2章 翼の王国 
   9 兎コウモリ、亀コウモリ

ちょっと調べものをしていたら、コウモリの飛翔スピードを測定した論文を見つけました。アメリカのコウモリの話ですが。

コウモリを捕獲しておき、翌晩38mの廊下を飛ばして速度を測定します。一回目は遅めで、続けて何回かやるとコースになれて素早く飛び立つようになり、更に実験を繰り返すとくたびれたのかスピードが落ちてきます。アメリカセイブアブラコウモリやカリフォルニアオオミミナガコウモリは早くくたびれるけど、メキシコオヒキコウモリやサバクコウモリ、シモフリアカコウモリはなかなかくたびれないようです。

コウモリは蝶のように翼をあまり変形させずに早く羽ばたいて飛ぶものもいるし、波状飛行するもの、滑空を交えて直線的に飛ぶものもいます。もちろん個体差というのもあって、同じ種で同じ性で一緒に捕獲されてたものでも時速13kmで飛ぶものもいるし、時速21kmで飛ぶものもいたりします。

アメリカセイブアブラコウモリは、不規則な飛び方をして、15−20mも飛ぶと方向転換してしまうので、速度測定は距離を短くしなければなりませんでした。時速7.7kmで飛ぶこともあり、測定した17種の中で一番遅いコウモリです。

一番速いのはウサギコウモリ・・・じゃなくてオオクビワコウモリでした。時速25km近くを出すことがあります。

オヒキコウモリの仲間は野外ではもっと速く飛んでいると思われのですが、ポケットオヒキコウモリは途中で上にいって天井にぶつかって墜落することが多く、Tadarida molossa(和名が見つからなかったのはなぜ?)は15mといかないうちに蛍光灯の据え付け具に頭をぶつけてしまったりします。こういったコウモリは岩の割れ目や瓦の下にねぐらをとり、飛び出してからいったん下降して揚力を得るという飛び方をするので、この実験方法に合ってないのでしょう。

コウモリの前腕長と最大速度は相関関係を示し、大きいコウモリほど速いといえます。ただし、花粉や花蜜を食べるためにホバリングをするオナシハシナガコウモリは体の割に遅く飛び、このグラフからはずれます。最大種のサバクコウモリも地面近くを飛んで地上性の節足動物を食べるせいか、体の割に遅く飛び、グラフからずれてます。

BRUCE HAYWARD AND RUSSELL DAVIS 1964 Flight speed in western bats Journal of mammalogy 45(2) 236-241

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