神風・愛の劇場スレッド 第110話『視線』(3/30付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 30 Mar 2001 12:03:08 +0900
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Lines: 335
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<99kmgo$hku$1@news01cc.so-net.ne.jp>
<99kosm$ofl$1@news01cb.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

<99kmgo$hku$1@news01cc.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

>> これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
>> 妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。

という事でよろしくです。


>> >>> >>> ★神風・愛の劇場 第105話『追求』

>> #後日談のネタが幾つかあるんでしたっけ。

# 案(頭の中)だけの段階が2〜3、ポイントだけは書いたのが1つ、
# そしてほぼ書き上がっているのが1つ。(笑)

>> #本当は後何話必要か良く判りません(笑)。

# そこはリレー小説所以という所でしょうか。^^;

>> >>> ★神風・愛の劇場 第107話『逃避(前編)』

>>  原作の設定によれば、天使は寿命を全うできなかった(=美しい心を残したま
>> ま死んだ)人間のなれの果てらしいですので、それに関係があります。

実の所、上で書いた後日談の1つには「そういう話」があるので、
好都合な設定です。(笑)

>>  ええ、まぁ大津波かと(笑)。

波が退いた後には何も残らないんですね。^^;

>> >>> ●次々回予告編

>>  あんまり本編と関係無い予告となってしまったような(笑)。

『ベターマン』の予告の紗孔羅ちゃんの呟き位には本質を突いている様な。
# つまり、ず〜っと後で意味が判るという。(笑)

>> >★神風・愛の劇場 第108話 『溢れ出す夜』

>> みると、ツグミさんの身に何かがあれば、関係復活は早いのかも。

てへっ。(笑)
# 不敵な笑みだと思ってください。

>>  すると、そろそろまた決戦が起きるのかな。

最近アクション編が無いですね、そう言えば。

>> #シチューの肉に挽肉は無いと思う。

# ふと思ったのはミートボールが煮崩れているだけなのでは?という事。(笑)

>> ★神風・愛の劇場 第109話『欲望』

あらら、アクセスに召還令状が来てしまったんですね。
人間の生死に干渉するのはやっぱ罪なのか。
しかし、全体としての一連の事件が無ければ、起こらなかった事象ですから
天界(神様)の責任はゼロでは無いと思いますが。
女のカン(笑)で何かを感じたらしいフィンちゃんの微妙な感じが良いです。

それにしても弥白様の部屋が広いのは判っていましたが、
独立したキッチンも在るんですね。
実は屋敷の1フロア全部が彼女の部屋なのではという気がしてきました。^^;
稚空の優しさが稚空の本心の通りに伝わるといいんだけれど…
と読んでいて不安になってしまいました。
# 弥白様は昔大マジメにプロポーズでもした事があるのかなぁ。

それどころでは無い悩みがあるので、まろんちゃんの方は全然カンが
働かない様子ですね。そこら中で事件が起こって(進行して)いるのに。^^;;;
下火だった噂も最近の掲示板事件の影響なのか再び漏れ聞こえる様に
なってしまった様子。また酷い話にならないといいのですが。
# 本質を突いてみたり、外してみたりと委員長も相変わらずで何より。(笑)

ミストがアキコを意識してしまう辺りが何とも可愛いというか。
# 私的設定でもそういう奴ですが。^^;

>> ●次々回予告(気分次第で変更あり)

ミストの後押し(笑)で弥白様が色々…かな。

# それでは次いきます。


★神風・愛の劇場 第110話 『視線』

●オルレアン

まろんは受話器を取り上げるとボタンを押しかけて、途中で手を止めました。
ふと思い出した様に時計に目をやると、午後10時を少し回った所でした。
以前、ツグミの家に泊まっていた時の事を思い出します。

「一人だと夜は早いのよね。する事、無いし」

ツグミはまろんにそう言っていたのでした。
もう眠っているかもしれない。そう気付いた途端に電話をかけようとの
決意は一瞬で萎えてしまいました。

「迷惑だよね、こんな時間に」

そう呟いてはみたものの、それが問題の解決を先送りする為の
言い訳でしか無い様にも思えました。
そして言い訳を見つけて安堵している自分が確かにここに居ます。
それに気付いて、まろんは溜息をつきました。

「こんなの不健全!」

まろんは何時かの様に上着を一枚羽織ると夜の街へと駆け出しました。

●桃栗町郊外

とにかく行動しなくてはという思いだけで飛び出してしまったので、
走りながら考えます。その内に少しずつですが突然の夜の訪問も
悪くない様に思えてきました。

「(直接行って見よう。そうすれば寝ているかどうか判るし、寝ていたら
 出直せばいいんだ。電話と違って、起こさないで済むよ)」

今夜こそ絶対にツグミの声を聞くのだという固い決意もありました。
もし、ツグミの応えが拒絶の言葉であろうとも。
やがて街中を抜けて、寂しい道へと差し掛かると、再び決意が萎え始めます。
歩みが遅くなり、遂には立ち止まってしまいました。

「その時は仕方ない…よね」

まろんは溜息をつくと再び歩き始めます。
やがてツグミの家へと続く小道に踏み込みました。
今にも足音を聞き付けて、笑顔のツグミが飛び出して来てはくれないだろうか…
そう期待していたのかも知れません。
耳元で自分の鼓動が高鳴っているのがはっきりと判ります。
やがて見えてくるツグミの家。果たして、家の灯りは落ちていました。

「はぁ…」

今日、何度目かの溜息。
暫くの間真っ暗なツグミの家を見つめてから、まろんは踵を返すと
自分の家へと取って返します。小道を抜け出て暫く行くと、疎らな街灯の
一つが照らす円錐形の空間にぽつりと人影が浮かんでいる事に気付きました。
背中に回した手を腰の辺りで重ねて、街灯の支柱に寄り掛かっています。
所在なげな姿は誰かを待っている様に見えました。
待っている…待っていてくれている!
その時は、不思議とおかしいとは思いませんでした。
ただ抱きしめたいという想いだけ。
差し伸べた手が目には見えない何かに触れた様な気がしましたが、
まろんの心はそれを邪魔な物としか考えませんでした。
そしてそう思った瞬間に、手は何かを突き抜けていました。

「ツグミさんっ!」

返事も待たずに、まろんは飛び付く様にツグミに横から抱き付きます。
勢い余ってツグミの身体を押し倒してしまいそうになりますが、
まろんがその事に気付いた時には、ツグミはしっかりとまろんを
受け止めていました。
まろんの両手にツグミの着ている服の感触が伝わって来ます。
それはビロードの様に滑らかで、夜気の様に冷ややかでした。

「…冷たい。ずっと此に居たの?」

まろんはそう話しかけながら顔を覗き込みます。しかし、ツグミは
返事どころか身動き一つしませんでした。

「ねぇ……」

まろんが抱きしめる腕に力を込めても、身体を揺する様にしても
ツグミは何も返しては来ません。流石に変だと思ったまろん。
腕を解いてからツグミの正面にまわり、今度は両肩に手を乗せて前後に
大きく揺り動かしました。

「ツグミさんってば!」

ツグミを揺さぶる手を止めたのと、ツグミの手がまろんに触れたのは
殆ど同時でした。まろんが動きを止めたので気付いたと言うべきかも
知れません。

「え?」

ツグミの左手が、その動きを押し止める様にまろんの胸の上に
添えられていました。
そして右手がまろんの左手首を下から掴んでいるのです。
まろんは口を開こうとして、そのまま絶句しました。
何時の間にか開かれたツグミの瞳がまろんを見つめています。
意思を秘めている様には見えないその視線は、それでも確かに
まろんを捕らえています。朱い光を宿して。

「!」

先に動いたのはツグミの方でした。ツグミの左手がまろんを突き放します。
息が止まる程に強く押された事で、まろんの中の何かが警戒の
スイッチをオンにします。
それと殆ど同時にツグミの右手が信じられない様な力でまろんの左手を
下に向けて引き剥がし、反動を付ける事も出来ないと思われる体勢から
まろんを投げ飛ばしてしまいました。
物凄い勢いで左手首を支点として振り回された格好のまろん。
ですが咄嗟にツグミの手の動きに身体を追従させ、敢えて投げ飛ばされる
ままに任せます。
もし、そうしなければ確実に手首の辺りで骨が折れていたでしょう。
まろんの身体は10数メートル先にまで放り出されましたが、高めの
放物線を描いた軌道は姿勢を立て直す余裕を生み出していました。
綺麗に足から着地するまろん。それでもバランスを取る為にしゃがんで
手を着く必要はありました。その時、着いた左手の肘に激痛が奔ります。

「っ!」

骨折は免れたものの、無理な角度から力が加わったのですから当然でした。
まろんは右手で左手の肘関節を掴むと、痛みを堪えながら立ち上がります。

「ツグミさん、まさか…」

前に踏み出そうとしたまろんの眼前からツグミは一瞬にして消えました。
ですが気配はツグミが居なくなってはいない事を示しています。
まろんは即座に数歩退りながら周囲に視線を走らせます。
その途端に今までまろんが立っていた場所に虚空からツグミが着地しました。
街灯の作る明りの中から跳び上がった為に、ツグミの姿が瞬間消えた様に
見えたのです。もっとも、その時のまろんにはそんな分析の暇は
ありませんでしたが。着地したツグミの足を、遅れて舞い降りるスカートの
裾が隠し終わるよりも早く、ツグミの左足が再び地面を離れてまろんの
顔の高さまで振り上げられていました。
寸での所で姿勢を低くしたまろんの頭の上を、ツグミの足が風を切って
通り過ぎます。躍動するツグミの身体に対して、まろんの警戒心が更に強く
働き、周囲を捉える感覚が研ぎ澄まされていきました。

「(来る!)」

空振りとなった蹴りの勢いを殺せなかったツグミですが、身体を傾けつつも、
バランスを一切崩していませんでした。
まろんは当然の様に、ツグミは左足を地に着けると間髪入れずに右足を
使って水平にまろん目がけて薙いで来ると確信していました。
それは人並以上には戦闘経験を積んだ者ならば当然の判断。しかし。

「きゃっ」

直後にまろんを襲ったのはツグミの左足でした。まろんの頭上をすり抜けた
左足は着地も何もせずに空中でいきなり静止し、そのまま逆に
振り下ろされたのでした。予想外の攻撃に避ける事は全く出来ず、
辛うじて左手で頭部をかばう事しか出来ませんでした。
蹴り倒されて地面を派手に転がって行くまろん。何とか身体を起こしましたが、
左手に走る激痛で声が出ませんでした。
涙で霞んだ視界から再びツグミの姿が消えると、まろんは声にならない
叫びを上げました。

もう、止めて!

まろんは息を止めて次の衝撃に耐えようとしていました。
ですが、予想したそれは訪れません。ゆっくりと目を開いたまろん。
目の前にはツグミが立っていて、まろんの頭のすぐ上にはブーツの
踵が在りました。そして二人の間を分かつ緑色の光の壁。
しかし、それはとても頼りない壁でした。今にも消えそうであり、
実際ツグミの踵が途中までめり込んでいます。
縋る様な思いでまろんはツグミを見上げました。
ツグミもまた、まろんを見下ろしていました。
相変わらず何の感情も見えない瞳のままで。

「お願い…そんな目で…見ないで」

そこには、まろんの嗚咽に応える者は誰もおりませんでした。

●オルレアン

雨の中での時と同じだったのです。
ふと気付くと何時の間にかツグミは居なくなっていました。
ツグミの後を追うべきか迷いましたが、とても今の状態では戦えそうに
ありませんでした。そもそもツグミ相手に戦う気も起きないのですが。
重い足取りで自分の部屋に戻ったまろん。
バスタブに湯が満ちるのを待つ間、汚れてしまった服を脱いでベッドに
寝ころがって天井を見ていました。そして、何が起こったのかを反芻します。
何度考えても、それは疑い様の無い一つの事を示しているとしか思えません。
そして、その原因もまた一つの様に思えました。

「私が悪いんだ…」

頃合をみてバスルームへ行き、下着を脱ぎ捨ててバスタブに飛び込みます。
頭までお湯に沈めて、息が続く限り我慢していました。
それから勢い良く上半身を起こして、顔をゴシゴシと擦ります。
深呼吸をして息を整えると、少しだけ冷静になれた気がしました。

「救けなきゃ。でも、どうやって…」

ツグミは悪魔に取り憑かれているに違いないとまろんは考えていました。
救ける為には本体を探さなければなりません。ツグミの様子を
一所懸命に思い出しながら、何か変わった事が無かったかを考えました。
勿論、すぐに判る違いはあります。ですが。

「目つきが変わるのは誰でもそうだよね…」

以前、一時的にツグミが正気を失わされていた時と同じ様に思えました。
別の可能性もあったはすでしたが、意識してそれを排除しています。
ツグミの瞳に向けてピンを投げるなどは考えるだけでおぞましい事でしたから。

「他に…他に何かあるはずよ…」

やがて、まろんの頭にぱっと閃く物がありました。
まろんが知る限り、今までツグミが絶対に身に付けてはいなかった物が。

「間違い無いわ!」

まろんはバスタブの中で立ち上がると両手の拳を握りしめました。
その所為で、治まりかけていた痛みが左手を襲います。

「痛っ」

右手で肘の辺りを押さえながら再びバスタブの中に身体を沈めます。
痛みと共に、あの時のツグミの姿が鮮明に思い出されました。

「あの素早さについていくだけじゃ駄目なのよね」

目標は定まりましたが、明らかに何らかの作戦が必要な情況です。
目を閉じて、何度も何度もツグミの動きを頭の中に思い描きます。
そのうちに、ある部分だけが繰り返して思い出されてきました。
仕舞いにはツグミの姿が写真の様に止まって見えるのです。

「……黒のレースかぁ」

(第110話・完)

# 何か書いていてどよ〜んとして来たのでオチ付けてみました。(笑)

●次々回予告編

"貴女の悪夢、戴きます"

# 予告編なだけに予告状。

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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