木に棲むコウモリと言えばやはりオオコウモリ。オオコウモリの場合は、枝にぶら下がって葉の茂みをねぐらとしています。大型のオオコウモリにはほとんど天敵がいないので、キャンプと呼ばれる数千頭(万の単位のことも)ものねぐらを形成して、可聴音で鳴くので騒音と臭いはなかなかなものになるでしょう。
小コウモリや小型のオオコウモリにも茂みにねぐらをとるものはいますが、その場合は目立たないように保護色の毛皮をし、あまり大きなコロニーにはなりません。そういえば、木の葉のような保護色のコウモリがいると聞いたことがあったので、どんなものかと思っていたら、
「進化がわかる動物図鑑 モグラ・コウモリ・アルマジロ」ほるぷ出版 監修 柴内俊次 構成・文 ネイチャープロ編集室 2800円+税
に、パラステングフルーツコウモリのカラー写真が載っていました。葉が緑で指の骨に黄色い模様が入っていて、写真では見えないけど背中にも模様があるようです。葉っぱみたいなオオコウモリです。
ところでオオコウモリは結構目立つ模様をもつものが多いです。たとえば日本のクビワオオコウモリも首から背中にかけてかなり鮮やかな黄色ー橙色ですが、これはこれで明暗消去型隠蔽といって、太陽を背景にしたときにとけ込むような一種の保護色です。
樹洞や洞窟と違ってこのような露出したねぐらに棲むものは、小コウモリでも視覚が優れていて、捕食者にしっかり目をくばれるようになっています。ヘラコウモリ科の中には、翼の皮膜に透明な部分があって翼で頭を包んでも外が見えるようになっている窓付きの翼を持つものもいます。ビニール傘かいな。
ちょっとかわったところでは、ヘリコニアやタビビトノキなどの大きな丸まった若葉の中に棲むコウモリもいます。中央アメリカのスイツキコウモリ科、マダガスカル島のサラモチコウモリ科の他ヒナコウモリ科にも何種かいて、みな手や足首に粘着性の円盤を持っていて、葉の表面にぴったりくっつきます。葉が開けばねぐらとして使
えませんから、毎晩のようにねぐらを変えなければなりません。