オオコウモリの哺育期間は15−20週、小コウモリは4−8週、ということはオオコウモリの方が出生時は発育段階が進んでいるのに、生後の成長速度が遅いわけです。温帯の食虫コウモリは、秋までには冬眠の準備のために自力で十分な餌をとれるようになり脂肪を蓄積するのが必須ですから、のんびりしている暇がないのでしょう。
小コウモリの乳汁成分は濃密で、エネルギー含有量も高く、だいたい一産一仔で子どもどうしのお乳をめぐる競合もないため、急な成長が可能なのでしょう。つまり5-4で述べたコウモリの少子化政策は温帯で生きるための知恵だったのです。
また体温維持のためにエネルギーをたくさん使ってしまうと、成長にまわす分が少なくなってしまうため、温帯のコウモリは、よく大きな哺育コロニーをつくります。出産直前からメスが集まり、生まれたばかりの幼獣は体を密着して体表面積を小さくして、省エネで体温維持をしています。何種類かのコウモリが混ざってコロニーを形成していることもあります。