翼面加重が高く(翼が相対的に小さい)アスペクト比が大きい(細長い)翼を持つコウモリは効率よい飛翔ができるので長距離を速く飛ぶのに向いています。ヤマコウモリ、ユビナガコウモリ、オヒキコウモリなどの仲間はこのタイプの飛翔をします。ただし高速で飛翔しないと揚力が得られないので、低速でひらひらと飛んで複雑な方向転換をするのは苦手です。また翼が長いので森の茂みの中に入るのは苦手です。開けた空間で高速で飛んで、虫を捕ることになります。また長距離の渡りを一気にをするのにもこのような翼は向いています。なお翼の先端を尖った形にすると重い手根関節を胴体側に持ってきて飛翔コストを減少するので渡りをするのに向いているし、翼の慣性を抑えるので素早く回転できこのタイプのコウモリにとって欠けている敏捷性を補うことができま
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渡る距離が短いのなら翼面荷重はそれほど大きくする必要はないので、アスペクト比は大きいけど(細長い翼)翼面荷重はわりと小さい(翼がそこそこに大きい)ということになります。日本にはいないけどサシオコウモリなどがこれにあたります。またウオクイコウモリなどは開けた水面を飛ぶので細長い効率のよい翼ですが、重い魚を運ぶ必要があるので翼の負担は小さくする必要があり、やはりこのタイプの翼になります。
翼面荷重も小さく(翼が大きい)アスペクト比も小さい(幅広い翼)というのは森の中で採餌するコウモリに多く見られます。ゆっくり飛んでも失速することがなく、翼の形が変えやすいので方向転換も得意でホバリングもできます。また短い翼は素早くはばたくことができるので、地上から飛び立つときにも有利です。ウサギコウモリは地面にいる虫を捕ることも多いのでこのような翼を持ちます。また肉食性のアラコウモリも地面から獲物を持って飛び上がるので、このような翼を持ちます。
ホバリング専門のヘラコウモリ科やオオコウモリ科の花蜜・花粉食のコウモリはアスペクト比が小さく(幅広い、というよりこの場合は翼が短いことが重要)翼面荷重が大きく(小さい翼)なっています。ホバリングははばたきが速いので短い翼の方が肩や飛翔筋の負担が減ります。一方で花から花へ、場合によってはかなりの距離を移動する必要があるので、小さい翼にして高速で効率よく飛べるようにしたのでしょう。コウモリ界のハチドリですね。