これがM-V-5打上の全タイムスケジュールボードだ! ホワイトボードに記されたマークやポストイットがアナログというかアナクロというか・・・
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NASDAがフォン・ブラウン−NASAの流れを汲む液体ロケットエンジンによるロケットが主体であるのに対し、
ここ内之浦は東京大学の糸川秀夫教授によって生み出された固体ロケットモーターによる固体式実用型惑星間ロケット の総本山なのである!
言ってみれば「星まで届くロケット花火」というべきか。
なんとこのM-V(ミュー・ファイブ)ロケットは、構造的には諸君が駄菓子屋さんで購入する一本10円のロケット花火となんら変わるものではない。
しかしながら!それに日本人の英知と技術と心が結集すれば、液体ロケットと比べてもなんら遜色の無い惑星間ロケットに仕上がるのだ!
今回もまた宇宙作家クラブの取材ということで、ワシもその末席に加えていただいた。
諸君も、この「裏山でちょっくら星までロケットを飛ばしてくらぁ」 という粋な科学を堪能してくれ給え!
(今回もデータを一時にアップできないので、不定期に内容が変わることをあらかじめお断りしておきます)
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今回も宇宙作家クラブ(SAC)の活動としてのM-V-5号機の打上取材である。
ワシは種子島へはなんというか奇縁もあって3回も足を運んだのであるが、今回の内之浦ははじめての場所である。
初めての場所では移動の足も土地感もおぼつかないとあって、東京から鹿児島まで車で強行するSACチャーター便に便乗することとなった。
打上は2003年5月9日13時28分だが、5月7日に電波テスト(ロケットを格納庫から出しての打ち上げリハーサル)が行われるとあって、
5月6日の午前中には東京を出発しなければならない。
まずは中央高速→名阪高速→山陽高速→九州自動車道→鹿児島という、延べ20時間にわたる自動車移動からスタートしたのであった。
宿泊地は内之浦にあるコスモピア。 宇宙関係者の定宿みたいである。
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今回の参加メンバーは、
- 相場二郎(羅須地人鉄道協会)
- 江藤巌(SACメンバー/宇宙開発評論家)
- 大喜戸千文(SACメンバー/編集者)
- 黒崎薫(作家)
- 笹本祐一(SACメンバー/作家・シナリオライター)
- 松浦晋也(SACメンバー/記者・ノンフィクションライター)
- 牧野知宏(角川春樹事務所)
- 森奈津子(SACメンバー/作家)
(順不同というか五十音順的)
とワシの計9名という陣容になった。 全員がすべてチャーター車での同時移動ではなく、飛行機やバイク!(松浦氏)による現地集合といったほうが適切であろう。
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今回のM-Vロケットの打上には、幾つかの目的がある。
最大の目的は、工学実験探査機であるMUSES-Cを惑星間航行軌道に乗せ、探査機を小惑星1998SF36にランデブー、小惑星のサンプルを
採集し地球へ持ち帰るという壮大というか無謀?というかすごい計画なのである!
何が凄いかというと、他の天体のサンプルを地球に持ち帰るミッションは、まだアポロ月探査ぐらいしか行われていないのだ!
他の惑星への探査機着陸や土壌・大気ガス分析はアメリカや旧ソビエトが行っているが、実際にモノを持ち帰ったのはアポロ計画ぐらいしかないのである。
それを、日本の、タダでさえ資金の無い宇宙開発分野で、更に輪をかけて資金と設備がショボイISASがやるというのが、スゴイんである。
このMUSES-Cには惑星間航行用のイオンロケット(イオンを電界中で加速して噴出させるもの)が搭載されており、太陽電池にて集めた電力をこのイオンロケットに流して航行するというのも新しい試みである。
もう一つの目的は、前回の2000年2月10日に失敗したM-V-4/ASTRO-E打ち上げの雪辱戦というものである。
この失敗はここに詳しいが、1段目ロケットノズルのスロート(のど)を構成している
トーラス状グラファイト部材に混入した微細な欠陥(気泡と考えられている)によりノズルが破壊され、ロケットの速度が不足したために衛星を軌道に投入することが
できなかったのである。
今回のM-V-5では、このグラファイト素材(黒い陶器みたいなもの)をカーボンファイバ複合材に変更し、このような脆性破壊が起こりにくい改良を行っている。
トピックとしては、このMUSES-Cに搭載されたターゲットマーカ(ボール状の風船のようなもの)に、全世界88万人の名前を記入したプレートが貼付されていることであろう。
このターゲットマーカを小惑星に「付着」させ、それを基準にMUSES-Cが「自律的に」小惑星に接近、サンプル回収を行うのである。
車で20時間走り抜けた我々は、翌朝の6時半にコスモピアの駐車場に到着した。
みると、コスモピアの中から的川先生やISASの関係者がバンに乗り込む所であった。
「そうかぁ、朝早くから大変だなぁ」
などと宿で休憩していた我々だったが、取材時刻の9時に宇宙観測所施設に来てビックリ。
なんと、折からの雨で電波テストではロケットをすぐに格納してしまったとのこと。
確かにロケットが雨に濡れていい事はないのである。でも、もしさっきのロケット関係者のバンと共に観測所へ来ていたら・・・・・・・
くぅぅ、もったいない!
さぁ〜て、ではお待ちかねの鹿児島宇宙空間観測所(KSC)の中をツァーしてみるとしよう!
Mロケット発射管制室。 打上までの管制をする。
折りたたみ机・・・PC98FA・・・事務用イスがなんとも・・・・
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かつての管制室。現在は観測データ集計など。 年季の入ったコンソールが・・・
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NASDAのPSTに相当するMロケット発射装置。
ここからワンダバスタイルな感じでロケットがw
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34mレーダー。 やはり基地にはパラボラが基本です
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34mレーダー室。打上後の管制をする。
ここは新設なので綺麗だが、前回のM-V-4の時はボロボロの施設だったそうだ
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・・・・なんか画面が16進ダンプリストなんですけど
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これはパトレイバーヘッドではない。
かつてはここから打上観測をしていたもよう。
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展示館の近くにあるうち捨てられたようなケーブル束。 だが、これは現役運用中のもの!
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KSCの普通の施設の一部クローズアップ。
えーと・・・・・ベニヤ? 剥がれてる?
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イイ感じで錆びてる"CONTROL SYSTEMS CENTER"
なんか台風の時には雨漏りもしたそうな・・・
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さて、賢明な諸君はもうおわかりであろう。
この内之浦のロケット基地、
なんつーか・・・・廃墟?!
と言っても不思議ではない建造物がそこここに。しかもそれが「現用の建物」なのだ!
ここを見学したNASAの職員もビクーリしたというのがこの内之浦・宇宙観測所なのである!
話には聞いていたが、種子島のピカピカのNASDA施設に比べ、実に文字通りのワビサビ溢れる宇宙基地というのがここ内之浦なのである!
NASDAでさえ、NASAに比べれば数十分の一の予算なのに、それよりもさらに低予算で行う宇宙開発・・・
いや、予算が全てなのではない。 この草に埋もれ、蔦が絡み、カエルの声も聞こえる野趣あふれる宇宙基地は、宇宙に手を伸ばす人間の意志で保たれているのだ。
このガッツある内之浦の宇宙野郎共を豊かな食とあたたかい心で支える内之浦もまたスゴイところなのだ。
お奨めと称されるラーメン屋のメニューは「大」 「中」 「小」 「めし」!
しかもンんまいの。
ロケット野郎があつい議論を重ねたというスナックの名前は・・・「ニューロケット」!
おすすめは「ロケット定食」!
・・・・どうです、興味湧いてきたであろう!?
というわけで、発射の画面・・・
となるわけだが、今回は前回失敗したビデオ撮影の雪辱を晴らすためにデジカムを準備、その撮影に集中していたのである。
で、うまいこと一段目切り離し→2段目点火まで撮れたのだった。
しかしながら、そのテープは今取材チームでのベスト版作成のために貸し出し中なので、写真的にはこれだけしかない。
割目して動画を待て!
しかし、M-VロケットとH-IIAの違いは、なんといっても
発射時の加速度
である。あっという間に飛んでいくという感じで、ロケットのダイナミックさを感じられるだろう。
(このほかの情報も随時拡充していきます。)
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