2章 翼の王国 
   3 翼の形のバリエーション

 コウモリの翼には様々な形と大きさのものがあり、それぞれのコウモリの採餌方法、ねぐらと採餌場が近いか、渡りをするかなどと密接に結びついています。翼の形は主に2つの特徴で表されます。

 まず体重を翼の総面積で割った値を翼面荷重といいます。この値が大きければ体の大きさの割に翼が小さいということになります。揚力は翼の面積と速度の2乗に比例するので、翼が小さければ揚力を得るために高速で飛ぶ必要があります。しかし翼が小さいほうが、空気の抵抗も小さくなるので省エネで飛ぶことになります。重い獲物をもって飛びあがるのには向いてませんが。
 鳥で言えばツバメやアジサシは翼面荷重が小さいので楽々と飛ぶのに対して、翼面荷重の大きなハクチョウはちょっと重そうでスピードに乗らないと飛べないですよね。

 また翼の縦と横の長さを表すのには、翼開長の2乗を翼面積で割ったアスペクト比という値を使います。この値が小さいと横(左右)が短く縦(前後)が大きい、すなわち幅の広い翼ということになります。この値が大きいと細く長い翼ということになります。(よく考えてみよう)
 2-2で述べたように翼の上面は下面より圧力が低くなるため、翼の先端では空気が下から上に回り込み、抵抗を大きくします。ということはアスペクト比が大きく細長い翼の方がこの影響を受けにくく効率よく飛べることになります。ただしあまり翼が長いと肩への負担が大きくはばたくのには向きません。また森の木が込み合っているような所では長すぎる翼はじゃまです。長い翼を持つアホウドリやアマツバメは広々とした海洋や森の上空を飛び、あまり頻繁にはばたきません。短い翼は素早く羽ばたくことができるので瞬発力は大きく地面から飛び立つのに便利です。

 さて次は、様々な翼面荷重とアスペクト比を組み合わせるとどんな飛び方のコウモリになるのかです。

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