神風・愛の劇場スレッド 第103話『装い』(2/18付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 18 Feb 2001 21:11:32 +0900
Organization: So-net
Lines: 430
Message-ID: <96oe5n$eam$1@news01df.so-net.ne.jp>
References: <92sl1l$gt1$1@news01dc.so-net.ne.jp>
<93me03$67r@infonex.infonex.co.jp>
<967re7$lkm$1@news01db.so-net.ne.jp>
<96ii2u$hn1@infonex.infonex.co.jp>
<96o98b$rjm$1@news01db.so-net.ne.jp>

石崎です。

これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。

長くなったのでフォロー記事と本編に分離。
こちらは第103話本編です。



★神風・愛の劇場 第103話『装い』


●インターネット 総合掲示板内オカルト情報掲示板

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×県桃栗町心霊現象スレッド 第二夜

                  :

891 名前:名無しさん@桃栗 投稿日:2000/02/05(金) 23:51

 あああっっっ。
 烏賊路酢のホームページが消えている!?

892 名前:名無しさん@桃栗 投稿日:2000/02/05(金) 23:55

>891
 え? こちらからはちゃんと見えてるけど?

892 名前:鶫さんハァハァ 投稿日:2000/02/05(金) 23:59

>892
 ブラウザのキャッシュが残ってるだけじゃないの?
 確かに消されてるね。
 しまった。保存しとくんだったよ。

893 名前:名無しさん@桃栗 投稿日:2000/02/06(土) 00:15

 ここはオカルト情報板です。
 他人の誹謗中傷ネタは、隔離板でやってくれない?
 せっかく面白いスレだったのに…。

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●稚空の部屋

 じっとノートパソコンの画面を注視していた稚空は、ため息をつくとネット
ワーク接続を切断しました。

「このまま終わってくれると良いんだが」

 そうはいかないだろうな。
 この手の掲示板で起きた同種の事件の経験がそう稚空に教えています。

 それにしても誰がこんな事を…。
 委員長が帰った後で、ブラウザキャッシュからこっそりと保存して置いた「弥
白新聞」を眺めながら、稚空は犯人像を考えました。

 下手すれば警察沙汰になりかねない行動。
 まともな人間の行う所業とは思えませんでした。

 まず最初に考えたのは、弥白が再び悪魔に取り憑かれた可能性。
 昨日アクセスに弥白を見晴らせた時には何もなかったので、可能性は少ないと
は思いましたが、念のためにアクセスに調べに行って貰ってはいます。

 ただし、先程の電話での弥白の反応から、それは無いだろうと思っています。
 弥白がやったのでは無いかと問うてから、答が帰って来るまでの間。
 それからの弥白の当惑したような語り口。
 彼女が嘘をついているかどうかの区別はつきます。
 彼女とのつき合いは長いのだから。

 すると他の誰か。
 まろんとその周囲の情報に詳しく、まろんに恨みを持ち、新聞をDTPで編集
できるばかりか、他人のホームページを書き換える程の技術を持った人間…。

「疑われるだろうな、普通…」

 思い浮かびませんでした。
 まろん達の事情を少しでも知っている人間であれば、疑いつつもやはり弥白に
疑いの目を向けるでしょう。
 そこまでは考えずとも、少なくとも弥白に対する見方は変わるはず。

 もちろん、稚空がそのように考えている訳ではありません。
 別の可能性を考えており、後でそちらの方を調査して貰うつもりでした。

 それにしても。
 「弥白新聞」にでかでかと載った写真を見ながら稚空はため息を一つ。

「全て事実を元にした脚色なんだよな…」

 自分の愛するものと、その彼女が愛する者の写真を見ながら、ここに書いてあ
る事が全て嘘偽りならば、どんなに気が楽だっただろうと思うのでした。


●オルレアン まろんの部屋

 流石に二日続けてなので、今朝はそこがどこであるかはすぐに判りました。
 とは言え、昨日とはどこかが違う感触。
 起き上がろうとした都は、すぐにその理由を理解します。
 ずっと抱きしめていた筈の人がそこにはいない。

 急に理由もなく不安になった都は、跳ね起きてリビングに駆け込みました。

「まろん!」
「あ、お早う都。丁度今、起こそうと思っていた所なんだ」

 既に制服に着替え、エプロンをつけたまろんが、都に明るい声で話しかけて来
ました。

「え…?」
「朝御飯、出来てるよ。制服に着替える前に食べてきなよ」

 見ると、ダイニングテーブルの上には、朝食の支度が整っていました。

「あの…」
「どうしたの都? 朝っぱらからそんな暗い顔をして」

 何時もと変わらないまろん。
 むしろいつもより元気な位。

「うん、判った。大会も近いもんね。練習に遅れないようにしなくちゃ」
「今日は寝坊したのは都の方じゃない」

 都には判っていました。
 その笑顔は作ったものだという事が。
 しかし、都は何も言いませんでした。
 自分の事で周囲に心配をかけたくない。
 それがまろんの望みなのが判っていたから…。


●桃栗学園

「えっと、確かここいら辺だったよな」

 稚空にある事を頼まれて、アクセスは桃栗学園へとやって来ました。

「ったく、昨日の晩、弥白を見張ってて眠いのになぁ…」

 目的の場所に、目的の人物はまだ現れていませんでした。
 それで、手近なロッカーの上に腰掛けて待っている内に、ついうとうとしてし
まいました。



「ちぇ。何だ夢かよ…」

 フィンとの楽しい思い出を人間の話し声で中断され、ぶつくさ言うアクセスで
したが、目の前の光景を見て、一気に目が覚めました。

「おお〜。良い眺め」

 アクセスの目の前で、新体操部員達が着替えていました。
 部員達がレオタードから制服へと着替えているところを見ると、既に練習は終
わっているようでした。

 別に使命を達成するためには、ここで待っている必要など無かったのですが。

「同じ仕事なら、楽しい方が良いよな。うん」

 自分で自分に言い訳をするのですが、もちろん本気では言っていません。

「うわ〜! 随分ダイタンなのつけてるじゃない。まなみ」
「え…? 別にそれ程でも無いわよ。加奈子だってこの前ショッピングに行った
時、似たようなの買ったでしょ」
「でも、学校にまでつけて来ないって普通。あれはプライベート用。…ははーん。
まなみ、これからデートか何か?」
「え…そ、そんな事無いわよ。大体、今日は学校は休みなんだから良いじゃない
別に」
「え!? 桐嶋先輩って彼氏がいるんですか?」
「だから違うわよ」

 桐嶋の名前が聞こえたので、アクセスはその方向を見ようとしましたが、別の
ロッカーの影になって見えません。
 それで、ロッカーから飛び上がり、桐嶋を確認しようとしたのですが。

「げっ」

 入り口から、まろんと都が入って来るのが見え、アクセスは慌てました。
 当たり前と言えば当たり前でした。二人は部員なのだから。
 だから棚の上に隠れていたのですが…。

 しかし、任務は果たさねばなりません。
 それで、慌てて桐嶋先輩の近くにあるロッカーの上に着地して、隠れて観察す
る事にしました。

「成る程、こりゃ確かに…」

 清潔感よりは色気の方を前面に出したまなみの姿を見てアクセスは呟きます。
 しかし、見とれていたのは一瞬。
 桐嶋の「匂い」を確かめます。

「……? 気配が感じられない」

 意外でした。
 稚空に言われるまでも無く、手口と動機から一番怪しいと思っていたのです。
 昨晩真っ先に確かめに行かなかったのは、単に彼女の住所が判らなかったから。
 それで、二番目の候補の方を先に確かめに行ったのですが。

「それとも、気配が弱いだけなのかな?」

 腕組みをして考えるアクセスですが、しかしその思考はすぐに中断されました。
 アクセスの座っていたロッカーを誰かがどん、と叩いたからです。

「…え? しまった…」

 アクセスが横を見ると、薄い黄色のキャミソール姿のまろんが、怖い顔をして
こちらを睨み付けているのでした。

 目が合った後、まろんは黙って窓際まで歩き、窓を少し開けました。
 外から新鮮な、そして冷たい風が入り込み、まだ下着姿の者が多かった部員達
から不満の声が上がります。

「ごめん。ちょっとここ、空気が悪いみたい。少しだけ我慢して」

 そう言ってから、まろんは再びアクセスの方を見ました。
 潮時でした。それに、もう目的を果たしていたこともあります。

 アクセスは、まろんが開けてくれた脱出口に向けて飛び立ちました。

「すまねぇ。後で事情は話すから」

 まろんの側を通る時、そう囁きました。
 その時です。

「え…?」

 まろんの側にいた都が、アクセスを目で追っていたような気がしました。
 しかし、それを確かめる間も無くアクセスは外に出てしまっていて、その直後
に窓とカーテンを閉められてしまった為に、本当はどうだったのか確かめること
は出来ませんでした。


●サンセットクリフ 三枝の別荘

「約束したのに、連絡してなくてすみません」
「良いんだ。来てくれて嬉しいよ」

 今日の朝、部活の後で三枝の別荘に行くと言い出したまろん。
 都も忘れかけていたのですが、そう言えばモデルになる約束をしていたのでし
た。
 まろんが心配という以前に、純粋にどんな写真を撮るのかに興味があったので、
都は付き合うことにしました。

 連絡を取った時、まろんも私服を幾つか持って行こうと言ったのですが、三枝
の方でも服を何種類も用意しているとのことでした。
 その日の撮影は、別荘の近くにある断崖絶壁に囲まれた中に僅かにある海岸で、
撮影を行うこととなりました。

 実際に写真撮影の場では、三枝が何でも一人でやってしまうために、都はする
事が有りません。

「何だか、まろんのマネージャーみたいね、あたし…」

 離れた場所から二人の撮影光景を見ながら都は呟きました。
 既に夕方となりつつある今、海風は当然冷たくて、冬服とは言えコートもつけ
ずにモデルになっているまろんは、寒いんだろうなと都は思います。
 コートを着ている自分ですら寒く感じるのだから。

 それでも、まろんは文句一つ言わずに撮影に付き合っています。
 その表情からも、寒いと感じているようには見えません。
 でも、三枝がまろんを見ていない時に時折ぶるり、と震えているように見えま
したので、本当は我慢しているようでした。

 一際寒い風が吹き、都の身体に震えが走った時、どうしようも無い生理現象を
感じました。
 撮影はまだ暫く続きそうでしたので、都は三枝の別荘に一旦戻ることにしまし
た。
 鍵がかかっていないのは、出るときに都が一番最後で、わざわざ当人に確認し
たので判っています。

「田舎育ちなので、都会に出た時に鍵をかけるというのがなかなか身に付かなく
てね」

 三枝からそう聞いた時、春田刑事も似たような話をしていた事を思い出してク
スリとした事を覚えています。

 別荘に戻って用を足した都は、何気なくリビングに入りました。
 リビングの壁の一面は、家具もなく何かが飾られている訳でも無く、ぽっかり
と空いたまま。
 以前はここに亡くなった娘さんの写真が飾られていたという話でしたので、ま
ろんの写真を撮影したら、ここに飾るつもりなのかなと考えます。

 そろそろ戻ろう。
 そう考えて、リビングから出ようとした時です。
 先程は見過ごしたのですが、入り口の横にあるライティングデスクの上にスラ
イドのようなものが沢山置いてあるのに気付きました。

「何かしら? これ…」

 手に取ってみると、どうやら写真のようでした。

「リバーサルフィルムとかで撮るとこうなるんだっけ?」

 乏しい写真の知識から、そう呟きました。
 多趣味の秋田刑事が、このような形で撮った写真を職場で見ていたのを思い出
しました。

 一体何の写真だろう。
 いけないとは思いつつも、それを手に取って見てみます。
 被写体は、白い服を着た少女のようでした。
 一目見て、どこかで見たような印象。
 記憶の中から該当する人物の名前をすぐに思い出すことが出来ました。

「一体これって…」

 暫くの間都は、そのまま立ち尽くしていました。


●枇杷町 山茶花本邸 弥白の部屋

 今日は大会に向けての練習の日でしたので、朝から高校で練習でした。
 しかし、昨日の事がありまるで練習には身が入りませんでした。
 それでも、コーチに注意するようなミスをしていないのは流石でしたが。

 弥白は帰宅後、制服を脱いだままの格好で、どっと疲れたようにソファに身体
を預けていました。

 どうしてあのような物が私の作ったホームページに?
 あのページを私が作った事を知っているのは私と稚空さんだけなのに。
 私との繋がりを誰にも悟られない為に、わざわざ海外の無料スペースまで借り
たのに。

 何者かが私を陥れようとしている?
 でも、半分は私の責任。
 あれに使われていた素材は、全て私が収集したものなのだから。

 様々な考えが一度にぐるぐると頭の中を渦巻き、全く考えがまとまりません。

 ふと、自分のホームページが無事かどうかが急に気になりました。
 幾らセキュリティが甘いとは言え、パスワードを盗んだ程の相手。
 ひょっとしたら…。

 手近なノートパソコンからネットワークに接続し、弥白のプライベートホーム
ページに接続してみると、特に異常は無いようでした。
 弥白の口から安堵のため息が漏れます。
 しかしそれは、ホームページに設置されている電子会議室が表示された時に、
小さな悲鳴へと変わるのでした。


●桃栗町郊外 聖の家

「…これで良いんですね、先生」

 パソコンの前に座っていた桐嶋は、回転椅子毎後ろにいた聖の方を向きました。

「結構です。人の秘密をこっそり集めて脅そうとする輩には、きっちりと制裁を
加えねばなりません。あ…もちろん君の事ではありませんよ」
「私は、そんな…」
「判っています。君も一度過ちを犯しました。だから罰を加えました」
「はい」

 桐嶋は目を伏せて頬を赤く染めて答えました。
 聖は桐嶋に近づくと、その長い黒髪を手に取って匂いを嗅ぎます。

「そして、君は立派に立ち直りました。これからは、他の者が過ちを犯さないよ
うにしなければなりません」
「はい」
「この素材を集めた人物、そしてこの素材に載っている人物は皆、人としての道
を踏み外そうとしています。貴方のしている事は彼女達を人として立ち直らせる
事なのですから、決して恥じることはありませんよ」
「はい」
「もちろん、だからと言って君のやっている事は世間一般で認められる行為であ
るという訳ではありません」
「…それは…」
「これは、あくまでも非常手段なのです。だから、君がやっているという事は伏
せなければならない」
「はい」
「教えた通りにやりましたか?」
「勿論です。先生が用意して下さいましたから。あ…痛い。そんなに強くしない
で下さい」

 突然、桐嶋が悲鳴を上げました。

「どこで誰が聞いているのか判らないのですから、滅多な事は言うものではあり
ませんよ」
「すみません…」
「まぁ、良いでしょう。そろそろ時間です。今日の指導はここまでにしましょう
か」
「はい。有り難うございました」

 聖は、それまで弄んでいた黒髪から手を離すと、先程、聖が引っ張った髪が、
何本か床に落ちていきました。

 桐嶋はパソコンを終了させようと、画面に向き直りました。
 画面上で「弥白新聞Web」を今まで映し出していた閲覧ソフトを閉じ、OS
の終了処理に入ります。

「人の趣味に口を出すようで悪いのですが」

 桐嶋の後ろ姿を見ながら、言いにくそうに聖が言いました。

「はい?」
「その…着ているもので自分を過度に演出するのは、まだ早いのでは?」
「似合わないですか…?」

 桐嶋の顔が一気に曇りました。

「いえ、似合わない訳ではありませんよ。ただ、君は素のままで十分美しい。だ
から君はその…」

 慌てて聖はフォローしようとしましたが、その前に桐嶋がクスクスと笑い出し
ました。

「?」
「判りました。次は先生が好きそうなのにします。実は、私もそういう方が好き
なんですよ」
「…はぁ」
「次を楽しみにしてて下さいね」
「そ、そうですか…」

 どう答えようかと戸惑っている聖を余所に、桐嶋は手早く身支度を整えると、
部屋を出て行ってしまいました。

 取り残された聖は思います。
 この光景はミストには見せられないなと。

(第103話 完)

 忘れかけていた人を出してみました(汗)。
 みんなの格好についてはそれぞれ妄想して下さい(笑)。

 では、また。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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