら」
「それはいいの。人と人の間の事だから、色々あるわ」
「そうね…」
「私が言ったのはツグミの身体の調子の事よ」
「私の?別に何とも無いわよ。至って元気」
「良く眠れる?」
「ええ」

そう答えたツグミでしたが、何故か急に頬を赤らめます。

「どうしたの?顔が赤いわ」
「な、何でも無いの」
「そう」

慌てた様子のツグミに対して、フィンはその話題を続けはしませんでした。
そして、取り留めの無い話をもう暫く続けてからフィンは席を立ちます。

「私、帰るわ。朝早くから悪かったわね」
「もっとゆっくりして行けばいいのに」
「ま、いろいろとあるから」

帰り際。扉を開いた直後に玄関先でフィンが立ち止まり、同時に何かが
カサカサと音を立てます。ちょっと首を傾げるツグミ。

「ん?」
「落ち葉が挟まっていたのよ」
「あらあら。駄目ね、掃除が行き届かなくて」
「私がお邪魔した時に入ったのよ、きっと」

外に出たフィンはふわりと舞い上がると空中で一旦止まって言いました。

「またね」
「ええ。また何時でも来てね」

そしてフィンは、ツグミからはすぐに見えなくなってしまうのでした。



フィンがツグミの家を遥に見下ろす高みに達すると、それを
待っていたかの様にノインが姿を見せます。

「やっぱり居たわね」
「ご明察でいらっしゃる」
「ほら。剥がれて落ちて来たわよ」

フィンの差し出した呪符を受け取るノイン。ですが、それはすぐに燃え上がり
跡形もなく消えてしまうのでした。

「お手数をお掛けしました。効果が切れたのでしょう」
「何のつもりよ」
「日下部まろんと彼女が今朝再会してしまっては台無しですから」
「確かにそうね」

自信ありげな笑みを浮かべるノイン。

「瀬川ツグミの夜の顔が活発になった事は予定外でしたが、結果としては
 日下部まろんに精神的ダメージを与える事に貢献してくれました。
 全て順調に進んでいます」
「それは結構。期待しているわ」

あまり本気には聞こえない口調でそう告げたフィンは何処かへと
飛び去ってしまうのでした。残されたノインはひとりごちます。

「まだご相談があったのですが。ま、事後承諾にさせて頂きますか」

そしてノインもまた現れた時と同じ様に姿を消すのでした。

●オルレアン前

陽が落ちた頃になって漸く家に戻ってきたまろん。
今朝、目覚めてすぐに向かったツグミの家はひっそりと静まり返っていました。
その時まろんの頭の中に背筋が凍る様な考えが浮かんだのです。

「まさか、何処かで倒れているんじゃ…」

結局一日中、昨夜ツグミと共に走った林の中を探し回りましたが
何の収穫も無く、途方に暮れて帰ってきたのでした。
俯いたままでオルレアンの入り口に差し掛かったその時。
強い衝撃がまろんの脳天を直撃します。

「痛っ!」
「何処ほっつき歩ってんのよ!」

顔を上げたまろんの前には鬼の様な形相の都が立っていました。

「何だ、都か」
「何だじゃ無いでしょうが。連絡もしないで何処行ってたのよ!」
「うん…」
「心配したんだからね。学校にも来ないし、もしかしてって思って
 ツグミさんの所に電話しても来てないって」

突然、まろんは目を見開いて都に詰め寄りました。

「ツグミさんと話したの?」
「そうよ」
「何時の事?変わりは無かった?変な感じとか?」
「ついさっきよ。別に、普段と同じだったけど」
「…何だ…良かった」

まろんはそう言うとまた俯いてしまいました。
都はそんなに気になるなら自分で電話すれば良いと言ってやろうかと思います。
しかし、その前に問いただす事が残っていました。

「で、あんたは何処に居たのか…」

全てを言い終えるより前に、まろんは都に抱き付きます。

「こ、こら何を」
「…疲れて寝ちゃったの」
「何ぃ?」
「だからぁ、特訓で」

再びまろんの脳天に激しい衝撃、都の拳骨がお見舞いされます。

「馬鹿モノ!それで学校休んでどうすんのよ!大会まで後10日切ってるの
 判ってるんでしょうね!」
「ごめん」

まろんはバツが悪そうに潤んだ目でウインクして見せました。



たっぷりと都に御小言を貰ってから、どうにか解放されたまろん。
自分の部屋に戻って真っ先にした事はもちろん電話を掛ける事でした。
ですが、受話器からは虚しい呼出し音が鳴り続けるだけだったのです。

●オルレアン

大事をとって、深夜間違いなくまろんが寝静まった事を確認してから
フィンはオルレアンにやって来ました。もっとも、訪問先は下の階ですが。
ベランダに舞い降りると窓を開けて中に入ります。
真っ先に目に止まったのはソファに腰掛けた少女の姿で、相手も
フィンの事をじっと見ていました。フィンは構わず部屋を見回します。
姿は見えませんでしたが、気配は感じましたので声を掛けました。

「居るんでしょう。用があるのよ」

大分間を置いてから、空いているソファの上に影が浮かび上がり
やがてはっきりとした輪郭を形成していきました。

「来てたのか。疲れていて気が付かなかったのでね」
「どうでもいいわ。それより」
「座ったらどうかな?」

ミストは窓際にある一人掛けのソファを指差します。
一応上座ですが、勿論ミストにはフィンを"立てた"つもりはありません。
単に普段使っていない為に離して置いてある椅子を勧めただけです。
そして遠慮無く座るフィンもそんな事は承知しています。

「で、何の用だ?」
「…」

ミストの問いにフィンは視線を動かす事で意思を示します。
フィンの見つめた先では、先ほどからアキコがずっとフィンを見ています。

「アキコに用があるのか?」
「違うわよ。気になるんだけど、その娘」
「気にするな。あんたの姿に興味があるんだろうさ」
「天使が珍しいとでも?」
「さぁね」

ミストはソファに横向きに座り直し、フィンの方に足を投げ出します。

「アキコは口が固い。何を話しても大丈夫だ」

そういってミストは笑いました。
フィンはもう一度アキコをじっと見てから、その姿を視界から外す様に
顔をミストの方に向けます。

「いいわ。聞きたい事があるの」
「何か?」
「ツグミの事なんだけど」
「片割れの話では無いのか?」
「勿論、そっちの話よ」
「最近、盛んだな」
「何か知っているのね」
「先日遇った。それだけさ」
「元々はお前が出したのよ」
「二度目以降は知らんね。また蒸し返すのか?」
「違う。聞きたいのは放って置くとどうなるかって事」
「何か不都合があるか?」
「今朝、ツグミに会ってきたわ。顔色が良くない」
「それはそうだろう。一人の魂が二人分活動している様なものだからな」
「で、このままだとどうなるの?」
「そう長くは持たないだろう」
「自然に消えるって意味?」
「ああ。多分な」
「その後は何も起こらないわね?」

俯くミスト。肩が微かに揺れているのにフィンは気付きます。
笑っているのでした。

「何よ?」

こらえ切れない笑いを無理に抑えている様な顔でミストが答えます。

「そりゃ、死ねば何も起こらないだろうさ」
「死ぬ?」

何時の間にかフィンは肘掛けをきつく掴んでいました。

「ああ。魔力の影響だろうが、人間が本来持たぬ力を使っているのだ。
 選ばれた者ででも無い限り、命を擦り減らす事になるのは明白」
「それは困るわ。何とかしなさいよ」
「今はノインの術に感化されているのだろう、奴に言え。大体何故、困る?」
「私の駒よ!」

フィンは身を乗り出していました。対するミストは悠然としたままです。

「勘違いするな。今日明日にも死ぬって訳じゃない。今のままでも
 大暴れさえしなければ…」

意味を強調する為か、わざと言葉を切るミスト。一呼吸置いてから続けます。

「二、三年は生きているだろうさ」
「そんなに早く…」
「おいおい。まさかジャンヌめを倒すのに何年も必要だなんて
 思って無いだろうな?」
「あ、当たり前でしょ、そんな事は!」
「なら構わんだろう。ジャンヌが死ねば人間の駒など用済だ」
「…そうね」

暫く考え込んでいたフィンはすっと立ち上がると窓に向かいました。
そして窓辺で足を止めてから振り向いて尋ねます。

「魔力の影響って言ったわね」
「ああ。あんたも判っていて便利に使っただろう?」
「今の片割れは、あの」

フィンの言葉を最後まで聞かずにミストは言いました。
ただし、アキコに向けて。

「お前には、似合うだろうか」

それが答えだと覚ったのか、フィンは頷くと飛び立って行くのでした。

(第114話・完)

# 佐々木パート、2月9日終り。^^;

●次々回予告編

「そんなはず…無いのに」

# そこまで書けるかどうかだけが問題。(笑)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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