神風・愛の劇場スレッド 第67話『天界の休日』(後編)(8/20付) 書いた人:携帯@さん
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ
From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 20 Aug 2000 16:17:48 +0900
Organization: So-net
Lines: 315
Message-ID: <8no0mu$knu$1@news01dd.so-net.ne.jp>
References: <8kujuu$hlj@infonex.infonex.co.jp>
<8m1ers$i96$1@news01bj.so-net.ne.jp>
<8m1hgh$p9c$1@news01bf.so-net.ne.jp>
<8m5h94$69l@infonex.infonex.co.jp>
<8no0it$bra$1@news01de.so-net.ne.jp>

石崎です。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
 この記事は、第67話(後編)です。第67話(前編)
Message-ID: <8no0it$bra$1@news01de.so-net.ne.jp>
 よりお読み下さい。



★神風・愛の劇場 第67話 『天界の休日』(後編)

■準天使 アクセス・タイム編(その2)

●天界 中心部郊外の丘の上

 アクセスはセルシアに言われた通り、丘の上に歩いて行きました。
 普段歩き慣れないので、少々辛い道のりでしたが、丘の上へと上っていく内に
慣れてきたのか身体が軽くなっていくように感じられ、約1時間後には丘の上へ
と到達していました。

「こりゃ確かに……」

 目の前に広がっていたのは、『天界』中心部の夜景でした。
 整然と区画された中心部の町並みの灯りの輝き。
 そしてその奥に一際明るく照らされている『神殿』が見えました。

 上を見上げれば、大地の間から星空を見る事が出来ました。
 足元には、夜空の光を受けて輝く湖があり、周囲に広がる森の中にはアクセ
ス達と同じように天使達が文字通り羽根を伸ばしているであろうコテージの灯
りが、ぽつりぽつりと見えました。

「(セルシアの奴、上手くやってるかな……)」

 などと考えつつ、自分達の泊まっているコテージのある辺りを眺めていると、
すぐ近くの木立の中で物音がしました。
 一瞬風かと思いましたが、今は無風です。
 その内、今度は天使のものらしい息づかいまで聞こえて来ました。

 アクセスは息を押し殺すと、その物音の方に木立に隠れつつ近づきました。
 こっそりと接近すると、大体予想通りの光景を見る事が出来ました。

 そこにいたのは、二人の重なり合う天使達。
 羽根の色が白いので準天使のようでした。
 少しだけ予想と違っていたのは、その二人の天使が両方とも女に見えた事です。
 もっとも、驚きはしませんでした。それ程珍しい事では無かったからです。

 二人の天使達の様子を見ていると、段々自分が空しくなって来ました。
 それでこっそりとその場を離れようとしたのですが、うっかり羽根を木の枝に
ぶつけて物音を立ててしまいました。

「きゃっ!」
「誰!?」
「お前ら……」

 顔を向けた二人の天使の顔に、アクセスは見覚えがありました。



「ごめんごめん。覗く積もりは無かったんだけどさ……」
「覗いてたじゃない! 思いっ切り」
「天罰を落とすわよ!」

 その二人の準天使の名はレイとミナ。
 アクセス達と同じ『花』の期の生まれです。
 レイは長い漆黒の髪が目立つ、火の属性の術が得意な女天使、一方ミナは長い
ブロンドの髪に赤いリボンをつけた、雷の属性の術が得意な女天使なのでした。

「それにしてもお前ら、何時の間にそんな関係に……」
「もう随分前からよね」
「そうそう! 最初にアタックしたのはあたしの方で……」
「私は『掟』破りだからって拒んだんだけど」
「ちょっと、レイちゃん。そんな事言ってなかったじゃない」
「あ、バレた?」
「嘘は止めてよね、嘘は。本当はね、レイちゃんは泣きながら……」
「ちょっとストーップ! 恥ずかしいからその話は止めて!」

 レイは、ミナの口を塞ぎました。

「はいはい。ご馳走様でした」
「ねぇアクセス。私達の事は……」

 ミナの口を塞いだままで、レイは潤んだ瞳でアクセスを見つめました。

「ああ。判ってる。誰にも話はしないよ」
「有り難うアクセス!」
「大変だよな。人には言えない恋なんて。それに……」
「良いんです。『天界』では結ばれる事が出来なくても。
 私達、約束したんです。一緒に神様の為に一生懸命働いて、
 いつかお互いすぐ側に生まれ変わって結ばれようって」
「そうか、頑張れよ」

 掟破りの恋に生きる二人。
 それは、とても辛い事なのだろうとアクセスは思いましたが、こういう事しか
言えませんでした。

「ところで、何でこんな所にいるのよアクセス」

 漸くレイから解放されたミナが今度はアクセスに訊きました。

「あ、ああ。準天使に昇進したお祝いで休暇を貰って……」
「一人なの?」
「いや、セルシアとトキと一緒」
「他の二人はどうしたの?」
「コテージにいるよ」
「二人っきりにしといて良いんだ」
「ちょっとミナ、止めなさいよ」
「いや、その……」

 アクセスは、どう話して良いものか少し悩みました。
 そして、それで二人は事情を察したようでした。

「優しいんだアクセス」
「別にそう言う訳じゃないけど」
「ま、アクセスにはフィンがいるものね」
「ミナ!」
「隠さなくても良いじゃない。同期の間では有名よ」
「でも、フィンちゃんの気持ちは……」
「大丈夫。フィンも貴方の気持ち、嫌には思ってない筈だから」
「そうかなぁ。フィンちゃんは前から神様の事が好きみたいだし……」
「フィンも、私と同じ気持ちなのではないかしら」
「え?」
「現在の幸せよりも、将来の幸せをって事よ」
「あ……」

 レイに言われてみると、本当にそうなのでは無いかと言う気がして、元気が出て
来ました。
 もっとも、そうであるならば、どうしてフィンが魔王につけ込まれたのか、ます
ます判らなくなるアクセスでした。

「俺…そろそろ帰る」
「待って」

 立ち上がったアクセスをレイが引き留めました。

「まだ帰るのは早いでしょ」
「どういう事だ?」
「鈍感ね。愛し合う二人に時間は何よりも大切なものよ」
「そうよ。ねぇ、あたし達のコテージに来ない? お茶位ご馳走するわよ」

 そう言って、ミナはアクセスに微笑みました。


●アクセス達のコテージ

 アクセスがコテージに戻って来たのは、結局深夜となりました。
 セルシア達は、もう寝ているかと思ったのですが、まだ起きていて、アクセス
が戻るとセルシアが玄関まで迎えに来てくれました。
 セルシアは何だか機嫌が良さそうなのにアクセスは気付きました。

「随分とゆっくりでしたのね」
「ああ、途中でレイとミナに会ってさ」
「あの二人も休暇だったのですですっ?」
「休日出勤の代休とか言ってた」

 その時アクセスは、セルシアの身体や髪の毛から何とも言えない良い香りがす
る事に気付きました。

「どうしたんですの? 顔が赤いですわっ?」
「あ、いや、その……」

 トキと上手く行ったのかどうかに興味があったのですが、それを聞く勇気はア
クセスにはもちろんありませんでした。


●二日後 天界中心部入り口

 アクセスに与えられた休暇は三日間でしたが、実際には休暇を与えられた日も
日数の内に含まれていたので、人間界へ向けての出立の日は、それから二日後の
夕方でした。

「気をつけて行って来て下さいですですっ」
「フィンさんに宜しく」

 天界中心部の入り口から旅立とうとするアクセスを同期の仲間達が取り囲んで
別れを惜しんでいました。
 それに応えながらアクセスは、キョロキョロと辺りを見回していました。

「アクセス、どうしたんですの?」
「ああ、レイとミナの姿が見えないなと思って。
 絶対に見送りに行くとか言ってたのにな」
「仕事が忙しいのでは? そろそろ出立の時間ですよ」
「そうだな……」

 アクセスは二人の姿を探すのは諦めて、翼を広げました。

「それじゃあ、行ってくるぜ!」

 そう言うと、アクセスは天界の入り口へ向けて真っ直ぐ飛んで行きました。


■大天使リル編

●天界 リルの執務室

「アクセス・タイムは今人間界に向かったようです」

 執務室の中の鏡に向かって、リルは話しかけました。

「神よ。本当にアクセスに、あの掟破りで有名な
 アクセス・タイムに『力』を与えて良いのですか?」
「良いのです。少なくとも今回の使命を果たすまでは、
 アクセスが裏切る事は無いでしょう」

 鏡の中から、女性のものらしい声が聞こえました。
 しかし、鏡には何も写ってはいませんでした。
 リルの姿さえも。

「しかし……」
「裏切るので有れば、その時はその時です」
「判りました」
「ところでリル」
「はい」
「今宵、私の所に来て下さい」
「はいっ」

 その時のリルの顔は、本当に嬉しそうなのでした。


■日下部まろん編 1/21(金) 早朝

●オルレアン 7F廊下

 まろんは、その日は委員長とも出会わないように、眠い目を擦り擦り日も昇ら
ない内にツグミの家を後にしました。
 オルレアンについたのは、空が明るくなって来た時刻。
 流石に委員長もまだ来てはいないようです。
 メールボックスを覗いて、朝刊と頼まれもしないのに宅配される日刊恐怖新聞
を取ると、エレベーターにそそくさと乗り込みました。

 エレベーターが7階に到着すると、即座にまろんは廊下を見渡しました。
 廊下には誰もいませんでした。
 ほっと胸をなで下ろし、自分の部屋に歩いて行こうとした時です。
 稚空の部屋のドアが、音もなく開くのが見えました。
 咄嗟に、エレベーターを出て右側にある、屋上へと続く階段に隠れて様子を伺
いました。

 部屋から最初に出て来たのは、稚空でした。
 ドアから顔を出してキョロキョロと様子を伺うと、後から誰かが出て来ました。

「(都……?)」

 稚空の部屋から出て来たのは、都なのでした。

「(どうして都がこんな朝から稚空の部屋にいるのよ。まさか稚空の奴……)」

 自分の所業を忘れてまろんは憤慨しました。
 余程出て行ってやろうかと思いましたが我慢して、様子を伺っていると。

「お、おい……」

 都は稚空の首に手を回すと、背伸びして稚空の頬にキスをしました。

「それじゃあまた後で!」

 そう言うと、都は走り出しました。
 慌てて首を引っ込めたまろんの目の前を都が通り過ぎます。
 一瞬、都がこちらを見た気がするのですが、そのまま自分の部屋まで走って行
ってしまったので、自分に気付いたのかどうかは判りませんでした。

「(何よ……今の……)」

 そう思ったのは一瞬。
 次の瞬間には、身体が行動を起こしていました。

「稚空の……馬鹿ぁっ!!!!」

 まろんのアッパーカットにより、稚空は一撃でノックアウトされました。

「もう、知らない!」

 そう言い残して、まろんは部屋の中へと入って行きました。


■準天使アクセス・タイム編(その3)

●オルレアン 稚空の部屋

「おーっす稚空! 待たせたな!
 準天使アクセス・タイムただ今参……あれ?」

 天界から人間界に戻って来た頃には、既に夜が明けていました。
 オルレアンの稚空の部屋のバルコニーの窓の隙間から入ったアクセスは、
リビングにアルコールの匂いが充満しているのに気付きました。
 ソファには毛布が敷いてあり、誰かがここで寝ていた事を物語っています。
 そしてその匂いは、女性のものでした。

「やるなぁ、稚空の奴。それとも、また悪魔にでも憑かれたか?」

 そう言いつつ、アクセスは稚空を捜しました。
 すぐに稚空は見つかりました。

「何やってんの? こんな所で」

 玄関先で、稚空は倒れているのでした。

「何で俺がこんな目に……」

 そう稚空はぶつぶつと呟いているのでした。

(第67話・完)

 ……と言う訳で、稚空とまろんちゃんの溝はますます深くなっていくのでした。
 ちなみに時間軸が分かり難くなっているので整理すると、

月曜日…DATテープをチェックメイト。アクセス天界へ行く
火曜日…アクセス準天使に昇進。ツグミの家でまろん、稚空とティータイム
水曜日…ツグミの父の公開講座。アクセス休暇中
木曜日…まろん、ツグミの家に行く。都、稚空の家で飲み会。ミストの爆弾発言。
金曜日…朝帰りでばったり(笑)。アクセスの帰還

 これで合ってますよね……多分(汗)。
 では、また。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ

 記事に対するご意見・ ご感想などがありましたら書いてやって下さい
 名前: (ハンドル可)
 E-Mail: (書かなくても良いです)

 ご意見・ご感想記入欄