SPARTACUS ( TRIUMVIRAT ) 1975
1975年に米キャピトルから全米に発売された独のバンドの作品。独はもちろん日本国内でも発売された。トリアンヴィラートとは古代ローマで行われた三頭政治のこと。映画「スパルタカス」でも知られるとおり、それが古代ローマで発生した奴隷反乱事件の首謀者の名前ってことは、ご存知の方も多いと思う。このアルバム自体、その映画とは直接関係はないが、スパルタカスの反乱を史実に沿って叙事詩の如く構成している点では同じ。音楽的にはELPの「実に良く出来た」コピー。模倣部分には気分を害する方もいるやも知れぬが、想像以上に見事な出来なので、その類似性さえ問わなければ、メロディアアスで飽きの来ない楽曲展開に、すっかりハマってしまう。その昔、「イタリアのジェネシス」とか「北欧のイエス」などと形容され売り出されたバンドがたくさんいた。もちろんトリアンヴィラートには「ドイツのELP」という看板が下がっていた。しかし、双方を聴き込んでいくと、その音楽的背景にはかなりの違いがあることに気が付く。民族楽派好みで音も鋭利なキース・エマーソンに対して、トリアンヴィラートのハンス・ユルゲン・フリッツはクラシックのメインストリームに沿ったあまりこだわりのない甘い調べを好んで使う。トリアンヴィラートにはELPのようなハードエッジなトゲトゲしさがなく、終始ポップで聴きやすい音楽になっている。プログレにこだわりを持たない人でも結構聴ける極上のポップミュージックだ。