神風・愛の劇場スレッド 冬のスペシャル版 『火炎回廊』 第3章(1/22付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 22 Jan 2001 18:41:57 +0900
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佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。

これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。



妄想100話突破記念&冬だからスペシャル2本目です。
# 第1、2章<94a13v$akm@infonex.infonex.co.jp>の続きですので宜しく。

# では、始めます。

★神風・愛の劇場 冬のスペシャル版 『火炎回廊』

●第3章・財宝狩人

宿屋に戻ったまろんが部屋の扉を開こうとしましたが、何故かびくともしません。

「あれ?」

まろんの肩に手を乗せてツグミが言いました。

「御免なさい。忘れてました」

ツグミは扉の下の方を足で蹴るような仕草をしました。
その途端に難無く開いてしまう扉にまろんは目を丸くします。

「何で?」
「戸締まりして行ったんですよ」

まろんはツグミの指差した足下を見て全てを理解しました。
扉の下に注意しないと判らない極くわずかな染みが有りました。
それはツグミが盛って置いた粉の山を踏み付けた痕なのです。

「術を使ったのね」
「誰も入れない様にして行きました、念の為」

それから部屋に入った二人の許を大和が訪れたのは結局翌朝でした。
戸板を控えめに叩く音で目を覚ましたツグミが扉を開くと、そこに
彼が立っていました。

「すみません。まだお休み中でしたか?」
「いいえ。もう起きる所でしたから」
「それで情報を仕入れて来ましたので話し合いたいのですが」
「そうですね」
「こちらにお邪魔しても宜しいでしょうか…」

ツグミが何か言うより先に、寝台から起き上がったまろんが言いました。

「駄目。朝から女の子の部屋に押しかけるなんて論外よ!」
「すみません…、何故か昨夜戻った時から僕らの方の部屋の扉が
 開かないものですから…。それで野宿しちゃいました」

ツグミは後ろを向くと、まろんに向けて人指し指を口許に当てて見せます。
最初首を傾げていたまろんですが、すぐに意味を察すると笑いを堪える様に手で
口を押さえていました。それからツグミは素知らぬ顔で大和に言います。

「それでは仕方がないですね、仕度しますから廊下で待っていて下さいます?」

閉じた扉の向こうから二人の笑い声が聞こえた訳を大和は知る由もありません。



大和が持ってきた情報に拠れば、ロクアトの西側に拡がる砂漠の先に
古王朝時代の遺跡があり、財宝が眠っているという噂があるとの事でした。
彼自身の知識とも合わせて遺跡が在ることまでは確信した大和でしたが、
一つだけ疑問があると言います。

「こんなに街から近い遺跡ですから、普通なら既に盗掘された後のはず
 なのですが、何故か未だに未踏で残っているそうで」
「良かったじゃない、運が向いてきたね」
「いや、だからその…」
「何よ?」
「誰も宝を手に入れられない理由があるらしいんですが」
「そういう場所に罠は付き物だよ」
「どうもそういう事では無い様なんですよ」
「じゃぁ何?」
「実はですね」
「うん…」

固唾を飲んで聞き入るまろん。

「教えてくれた御年寄が途中で寝ちゃいまして」
「…それで"最後まで聞けませんでした"な〜んて言ったら殺す」

大和はそれきり黙ってしまい何も言いませんでした。まろんが寝台の脇の
剣に手を伸ばすのを見た大和は椅子から転げ落ちてしまいましたが、
ツグミがその手を止めました。

「ツグミさん?」
「ねぇ、賢者さん。その遺跡の名前を聞きませんでしたか?」

上目遣いで恐る恐る立ち上がった大和は椅子を立て直しながら答えます。

「太陽神殿とか何とか」
「やっぱり」
「何だ、ツグミさん知っていたの?」
「今の話の途中で思い出しましたが、そこは禁忌の地ですよ」
「きんきらきん?財宝?」

ツグミの助け船に少し落ち着いたのか大和が付け足しました。

「危ないから立入り禁止って事です」
「そんなの何処の遺跡だって同じよ」
「剣士さん、今の賢者さんの話で何か気付きませんか?」
「ん?手つかずのお宝が一杯なんでしょ?」
「そういう"噂"と言う部分ですよ」
「噂が何?」

ツグミの謎掛けに応えたのはやはり賢者なればこそでしょうか。

「確かめに行った者が、誰も戻らないから噂のままなのですかね」
「半分当たりです」
「もうっ、勿体つけないで教えてよぉ」
「これは一応極秘事項ですから、ここだけの話ですよ」
「うん」「判りました」

暫く間をおいて、ツグミは少し声を落として言いました。

「三百年前の戦乱で、この街が北方民族に攻められたのはご存知ですよね」
「さぁ?」「ええ。勿論」
「その時に王国から派遣された守備隊はただの戦士の集団ではありませんでした。
 当時進められていた計画、魔術を防衛に役立てる為の実験部隊。
 彼等は街と敵陣の間に防御魔術を使った罠を巡らせました。罠の城壁ですね。
 目に見えないその城壁に突入した敵は全滅。街は守られたそうです」
「ふ〜ん」
「歴史書では守備隊が激戦の末に追い払ったという話でしたが」
「実際は強力な罠で殲滅したそうなの。でも体裁が悪いですよね?
 国王が派遣したのが罠を張る為の部隊だったなんて」
「別にいいじゃん、勝てば」
「まぁ、三百年前といいますとまだ世が不安定でしたから。
 国王の権威という物に曇りが在るのはまずかったんですよ、多分」
「そういう事でしょうね。それで、取りあえず勝ちはしたのですけれど
 後が問題になったそうです。罠が強力過ぎて敵を滅ぼした後も効果が
 持続してしまって」

まろんと大和は顔を見合わせました。

「元々の罠は街をぐるりと囲む輪の様になっていたのですけど、
 それでは今度は誰も街を出られないですよね?だから必死になって
 術を解いていったらしいの。でも最後まで解けなかった所が一ヶ所あって、
 それが最初に罠を張る起点にした建物。当時の神殿なんですよ」
「それが残っているの?今でも?」
「ええ」

大和がふと気になった事を尋ねました。

「随分とお詳しいんですね」
「魔術がらみの遺跡は法皇庁の管轄なんですよ」
「成程」
「という事は、お宝はもう法皇庁に持っていかれて遺跡にはレプリカが…」

がっかりした様子のまろんを見て、ツグミは思案している様子でした。
やがて。

「神殿の周囲が余りにも危険なので、その外側にもう一つ結界を張って
 誰も入れない様にしています。法皇庁でもそれ以上の事は出来ず、
 放って置くしか手が無かったという事で…」
「えっ!じゃぁじゃぁ、お宝はまだ?」
「元々財宝の類が有ったかどうかは知りませんが、法皇庁では
 何も持ち出してはいませんよ」

腕組みして唸っているまろん。やがて弾ける様に立ち上がります。

「よし!判った」

付き合いの長い大和はこの時点で諦めていましたが、一応尋ねます。

「…行く気ですね…」
「勿論!間違いなく手つかずなんでしょ、その遺跡」
「剣士さん、私の話ちゃんと聞いてました?」
「大丈夫大丈夫、ツグミさんが一緒だもん」
「…僕も居まぁす…」
「…どうなっても知りませんからね」

慌ただしく出発の準備を始めた三人の話をこっそり聞いていた者が
居た事に、この時点では誰も気付く事はありませんでした。

(続く)

では、また。

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