辺境周辺機器
 PCを使い始めると・・・特に画像関係の目的でPCを使おうとすると、本体以上にソフトや周辺機器に投資する金額が増加するものである。
 ワシが自分のためにFFTソフトを開発したのはここに詳しいが、ハードウェアは完全に自作することなど不可能なので、 いきおい市販品を購入して利用することになる。
 しかしながら、その製品が自分の目的に完全に合致しているものであれば文句ないのであるが、そうは問屋も業界再編な世の中。なかなか目的とは整合しないものである。
 だが! このようなハードウェアも、ちょちょいと工夫することで大変便利なものに生まれ変わることができるのだ。
 ほら、小中学校でよく習ったではないか。「創意工夫をしてみよう」とか。
例えば、歯ブラシの柄を曲げることで奥歯の隅々まで行き届いて歯を磨けるという事例であるとか。
鉛筆の上に消しゴムをつけて便利にするとか。
 という訳で、今回はワシのPC周辺機器についてのプリティな工夫をご紹介しよう。
用意するもの などなどだ!
ただし、ハード改造等は個人の責任に於いて実施のこと。
Try your own risk!

2台のPCを使おう!
 前回の研究室ではCeleronのクロックアップでいろいろPC改造した経緯をご報告した。あと、メインのマシンが1台あるので、現在PCとしては 2台のPCを並べて使用している。これらのマシンはルータとHUBで相互に繋がれているので、データの流れというものはすでに確保された状態である。
 ところが、問題となるのは、この2台のPCをどう扱うかである。モニタ、キーボード、マウスを2台用意するのは、経済的負担以上に場所の問題があり、 とても容認できるものではない。カッコいいけど。

 思えば、幼年期には特撮番組で秘密基地のコンソールが出てくるたびに胸をワクワクさせていたのう。なにかわからん記号を見てしたり顔で悩む技術系隊員に 自分の未来を重ねていたものだった。ところが、世の中変わったもので、あのときの空想のマシンより遥かに強力な電子計算機なるものが、マイPCとして 自由に利用できる世の中になったのであるから、いい時代になったものである。
 だが、あの当時に合理的と思われたコンソールデザインを自宅の机の上に展開するのはちょっとムリな話。そんなことしたら机の上はモニタとスイッチ、キーボードで 埋め尽くされてしまい、作業スペースが無くなってしまう。

 そこで登場するのが、冒頭に掲載した写真のPC切り替え器だ。この切り替え器は、4台までのPCのモニタ、キーボード、マウスを切りかえることができる。
え?なぜ4台用の切り替え器にしたのかって? それは、この切り替え器が

キーボード操作でPC切り替えが可能

という優れた機能をもっているからである。(1998年当時)

 喜びいさんでこの切り替え器を入手し使ってみたところ、このマシン(CS124)には重大な欠点があることが判明した!

画面に色ムラが発生する!
のである!

 これがCS124の購入直後の画面。薄青の色ムラが画面の左側に見られる。 しかも、いろいろ表示画面を変えて確かめたところ、この色ムラは

表示される画面内容の色に影響受ける

ものであった。まるで、受信状態の悪いTVアンテナで見ているような画面なのである。
 この原因はなんとなく推察できる。つまり、ビデオ回路になにか不具合があるのだ。キーボードやマウスなどは問題無く切り替わるので、 ビデオ回路にクォリティの低い何かが存在しているに違いない。しかも、画面の色に影響を受けるので、アナログ回路の貧弱さが推察できる。

 そこで、中身を空けてみて愕然。ビデオスイッチにICのクロスポイントSWを使っているのだとばかり思っていたら、なんと

ダイオードSWと貧弱な電解コンデンサ
を使っていたのでした!

PC切り替え器中身

ダイオード式Video-SW
 4台分のPCからのビデオ信号をダイオードでON/OFFし、カソード側に出るビデオ信号を電解コンデンサでカップリングして、 Trフォロアでそのままケーブルに出力するというチャチなもの。
 これじゃぁ正しい色は出ませんなァ。色ムラが出たのは、電解コンデンサの容量と損失のために信号レベルが変化したためです。
しかも、リニアリティとか考えない、思いっきりプリミティブなアナログ回路で組んである!


 ちょっと頭にきたので、この部分をそっくり作りかえることに決定。 ビデオSWのICもいいが、けっこうパワーを食うものが多いし 基盤のGNDもどれだけ安定か心配だったので、ここは単純にリレーで切りかえることにした。
リレーの制御信号を、先のダイオードSWの制御信号からもらえば動作する訳だ。リレーは普通2接点なので、結局2台のPC切り替えしか できない事になる。まぁ、PCは当面2台だけなので、この仕様でノープロブレムなのだ。

 あと、ビデオ信号は高周波であるため、いきなり裸線をつかって配線すると却って画像が劣化してしまう。そこで、モニタ用ケーブルを バラして、内蔵の同軸部分を取り出して配線してみた。

改造PC切り替え器

配線は同軸ケーブル
 内部にリレーを設置し、2台のPCからのRGB信号をリレーで切り替えてそのまま出力するもの。
バッファはないが、これがもっともシンプルな方法だろう。
 こうして、PC切り替え器は所望の性能を得、2台のPCはキーボードから指先ひとつで切りかえることが可能になったのでした。
 改造後の画面。色ムラと、あと字のにじみも減少し、クリアな画面となった。
・・・・とか言って、こっちの回路のほうがよりプリミティブじゃん。


複数のプリンタを複数のPCで使おう
 また、プリンタの事情というものも説明しておかねばなるまい。
諸兄もご存知の通り、最近はいろいろな種類のプリンタが販売されており、概してその画質は写真画質相当まで高められている。ところが、プリンタの印刷方式 というものは、けっこう根深い根本的な性格のちがいというものがあるのだ。

 非常になめらかな写真画質を誇るインクジェットの場合、その画面は明るく美しい。しかし、水溶性インクを利用している関係上 印刷物が水に弱いという性質がある。また水が染みこまない媒体への印刷も不可能なのだ。

 同じような写真画質プリンタに「熱昇華型」というものがある。これは、インクに熱を加えることで蒸気の形に放散させ、印刷したいものに定着させる 印刷方式なのだ。何にでも比較的良好に印刷できる反面、ランニングコストが高かったり、リボンを使う場合はマッハバンドという縞模様が現れることもある。

 さらに、これらのプリンタよりも高速・大判印刷が可能なものとしてレーザープリンタがある。ランニングコストも前者にくらべて安価である。
A3のような大判の紙面を高解像度で印刷できる一方、普通はモノクロ印刷のみが可能なプリンタだ。
カラー化するには本体・トナー含め、インクジェットなどよりも コストアップしてしまうという弱点がある。

 つきなみCOMICSでは、これらのプリンタにどういうわけかこだわっており、現状これら3タイプのプリンタを所有している。
これらを2台のPCから自由に使うという要求がある場合、いったいどうすればいいのだろうか?

 それには、コレを使えばいいのだ!
 日本プラネックス社の超小型プリンタサーバ。
セントロニクスI/Oのプリンタを、ネットワークプリンタに変身させることができる優れものだ。
 これは、システムの持っているプリンタポート(通常は「パラレルポート」と呼ばれるもの)をNetBEUIプロトコルの上に 構築するもので、システムから見ると「仮想プリンタポート」が見えることになる。あとは、プリンタの出力先ポートを このプリンタサーバにすることで、ネットワークを意識せずともプリンタを自由に使うことができるのだ。
(設定はちょっとわかりにくいけど)
 また、よくあるプリンタユーティリティのようなプリンタ間双方向通信を使うアプリには対応していないのも注意すべき点であろう。
・・・・・うーん、半田ゴテの出番はなかったのう。

タブレットを落札してみよう
 PC486-GRの時代から使っていたWACOMのタブレット・ArtPadIIの調子がいまいち良くない。
おかしな発熱で長時間つかっていると手のひらが気持ち悪くなるほかに、ペンの筆圧感度が変わってしまうのだ。
 で、世の中の現状をしらべると、すでにタブレットは4世代ぐらい進化してしまっており、WACOMの現行機種でよさそうなのはIntuos(インテュオス)というタブレットである。
これは筆圧感度段階が1024もあり、さらに傾き検知回路も内蔵していて非常に現実のペンに近いニュアンスを有する入力用ペンデバイスなのである。

 だが、いいものだけあって価格も高い。予算がないのでなるべく中古でと調べても、タブレットの中古市場というのはどうも存在していないようなのだ。
 唯一、Yahoo!などのオークションに出回っているのが第三者が目をつけやすい中古市場なのである。(2001年5月現在)

 そこで、そのオークションをしばらく見ていたところ、通常相場の1/4で落札できるタブレットを発見!これは今を逃せば再びチャンスは巡ってこない!・・・・
・・・・という訳で、くだんのタブレットを入手したら、これがなんと

ペンが安定せずにフラフラ動き回る
というシロモノなのであった!(T_T)


 こんなカンジでふらつくタブレットのマウス。

したがって、横線を引くとこんな感じに線が波打つ。
 こりゃぁあんまりといえばあんまりだが、やはり超格安でゲットできただけの事はある。こういうのを、安物買いの銭失い というのだろうか・・・

 ・・・とか考えても、どうにかなるものではない。例によって諦めの悪いワシとしては、「どうせ安かったので壊れてもともと」 という、かなり危険な領域に足を踏み入れようとしていた・・・・つまり、

直せるものなら直す

という冒険である。せっかく安くゲットしたのだから、修理に出すのも悔しい。きっと、このオークション出品者は、修理代が高くて修理を諦めたのかもしれない。 修理に出すより新品を買ったほうが安い、という昨今の製品にありがちなジレンマである。

 さて、こっちとしても冒険するにはある程度見通しが必要である。タブレットとは、ペンの電磁結合によって位置情報を得るデバイスなので、このふらつきは やはりアナログ部分に関する問題なのであろう。 しかも、これはコモンモードノイズのようなハムによるものかもしれない。すると、まずはオシロスコープが必要だ。 アナログ回路の定数に関するものや、部品に関するものは対処できないので、多分電源周りの改修しかできないだろう・・・・

 という訳で、おもむろにタブレットを分解、オシロで観察してみると・・・
 タブレット基盤をオシロで確認中。
タブレットの電磁コイルはプリント板にパターニングされたもので、これをアナログSWで切り替えスキャンしている模様。
このパルス信号をアナログ化し、ADCにてディジタル化しているようだ。

 ちなみに、オシロは40MHz-2chでジャンクをただでゲットしたもの。
こんなんばっか。(^_^;)
 特に、アナログフィルタとおぼしき部分の電源パスコンにノイズが乗っていて、これがビートとなりマウスの位置座標がふらつくのであろう。
根本的に解決するのは、回路GAINを上げる・・・信号レベルをあげるのが良いのだが、回路が不明だしICもカスタム品なので、ここは対症療法しかない。つまり、 ノイズを極力おさえる改造をするのだ。

 というわけで、まずはパスコンの強化。オシロでタブレットの調子をみながら追加していく。これでだいぶ安定してきたが、手持ちにフェライトビーズなどの ノイズ対策部品がないので、あとはシールド板によるノイズ対策を実施する。
 このレベルになると、ノイズの主な原因はPCモニタの水平同期信号になってしまっている。タブレットは磁気結合で作動するので、 CRTチューブの駆動磁界の影響を受けるのだ。
 こればかりは回路のゲイン調整でないと対応できない。もはや打つ手無し、万事窮すか?・・・と思ったら、

モニタの解像度や周波数を変えて干渉しないようにすればいいじゃん!

ということで、なんとか,格安ジャンクタブレットは実用レベルまで復帰することができたのであった。

改造した基盤。
パスコンとシールド銅箔で対応。
(ほんとは電源ICも変えたい)

改造後のライン。
 CRTに近いところは1ドットぐらいふらつくが、まぁ良しとしよう。
これ以外のタブレットの問題はなく、1024レベルの筆感は思った以上で、同じPainterの線がArtPadIIとは段違いである。

ということで
 PC本体だけでなく、PC周辺の辺境の地にはいろいろと魑魅魍魎が潜んでいるのがおわかりになったであろう。
しかも、PC本体と違い、CPU帝国主義な世の人々はこのような辺境の地にはいたって関心が向かないのも事実である。
今回のレポートが、諸兄のPCライフの一助になるのを願いつつ、このレポートを終えることにしよう。

 ちなみに、前回のPC 1号(PentiumII/266MHz)と2号(Celeron300A/465MHz)マシンは、PIII/800とCeleron/800EBになってるよん・・・・
って、コイツもCPU帝国主義者か!

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