神風・愛の劇場スレッド 夏のスペシャル版『魔物狩り』(後編)(8/7付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 7 Aug 2000 17:28:36 +0900
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佐々木@横浜市在住です。

# これは「神風怪盗ジャンヌ」のヨタ話から派生した
# サイドストーリー(通称・妄想 ^^;)の記事です。
# お嫌いではない方のみ以下をどうぞ。

尚、これは夏のスペシャル版の後編です。
先に前編 <8mlrol$je8@infonex.infonex.co.jp>
&中編 <8mlrrf$jis@infonex.infonex.co.jp>を読んでください。


★神風・愛の劇場 夏のスペシャル版 『魔物狩り』(後編)

二人の悲鳴を聞いて都が駆け戻った時には、
焚火の傍には誰もおりませんでした。
まろんの服とツグミの荷物が散らばっています。

「まろん…」

そのすぐ後に、稚空と大和も駆け付けました。

「この穴はヤバイ…って、遅かったらしいな」
「何があったんですか」
「知らないわよ。それよりヤバイって何?」
「それが入り口に骸がゴロゴロと」
「それとこんな物が」

大和が差し出した小さな金属片を見た都は目を円くします。

「ちょっと、これって王立軍の階級証じゃない」
「え゛?」
「しまった、ここが石窟寺院の入り口だったのよ」
「マジかよ」
「そうだわ、当然よね。魔物が巣食っているのに
 警備兵が無事で居るわけ無かったんだわ。迂闊」
「どうしましょう」
「どうったって先行くしか無いだろう」
「そのとおりよ」

三人は、そうして洞窟の奥へと進んで行きました。
どのくらい進んだでしょうか。前方がぼんやりと明るくなっています。
さらに進むと、突然洞窟の中とは思えない程の広い空間に出ました。
都が持っている石と恐らく同じ原理であろうと思われる石の燭台が
壁に等間隔に据付けられていて、その灯りが全体を照らしています。
しかし、それだけではない明るさがありました。

「凄げぇ…」

その洞窟内の大広間は壁が全て金色をしています。
さらにそこかしこに黄金の調度品が置かれています。

「壁は金箔みたいですね」

賢者・大和は早速辺りを調べています。

「こっちは純金だぜ」

戦士・稚空は黄金の短剣を腰に何本も挿しています。

「目立つ物盗るんじゃないわよ」

賞金稼ぎ・都の獲物は金の小箱に入っていた金のイヤリング。

「そんなの後にして救けてよ〜」

何処からか、まろんの声が響いてきました。
きょろきょろと見回す三人。

「こっちだってば〜、上だよ〜」

見上げると、大広間の奥に鎮座する巨大な石像の頂上、
石像の頭の上から、まろんが手を振っています。
おっかなびっくり覗き込む様に見下ろしていて、
顔半分と手しか見えませんでしたが。

「下りて来い、まろん!」
「馬鹿ぁ、下りられたら苦労しないよぉ」
「じゃぁ、どうやって上がったんだ」
「気が付いたら此に連れてこられたの〜」
「誰にだっ」
「そいつ〜」
「あん?」
「稚空の後ろに立ってる奴〜」

稚空が振り向くのとほぼ同時に、魔物が腕を振り下ろしました。
とっさにかわした稚空。今まで立っていた場所の床が砕けて窪みます。

"オンナハオレガカワイガッテヤル、オトコハシネ"

声、とは違う何かが全員の頭の中に響きます。
どうやらそれは魔物の発したものの様でした。

「気色悪ぃ色だなコイツ」
「紫なんて悪趣味よね」
「青い身体に周りの赤っぽい照明が当っているからでしょう、多分」
「分析してる場合かぁ〜」

魔物は中々素早い動きをしましたが、場所が広かった事が
幸いし、三人は何とか攻撃をかわし続けていました。
その時、ツグミが上から呼びかけます。

「賢者さ〜ん、私の荷物〜」
「水無月、あんた昇んなさい」
「ええっ、僕ですかぁ」
「ツグミの荷物持ってきたの、あんたでしょ」
「それは都さんが持てって…」
「いいから行け!」

稚空と都が連係して魔物を引き付けている間に、
大和が石像を昇り始めます。そして何とか頂上に。

「はい、これ」
「どうもありがとう」
「流石賢者様っ!」
「…」

鼻血を流しながらよろめく大和。咄嗟にツグミが何かを呟き、
青い粉を大和に向けて振りかけました。その直後に落ちていく大和。

「あ〜っ」
「落ちちゃったわね」
「何でかな」
「さっきから剣士さん下着一枚の格好なんだけど」
「げっ」
「間にあったかしら…」

大和の持ってきた荷物、肩から下げる様に出来ている布袋を
身に付けるツグミ。

「はい。これ」
「え?」
「取りあえず、私のマント羽織って」
「うん」

そして先程と同じ粉を自分とまろんに振りかけます。

「さ、行くわよ、剣士さん」
「何処へ?」
「下」

ツグミは思いっきり、まろんを突き飛ばしました。

「きゃ〜、死ぬ〜、化けて出てやる〜、ツグミさんのバカ〜」
「酷い言われ様ね」

隣りにいるツグミ。

「あれ???」

二人はゆっくりと下に向かって降りていました。

「体重が軽くなる術」
「何だ、先に言ってよ」

床に降り立つと、稚空と都が駆け寄って来ました。

「大丈夫かっ!」
「それより早くアレやっつけてよっ!」
「手強いんだよ」

ツグミが稚空の腰の辺りを指差して言います。

「それ、一つ貸してくださる?」
「いいけど、後で返してくれよな」
「元々、あんたのじゃ無いでしょうが」

稚空から借り受けた黄金の短剣に呪文を唱えるツグミ。

「はい。これ投げ付けて」
「魔物にか?」
「ええ」

目の前に迫っていた魔物に稚空が短剣を投げ付けます。
短剣が突き刺さると、魔物は大広間中に響き渡る叫びを上げて
消滅してしまい、その後には小さな象牙の彫り物が落ちていました。
それを都は拾い上げると、そっと服の中にしまいました。

「あ〜あ、疲れた」
「何よ、結局全部ツグミさんにやらせたんじゃない」
「うるせ〜。あと少しで倒せたんだよ」
「そうね。魔術は時間の節約をしただけ」
「だろ、だよなぁ」
「さ、用が済んだんだから帰るわよ」

立ち去ろうとする一行。

「待ってくださいよ〜、置いて行かないで〜」

後ろ、そして上を見る四人。石像の真ん中辺りに大和が浮かんでいます。

「何やってんのよ、早く降りて来なさい!」
「降りられないんです〜」
「ツグミさん、賢者様にも術かけたのね?」

ぺろっと舌をだしているツグミ。

「慌ててたから多すぎたみたいね、粉が」
「粉って何よ」
「体重が軽くなるのよ。落ちても怪我しない様に」
「多すぎると、どうなるわけ?」
「暫く落ちて来ないわね」
「どのくらい?」
「多分、半日か、長くて一週間くらい…」
「あっそ」

それだけ聞くと都が言いました。

「先帰るからね〜」
「お前の尊い犠牲は忘れないぞ」
「ばいばい、賢者様〜」
「酷いですぅ〜、下ろして〜」
「ごめんなさいね〜、下ろす術もあるんだけど
 浮かんでたんじゃ粉かけられないから駄目ね〜」

こうして戦士達は一名の犠牲を出しながらも、見事魔物を退治したのだった。



宿屋に戻った一行は疲れていた所為もあってか二日程爆睡して
漸く目覚めました。朝食を摂っているのは、まろん、稚空、ツグミ。
そこへゲッソりした大和が戻ってきました。

「あ、賢者様だ。お帰りぃ」
「おう。飯食うか?」
「元気みたい。よかった」
「僕は今回初めて皆さんの事を理解した気がします…」
「怒ってるのか?」
「当然です」
「判った。じゃぁ黄金の短剣一本でどうだ?」
「話になりません」
「じゃ、二本」
「…」
「よしっ!大盤振舞で三本だ!」
「水に流しましょう」

まろんとツグミは呆れ果ててしまっていました。

「随分と気前いいわね、稚空」
「まぁな、元々これとは別に正当な報酬があるわけだし」
「あ、そうだね。そういえば都、ご飯食べないのかな」
「賞金稼ぎさんなら、朝早くに旅立ったわよ」
「なぁんだ、そうなの」
「水臭いな、都…」

顔を見合わせる稚空とまろん。

「あ゛っ!」「お金!」

慌てて店の外に飛び出した二人ですが、もちろん都の姿なぞ
何処にも見えませんでした。

「バカヤロ〜っ」
「悪魔〜っ」

散々叫んだあげく疲れたのか、とぼとぼと二人は戻ってきました。

「まぁ、俺には純金の短剣が残ってる…」
「え〜ん、私にも一本頂戴〜」
「まぁ、一本ぐらいなら」

ツグミの一言が二人にトドメを刺しました。

「あれ、偽物よ」
「え?」「え?」
「本物の宝物は王宮の博物館の中。あそこに置いてあるのは
 見学者用のレプリカなんだけど、知らなかったの?」

凍り付いた二人を、もはや誰も救ける事が出来ませんでした。



「本当に追い掛けるんですかぁ」

賢者・大和は面倒くさそうに言いました。

「当然よ、分け前取り戻さなくちゃ」

昼近くになって漸く動き出した稚空とまろんは旅の仕度を終えつつあります。

「さ、出発するぞっ!」
「やれやれ」

宿屋の表、道を挾んだ反対側の木陰に魔術士・ツグミが座っています。
剣士・まろんが駆け寄って言いました。

「一緒に行くよね?」
「でも、帰って報告しないと」
「そんなの手紙でいいじゃん」
「う〜ん」
「それにツグミさんが居ないと、都追い掛けられないから」
「私が居ても居なくても関係ない気がするけど」
「居ないと私が寂しいのよぉ」
「…ま、いいか。次の仕事の依頼入ってないし」
「うん!」

こうして、新たな仲間を加えた宝物狩人の一行は、
再び旅の空へと踏み出したのでした。

(完)

★神風・愛の劇場 『楽屋おち』

最後まで黙って聞いていたツグミ。
まろんは話を終えると、ふぅと溜息をつきました。

「どうかな、こんなの」
「それ、学園祭で演るの?」
「脚本担当になっちゃったから」
「ふ〜ん」
「感想、聞かせてほしいな。ダメならダメって言ってね」
「そうね。素人にしては上出来なんじゃない」
「そう?」
「実際は登場人物に別な名前着けるんでしょ?」
「うん。名前は後で英語の辞書でも見て考えるつもり」
「でも、何か足りない気が」
「え、何だろう」
「こういう話にはお約束の妖精とかエルフとか…」
「ああ」
「でも、役者が」
「難しいよねぇ」
「(フィンなら適任だけど、内証なのよね、知り合いだって)」
「(フィンなら適任だけど、人前に出すのはマズイよねぇ)」
「うふふ」
「ははは」

作品の出来とは違う次元での乾いた笑いが流れて行くのでした。

(ほんとに完)

では、また。

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