★蛙のガリアルド(栗コーダーカルテット) 1997 カヴァー
リコーダーといえば教育用楽器という印象が強い。栗コーダーカルテットが根強い人気を保ち続けているのは、聴く者に幼少期のノスタルジックな安らぎをそこはかとなく与えるからだろう。事実、彼らはその手のCM音楽ではひっぱりだこで、遂には盲導犬の映画「クイール」のサウンドトラックにまで進出している。その栗コーダーカルテットが、1987年の発表した最初のアルバム「蛙のガリアルド」の2曲目で演奏しているのが、 Jerusalem ( EL&P ) 邦題は「聖地エルサレム」。この曲、元々は英国のヒューバート・バリーが作曲した賛美歌ような合唱曲。エルガーの「威風堂々」と並ぶ英国の国民的な楽曲だ。ELP版が発表された頃は、何で女学校で歌われているような曲をロックバンドが演奏するのかと辛辣な批評をするメディアもあったが、今聴けば、あらためてELPの巧みな編曲に感心する。プログレ特有のポンプなアレンジでグイグイと盛り上げている様はアドレナリンの分泌を盛んにし、気分を高揚させてくれる。で、その栗コーダーカルテットの「聖地エルサレム」は、バリーの原曲ではなく、なんとELP版のカヴァー。それもリコーダーのみの演奏。アレンジの大仰さとリコーダーの優しすぎる音質の不釣合いに思わず笑みがこぼれる。パロディだよねコレ? それがネライならそれはそれでいい。個人的にはリコーダーは好きな楽器だ。リュートやチェンバロと組んだりして演奏すれば気分は突然中世ヨーロッパ。教育楽器の印象など微塵もなくなり、上質な癒しの音楽に変貌してしまう。フォーカスの「リュートとリコダーのための小品」がそのものズバリ。そういうのが好きな人にお勧めなのが、オランダのアムステルダム・シンタグマ・ムジクム。現在は解散してしまったようだが、永年、古楽の普及に尽力した楽団だ。LPでなくCDで聴きたいのだが入手難。どこかにないかね〜。
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★タルカス 〜クラシック meets ロック(吉松隆) 2010 カヴァー
「タルカス 〜クラシック meets ロック」アトム・ハーツ・クラブな吉松隆氏が遂にタルカスをオケ版に編曲してしまった。東京フィルハーモニー交響楽団ともあろう人々がよくもまあこんなに下品な演奏をしたものだ。がはは。下品というのは賛辞、賛辞。お間違えのないように。でも、正直なところ下品に聴こえた。金管重視でクラシックではあまり使わない和音が炸裂するさまは、ぶっ壊れた映画ベンハーのサントラのようだ。もともとロックなのだから上品である必要は無い。「噴火」や「アクアタルカス」の激しさは、その下品さにおいて前衛? 指揮者藤岡幸夫氏が最後に嗚咽のような叫びをあげるところなども素晴らしい。コンサートマスターはモルゴーア・カルテットの荒井英治氏。嬉々として跳ねまくるヴァイオリンは楽しい。パーカッションが大健闘している。クラシックの演奏会なのにビートを感じた。最近は中学校の吹奏楽あたりでもパーカッションがグルーヴしてたりすることがある。生まれたときからビートのある音楽が巷に溢れる時代に育った若者は凄い。バンド演奏と比べるとオーケストラのリズムのキレの悪さは致命的だが、今回、それをあまり感じさせなかったのはこのパーカッションの頑張りがあったからだろう。かなり良く出来た編曲だとは思う。しかし、シンセサイザーにベースとドラム、3人だけの演奏の方がフルオーケストラよりも音の表情がずっと豊かだったりもする。この吉松タルカスを聴けば聴くほど、ELPのオリジナル版の優秀さを再認識することになるのではないか。
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