神風・愛の劇場スレッド 第81話 『二つの真実』(10/10付) 書いた人:携帯@さん
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ
From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Tue, 10 Oct 2000 06:23:08 +0900
Organization: So-net
Lines: 484
Message-ID: <8rtcvv$8n1$1@news01bf.so-net.ne.jp>
References: <8qdgim$8ti$1@news01bb.so-net.ne.jp>
<8qp3nt$qis@infonex.infonex.co.jp>
<8raf84$9r6$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>
<8rah3u$bjg$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>
<8rjge0$hrs@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<8rjge0$hrs@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

こんにちわ〜。
このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
その手のが嫌いな人は、読まないで下さいね。


>悪魔族は強力過ぎて自分達の力の大部分を封じた(らしい)という
>話でしたから、一緒にある種の意識も棄てているのではと妄想^H^H想像しまし
た。
>完全に憶えていると、自分の都合で力を取り戻したくなってしまいそうで。

 悪魔族の力の封印は、ミストが悪魔キャンディーをいつも食べている事に関連
しての設定でしたが、力を持っている記憶を封印しているって言うのも、力の封
印の仕方としては大ありなのでは無いかと思います。
 だから、佐々木さんの妄想でも全然オッケー(笑)。
 余談ですが、以前佐々木さんが妄想された、ミストの過去は実はジャンヌ・ダ
ルクの時代に生きていた少女だったというネタがわりとお気に入りだったりして。

>「襲う」の意味をナナメ読みすると候補が多数。(爆)

 その意味で悪魔を取り憑かせまろんを襲わせて…とか、
 何故か悪魔に触手が生えて…とか言う展開を妄想したのは内緒です(誘爆)。

>>> ★神風・愛の劇場第79話 『贖罪』

>立体写真とは稚空も意外に細かい事に気付きますね。

 第38話で、稚空がツグミに細かい気配りを見せていたので、気付くなら彼だ
と。技術面のサポートも完璧だし(笑)。
 絵を盛り上げで表現するのは知っていましたが、まさか立体コピーまであった
とは…。

>フィンとアクセスのレクリエーションは事件になっているらしい。^^;

 最初にレクリエーションの話を出した時に、同じ話の内にテレビのニュースで
謎の空中爆発の事件の事を報じようとして書けなかったので、桃栗署が出て来る
この機会にと。しかし、昼間の間は立派なストーカーですね>アクセス。

>そして三枝おぢさまはやっと思い出してもらえた様で。
>全くんが何かの役を果たすとはちょっと意外かも。(笑)

 約束をしたのが先週の金曜日でそれからずっと事件が起き続けていたので、忘
れ去られたのは仕方が無いでしょう。作者も忘れていたし(ぉぃ)。
 ちなみに全君、単なる善意でまろんの所を訪れたのでしょうか?
 ご主人の言いつけかも(謎)。

>で、最後はこうきますか。ノインの真意は何なのでしょう。
>イカロスが死んだ事になって何かノインに得になる事とか、
>或いは誰かの損になるのかなぁ。謎〜っ。^^;;;;;;;;;

 実はノインの考えはそれ程深くなかったりして(滝汗)。
 ノインは、ミストの作戦に便乗しているだけなのです。今回の話参照(ぉぃ)。
 前回のノインの台詞は、それがそのまま本心では無いという辺りもポイント。

>★神風・愛の劇場 第80話 『不熟』

 あらら、全君は泊まらずに帰っちゃったんですね。せっかく二人の仲を邪魔し
ようと思ったのに(笑)。仕方ない、あるべき展開にするしか無いか(違)。
 残り物合戦ですか。佐々木さんの得意分野ですね(違)。豚骨ラーメン粥とか
(謎)。
 結局、知り得た事を一人で抱え込む事にしたらしい都ちゃん。
 ノイン様の僕として登場させながら、出す機会がなかなか無かった昴兄さんが
ここで出しましたか。流石兄だけあって、都ちゃんの事は判ってますね。
 にしても、都が中学生になる前には外国に行ってしまった筈ですから、その頃
からまろんの事しか見ていなかったんですね>都ちゃん。
 昴に相談して、どうやら自分がどうすべきか決められたみたい。
 不熟ってタイトルは、まだ話すべき機が熟していないって事なのかな。
 それと…魂のペットですか(笑)。成る程、そうすればかわいがる事が出来るのか。

 では、本編行きます。

★神風・愛の劇場 第81話 『二つの真実』

●桃栗タワー

「何やってんだろ、私…」

 今日も一日アクセスに追いかけ回されていたフィンは、日が暮れると桃栗タ
ワーの上へと戻って来ました。
 しつこいアクセスですが、何故か夜には追って来ず、その時だけはフィンは一
時の休息を取るのでした。

「本当に何やってんだか」

 フィンの近くの空間が歪んだと思うと、見慣れた人物が姿を現しました。

「貴方には言われたく無いわよ、ミスト」
「いつまであの準天使と遊んでいる積もり?」
「しつこいのよ。振り払っても振り払っても追いかけて来る」
「なら、一思いに殺せば良いじゃない。あんたの力なら……」
「……」
「そうか…やはり、天界での仲間は殺せないのね。だったら、あたしが代わりに
殺してあげても良いわよ」
「それは駄目!」

 思わず、叫んでしまいました。
 叫んでから、少し後悔しました。
 こいつにまた、弱みを見せてしまったかと。

「そんな事より、何しに来たのよ」
「ちょっと、クイーンに報告をしようと思って」

 フィンの表情が途端に厳しいものになりました。
 フィンがクイーンである事を認めてはいない筈のミストが、自分の事をクイー
ンと呼ぶ時には、ロクな事が無いからです。

「報告? そんな事、私にした事など無い貴方が一体何を」
「イカロスの事なんだけど」
「イカロス? ちゃんと大事にしているんでしょうね」
「実は昨日、死んだ」

 最初、ミストが何を言っているのか理解できず、思わず聞き返してしまいまし
た。

「何ですって!? どういう事なのよ! 返答次第では……」

 フィンは、腕を上げて指先を空中に浮かんでいるミストの方に向けると、小さ
な光球を作りました。
 口先だけでは無く、本当に返答次第でミストを殺す積もりでした。

「おお怖い。冗談よ」
「余り面白くない冗談だわ」

 ミストに向けた腕をそのままに、フィンは言いました。

「死んだのは、イカロスの複製よ」
「コピー?」
「そ。イカロスの魂から情報を抜き取って、魔術で作った泥人形」
「貴方の使う術じゃないわね」
「作ったのはノインよ」
「ノインが? まさか…。生命を作り出すなんて」
「生命と言うのも正確では無いかもね。あれには、魂が宿っていなかったから」
「どう言うことなの?」

 事態が良く飲み込めなかったフィンは、更にミストに説明を即しました。

「つまり、偽物の犬をわざわざパトカーの前に転がして轢かせたって訳?」

 説明を聞いたフィンは、呆れた感じで言いました。

「記録に残す必要があったから」
「それで? イカロスを死んだ事にして何をしたいの?」
「知れたこと。あの犬娘の心をもっと深く傷つけるため」
「そんな事をして何が面白い」
「あの犬娘の心が傷つけば、ジャンヌの心も傷つく。それに、元々あの犬が傷つ
いたのはジャンヌ自身の責任でもあるのだから。そうすれば…」
「神のバリヤーも消え去る、か…。そう上手く行くのかしら」
「さあね。ノインは、行方不明にするだけでは心を傷つけるには不足だって。あ
れでも、過去の教訓を踏まえているらしいわよ」
「過去の教訓ね。それで? なんでその事を私に教える?」
「あんたに妙な誤解をされて、無駄な争いをしたくないから」
「カラクリをツグミに教える事だって出来るのよ」
「あんたには言えない」
「何故判る」
「どうしてあんたがその事を知っているのかという話になるからよ」
「……」
「あの犬娘の信頼は、あんたの嘘の上に成り立っているものだから」
「……」
「怖いんでしょ? 築き上げた信頼関係を壊すことが」

 黙り込んでしまったフィン。
 暫くミストはその様子を見ていましたが、やがて両手を上げやれやれという表
情をすると、黙って姿を消すのでした。


●桃栗町郊外 ツグミの家

「眠れないの?」

 ベットの中で、ツグミとまろんは並んで寝ていました。
 まろんが声の方向を見ると、ツグミもこちらに顔を向けていました。

「ツグミさんも起きていたんだ」
「ええ。今にもイカロスが帰って来るんじゃないかと思うと眠れなくて」
「都達が捜してくれているから、きっとすぐ見つかるよ」
「うん」

 暫くの沈黙。
 昼間の間は元気そうに振る舞っていたツグミですが、握ったその手から、ツグ
ミの寂しさが伝わって来た気がします。
 こんな時、私は何を言えばいいんだろう。
 私は、ツグミさんに何が出来るんだろう。
 暫し迷った後、まろんから話しかけました。

「いつか、ツグミさんに私の両親の事を話した事があったよね」
「海外に仕事で行ったままなんですよね」
「実は今、行方不明なの」
「え!?」
「私が神様の為に、悪魔を封印していたって話は言ったっけ?」
「聞いたと思う」
「私の両親はね、私が産まれた時からずっと悪魔が取り憑いていたの」
「悪魔?」

 ジャンヌの正体がまろんだと知っているツグミでしたが、まろんは全てを話し
ていた訳ではありませんでした。
 自分も寂しい思いをしているツグミに、これ以上心配の種を増やしたくなかっ
たからです。

「これを知ったのは最近の話。ある悪魔が、その事を私に教えてくれたの。私が
神の力を受け継いだから、魔王は両親に悪魔を取り憑かせたんだって。だから、
私の両親は、最初から私のことを愛してなどいなかったそうよ。それを聞いた時
はショックだった。でもね、思ったの。生きてさえいれば、愛を信じて待ってい
れば、いつか二人は元に戻るって」
「それじゃあご両親は、今はどうしているの?」
「それを知った後ですぐに、パパとママに連絡を取ろうとしたわ。でも駄目だっ
た。二人とも、自宅にも仕事場にも、全く連絡が取れなかった」
「そんな、まさか…」
「その悪魔は言ったわ。私が生きている限り、両親は私の事を恨み続けるって。
それは本当の事なのかも知れない。私が産まれなければ、両親に悪魔が取り憑く
事も無く、二人は今でも幸せに暮らしていただろうから」

 知らず知らず、当時の辛かった事が思い出されて、涙がこぼれてきたのに気付
き、慌てて袖で涙を拭いました。

「日下部さんは何も悪くないわ。悪いのは悪魔よ」
「ありがとう。でもね、私は諦めて無いよ。生きている限り恨み続けるって事は、
まだどこかで生きているって事だから。絶対に私は諦めない」
「知らなかった…。日下部さんの両親がそんな事になっていたなんて。日下部さ
んに比べたら私、ずっと、ずっと幸せだった」

 ツグミもいつしか涙んでいるのに気付きました。
 まろんは、ツグミの目元に口付けて、そっと涙を拭って上げました。
 そして、ツグミを抱き寄せて言いました。

「ゴメン。ツグミさんにまで、悲しい思いをさせちゃったね」
「ううん。謝らなくても良いわ。だって、日下部さんの悲しみは、私の悲しみだ
もの」
「本当はこの事、ツグミさんに話す積もりは無かったんだ。でもね、今のツグミ
さんになら、話しても良いかなって」
「今の私?」
「イカロスがいなくなって、私に隠れて一人で泣いているツグミさんになら」

 ビクリ、とツグミの身体が震えた気がしました。

「判るの?」
「ええ。真実を知った時の私がそうだったから。とても苦しかった。何も知らな
い都にはこの事は話せないし、稚空は知ってて慰めてくれたけど、彼には素直に
甘えられなかった。私、一人で泣くしか無かった。だから判るの。ツグミさんの
辛さが」
「私…」
「だからお願い。泣きたくなったら、せめて私と二人切りの時にでも思いっ切り
泣いて。その方が、表面だけ元気にしているツグミさんより、余程安心できるか
ら」
「御免なさい、私…」
「ストップ! 謝るのは無しにして」
「でも」
「その代わり、私からも頼みたい事があるんだ」
「何?」
「私も辛い事があったら、ツグミさんの胸で泣かせて。お願い」

 暫く、ツグミはまろんが何を言っているのか判らない様子でした。
 しかし、やがてツグミは顔を上げ、微笑みを向けて言いました。

「判ったわ。私で良かったら」
「良かった。それじゃあ早速、お願いしちゃおうかな」
「え? 今?」
「へへへ。嘘よ。…本当のお願いはね、こうだ!」
「きゃあっ」

 まろんは、ツグミの上に覆い被さりました。

「月曜日のお・か・え・し」
「もう、日下部さんったら。そればっかり」
「ツグミさんが右手使えないんだから、今日は私がサービスサービス…なんて
ね」

 そう言うと、まろんはツグミの唇に口づけました。
 ツグミは、まろんの首に腕を回し、二人は重なり合って、そして一つになりま
した。


●桃栗学園 

 金曜日の新体操部の朝練は散々でした。
 普段ならば楽勝でこなせる演技を失敗し続け、パッキャラマオ先生にも注意さ
れてしまいました。
 まろんにもどこか身体の具合が悪いのかと心配されましたが、適当に誤魔化し
ました。まだ、昨日聞いた事を話す勇気は無かったからです。

 昼休み。昨日と同様、屋上にみんなで集まりました。

「どうした都?」

 稚空に呼びかけられて、都は我に返りました。

「えっと、何だっけ?」
「警察の方はどうなったんだ?」
「ああ、秋田さんに頼んでおいたから。まだ、特に連絡は無いわ」
「そうか」
「あれ? 昨日の電話は…」

 余計な事を。都は委員長を睨みました。
 何で睨まれたのか判らずに、委員長はキョトンとしていました。

「あれは、別の事件の話よ」
「そうだったんですか」
「それで、ポスターは貼り終わったのか?」
「大体ね」
「そうか…。すると後は、寄せられた情報を元に、地道に証言集めをするしか無
いか」
「あたしは、学校が終わったら行く所があるから」
「行く所?」

 そう言った稚空ですが、すぐに納得した表情になると。

「判った。頼む」
「ええ、任せて」
「何々? 二人だけで判ってないで、私にも教えてよ」

 まろんが、稚空と都の間に割り込んで言いました。

「ゴメンまろん。まだはっきりと確信が持てないんだ」
「確信?」
「とにかく、イカロス捜しはあたし達に任せて、まろんはツグミさんの側にいて
あげて」
「う…ん」
「悔しいけど、ツグミさんの心をケアして上げられるのは、まろんだけなんだか
ら」
「判ったわ」

 そうは言いましたが、どこかまろんは納得していない表情でした。


●桃栗警察署

「どうしてあんたがついて来るのよ」

 警察署への道を歩きながら、都は委員長に言いました。

「だって、昨日も一緒だったじゃないですか」
「だからって……」
「昨日の電話、イカロスの事なんですよね」
「どうして…」
「あの時の東大寺さんの表情、普通ではありませんでしたから」
「委員長にまで気付かれるなんて、ホントにヤキが回ってる」
「はぁ?」
「良いわ。ついて来なさい」
「はい!」

 委員長は、嬉しそうに言いました。



「ええ!? イカロスは死んじゃったんですか?」

 桃栗署の廊下で、都と並んで歩いていた委員長が驚いて言いました。

「ええ、パトカーに轢かれてね。昨日の電話はこの事なの」
「どうしてみんなに話さないんですか!?」
「まだ、確信が持てないからよ。今日はそれを確かめに来たの」



「じゃあ、本当にこの犬で間違いないんですね?」

 秋田刑事にアポを取って貰い、犬を轢いた当事者に話を聞きに来た都は、改め
てその犬がイカロスである事を確認する事になりました。

「ああ。道路上に死んだように横たわっていたから、気付くのが遅れて……」
「即死だったそうね」
「轢いた後で、自分で確認したんだ。その後で亡骸を運んだんだが、大きい犬だ
ったから、二人で運んでも随分重かったな」
「そう言えばイカロスって凄い重い犬でしたよね。僕も持った事があるんですけ
ど」
「え? あ、そうか。委員長はツグミさんと病院に連れて行ったから、その時
ね」
「そうです。まさか、こんな事になるとはあの時は思いませんでしたけど」
「それで、遺体はどうなったんですか?」
「最初はどこかで保管して貰おうと思ったんだが、犬は駄目だと断られてね。仕
方なく保健所に持ち込んだ」
「それじゃあ」
「既に処分されているかもしれない」
「そんな…。それで、首輪とかは?」
「首輪がついていたので、それは外して警察で保管して貰えるようにお願いして
おいた」
「本当ですか!?」
「ああ、ちょっと出して来て貰えるように頼んでおくよ」

 そう言うと、その警官は内線電話をかけました。

「本当にイカロスみたいですね」
「う…ん…」
「どうしたんですか? 都さん」
「何か、引っかかる事があるのだけど」
「何がですか?」
「大事な事を忘れてる気がする」

 警官が電話で話している間、委員長と小声で話しました。
 何かを思い出そうとした時、電話が終わったらしく、警官が言いました。

「今、こっちまで持って来てくれるそうだ」
「わざわざすみません」
「あの犬、盲導犬だったんだってな」
「ただの盲導犬というより、家族みたいなものだったそうです」
「そうだろうね。直接飼い主に会って、お詫びをしようと思ってる。あのポス
ターに掲載されていた住所で良いんだよね?」

 机の上にほポスターの縮小コピーらしい紙が置いてありました。

「はい…。ただ、行くのは少し待って貰えますか?」
「どうして?」
「まだ、この事を彼女に伝えていないの。だから、彼女に話して、それで彼女が
事実を受け入れてからにして欲しいんです」
「判った」

 暫くして、ビニール袋に入れられた首輪を別の警官が持って来ました。

「どう、委員長?」
「実はあまり良く覚えていないんですけど、色はこれで合っていたと思います」
「そう…。あの、これ少しお借りして良いですか?」

 最初は渋られましたが、他ならぬ東大寺警部の娘の頼みと言う事で、最後はこ
っそりと貸してくれました。


●桃栗町郊外 聖の家

 表の稼業である教師の仕事を終え、くつろいでいた聖。
 そこに、来客がありました。

「珍しいですね。あなたがここに来るとは」

 空中にミストが浮かび、聖を見下ろしているのでした。

「ジャンヌの幼なじみが、首輪を手に入れたみたい。大丈夫なんでしょうね?」
「それなら大丈夫です。瀬川ツグミが触れてもばれない自信があります」
「なら良いけど」
「それより心配なのはイカロスの方です。どうして本体を貸してくれなかったの
ですか」

 ノインは最初ミストに作戦を伝え、イカロスそのものを貸してくれるよう頼ん
で断られていました。
 そしてミストは、断る代わりに複製ならばこれで十分と、イカロスの魂を取り
出して、ノインの指示に従って魔呪府を突き刺して情報を取り出して渡し、首輪
は複製を作るためにノインに貸していたのでした。

「あんたとは長い付き合いだけど、あんたを完全に信用した訳じゃないから」
「正直ですね」
「見た目は完璧だったじゃない。何が心配なのよ」
「魂からの情報でしか無いので、例えば触れた時の感触など、目に見えない部分
で細かな食い違いが生じているかもしれないのです。不完全な複製物なんですよ、
あれは」
「だから、すぐに死体が処理されるように手を回しているんでしょ?」
「ですが…」
「全く心配性ね。気付かれたって、どうって事無いわよ。次の作戦を考えれば良
い事じゃない」

 そう言うミストを見上げ、この楽天的な性格を羨ましく思う聖でした。

●桃栗町郊外

「結局、首輪だけでしたね」
「そうね」

 保健所に行ってみると、昨日の今日の事なのに、イカロスらしき犬は、既に処
分された後でした。仕方なく、ツグミの家に向かうことにした二人。

「ねぇ、本当にその首輪、イカロスの物なのよね?」
「正直言って、同じ色としか判りません。材質も同じみたいですけど…。だけど、
あの人も保健所の人も、写真見て間違い無いって言ってたじゃないですか」
「そうなんだけど…何かおかしい気がするの。気付かない?」
「確かにおかしいですよ。動物病院から見放され、ロクに動けない筈のイカロス
が姿を消した挙げ句、交通事故で死んでいたんですから」
「それだけじゃなくて」
「東大寺さんが何を言いたいのか判りません」
「ゴメン…」
「別に謝らなくても。それでどうするんです? やっぱり、瀬川さんに話さない
といけないですよね、この事…」
「そうね…」

 そう答えつつも、本当にそれが真実なのだろうかと、都は考えていました。

(第81話:完)

 力尽きた…(汗)。多分続きは読めたのでは無いかと思います(笑)。
 …と誘ってみるテスト(ぉぃ)。
 では、また。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ

 記事に対するご意見・ ご感想などがありましたら書いてやって下さい
 名前: (ハンドル可)
 E-Mail: (書かなくても良いです)

 ご意見・ご感想記入欄