From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 11 May 2003 19:40:37 +0900
Organization: So-net
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石崎です。
例の妄想スレッドの第170話(その7)です。
(その1)は、<b4eq3c$scr$1@news01ch.so-net.ne.jp>
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# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そう言うのが好きな人だけに。
★神風・愛の劇場 第170話『二つの故郷』(その7)
●枇杷町・山茶花本邸
弥白が住む屋敷の上で一睡もせず、トキは夜を明かしました。
夕食だけで帰って来るとは思わなかったものの、まさか一夜を過ごしてくると
までは予想していなかったトキは、余程セルシアは疲れていたのだろうと思いま
す。
夜が白々と明けてくる頃、頭の中にセルシアが囁きかけてきました。。
”トキ…トキ!”
”遅いですよ、セルシア”
”ごめんなさい…ですですぅ”
自分のセルシアに対する想い。
それを心の奥にある結界の内側にしまい込み、敢えて少しだけ厳しい口調でセ
ルシアにトキは注意しました。
何と言ってもここは天界では無く人間界、しかも魔界側勢力に包囲された状況
であるのだから、余り甘いことは言えない。そう考えているトキでした。
*
トキがオルレアンへと戻って行った後、屋根の上に座りオルレアンの方角をじ
っと見続けていたセルシアの背後に、音も無く何者かが忍び寄りました。
余りにも静かにそれは舞い降りたため、セルシアが気づいた時にはそれは直ぐ
後ろに立って、自分を見下ろしていたのです。
「セルシア」
声をかけられ、最初にセルシアに現れたのは驚愕の表情。
しかしそれはすぐに喜びの表情へと変化します。
そしてセルシアはそれに抱きつき、その名を呼ぶのでした。
「フィンちゃん! 久しぶりですですっ!」
●桃栗町西部郊外・ツグミの家
夜も明けきらないうちに、レイとミナはむっくりと寝台から起き上がりました。
手早く身支度を整え、忍び足で廊下を歩いて行く二人。
今日は朝一番で本日の作戦行動のための会議があるのです。
最初、ツグミには置き手紙だけ残して出て行くつもりでした。
しかしツグミがそれを読めないであろうことに気付くと、何も言わずに出て行
くことにしたのですが、玄関でツグミに声をかけられました。
「おはよう。早いのね」
「おはよう。起こしてしまったな」
「いえ、もう大分前に目を覚ましていましたから」
本当は一晩中眠れなかったのですが、もちろんツグミはそれを口にすることは
ありません。
「そうか。実は、朝一で仕事があってな、もう帰らないといけないのだ」
「せめて朝食を」
「済まないが、時間が無いので」
「うん。ホットケーキと夕食、ありがとう。お礼はまた改めて」
「そんな…。私の方こそ、昨日はありがとう。あ、そうだ。ちょっと待ってて」
そう言うと、一度キッチンに引っ込んだツグミは、以前自分宛に届けられた遊
園地の招待券を持って戻って来ました。
「これ、余っているんです。良かったら使って下さい」
ツグミに贈られた遊園地の招待券は、都合5枚入っていました。
そのうちの1枚を全に渡して一緒に行く約束をしたので、残りは3枚。
全にお友達やお父さんにと言い、残りを全部引き取って貰おうとしたものの、
適当な相手が”この地”にはおらず、お父さんも仕事で多分無理だと言われ、結
局余ったままでいたのです。
「水無月ギャラクシーワールド?」
「はい。今度の金曜日にリニューアルオープンする遊園地の当日のみ有効の招待
券です」
「ツグミは行かないの?」
「友達と私の分は取ってありますから、この二枚をどうぞ。貰い物ですから、遠
慮しないで」
「しかし…仕事…」
「遊園地かぁ。行きたいな…」
うるうるとした目をして、ミナが言うとレイは悩みつつも結局はチケットを受
け取るのでした。
*
客人が家を出た後で朝食を摂っていたツグミは、窓の外に何者かが舞い降りる
気配を感じ立ち上がりました。
「ツグミ」
「アクセスさんね」
窓を開け、アクセスを招き入れたツグミは、彼の分の朝食も用意しました。
朝食の支度が出来ると、アクセスはそれに箸をつける前に言いました。
「あの二人、この家に泊めたのか? 匂いがする」
「ええ。日が昇る頃に仕事があるって帰って行ったわ」
「…で、どうだった?」
「どうって?」
「あの二人が天使かどうかってこと」
「ああ、そのことね」
「天使だった?」
「いいえ。ちゃんと、人間だったわ。触って確かめたから間違いないと思う」
「触って?」
「私はそうしないと確かめられないですから。女の子同士だし、問題ないわ」
そう言うツグミに、アクセスはそうかなぁと疑問に感じます。
思わず、どんな状況で触っていたのかを妄想してしまいます。
「(二人とも、女の子好きだしな…)」
それはそれとして、ツグミが触って間違い無いと言うのなら、あのレイとミナ
に似た者は、あの二人に似ただけの人間だと見るしか無さそうでした。
「…そうか、判った。ありがとう、ツグミ」
「いいえ、どう致しまして。さ、朝食を冷めないうちに召し上がれ」
「ああ。いただきまーす」
言うなり、もの凄い勢いで食事を開始するアクセスの様子を聞きながら、ツグ
ミは本当は麗子と奈美が、アクセスの友達のレイとミナに間違いないと思ってい
るのでした。
●久ヶ原神社跡地・ミカサ達の本陣
レイ達が自分達の隠れ家に辿り着いた時、既に会議は始まっていて、龍族の代
表のトールンに怒鳴られてしまいました。
非は自分達にあったので特に反論もせずに一同に詫び、許されてから着席した
レイとミナ。
しかし隊長であるミカサは自分の口で二人を責めることはせず、遅刻した二人
のために作戦の概要をもう一度説明してくれました。
最初は肯きつつ聞いていたレイ達。
しかし、途中からレイの顔色が変わり始め、ついには椅子を蹴る勢いで立ち上
がりました。
「一体これはどういうことか!」
「まぁまぁ、落ち着いて。レイ」
「これが落ち着いていられるか! 我々天使を何だと思っているのだ!」
レイが怒った理由。
それは、ミカサの作戦案における天使達の配置に原因がありました。
作戦の主体が第二大隊であると言うのは、彼らの方が先にこの地に居るからと
いう理由で納得が出来たものの、天使達が本陣で待機するように命じられたのに
は納得が行きません。
「現時点で、天使同士相争う事態を避けるためだ」
「我々の忠誠心を疑うのか!?」
「これは、ノイン様よりクイーンの命令として伝えられている」
「ならば何故我々の部隊を作ったのかわからんでは無いか!」
「もちろん、君達は最後の切り札として使うことになるだろう。しかし、今はそ
の時では無い」
「今は?」
「今回の作戦は、あくまでもクイーンと神の御子の会見を誰にも邪魔させないこ
とを目的としている。だから、この会見で話がまとまれば、来るべき戦い自体を
回避することが出来る筈なのだ。ならば、天使達が相撃つ状況は今は避けるべき
だろうと考え、この配置にした」
「しかし…」
反駁しようとしたレイ。
しかし、そこから言葉を継ぐことは無く、無言のまま着席するのでした。
*
「くそ! 納得いかん!」
作戦開始は昼過ぎと決まり、それまでの時間は大休止と定められ、自室へと引
き揚げてきたレイは部屋に引き揚げるなりテーブルを拳で叩きました。
「レイ、また次の機会があるんだから、あまり怒らないで」
「ミカサの奴、見損なったぞ!」
「そんなに彼のことを責めないであげて」
「え!?」
入り口の方から、ミナとは別の声、それも良く知っている声が聞こえ、レイは
驚いて顔を上げました。
「フィン!」
「レイ、クイーンだよ」
「フィンで良いよ。レイ、ミナ。久しぶりだね」
そこには、天界で会った頃と変わらぬフィンの姿がありました。
正確には、太股に堕天の印たる魔王の紋章があったのですが。
「クイーンにはご機嫌麗しゅう…」
跪いて、クイーンに対する礼を取ろうとするレイを止め、フィンはレイに、続
いてミナに抱きついて来ました。
「友達でしょ。そんな堅くならないで」
「だがな、他の者の目もある」
「たまには、立場から離れさせて。人を統べる立場は疲れるの」
「ああ、判る判る。今、それで苦労してるもん。ね、レイ」
「ああ」
「だからせめて、ここでは昔の私でいさせて欲しいの」
「うん。判った」
「お茶でも入れよう」
それから暫く、互いの近況について話し合った三人。
それが一段落した頃、レイは言いました。
「ところで、今日の作戦の配置だが、天使達を外したのはフィンの命令だと言う
のは本当か?」
「ちょっと、止めなよ」
「良いよ、ミナ。ええ、本当よ」
「何故? いずれは、天界の同胞と戦わなくてはいけないのだぞ?」
「今日は戦うことが目的じゃない。それが理由よ」
「本当に神の御子と話し合いが成立すると思っているのか?」
「判らない。だけど、考えてみれば私はまろんに本当のことを話していなかった。
だから、せめて本当のことを知った上で、戦うのか仲間になるのか決めて貰いた
いの」
「本当のこと?」
「私が堕天使になった理由。天界と魔界の現状について」
「それを知ったからとて、どうなるものでもあるまい」
「そうね。今更どうにもならないのかもしれない。だけど私は、まろんに今一度
会いたいの。…好きになってしまったから」
「そう…好きなんだ。神の御子のことが」
「うん」
「判った。今日は私達、大人しくしているよ」
「ありがとう」
ほっとした表情を見せたフィンに、レイは言いました。
「だがフィン。もしも戦いとなるならば、神の御子とやらの実力が判らなければ
戦えぬ。フィンが居ない間に、偵察行動を行っても構わないか?」
「偵察行動?」
「少し、仕掛けてみたい」
「ミカサが何か考えている筈よ」
「それとは別に、だ」
「………。判ったわ」
少し考えた後、フィンは肯きました。
今一気乗りがしないという雰囲気ではありましたが。
「ただし、天使の仕業だと判らない様にして欲しいわ」
「うん。それは当初からの作戦方針だから、考慮に入れている」
「それから…」
「未だ何かある?」
「ううん。何でも無い」
本当は今一つ、フィンには言いたいことがありました。
しかし、彼女達の行動を縛ることを嫌い、結局口にすることはありませんでし
た。
それがいかなる結果をもたらすのか、気づかぬままに。
●桃栗学園
放課後。枇杷高校の第一体育館を間借りして行われる予定の新体操地区大会の
団体戦を二日後の木曜日に控え、桐嶋まなみを筆頭に、新体操部の団体戦出場者
は練習の仕上げに余念がありませんでした。
彼女達を横目に、全国大会の個人戦へ向けての練習を独自に行っていたまろん
と都。
準備体操を終え、さていよいよ本格的な練習を。
そう思った時、都は外からの視線に気づきました。
体育館の扉が少しだけ開かれ、そこから誰かが覗いているのです。
「ちょっと、まろん」
側に居たまろんを都は呼び寄せ、何事か耳打ちします。
まろんが離れると、素知らぬ顔で練習を再開。
その間まろんは、その間に何者かが覗いているドアの死角をこっそり、扉へと
向かって忍び足で進んでいます。
覗きの主はまろんが忍び寄っていることに気づいていないらしく、未だ覗きを
続けていて、都は上手く行ったとほくそ笑みました。
「誰!」
誰何の言葉と共に、まろんは勢い良く戸を開けました。
その物音に、練習に集中していた部員達の動きが止まります。
覗かれていることに気づいた時、男だと思った都。
しかし、その予想は裏切られました。
「あ、アン?」
「それに、ユキさん……」
「こんにちわ。まろんさん」
「コンニチワ」
中を覗いていたのは浅黒い肌を持つ少女。
そしてその後ろには、黒髪の少女が立っていて、まろん達をニコニコと見つめ
ているのでした。
(第170話・つづく)
では、また。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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