5章 恋の季節 
   8 コウモリの男女関係

 「月に歌うクジラ」の中でBCIの創設者タトル氏が、チスイコウモリモドキ(ヘラコウモリ科)は夫婦で一緒に子育てをし、たぶん一夫一妻で、一生特定の相手と添い遂げるらしい、といっていますが、これはコウモリの中では少数派で、一般的にはオスは子育てには参加しませんし、一夫一妻はほとんどいません。

メスの行動圏とメスのグループのサイズとそのメンバーが安定しているかによって、コウモリの男女関係(?)は決まってくるようです。

 メスの行動圏があまり大きくなくてオスが守ることができるときには、一夫多妻やハレムになります。メスのグループが大きくなると複数のオスが入るグループになることもあります。

 メスの行動圏が大きくてメンバーは安定しているときは、オスはメスを守ってねぐらや餌場を移動することになります。

 メスの行動圏が大きくてメンバーの入れ替わりが激しいときは、オスはメスの行動圏の中に交尾テリトリーを作って、メスが通るのを待ちます。ユーラシアコヤマコウモリは樹洞の中からメスを呼びますし(鳥の囀りみたい)、ヨーロッパアブラコウモリはsong flightを行います(ヒバリみたい)。
 このタイプでメスの密度がうんと高いと、オス同志が隣接した小さな交尾テリトリーを持ってレック(集団求愛場)をつくります。ウマヅラコウモリは、大きな咽頭を持っていて顔が膨らんでコウモリと思えないくらい妙な馬面をしていますが、大きな低い声を出してメスに呼びかけます。川岸に沿って50mに一頭の割合で総計90頭ものオスが並び、通りかかるメスに向かって一分間に50−120回も鳴きながら翼をはばたかせます。なかなか壮観ですね。船で観察してみたいものだ。

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