ご主人様初級講座

§2 最初の一歩のその前に



やっとのことで気に入ったM女性を奴隷にすることができそうなあなたはいくら取り繕

ってみたところで心の中は笑顔で一杯のことでしょう。

何度もそういう出会いを経験してきた人だってやはり嬉しさは変わらないのですから。

道具の準備はできていますか? まだの方は急いで買いに走りましょう。

大きなバッグを膨らませていざ出陣です。

でも・・・   ちょっと待った! なのです。


「とりあえず、相性が合うかどうかプレイしてみようか。」

強引にうなづかせることはできるかもしれません。

せっかくのチャンスが目の前にぶら下がっているのに見逃すことはないと思いますか?

一度きりのつもりならそれでもいいでしょうね。

ですが、「支配と服従」を目指すあなたならそうして欲しくはないのです。

M女性なら誰にでも手を出すようなご主人様に、奴隷として心から「服従」を誓うM女性

はついてはこないでしょうから。

はっきりと主従関係を確認するまでは、お互いがSとMであることを知っている、ただの

男と女。

試しに命令を出したり、試しにプレイをしたりでは、あなたへの信頼など生まれるはず

のないことをお忘れなく。


メールや電話でお互いを確かめあったり、直接会って話をしたりということを重ねた上で

主従関係を結ぶことになったとしても、奴隷があなたのことを「ご主人様」と呼んでしま

えばこっちのもの、何をしようとこちらの勝手、溜めに溜めたSの本能を爆発させてやる

なんていう気持ちでいたら主従関係はあっという間に崩壊してしまいますよ。


まず初めにあなたの奴隷をどんな風に育てていきたいかよく考えてください。

どんなところを延ばし、どんなことを引き出してあげるか、もちろん時間と共に変化して

いくでしょうが、何の考えもなしに欲望のまま調教をしたいだけでは「支配」ではないの

です。

あくまでも奴隷を育てる方法のひとつとして調教を行うのが「支配」なのですから。

道具の準備も大切ですが、最初の一歩を踏み出すその前にどうか心の準備もお忘れ

なく。


さて、最初の一歩にあたってひとつ注意しておきたいことがあります。

奴隷があなたのことを初めて「ご主人様」と呼ぶためには、それなりの覚悟と決断が

必要なことはご理解いただけると思います。

もちろん誰もがすべてというわけではありませんが、「ご主人様」と呼ぶことにたいして

の憧れから、そう呼べることになった自分に酔っていることがあります。

「ご主人様」と呼べる人ができたことを喜んでいるのであって、「あなた」がご主人様に

なってくれたことを喜んでいるのではないかもしれません。

ちょっとキツイ言い方をすれば、条件さえ合えば誰でも良かったのかもしれません。

最初はそんなものなのかもしれませんが、たとえどんなに時間がかかろうと、あなたに

出会え、あなたを「ご主人様」と呼べるようになったことがどんなに素晴らしいことかを

教えてあげなくてはなりません。

他の誰でもなくあなただけを必要としていることを心に焼き付けるのがご主人様の役目

なのです。


体を縛る縄はお金さえ出せばすぐにでも手に入りますが、心を縛る縄はお金を出しても

手に入りません。

カバンを膨らませる前に、あなたの心を膨らませてください。