7章 コウモリの立場
   10 もちつもたれつ

共進化というのは、生物学辞典によれば「複数の種が、互いに生存や繁殖に影響を及ぼしあいながら進化する現象」ということで、コウモリと蛾の戦略戦のようなものも含むかなり広い捉え方をしています。一方で1種対1種が完全に相互依存するような進化だけを指すという考え方もあります。

1種対1種の密接な関係というのは、大変不安定で、片方の種が減少すれば必然的にもう一種も減少し絶滅につながることになります。実際は生物どうしの相利共生には複数の種が関連していることが多いのですが、1種対多種または多種対多種が影響しあって進化した場合は拡散共進化と呼びます。

植物食コウモリと花粉媒介や種子散布される植物の関係も、普通は拡散共進化で、コウモリの花粉媒介で有名なドリアンも、実際はオオミツバチや鳥も花粉媒介しているようです。

また、コウモリが花粉媒介するのでバットフラワーと呼ばれるパンヤノキ属やマメ科のParkia属の植物も、オオコウモリやヘラコウモリが進化する前から旧世界にも新世界に存在したことがわかっており、もともとコウモリ以外の生物の花粉媒介に適応していたのが、コウモリの進化によって花粉媒介者が変わったわけです。このような関係は前適応といいます。

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