[つんどく日記最新へ] [バックナンバー目次へ] [出版物の森へ]  [トップへ]

.
[つんどく日記 バックナンバー2]
出版物購入日記。タイトル色は書籍・ムック等マンガ雑誌。書籍・マンガは満点★5つ。

定本・菅野美穂/集英社 ★★★
新旧のグラビアと本人のエッセイで構成された本です。13才で芸能界に入ってから21才のいままでのことが彼女自身の言葉で語られています。19の時、カメラの前の自分と本当の自分が判らなくなって、「疲労骨折のように歩けなくな」った彼女の「反抗期」。どうしたらいいか判らなくなって、自分のいちばんやりたくないことをやってみようと作った写真集。出版した時点で彼女の中での意味はなくなったその写真集に対する、予想してもいなかった騒動。「女優」というお仕事についてのコメントも印象的。誰でも女優になれる、環境が女優を作るのだと言い、もっとうまくなりたいという執着だけがあると言い、休むってことは下がるということだ、必ずどこかの筋肉が落ちている、と言う彼女はとても真摯で貪欲です。誰でもなれる、と彼女は言うけれど、やっぱり彼女は感受性という才能、女優としての財産を持っているのだと、そんな気がします。
写真の方もそれこそデビュー時のものから最近のものまで盛り沢山。高校生時代の写真とかすごく可愛くて感動。私は彼女のグラビア写真がとても好きなのですが、それは見ていて写真の背後に感情のドラマみたいなものが感じられる気がするからなのです。それがどんな才能によるものかよくわからないんですけど。特に彼女のロングヘア時代のもの、考えてみれば彼女の「反抗期」前後のものは、とりわけ不思議なニュアンスを感じさせる気がします。それまたなんか複雑な気もしますが。確かに髪を切ってからの彼女は、何かがOPENになった印象があって、でも多分それまでの色々は、彼女の中のどこかに残っているのかもしれませんね。「わたしはいつも腐りかけながら、それでもほのかな執念を持って、どこかをめざしている、そんな感じです。」バラエティなどでの屈託ない笑顔を思うとなおさら、こんな言葉を選ぶ彼女ってなんかすごいなあと思います。


私が死んでもいい理由 美智子交合/太田出版 ★★★1/3
インターネット上で青酸カリを購入した女性がそれを飲んで自殺、そのニュースを聞いて売り主の男性も自殺したという事件がありました。ニュースでかなり大きくとりあげられたので、覚えている方もいらっしゃると思います。売り主「草壁」から青酸カリを購入した中でただ一人、警察への任意提出を拒んでいる「練馬区の主婦」がこの本の著者です。
テレホンセックスダイヤルの会社を経営しSM嬢になりプログラマになり、という人生を送ってきた彼女は、彼女自身が強い強い自殺願望の持ち主です。「草壁」が青酸カリを送るきっかけになったサイトは彼女のサイトであり、彼を「ドクターキリコ」と名付けたのも彼女です。そして、世間的には「草壁」が商売として毒物の違法販売を行った事件と認識されているこの事件を、「草壁」に対する誤解を解きたいと願いつつ、でもそれは自分が死んだらいちばんやって欲しくない、死者の事情をほじくり返す行為であることに悩みながら、当事者の立場で語っています。
自殺に関するホームページを開いていた時に薬の知識が豊富な「草壁」と出会い、青酸カリを売ってくれと頼む彼女に、「草壁」は違法だから売れないけれど、あくまで自分のものを預ける形で保管の委託をしてもいい、と言います。ただし鬱状態がひどく、通院や投薬を繰り返しても回復の見込みのない人であること、「草壁」自身がその判断を行うこと。そして絶対に使用しないこと、という契約で。預からせてもらうための委託料が3万円。それは、おそらく彼自身が自殺欲求の持ち主であったと思われる「草壁」の編み出した「生きるためのお守り」だったといいます。「いつでも死ねる手段」を目の前に置いて開き直ることで。
しかしそうやって「お守り」を送ったうちの一人の女性が実際にそれを飲んで自殺し、警察は残されていた宅配便の送り状から「草壁」に連絡をとり、「草壁」は、その女性が死んだ日の夜に自らも青酸カリを飲んで自殺したのです。
家にとじこもり、夫とも顔をあわせず、酒と薬を乱用していた著者は、「草壁」に「お守り」を送ってもらっていったんは立ち直り、会社勤めをはじめるまでに至っていましたが、「草壁」の死を知らされて「お守り」はその効力を失い、彼女の生活は「廃人」のそれに戻ってしまったといいます。「お守り」自身の効力以上に、彼女は「草壁」の存在を支えにして生きていました。顔も知らない他人が生き続けるためにたった3万円で危険を犯し、延々と繰り返されるラリった愚痴の電話につきあい、今度こそ自殺すると青木ヶ原まで長い旅に出かけて結局帰ってきてしまった彼女に「生きてたんだ、よかった、ほんとうによかった!」と異常なまでに喜び、青酸カリは品質が5年位しか保てないから、5年後には無事に自分のもとに帰ってくるのを待っている、そうしたらまた新しいお守りをあげるから、と言ってくれた「草壁」の存在を。5年たったら彼にお守りを返して新しいお守りを送ってもらう、そしてまた5年たったら、そしてまた次の5年…。彼女はそんな夢にしがみついて必死で「生活」を続けていたけれど、その約束はもう果たせない。
私はここのくだりを読みながら涙が止まりませんでした。
彼女の文章は冷静で、毒は強いがユーモアに満ち、でもその向こうには、現在でも27時間に一度くらい起き、同居している夫と顔を合わせるのを避けて彼が寝ないうちは部屋から一歩も出ず、酒を飲み続け睡眠薬を飲み続ける彼女がいる。
この本を読んでの私の感想は特にありません。何を感じていいのか判らなくて、ここに何を書いていいのかも判らなかったのでただ内容を要約してみました。ただ、「生きる」ということと戦っている人々のことを考えたり、「生きる」ということを抽象的に考えなくてはならない状況の異常さについて考えたりした位です。でもなぜか、読んでいる間中、何度も本を置いて一呼吸おかなければ読み続けられない程に、泣けて仕方がなかったのです。何に対して泣いているのか全然判らないのに、おかしいですね。


すべてがFになる 森博嗣/講談社文庫 ★★★
久しぶりに本を読む!(笑)
ずっと気になってた新書ミステリーのシリーズが文庫に降りはじめました。私はノベルス新書が苦手なんです。あの紙の厚さといい読むのに腕力のいる版型といい。
孤島の研究所の地下に自ら幽閉され所員誰とも直接接触せず暮す天才女性工学博士、突然彼女はネットワークでつながっていた他の所員との連絡を絶ち、その開かずの部屋からウエディングドレスを纏った死体が…、という事件。探偵役は島を訪れていた建築学助教授とその教え子の女子学生。主要な登場人物の殆どがクレバーな理系キャラクターで、描かれる彼らの思考回路や行動、理系ぶりっていうんでしょうか、が面白いです(ちなみに作者も工学系の学者)。
ミステリーを読むヨロコビの一つに、小説の中では事件が解決し全てが解き明かされる、それを疑似体験する、っていうのがあると思います。物語がおさまるとこにおさまってカタがつく、っていうのは日常ではそうそうないもので、その代りに物語の中で物事が完結するのを味わう。ミステリーは最初に問題が提示され、結末までに答えが提示されることで、普通の小説よりもはっきりと「カタがついた」感が味わえる分野であると思うのですが、さて、では読む側である私は何をもってお話の謎が「解き明かされた」と認識するか。この小説を読み終わって真っ先に私が思ったのはそういうことでした。このお話で示される解決は、私の認識する「解き明かされること」の範疇と大分異なっていて、私は自分がお話に何を求めているのかを考えさせられてしまいました。そこらへんは解説文で瀬名秀明氏が森氏の言葉として明快に語っています。殺人者には殺人を起こすに至った物語が存在する、という前提を持ちそれを語るという従来のミステリーの「お約束」というのは非論理的な手法であって、森氏はそのような「お約束」にとらわれない、と。つまりこの小説が描いているのは「何がおこったか」であって「犯人がどんな心理でそこに至ったか」ではない、ということです。そういうミステリーの形であると。けっこうこれは私パンチでした。日頃慣れている「お約束」を取り払われるとやたら心細い気がするものです。読み終わってなんだか心細い気持ちになりました。置きっぱなしの謎も沢山あるし、全てを解説して欲しいむきにはちょっと不親切な出来かもしれません。
でも読んでて気持のいい小説でした。文章も読みやすいし登場人物がとらわれる思索がいちいち面白く、散りばめられている数学的なロマンチック具合もいい感じでした。「7だけが孤独」というフレーズのリリカルさは乙女心をくすぐります。コンピュータ関係の記述にはそれ都合良すぎじゃ?ってトコがないでもないですが、まあ読み終わってうわそれズルいなあ、とぼやくのも一興かもしれません。なかなか面白かったです。

森博嗣氏ご本人のページ森博嗣の浮遊工作室 はこちら。


ペンギンゴコロ さかざきちはる/文渓堂 ★★3/4
絵本です。…いやちょっとペンギンが気になっていたもんでね。つい。「わたしのココロはペンギンの形をしている」ではじまる、ちょっと自分のココロを振り返ってみる本。ペンギンなのでもちろん白と黒にぬりわけられていて、黒いところは過去を振り返るマイナスのココロで、白いところは未来を見るプラスのココロで、ペンギンが前向きで白いココロを見せてるのは嬉しい日。そんな本です。ペンギンの絵がシンプルで可愛いんだ。海を見つけて泳ぐペンギンの絵に、わたしのペンギンは飛べる、という文がついているのは嬉しい。きっとこの作者は水族館のペンギンの水槽の前に佇んだことのある人に違いない(勝手に想像)。陸の上の姿とはまるで違うアグレッシヴなペンギン、見たことあります?
自分の心を見つめちゃうPHPテイストな(はい?)本は私基本的に好きじゃないんですが、これはなかなか良かったです。ペンギン本としては私のペンギン本オールタイムベスト(そんなもんがあんのか)「ペンギンのペンギン」にはかないませんけども(笑)。


パーム24 愛でなく10 伸たまき/新書館コミックス ★★★
ストーリーとしては殆ど動きがないものの、恋愛エピソード盛りだくさんの、実にエモーショナルな巻。うーんジェームズかっこいー。環境問題には一般的な興味しか持ち合わせない私にはこの「愛でなく」は結構キツい展開で、そしてこれから迎えるお話の方向の色々なこと(悲しいこと含め)の伏線が見えてきそうな気配が怖いのです。失うと知っている者の幸せな図は切ない。そんな感じ。ケントどうなっちゃうんだよう…。個人的に一番のごひいきのジョゼが表紙に登場してる上お話の中でも結構報われてるので嬉しいです。そして次の巻はきっと来年ですね…。遠いなあ。完結するまでにあと10〜20年かかる、という作者の見解も(下のサイト参照)なんだか凄いなあ。

伸たまきのオフィシャルページ「BIGCAT Studio」はこちら。行って損ナシの読み応え。私は読破するのに2時間を要しました。彼女が「パーム」を書くにいたるまでの成り行きには圧倒されます。「青また青」の設定ほとんどそのままの彼女の生い立ちはとてもパンチ。彼女は自分の書きたい物語がとんでもなく長くなることに気付いて高校に行くのをやめたそうです…。


夢を見る人 橋本みつる/ソニーマガジンズコミックス ★★1/2
はじめて買う作家さんです。花とゆめに書いてた方だったんですね。日常からはじまる出来事に少年少女の微妙な心の揺れ動きや奇妙なファンタジーが絡むお話。登場人物の、モノローグ等で語られる論理の飛び方(この「飛び方」が、いわゆる「名付け得ない微妙なキモチ」を伝える部分であると思うのですが)や視点の飛び方に私の中には存在しない(=想像がつかない)部分が多くて、なんだか不思議な気持ちになりました。理解できない何ものかをのぞき見しているような気持ち。読んでいる側に「物語」の余韻を与えない、たたき切られるような終わり方も独特。高校生が主人公で、一応ラブストーリー風なお話になっていますが、本質的に一般的なラブストーリーとは(もしかしたら「物語」とは)とても遠いところにいる人のような気がします。表題作の、憧れの先輩(とその友人)の、ある最後の一日を追いかけて回る女の子の話は面白かった。ついて回って仲間に入れてもらって、でも彼らのやろうとしてることは知れない。今後の人生でもう関わることのないだろう人たちの幸せを眩しい気持ちで祈る、主人公の立ち位置が印象的。私のよく知っているとある立場を投影したい気になりました。恥ずかしいから明言しないけどお察し下さい。そして何でもそこに持ってくんなって叱って(笑)。


KEROUAC
巻頭言は辻仁成「人生は九九」…どうしていいかわからん(笑)。「9歳で、くさるな!」……。
特集はサイバーファッションです。こういうのって時代を越えて何年か周期で回るような…。前に流行った時との違いがいまいちわからない私はもうトシなのであろうな。時代は流れてもやっぱりこの路線だとシン&カンパニーがお出ましなのか…。サイバーカルチャーの系譜も載ってるよ。Zipperとかでもそうなんですが、ストリート系の雑誌に手作りページがとても目につくようになってきましたね。インディーズブランドの究極のカタチであるのでしょうか。
ところで、創刊時はファッション誌の中の急先鋒であった(ような気がする)CUTIEが、ストリート系雑誌攻勢の中で、だんだん王道って感じになってきたのってなんだか感慨深いです。なんというか、一般ファッション誌におけるananみたいな感じになってきたような(笑)。読者のカブる雑誌がそれぞれファッション写真中心とかストリート写真中心とかいう風に棲み分けてるのは面白いですが、もともとストリート系ってなだけに、その二者の区別って微妙かも。一般の子のストリートフォトをファッション写真っぽく実に美しく撮るVitaと、芸能人もあくまで路上での姿として撮るKEROUAC、とかなかなか面白い。
さて、今号のKEROUACを買ってきたのは、マンガ家の多田由美さんのインタビューが載っててゆっくり読みたかったからです。3ページ位なんだけど。「学校をやめちゃったひと、いかなかったひとのちょっとステキな物語」という連載テーマの語感とは裏腹な、胸が痛くなるようなお話でなんか圧倒されました。子供のミルク代のためにマンガを描き始めたというのは驚きです。他人を愛してるのにどこかの歯車がうまくいかない、でもその気持ちは本当…みたいな孤高で不器用で美しい彼女のマンガ、それが生まれた源がちょっと見えるような気がするインタビューです。

多田由美さんご本人のページ"HELLO" Tada Yumi's homepage はこちら。 イラストも多数載ってます。


死神の惑星 1 明智抄/EYESコミックス ★★★★
SFロマン、だそうです。帯によると。犯罪者の流れ着く無法地帯の星グラーシスでたまたま関わり合いになる人々と彼らがひっそり持っている過去のお話。マフィアの愛人・ヒトリ、安食堂の主人で情報屋のサイボーグ・ロイ、店を手伝う少女・リン、それぞれがしたたかに生き延び暮らしつつ、それぞれ内緒の過去(または前世)を持っていて、彼らはみんな今暮らしている彼らであって彼らではない。秘密の存在を何となく感じながら踏み込まないロイとリンのシーンがせつなく、テレパスである故に、普通の人間には感知できない感情に呪縛され続けるカズハとフタバとアリスの物語は壮絶で悲しい。バイオチップに生前の少女の妄執の記憶を残した働き者で明るく残酷なコンピュータ・スカーレットが良いです。ひそかに感情を持つコンピュータってのもたいがいお約束ですが、妙に好きなんですよ…。
話は飛びますが、私がSF的な話に心惹かれるのには、特に宇宙や未来の話が好きというよりも、感情や思念が現実よりも大きな結果を生む世界だという理由もあるような気がしています。違う星の上でもテレパシーで感情が伝わる世界。超常能力で、個人の思いひとつで世界を破滅させられる世界。地球規模を越える舞台や、現実にはありえない能力は、ときに「感情の強さ」を、現実にはありえない絶対量で味わうための要素であるような気がするのです。宇宙が描かれていてもそれは現実の宇宙ではなく、例えば壮大さをロマンチックなイメージで投影した一種のメタファーであるような。
明智抄の描く物語は冷酷です。思いのために破滅する誰かや、誰かの思いのために破滅させられる無関係な誰かの物語を淡々と、時には陽気に(ココが怖い)描くことのできる人(それだけにこのお話も、この先登場人物たちの目的と利害が対立していきはしないかと気になる)。彼女のマンガを読んでいると、どこか奥底で何かが壊れているような感触があって、読んでいる私の気持ちがどこか歪んだ世界に浸食されていくような、怖い気持ちになることがあります。そこが魅力でもあるのですけど。


恋のしるし 村田伊吹/マーガレットコミックス ★★★1/2
本屋で表紙が気になって買ってみたら面白かったので嬉しい一冊。絵はどっちかというといくえみ綾系かな。画面構成とかはそれほど完成度の高い人じゃないと思うんですが。同時収録されてる5年前の短編の絵はよしまさこみたいなのに、画風って変わるもんなんだなあ…。今年雑誌掲載された短編が3本入ってますが、これが見事に全部同じ話で興味深い。主人公は女子高校生で、設定やキャラクターは色々違うんですが、基本的に構図がみんな一緒なの。「本当の私をずっと見てくれてたぶっきらぼうだけど優しい男の子に抱きしめられてハッピーエンド」。これぞ少女マンガ!(笑) 「ああこの人は私を見ててくれたんだ」って判るあたりにカタルシスがあって、主人公の女の子は今までなかった勇気をちょっと出せたりして。主人公が相手の男の子を好きになっていく経緯が納得できるようなエピソード描写の積み重ねが良いです。これって読む側もマンガを通してちょっと恋のプロセスを追体験するような楽しみもあるよね。って文字にしてみるとバカみたいですけど(笑)。出てくる男の子も妙にリアルで魅力的。少女マンガの王道的なヨロコビがあってちょっと幸せになりました。私ベタな話好きなもんで(笑)。


MARS 8 総領冬実/講談社コミックス別冊フレンド ★★★
牧生の件も一段落してまた一難。お話はキラの過去の傷をふまえた展開。ちょっと下の日記で「流行りかこの設定?」って書いてるのはこのマンガのこと(苦笑)。病弱の母のために義父と再び同居することを決めるキラ、それが理解できない零。次々と2人のあいだに面倒事を設定していくそのテクニックはすごいなと思います(障壁があってこそぶつかりあう感情が描ける訳なんで)。でも感情のやりとり以外の要素はどこに?という気にもなってきたなぁ。キラが絵を描く子だったり、零がバイクレーサーだったりする設定は随分放りっぱなしな気がするんですが…。キラたちが愛情こめて零の話をしてるのを当人と友人の達也がこっそり聞いていて笑いあってるシーンとか、海辺でお城を作るシーンとか、不意に示される日常の中の幸せな風景がとても良いです。こういうところはさすがだなあ。


SCRAP STICS Vol.1
たまに大きな本屋に行くと、見慣れない雑誌が置いてあって嬉しくなって買っちゃったりするんですけど。……なぜ買っちゃったかな、これを(笑)。特集「80年代が18才だった」「泉麻人徹底研究」というサブカル系っちゃサブカル系のミニコミ誌。一応全国配本なんですが……インディーズで雑誌を作って全国の本屋に置くという経路が昔より容易に出来るようになったというのはこんな雑誌が本屋に並んじゃう弊害ってのもあるのね(笑)。もう記事が全然ダメダメです。編集者が記事の内容よりも「雑誌を作る」「記事を書く」ことに酔ってる感じがとってもトホホ。編集長と副編集長の日記が4段組計5ページもあるあたりの自意識過剰具合は感動的ですらあります。こういう方々はそれこそホームページでもひっそり作ってた方がいいんじゃないかなぁ…。「80年代は顔の可愛いアイドルがいて曲のカッコいいアーティストがいてロックっぽいバンドがいたけど、90年代の今は一組のアーティストでその全てが満たされる」というくだりは面白かったんですけど100ページ読んで面白かったのがそれだけってのも逆にすごいよ(笑)。


イティハーサ 13 水樹和佳/ぶ〜けコミックス ★★★1/3
結末へとひた走る古代(?)ファンタジー。…あと2巻でカタがつくんですよねえ。なんか楽しみなような淋しいような。 不二のふもとの幻霧の森でとおこ(漢字が出ないんですよ〜。難しい名前が多くてねぇ〜)と出会いながら彼女のことを忘れてしまっている鷹野。この状況がかなりブルーだわ。鷹野の記憶を消して彼を自分のもとに置こうとする空子都がヤなの。いきなり出てきてだから思い入れようがないのね(笑)。とおこの前にだけ現れるヤチ王(だから漢字が!)も気になりますね。彼が運命から2人で逃げろという、その運命とは何なのか?悪の神、威神の筈なのに何かもっと大きな役割を持っていそうな鬼幽は一体どんな存在なのか?しばらくあまり出て来てませんが私のごひいきは青比古なんで、いつか月に魅入られて正気を失うという彼の運命も気にかかる。彼と女戦士桂の恋の話はせつないです。
ぶ〜け本誌では連載が終わっちゃってるんですよね。最終巻は描きおろしになるそうです。長らく連載するうちに雑誌のカラーが変わってしまって連載が続けられなくなってしまった経緯を聞いた時はなんだかパンチでした(詳細は作者のページを見てね)。そんな中でお話を最後まで描き続けようとする作者の姿勢が嬉しいです。このコミックス、白地に緑のチェックという装丁は、ぶ〜けコミックスが創刊された時のままなんです。ぶ〜けコミックスとして一度装丁が変わり(あまり趣味のいい変更ではなかった)、今はマーガレットコミックスと同じ装丁に統合されてます。ぶーけの連載マンガのコミックスも途中で装丁が変わったのに、このイティハーサだけは、第1巻から変わらない装丁で出し続けられています。リアルタイムで買い続けてる者にとってはとても嬉しいことですが、この装丁で通すのにもきっと苦労があったんじゃないかと思えて、それもまたなんか切ない気持ちになってしまいます。

作者である水樹和佳さんのページはこちら





ご意見ご感想はこちらまで。