.

出版物の森

.
つんどく日記 出版物購入日記。タイトル色は書籍・ムック等マンガ雑誌。書籍・マンガは満点★5つ。
おまえが世界をこわしたいなら 1・2 藤原薫/ソニー・マガジンズ コミックス ★★★★
表紙がすごくいい。
マンガの感想で最初にこれってのはどうかとも思うのですが(笑)。でもすごくインパクトあったのです。目を閉じた少女のイラストにこのタイトル、黒地の帯に白抜きで「愛と血をください」という文字と銀色の十字架のモチーフ。平積みにされてたこの表紙があまり印象的だったんで、作者の名を聞いたこともなければ掲載雑誌も殆ど読んだことがないってのに買ってきてしまったのでした。
吸血鬼っていうか。吸血体質を持つ種族のお話なんですが。
吸血鬼というテーマは面白いですね。好きです。吸血鬼というモンスターがこんなに憂愁を帯びた存在として定着したのはいったいいつ頃からのことなんでしょう。人間と同じ姿でありながらモンスターであることの憂愁、不死の存在であり孤独であることの憂愁、元々人間でありながらその人間を犠牲にしないと生きられないことの憂愁。…幽霊とか狼男とかが同じ憂愁を抱いてても不思議ではないんだけどね。合わせ技の問題かしら。ちなみに私は外国モノより日本の吸血鬼モノの方が好きです。吸血鬼という存在の根底に、どこか異国への憧憬みたいなものが流れてるものが多いから、そういう匂いも含めて好きなんです。…ベタな趣味だな(笑)。
さて話は戻って。あらすじ。
交通事故で死ぬところだったのを吸血種族の青年・蓮に救われた少女・環奈。しかしそのため、彼女自身も吸血体質に変わってしまう。しかも蓮は環奈が名も知らぬまま憧れていた青年だった。そして環奈は蓮を変えた今はなき女性、蓮が今も思い続けるセシルに瓜二つだった。その頃、同じ体質の種族によるものと思われる殺人事件が頻発、事件を捜査する刑事は蓮を疑いはじめる…。
自分が人ならぬ者に変わってしまう少女の怖れや動揺、吸血種族たちの、果てしない人生の過去の辛い記憶や感情。基本を恋愛系に置きながら、不穏な予感を漂わせつつ進んでいくストーリーと、温度の低い感じの絵柄の組み合わせがいい感じです。先が楽しみ。





.
タダ読み日記出版物立ち読み日記(おいおい)。
虚無への供物 塔晶夫/東京創元社
なーぜーにー今ハードカバー新装版で新発売? しかも初版当時の塔晶夫名義。新本格の若手が元気のいい今(という認識はOKでしょうか?最近状況わかんなくてさ)、過去の名作出しとくってヤツ? GLAYも売れたしBOφWYのベスト盤も出るみたいな?(たぶんちょっと違う) 文庫でも読める今、誰がハードカバー買うんだろう、ちょっと不思議。そんな偏愛さんがまだついてるのかしら中井英夫。しかしこの本自体は「ああもうすぐ読み終わってしまう、悲しいよう」とわくわくして読んだ思い出の本なので、ついぱらぱらとめくってみるのした。確かに文庫で読むのとはちょっと感じが違う気もするのですが。
それより創元社さん、文庫版中井英夫全集の刊行の続きはどーなってるんすか…? まだやる気あるんすか?(涙) 前回配本から2年ぐらいたってませんか…?


SIGHT 第2号/ロッキング・オン
表紙には小泉純一郎氏とかいます。やや硬めの読み物誌、SWITCH系とでも言えばよろしいか。
私が読んできたのはこの中の「少女はなぜ17才で殺されねばならなかったか」とかいうルポです。アメリカを舞台に、幼いころ性的虐待を受け、思春期に家出してストリートチルドレンとなり、売春で生計をたて、ドラッグに溺れ、更正施設に入りそして逃げだし、そしてとうとう知らない誰かに殺された少女の話です。聡明で綺麗で詩心もあって、ストリートでも有名人だった彼女を、彼女の友人たちは始終はりつめていた印象があった評しています。親との関係がそうそう破綻していたわけでもない彼女は(母親が毎日電話をかけてきていた彼女から連絡がないことで捜索願を出している)どうして普通の少女として暮らすことができなかったのか。どうして発作のように日常を投げ出して、街に立ち、薬に溺れなければなかったのか。普通の暮らしには何が足りなかったのか。きっとドキュメント映像などで見たら、彼女のエピソードももっと生々しくてやりきれないのだと思います。でも冷静な翻訳文での描写を読むと、ただ文面から静かに彼女の飢えが立ち上がってくるような気がするのです。何か目に見えないものに飢えて飢えて、何に飢えているのかどうすれば飢えが満たされるのかもわからずに走り続けていたような、彼女の短い人生。
とりつかれたように何かに飢え続けた人の話を読むのが私はどうにも好きで仕方がありません。

「SIGHT」のページはこちら。もうじき次号が出るのね。







ご意見ご感想はこちらまで。


since98.3