From: hidero@po.iijnet.or.jp
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 20 Sep 2000 12:00:19 +0900
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佐々木@横浜市在住です。
<8q40v4$88v$1@news01cg.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。
>> 石崎@夏休みです。
こんにちわ。
>> このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
>> その手のが嫌いな人は、読まないで下さいね。
そういう事で。
>> >>> ★神風・愛の劇場 第73話『女の闘い』(前編)
>> ハードからソフトまで色々なパターンを考えていますが、どれが良いですか
>> (爆)。
キャラ的にはハードかなぁと。都ちゃんとなら。*^^*
# しかしツグミさんは冗談半分で言っていただけっぽいのに
# あの後本当に何かあったらしい。(笑)
>> >★神風・愛の劇場 第74話『灰色の海』
>> イカロスが行方不明になった事で相当傷ついたツグミさん。
>> 直接の描写はありませんが、どうやらいなくなったと気付いた直後に家の近辺
>> を探し回った様子。
直接的な描写を入れるか否かは考えた結果入れない事にしました。
ツグミさんがどう行動するかは自明だろうと思いましたので。
>> 思ったよりイカロスの失踪とその犯人にフィンが気付くのが早かったです。
イカロスは自分で出歩く体調では無いので
他の理由としてはミストの陰謀ぐらいしか。^^;
>> そうか、イカロスを消す事でツグミさんが逆上する可能性もあったんですね。
>> フィンが囁き戦術を使えば、それも可能かも。
という結論にフィン自身で至るかと思ったら親切な助言が。(笑)
ちなみにフィンの言う「甘い」の裏にはもう一つ、
今のツグミを使う案があるという事で。
実際にフィンがそれをやるかどうかは別ですが。
>> そして問題は夢の中のシーン。
>> この場面で夢を見ることが出来るというと、ツグミさんか弥白ですが…。
>> 視覚に関する記述が無い事から、ツグミさんかと思って読んでいましたが。
>> 一体何に気付いたのか。
あの部分はある意味では第74話のキモなのですが、
わざとボかしている面がありますから現時点では
とりあえずどんな解釈でもオッケーです。(笑)
>> ★神風・愛の劇場 第75話『歪んだ優しさ』
>> ●オルレアン ミストの部屋
よくよく考えてみると今のアキコは幽霊なので、その彼女に
撫でられているのが判っているらしいイカロスは流石というべきですね。^^;
>> ●桃栗町郊外 ツグミの家
ミストの方から色々言ってくるなと思っていると、それを
呼び水としてフィンからも色々聞き出してしまったり。
言魂を操る事に関してはやはり悪魔の方が本職のようで。
それともフィンが素直で乗せられやすいのかなぁ。(笑)
困った時に思わずアクセスの事を思ってしまうフィンは可愛いです。
ところで。本当はミストが好きなのか?ノイン。^^;;;
# では、行きまする。
## 最近、妄想を書いていて一番時間がかかるのは
## サブタイトルを考えている所だったりして。(爆)
★神風・愛の劇場 第76話 『繋ぐもの』
●桃栗学園
若さ故の、あるいはちょっぴり他の人とは違う力の所為でか、
まろんの疲労も首の痣も3日目には消えていて、その日は
普段の通りに登校していました。もっとも部活の方は都の、
「抜け駆けの罰じゃ。1回休み!」
という有り難い言葉にしたがって自主休養としていましたが。
きっとまだ身体を激しく動かすのは無理だと思われたのでしょうが、
そうは言わない友人の言葉がかえって嬉しく思えるのでした。
見学しようかちょっと迷いはしましたが、別な用を思い出して
授業が終わった後で早々に学園を後にしました。
●枇杷町・山茶花邸
本人はすっかり回復したつもりでしたが、家の者が是非にと勧めるので
今日も大人しく休んでいた弥白。もっともこの日は部屋の中で
色々と考え事をしていたのであまり休んだ意味は無かったかもしれません。
考えてみると先週末、無謀にもお酒を飲んでしまってからの記憶が
甚だしく怪しい事に気付きます。どうしてそんな事をしたのか。
理由は判っています。忘れてしまってもいい事ほど
鮮明に思い出せてしまう事が悲しい。
でもその後の事は混乱していて何処までが事実なのか
自分でも自身を持って判ずる事が出来ないのです。
ただ、とても鮮烈な印象を残している二つの事柄がありました。
冷たく横たわる者の姿と迫り来る者の姿。どちらも背骨に氷の針を
挿し入れられた様な感触と一体になって意識の表面に浮かんできます。
恐ろしくなって、眠り込んでいた間の新聞を全て取り寄せたり、
ネットワークで記事を検索してみたり。
どうやら自分が考えている様な事件は起こらなかったらしいと、
多少は安心出来たのは昼過ぎの事でした。それでも。
「…いずれこの目で確かめないと」
とは思うものの、いま一つ腰を上げる気にはなれないのでした。
●桃栗町郊外
口実が沢山あり過ぎて、結局どれを主目的にするかで悩んだまろん。
やはり昨日のお礼というのが一番の様に思えましたから、
途中でお茶菓子を買って行きました。
ツグミの家を目前にして、イカロスにも何か買ってくるべきだったと
思い至ったのですが気付くのが遅すぎました。第一、何を買って
行くと良いのやらと考えて、これで良かったのだと自分で納得します。
脇道に逸れて暫く行くとツグミの家の玄関が見えてくるのですが。
「留守なのかな」
普段ならとっくに向こうから扉が開いて手招きされる距離です。
予め出向く旨を連絡していなかった事を少し後悔しました。
暫く待ってみようかと思いポーチに上がった時になって
漸く扉が開いたのですが、それでかえって驚いてしまいました。
「うわっ」
開かれたというよりは、閉まって無かったという感じでした。
十数センチ開いただけで扉は止まってしまい、それ以後は
何の変化もありはしませんでしたから。
まろんはそっと扉に手をかけて中を覗き込みました。
物音がするので留守では無い様子であることを確かめると。
「こんにちは〜、ツグミさ〜ん」
微かに返事が聞こえてから、おっとりとツグミが現れました。
「……あら、いらっしゃい」
普段とは全く様子が違うことはすぐに判りましたが、それが
何故なのかを聞こうとして、先に妙な音がする事に気付きました。
ぽたっ。ぽったっ。洗い物か何かをしていて濡れた手のままで
出てきたのだろうかと思い、まろんはツグミの手を見下ろします。
右手のひらに赤く濡れたリボンが巻き付けてあって、指の間から
赤い水が滴り床に小さな水溜まりを作っていました。
「ちょっと、どうしたの、この怪我!」
まろんは慌ててツグミの手をとると、じっとりと濡れて
何の役にも立っていない包帯を取り除きました。
手のひらに赤い筋が一本走っていて、見る間にも
血が盛り上がって再び流れ落ちようとしています。
見ている方が貧血を起こしそうだと、その時まろんは思いました。
それでも何とか傷口を塞ぐ様に手を添えて押さえると
少しは流れる血が減ったように見えました。
「ねぇ、ツグミさんてば!」
「え?」
「怪我よ、この怪我、何があったの?」
まろんの動揺をよそにツグミは随分と考えてから答えました。
「あぁ、怪我ね。庖丁を逆に握っちゃったの」
「逆って…」
「何だか全然切れないなって思ったら、段々手がヌルヌルしてきて」
「何時っ?」
「さぁ…」
「ねぇ、しっかりしてってば。凄い血だよ」
「平気よ、痛くないし」
「そんなはず無いってば!」
家庭で何とか出来る情況では無いと専門家ではないまろんにも
すぐに判る程の深い切り傷なのに、ツグミは淡々としていました。
止血を一旦ツグミに任せて救急車を呼んだまろん。
横目でツグミの様子を確認しながら、気が動転するとは
こういう事なのだとまろんは考えていました。
●名古屋病院
救急外来での処置の後、閑散としている待合室にツグミを残して
まろんは窓口での事務的な手続を行う為にその場を離れて行きました。
そんな二人の様子を偶然にも見かけた者がおりました。
「何で、あの悪夢ペアが来ているんですの…」
昨日のお礼と心配をかけた事へのお詫びを兼ねて、午後の
一般外来が一段落したころを見計らって来ていた弥白。
まさかとは思いましたが、無論見間違うはずのない相手です。
そして二人の姿は弥白を安心させ、一方で慄然とさせました。
見たところ、まろんは元気な様子でした。少なくとも死んではいない。
決して好きな相手ではありませんが、自分の手で殺してしまったかも
しれないという悪夢に苛まれるよりは現実の方がどれほど気が楽か。
しかしツグミの手に厳重に巻かれた包帯は、もう一つの悪夢が
事実であった事を示しているとしか思えませんでした。
もしそうなら。
「逃げられはしないでしょうね」
あれが本当の事なら自分に逃げ道は無く、現実で無いなら
逃げる必要が無いはず。弥白は決心するとツグミの傍らに立ちました。
「…あの、ちょっといいかしら」
何だか間抜けな声の掛け方をしてしまったと弥白は後悔しましたが、
そもそも後悔する程に相手の返事までの時間が長かった事には
ついぞ思いは至りませんでした。
「はい?」
無意識の事なのでしょうが、ツグミは重ねていた手を組み替えて
無傷な左手で右手を覆い隠すようにしました。
それを見た弥白は一気に身体の力が抜けるのを実感していました。
あの時の怪我なら両手にあるはず。やはりあれは悪い夢か、
或いは想像を越えた出来事だったにしても、相手は
この娘では無いのだと確信する事が出来そうです。
弥白はツグミの隣に腰を下ろすと再度話しかけました。
自分でも声が柔らかくなっている事が判ります。
「怪我、どうされましたの?」
「庖丁でちょっと…」
「まぁ」
俯き加減だったツグミがふと顔を上げたとき、弥白は近づいてくる
足音に気付いて慌てて席を立ちました。
「私、これで失礼しますわ。お大事にね」
そそくさと立ち去る足音に向けられたツグミの言葉は
あまりに小さくて弥白に届くことは無かったのです。
「あの、以前にも…」
戻ってきたまろんは、ツグミが背を向けて立っている理由を
知るはずもなく、ただそっと手をとって家路へと導くだけでした。
●桃栗町郊外
ツグミを家まで送り届けたまろん。
しばらく様子を見ながらあれこれと話をしていましたが、
一向に変化が見られませんでした。相変わらず、どこか上の空。
「そうだ。大事なこと思い出した。イカロスは?」
今まで色々なモノに触れてきたという意識はあったまろん。
少なくとも普通の人よりは多くの世界を知っているつもりでした。
しかし、それでもまだまだ知らない事が多いのだと後になって
この時の事を思い出す度に感じるのです。
身体は全く動かして居ないにも拘らず、目に見えないものが
ツグミの身体から沸き上がって、まろんの身体をかすめた様に思いました。
目をしばたたかせると、もうそんなものの気配すら無く
先程と同じようにテーブルの向かい側に座っているツグミが居るだけ。
もう一度呼びかけると、思い出した様にツグミが応えました。
「居ないの。イカロス…」
「え?」
「何処か行っちゃった」
どうやら昨日からイカロスが行方不明だという事実に行き当たるまで
ツグミの話を解きほぐすのに、たっぷり10分近くの時間が必要でした。
「大丈夫だよ、きっとお散歩してるんじゃないかな」
自分で信じてもいない事を言う虚しさ。
でも、それに対する答えに比べたらそんな事は大した事はありません。
「うん…そうね…散歩」
そう呟いた後、ツグミはイカロスが元気になったと言って
げらげらと笑っていました。そうしてひとしきり笑うと途端に
静かになり、それからはずっと何も言いませんでした。
確かにツグミは心底動転しているのだと悟ったまろん。
そしてその理由をずっと勘違いしていたことも同時に知りました。
放って帰る訳には絶対にいかない。少なくとも今のままでは。
まろんは身体を震わせ、開いているはずのない窓の閉まり具合を
確かめずにはいられませんでした。
(第76話・完)
# 弥白様に少々心の平穏の為の時間を用意しました。^^;;;
# でもツグミさんは。(泣)
## 自分で書いてるくせに。^^;
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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