3-4でも触れたように、虫までの距離を正確に計るためにはパルスをできるだけ短くする必要があります。そのほうがパルスとエコーが重ならないし、エコーが返ってくるmsの単位の時間をきっちり正確に測定することができます。ところが3-5、3-6と併せて読んでいただければわかるかと思いますが、ドップラー効果で虫の速度を測るのであれば、波長がいくつか入っているパルスでなければ周波数が変調するのがわかり難いので、ひとつのパルスはなるべく長い方がいいわけです。ということで、獲物までの距離を正確に測定すると速度はわからない、獲物の速度を正確に測定すると距離はわからない、これをコウモリの不確定性原理といいます(あ、冗談です)。
しかし一部のコウモリは量子力学を熱心に勉強した結果(?)、大物理学者ハイゼンベルグが生まれるはるか昔から、一つのパルスの中に虫の速度を測定するために長いCF部分を、距離を測定するために短いFM部分を入れるという方法で解決してきました。これが3-5で述べたCF/FMパルスとかFM/CF/FMパルスです。とはいっても速度測定と距離測定は同時に行っているのではないから、一面にユスリカが飛び交うような中でCF部分で速度を測定した虫が、そのあとのFM部分で距離を測定した虫と同じかどうか、保証はありません。まあそこら辺は前後関係から推察できるんでしょう。