PC2号機(Celeron)製作
 このごろCPUが熱い話題である。 IntelのPentiumIIやそれに対抗するAMD-K6等、我々ユーザーもその動向に ヒータップする毎日である。そんな中で、Intelから廉価版のCPU、「Celeron」が登場した。
 なんと、この風邪薬とも目薬とも言われるCPUは、Intelの放ったSocket-7潰しの最終兵器なのだ!
「PentiumIIコア+L2キャッシュなし」という構成によるその性能は、どうひいき目にみてもK6やMIIに見劣りする ものであるのだが、その実体は、オーバー400MHzで疾走可能な韋駄天(celerity)そのものなのだ!
高価な PentiumII 400MHzに手が出せないキミもボクも、ちょっとしたリスクを負うことで400MHzの世界を垣間見る ことができるのである!
ただし、クロックアップ改造等は個人の責任に於いて実施のこと。
Try your own risk!
製作方針

 さて、Celeronがクロックアップ耐性が非常に高い事は、'98/06あたりからちらほら噂が飛出していた。 スペックでは平凡な266MHz駆動(とは言っても、すっぴんのPentiumよりは格段に高速だが)なこのCPUの秘密は、 その「オーバークロック耐性」にあった。なにしろ、

ほとんどのLot品で400MHzで動作するのだ! (メーカー保証外)

 くぅぅ、こいつはグレートだぜ!夢の400MHzがななななんと今なら2万円以内であなたのものに(なるかもしれない。)
これを活かす構成としては、

という構成が基本となる。
BXマザーは、ベース100MHzが可能な基盤であり、これがないとそもそも400MHzというクロックを 発生させる事ができない。
メモリはベース100MHzに対応したものでなければならない。もちろん、安価なものも100MHzで動作すると思われるのだが、 さらにその先を考えた場合、PC100に対応しているのが望ましいだろう。

 AGPはmustではないが、やっぱり

とりあえずなんか、イカス感じ

というキモチを大切にしたいなーなんて思ったりしてみたから。むろん、これから発表されるスプレンディッドなビデオカードは すべからくAGPであるという計画的下心があるのも賢明なる諸氏は察しておられるであろう。

 かんじんのCPUは、Celeron 266リテール(Lot.SL2QG コスタリカ産)である。Celeronのクロックアップ指標として、 このLot番号と産地名が非常に重要である。この QG品は、なかでも耐性の高いLotなのであった。
この辺の事情は、Celeron World に詳しい。Celeronマシンを組上げるなら、事前にここを覗いておく事をお薦めする。

冷却について

 この夏はラニーニャの影響でだいぶ涼しかったが、PC筐体の内部はそうもいかない。なにしろ、今のCPUは20W近くの熱を 発生するのだ。しかも発熱量はクロック周波数に比例するので、オーバークロックでは30Wにも達してしまう。

おまえはハンダごてか!

っていうか、PC筐体の中に半田ごてを通電状態でセットするようなものである。しかもこれをファンやヒートシンクで「人膚」程度に 冷却しなければCPUが知恵熱を出してハングしたり暴走してしまう。実に難儀なヤツだ。

 そういう訳で、今回は始めから冷却を重視した製作に取組んだ。何しろ、そのために実験と論文も表してしまったほどである。


  CPU高速化における熱問題について

 この論文では、Celeron 266 でのクロックアップ時の発熱を実験し、将来展望について語っている。これだけ見ると スマートでクレバーな印象をもたれよう。しかしながら、白鳥は水面下では必死に水を掻いているが如く、まこと栄光の実験結果の 影には名もなき忍者の姿試行錯誤の日々があったのだ、サスケ!

ヒートシンク実験 Stepping 1

 では、今回実験したヒートシンク等についてコメントしていこう。
1.
Celeron 266 のリテール品。標準でついてくるヒートシンクとファンの様子。
あとで解った事だが、下手な市販品のヒートシンクをつかうより、このヒートシンクの冷却性能の方が 高かった。
ただし、購入したものでは、シリコングリースの塗りがいまいちなので、より密着度を高めるように ぬりなおす事がベターである。
温度 : 44℃程度(CPUコア部分)
     37℃程度(5cm FANによる強化時)
2.
AAVID PentiumIIヒートシンク+Cuカバー+吸排気FAN
剣山ファン(3,の写真)の回りに銅板で囲いを作り、ファンを2基設置。
CPUがとてもあたたかくなりボツ。
温度 : 47℃程度(CPUコア部分)
3.
AAVID PentiumIIヒートシンク+吸気FAN
写真2の中味。これにFANの風を直接当てるほうが冷却効果が高かった。
白い部分は、CPUコアの温度を測定するためのサーミスタ。
上記論文発表品がこれ。
温度 : 37.5℃程度(CPUコア部分)

ヒートシンク実験 Stepping 2

 そうこうしているうちに、Celeronに次世代のCPUが登場した。

Celeron 300A(Mendocino)である。

上がCeleron300A、コード名 'Mendocino'だ。
下側は Celeron266(COSTA)である。コア部分のプレートの大きさが異なる。


 このCPUは、CeleronでネックとなっていたL2キャッシュを128Kbyteだけだが内蔵したもので、サイズ的にはPentiumIIの1/4の容量である。 しかし!その駆動速度はCPUコアと同じ周波数であり、場合によってはPentiumIIよりも高速に動作するのだ!
これを、アキバで98/08/27に(まだCeleron333との価格逆転現象が起る前に)ゲットしたワシは、速攻で動作チェックを行なってみた。 その結果は、
イケソウである!

SL2QGで不可能だった450MHzオーバーの動作も、コア電圧を2.2Vにすることで安定して作動する事が判明したのだ。
こうして、ワシはSL2QGに代って、SL2WM 98330569 (マレーシア産)のCeleron300Aに乗換えたのである。
(このコア電圧変更等の情報も、先出のCeleron World に詳しい。)

 こうなると、冷却方式も再検討しなければならない。安定動作へのチューニングをするにはどうすればよいか。ここでワシは CPUに負荷のかかる FinalReality ベンチマークのループにより、CPUコア温度がどのように変化するかを測定し、これをもって ヒートシンクの性能指針としたのである。

 そしてこのグラフが、各種条件下におけるコア温度上昇の様子である。


 横軸がFinal Reality回数、縦軸がコア温度。 ref.が 実験3のAAVIDの放熱器における温度上昇の様子だ。
その他、もろもろの実験を重ねていった訳だが、おもに4つのグループに分けられる。
  1. 44℃系 : 450MHz AAVID放熱器またはRetail放熱器
  2. 42℃系 : 463MHz ケース排気穴の拡大
  3. 40℃系 : 463MHz Retail強化ファン
  4. 37℃系 : 463MHz ペルチェ放熱ユニット 'xeon'
といった所か。なんと、この実験ではついに

クロックアップ界の麻薬・ペルチェ素子

を採用してしまったのである!
 なぜ麻薬かというと、論文でも触れたが、この素子はあくまで自己消費電力の半分までの熱量を輸送できる熱輸送素子 であり、それがたまたま冷却に利用できるものなのだ。 つまり、本質的には発熱素子であり、より高度な放熱のテクが 要求されるのである。

ペルチェ放熱ユニット 'Xeon'

 このペルチェを駆動するためにワシが開発したのが、ペルチェ放熱ユニット 'Xeon'である!
これは、「パーシャル冷却方式」ともよべるもので、CPUからの発熱の大半は従来のファン型ヒートシンクで放熱 するのだが、最後のひと冷却をCPUコアにつけたペルチェで行うというものである。

 これを実現させるため、ユニットの核となる部分に厚さ2mmの銅板を使用した。この銅板をCPUとペルチェ素子で はさみこむ。銅板が大半の熱を放熱フィンへ逃がし、ペルチェで最後の冷却をおこなうのだ。
 この方式だと、ペルチェが室温よりも冷える場合では、逆に銅板がペルチェに熱を供給するので、結露も起こりにくく、 ペルチェ・コントローラも不要となるのである。また、ペルチェも小電力用のもので十分なので、PCケースの内蔵電源でも 動作させることができるのだ。

 欠点としては、カリカリにオーバークロックするための冷却には間に合わないところであろう。


 で、なぜ'Xeon'なのかというと、

サイズが PentiumU Xeonそっくりだから

という安直なものであることは、Xeonの写真をみていただければわかるであろう。

これが HeatSink 'Xeon'だ。ファンは表裏併せて4つある。下の黒い部分はリテールのファンであり、この部分は市販のファンと2段重ねになっている。 'Xeon'の斜視図。この下方の銅板部分にCeleronを装着する。銅板は東急ハンズで調達した。 'Xeon'をPCにセットした所。奥側の2段重ねファンは音が静かなものにしてある。

 この放熱ユニットの能力は、CPUに重い負荷となるベンチマークテスト・FinalReality 1.01連続試験にて、 到達温度が 36.3℃ という程度である。 しかし、ユニット消費電流は、ファンとペルチェ併せて 2[A]であり、 しかも静音ファンにより静かというメリットが大きい。 とくに、ペルチェ用ヒートシンクを冷却するファンは、リテールのファンと通常のファンを 組合わせた2段重ね構造としてある。ファンを2段重ねにする事で、風量を稼ぐ事ができるのだ。さらに、リテールファンは通常のファンと回転方向が 反対なので、2段重ねにした場合、ターボファンの原理により静かでより大きな風量を得られるのだ

では、ベンチマーク結果は

 こんな風にイロイロやって完成したのがこのPC2号機だ。(安易に「弐号機」としない所に、ワシの試作機命名の歴史を感じでくれ給え)
これが PC2号機と昨年('97)作成のPC1号機だ。中央のルータとHUBで相互に接続されている。 PC2号機の目玉・白いPOWER・LEDと青いHDDアクセスLEDだ。青いLEDはだれかが使っていたような気がしたが、 白いLEDは多分PC業界では世界初の試みであろう。 2号機のエンブレム。つきなみCOMICSのマークも誇らしい。
 では、だれもが関心をもつ本機のベンチマーク結果を公開しよう。

★ ★ ★ HDBENCH Ver 2.610 ★ ★ ★
使用機種
Processor Pentium II 463.8MHz [GenuineIntel family 6 model 6 step 0]
解像度 1024x768 65536色(16Bit)
Display Matrox Millennium G200 AGP
Memory 391,900Kbyte
OS Windows 98 4.10 (Build: 1998)
Date 1998/ 1/18 20:51

SCSI = Symbios Logic 8600SP PCI SCSI Adapter; 53C860 Device
HDC = Intel 82371AB/EB PCI Bus Master IDE Controller
HDC = プライマリ IDE コントローラ (デュアル FIFO)
HDC = セカンダリ IDE コントローラ (デュアル FIFO)

A = GENERIC NEC FLOPPY DISK
C = GENERIC IDE DISK TYPE47
D = GENERIC IDE DISK TYPE80
E = QUANTUM FIREBALL1080S Rev 1Q09
F = QUANTUM FIREBALL1080S Rev 1Q09
G = TATUNG CD-1624E Rev 9.31

ALLTextScrollDDReadWriteMemoryDrive
22164375772981350210591638745219379560527824354C:10MB

Final Reality 1.01  4.39

Superπ        4:01

といったところか。残念ながら、今回のマシンは夢の504MHz動作はムリだったが、Celeron266では不可能だった 463MHzが達成でき、ワシ的に満足である。


で、結論としては

504MHzはダメだったが、やっぱCeleronっス

むう、やっぱりまだ心の中に未練が・・・
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つきなみCOMICS PC(Celeron)
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