神風・愛の劇場スレッド 第100話『後ろ姿』(1/12付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 12 Jan 2001 17:07:31 +0900
Organization: Infonex Corporation
Lines: 305
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<92sl1l$gt1$1@news01dc.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

<92sl1l$gt1$1@news01dc.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。# 今更ですが先日は有難うございました。

>> 警告:
>>  このスレッドは、神風怪盗ジャンヌ(アニメ版)の設定を基にした妄想小説ス
>> レッドです。その手のが好きな人だけに。
という事でよろしく。


>> >>> ★神風・愛の劇場 第96話『習熟度合』
>> #悪の組織(?)にドジが混じっているのは有る意味お約束(笑)。
>> #得てしてこう言うのがラストまで生きていたりする(謎)。

アニメ版では扱いがぞんざい(笑)だった所為もあり多分生存してますよね。^^;

>> >★神風・愛の劇場 第97話 『ある依頼』
>>  そう言えばまろんちゃんがイカロスの毛を回収する場面が無かったので、どう
>> なったんだろうと思っていたのですが、ちゃんとやる事はやっていたのですね>
>> まろんちゃん。

後で必ず(作中で)話題になる事柄/事象はわざと時系列通りの描写をしない
という手法(という程大袈裟でないですか)になっております。
「そういえば、あの件は?」と思わせておくのがミソなんですが、
たまに単に作者が忘れているだけの場合アリ。(笑)

>> >★神風・愛の劇場 第98話 『企て』
>>  以前の話と読み比べると、佐々木さんの弥白様への愛情度が高まっているのが
>> その細やかな感情描写から感じられます(笑)。

愛情度というのはイジワル度って事ですね。^^;

>>  何だかとっても悲しいですが、大丈夫だ弥白様。君には作者達がついているぞ

某革命アニメ風に言えば「貴女の進む道は用意してあります」という所。^^;

>> (神楽は?)。

弥白様の下僕ですから、呼ばれるまでは控えです。(ぉぃ)

>> #ところで今回妄想してしまったのが、ずっと弥白様についていた筈のアクセス。
>> #…という事は、あんな所やこんな所にもくっついていったのかな(爆)。

あんな所は窓は無さそうですし、流石に中には入らないのでは。^^;
こんな所の方はお金持ちの家ではプールと区別出来ない程広いのがお約束ですから
遠くからでは湯気で良く判らない。近くまで行く勇気があったかどうかですが。
# 観葉植物だらけでジャングルの様だという場合も多々。(笑)

>> ★神風・愛の劇場 第99話『お邪魔虫』

そうですか、外と繋がりましたかOA教室。今のところノーチェックという事で、
それでは早速黄泉ネットなぞ呼び出して。(違)
何だかんだで顔が広い委員長。桐嶋先輩とまでお知り合いだったとは。
偶々灯りが点いていたからと桐嶋先輩は言ってましたが、本当は誰かに
会いに来たのではと勘繰ってみたり。

それとやっと確定した大会の日程。意外に先の事だなという気がします。
何せ、妄想の中では月日の進むのが遅いので。(爆)
# さてさて、大会で何を起こしてやりますか。(笑)

# ところで私は長い間根本的な所を思いっきり勘違いしていたのですが、
# まろんちゃん達って一年生なんですねぇ。(笑)
## ツグミさんは一つ年上、姉さん女房。(ぉぃぉぃ)

痴話喧嘩問題ではツグミさんが先に行動を起こした様ですね。
このままズルズルと同棲していては良くないと思ったからの行動だったはず
ですが、まろんちゃんがどう感じたかという部分に思い至る事が出来るなんて
やっぱりツグミさんはちょっと違う。
思ったよりも早くに接触をしようと動き出した感じですが、やはり誰も居ない
完全に独りっきりの夜が二晩続いたのはこたえたという事もあるかも。
# 可哀想に。(誰の差し金だよ ^^;)

そしてまさにサブタイトル通りの登場をする全君。本人が判っているかは
甚だ怪しい所ですが、動く結界として機能している様で。
寧ろ本人が陰謀に加担していると思っていない方が警戒されなくていいのかも。

# 普通、同人誌的展開ならば、この夜は色々艶々ありそうな所ですが、
# 「愛の劇場」では女の子x女の子以外の組合せは一線を越えた進展は
# 基本的にしない事になっているので、どうした物か思案。(笑)

それにしてもツグミさんも噂になっているというのは…。
内容まで含めて全部ノインの仕掛けなのか、それとも噂になっているのは
事実なのか。事の次第によっては不穏な影が拡がりますが。
ミストが「ワンパターン」と評しているって事は例の部屋から
怪電波(違)が出ていたりして。^^;

まろんちゃんはまろんちゃんで、ドヨ〜んとなっている模様。
何故そうなのか薄々判っていても一歩引いている都ちゃんの微妙な
感じがいいですね。しかし都ちゃんの見立てよりも、まろんちゃんの
落胆は大きかったという事の様です。

>> #まさか、こんなに(作中世界で)日数が経つとは思っていませんでした。

# 私の担当部分では意識して進めてはいるのです。
# 人間関係の深まりに比べて日数が掛かっていない印象が強いので
# それを多少でも補おうという意図なんですが。

>> 製作参考用 現在の進行状況

お疲れ様でした。^^;
良く判りました、最近の動きが。(ぉぉ〜ぃ)

# では行きます。遂に100話とは。^^;;;


★神風・愛の劇場 第100話 『後ろ姿』

●桃栗町 オルレアン

まろんはうろうろと同じ所を行ったり来たりしていました。
じっと見詰めては溜息をつき、数歩離れては振り返って見ます。
そうしてまた戻ってきては見下ろすのです。その視線の先にあるのは電話機。
何度か手を伸ばしては引っ込めました。やがて頭を左右に振ってから
その場を離れると、夕食の仕度に取りかかりました。
そうして手を動かしている間もずっと考えていました。
何故、声が届かなかったのだろうかと。
きっと話に夢中で気付かなかっただけ、そう無理矢理結論づけました。
何故、後を追わなかったのだろうと。二人とも知り合いなのだから、
追いすがって話しかけても構わなかったはずでした。でもと問い、また否定。

「…そんな事あるわけない」

何時の間にか手が止まってしまいました。あの後、ツグミはどうしただろう
かと考えます。きっとあの後別れてそれぞれの家に帰ったに違いない、
そして今の自分と同じようにぼんやり過ごしているんだと思いました。
水を出しっぱなしの蛇口を閉じ、濡れた手を拭う事ももどかしく、
まろんはまた電話機の前に立ちました。今度は迷わずに受話器を手にします。
呼出し音が1回、2回、3回。忘れていた息を吐くと、自分の耳にぼそぼそと
音が届きました。そして電話が繋がる音。再び止まる息。
暫く聞き耳をたててしまいます。先に声を出すのが怖かったから。
やがておずおずと切り出します。

「もしもし…」

相手は無言のまま。

「……あの…」

息遣いだけが聞こえていました。
何と言ったらいいのか。今更ながらに、先に考えておくべきだったと
後悔するまろん。互いに無言の時が過ぎ、やがて小さな音がして電話は
向こうから切れてしまいました。まろんは受話器を握ったまま、単調な
電子音に耳を傾けながら呆然としているのでした。

●桃栗町郊外 ツグミの家

ツグミは鍋からもれ聞こえる音に注意を払いつつ、肩越しに振り返ると
リビングに向けて少し大きめの声を掛けました。

「誰から?」

全はその場からは返事をせずに、キッチンに戻ってから答えます。

「何にも言いませんでぃした」
「無言電話?」
「そうでぃす」
「そう…」

ツグミは昼間の広場での事を思い出していました。

「(悪戯されたり噂になったりする覚えなんて無いのに)」

料理中である事を忘れて考え事を始めてしまいました。
ですが全に話しかけられて、ツグミは我に返ります。

「音がしなくなったでぃす」
「えっ?あら本当ね」

ツグミは慌てて調理器のスイッチを切って、鍋を持ち上げるとシンクの
脇にある鍋敷に乗せ換えました。蓋を開けて様子を確認します。

「良かった、危うく焦がすところだったわ。有難う」
「どういたしまして」
「本当はこのまま暫く置いておく方が美味しいんだけど」
「いい匂いでぃす。お腹空きました」
「食べてしまいましょうか」
「賛成でぃす」

湯気と一緒に、食欲をそそる香りが拡がっていました。

●桃栗町 オルレアン

まろんはベッドに寝ころがって天井や壁を見ていました。
食欲も涌かなかったので結局は夕食の仕度を途中で投げ出したまま。
都の言葉が思い出される度に、寝返りを打って頭の中から追い出します。

「(そんな事ないもん)」

でも…と思うのです。さっきは何故何も答えてくれなかったのだろうかと。
間違い電話のはずはありませんでした。短縮ダイヤルを登録してあるのですから。
それに息遣いは聞こえていた。そうしてふと思い付くのです。
あれは自分の息が聞こえていただけだったのではないのかと。
きっと何かの間違いで、繋がっていないのに呼出し音が止まっただけ。
心の何処かには強引な言い訳だと嘲笑う自分がいましたが、無視します。
確かめなければという気持ちはありました。独りで考え込んでいても仕方ないと。
そうと心を決めれば、する事は一つです。まろんはベッドから飛び起きると、
寝室を出て再び受話器を握りました。もしかしたら操作を間違っていた
かも知れないと思い、短縮ダイヤルは使わずに1つ1つボタンを押して
電話番号を入れました。呼出し音が聞こえ始めます。
呼出し音が回数を重ねる毎に、まろんの鼓動は速くなり、
やがて不安が心の中を覆い尽くしていきました。
受話器を一旦置いて、初めからやりなおします。しかし、何度やっても
同じ事でした。何時まで待っても受話器から声が聞こえて来る事はありません
でした。やがて諦めると、その場に座り込んで膝を抱えて顔を埋めます。
色々な考えが頭の中で浮かんでは消えていきました。消えずに残るのは
消えて欲しい事ばかり。

「(一緒にいて楽しかった、とっても心地好かった、少しは互いに
  支え合っているんだと思ってた。それって私だけ?独り善がりだったの?
  何でも話そうって言ったよね。嫌いになったのなら、それでもいい。
  でも、それならはっきり言って…)」

まろんは顔を上げると、コートを着込んで家を飛びだしました。

「(行かなきゃ駄目だ)」

走りながら、まろんは考えます。

「(でも、会ったら何て聞くの?)」

少しづつ近づいてくる彼女の家。
走っているうちに段々と、もやもやした物が晴れてくる気がします。

「(何も言わなくたって大丈夫。会ったら、顔を見たらすぐ判る)」

ツグミの笑顔をやっと思い出せました。休まずに走り続けた為、ツグミの
家に通じる小道の入り口で立ち止まって、上がった息を整えました。
落ち着いてくると、不安が再び込み上げてきます。玄関先まで走って
行ってしまえば良かったと後悔しました。
無駄だとは思いましたが、そっと足を忍ばせて近づきます。
灯りが点っていて、留守では無い事がはっきりしました。
軋まない様にと祈りながら、ポーチへ上がって玄関の扉の前に立ちます。
消えていたはずの不安は、自分の家を出た時の様にびっしりと心を
覆っていました。普段の彼女なら、とっくに扉を開けてくれるはずでした。
また返事が無かったらどうしよう…そんな思いが扉を叩く事すら躊躇させます。
悪いこととは、その時は思いもしませんでした。ただ確かめたい一心でした。
ポーチから一番近い窓に背伸びをします。ほんの僅かな隙間からリビングが
見えました。椅子に座ったツグミの背中が見えます。やはり居たのです。
でも、どうして来てくれないのだろうか、そんな思いは途中で吹き飛びました。
隣りに誰か立っています。すぐに全なのだと判りました。全の手がツグミの
うなじにそっと添えられました。ツグミはその手に寄り掛かる様に、僅かに
頭を反らせると全の方に顔を向けた様子です。そして全の顔がツグミの顔に
覆い被さり…。
まろんが次に気が付いた時には、もと来た道を自分の家に向かって
走っていました。
今はただ一刻も早く逃げ出したかったのです。全ての事から。

●桃栗町郊外 ツグミの家

全は顔を上げると申し訳なさそうな声で言いました。

「よく見えないでぃす…」

ツグミは開いていた口を閉じ、口許に手を添えて小さく咳をすると応えます。

「気にしないでいいのよ、全君の所為じゃ無いんだし」
「……」
「よく噛まないで飲み込んじゃったからね」

ツグミはまた小さく咳をしました。咽の辺りを手で触れて不快そうな顔をします。

「大丈夫でぃすか?」
「まだ…駄目みたい」
「そうなんでぃすか…」

ちょっと考えてからツグミが言います。

「あ、そうそう。あれだわ」

ツグミは茶碗を手に取ると、ご飯を頬張り噛まずに飲み込みました。
それからお味噌汁を飲んでから暫く首を傾げていましたが。

「うん、抜けた抜けた」
「良かったでぃす」
「御免ね、心配させちゃって」
「僕が和食がいいって言った所為でぃす」
「それは違うでしょ、身欠き鰊と大根の煮物って言ったのは私だから」
「はい…」
「さ、お食事を再開しましょう。全君も気をつけてね、結構小骨があるから」
「大丈夫でぃす。お魚は得意でぃすから」
「それを言うなら好物でしょ?」
「そうでぃした」
「でも変わっているわね」
「何がでぃすか?」
「全君くらいの年頃だと、あんまり居ないわ。お魚が好きだなんて子」
「そうなんでぃすか」

言ってみてから、ツグミは思いました。そういえば全は何歳なのだろうかと。

(第100話・完)

# ラブコメの王道をやってみました。(笑)
# 我ながら意地悪ですね。^^;

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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