6章 衣食住 
   1 コウモリは洞窟に棲む

 コウモリと言えば洞窟、洞窟と言えばコウモリというイメージは強いようで、南大東島のコウモリ公園では洞窟をイメージしたトイレに巨大オオコウモリの像がぶら下がっていましたし、あちこちの島で「このへんで大きなコウモリ見たことないですか?」と聞き込みをすると、「洞窟があるから、いるかもしれないよ。」なんて返事を何度も聞きました。オオコウモリはルーセットオオコウモリ属以外は洞窟の奥深くには入らないのですけどね。

 しかし小コウモリは洞窟に棲むものも多いです。コウモリに適した洞窟というのは決して多くないので、巨大なコロニーを形成することが多いです。有名なのはアメリカ合衆国のブラッケン洞窟のメキシコオヒキコウモリTadarida brasiliensisでしょうか。

 一つの洞窟を何種ものコウモリが使っていることも多いです。完全にまざりあって生活していることもありますが、温度・湿度・微地形によって各種が使い分けていることもあります。

 たくさんのコウモリがすみつけば、洞窟の環境も変わります。天井近くの温度は、10℃も上昇することがあるようです。子どもを育てるときに哺育コロニーをつくるメリットももちろんこの辺にあるわけです。
 またたくさんのコウモリがすみつけば、当然その尿とふん(グアノ)が大量に下にたまります。その中に踏み込む時の悪臭とたくさんの虫がうごめく様子が、「月に歌うクジラ」の中に出てきます。特定のコウモリのグアノだけに棲むように進化した虫もいるようです。
 洞窟のコウモリは定着性が高く、一つまたはいくつかの洞窟を、一生使用します。

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