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トリプルプレイで攻撃終了?

「通信と放送の融合」のことをIT業界では「トリプルプレイ」と呼ぶらしい。具体的には「単一の事業者が、電話、通信、放送の3つのサービスを同時に行うこと」を指すようだ。光ファイバ網が都市部をカヴァーしつつある昨今、それは既に一部地域では実現もしている。我家もBフレッツに加入、光電話を使い、フレッツ.NETはともかくGyaoあたりは時折観ており、一応トリプルプレイとやらを享受していることになるのだが、正直なところ「だから何なの?」ってな感じがしないでもない。Bフレッツになりネットサーフィンもファイルのダウンロードも速くなり、すごぶる快適にはなった。光電話はCMのように受話器が光りはしないが、とりあえず今までとほぼ同じように電話が使えて安い。そして注目のブロードバンドコンテンツ。ネットテレビの高品質動画はコマ落ちすることもなく再生され、それはそれは見事な画質で驚いた。暇な正月、TV BankというSoftBankの運営のサイトでNHKの「プロジェクトX挑戦者たち」が1.5Mbpsの高画質で2本配信されているのを見付け、主役がそれぞれ千曲市出身で現松本市長の菅谷昭さんの「チェルノブイリの傷 奇跡のメス」と、坂城町出身でイトーヨーカドーとセブンイレブン(セブン&アイHLDGS.)の代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)、鈴木敏文さんの「日米逆転!コンビニを作った素人たち」だったりしたものだから、食い入るように観てしまった。特に後者の方は知る人ぞ知る「しもざわ酒店」まで写真出演するオマケ付き。個人的には大感動だったのだが、よく考えれば、いや考えなくてもそれはNHK総合が数年前に放送した番組だよな。オリジナルコンテンツではない。USENが運営するGyaoではサザンオールスターズの横浜アリーナでの年越しライブが丸ごと楽しめた。正にトリプルプレイ元年に相応しい豪華なコンテンツではないか。不肖私もプログレヲタクにもかかわらず、一部早送りしながら全て観たが、調べりゃこれもWOWOWの制作で既に衛星で年越し生放送されたもの再放送コンテンツだった。電話は電話のまま、ネットは速くなっただけ。放送は再放送。それを「トリプルプレイ」と云うんだろうか? それともこれは過渡期の状況で、ブロードバンドがさらに普及ればもっと状況が変わってくるのだろうか? それでも状況が変わらなければ、「国に保護された放送局が電波を独占しているのが不公平で失敗した」とでも弁解するのだろうか? 人の事を云えるような身分ではないが、まあ仮にその程度のことであったのなら、IT業界の人々は明らかにコンテンツ創造力が乏しいと思う。古い映画や既存テレビの再放送だけでは、レンタルビデオ店や衛星放送局は潰れても地上波テレビ局はあまり困らない。既存テレビ局にとってそのあたりは既にケーブルテレビや衛星放送、レンタルビデオチェーンに奪われてしまったシェアに過ぎない。昨今、大手レンタルビデオチェーンに行けばひとつの店に何万本ものソフトが置いてあるが、仮にそのレンタル料が無料だったとしたら、あなたは毎日一年365日ビデオを借りるだろうか? 当然そんな暇は無いだろう。では、それが自宅に居ながらにして選んで観れたとしたら毎日観るだろうか? ニートさんならともかくあなたが勤労者だったらやっぱりそんな暇は無いだろう。問題は時間だけではない。仮に何万本ものソフトが自由に観られても、そんな立て続けに観たいと思うソフトなど無いのが普通だ。もっと即時性のあるもの、例えばニュース。実はこれは既にオン・デマンド化されている。最新の映像ニュースは各テレビ局のサイトやGyaoでビデオクリップになっているのだが、私はほとんど見ない。文字化されたニュースはWEBはもちろんRSSリーダーで読んだりするが、余程の衝撃映像を伴ったニュースでない限り、いちいちひとつひとつの映像を再生して見聞きすることはない。とりあえずビデオ・オン・デマンドの現実なんてそんなものだ。さて、ネットテレビは再放送ばかりなどと書いてしまったが実はGyaoにはオリジナルコンテンツもある。これはある意味重要だ。その代表例が「久米宏のCAR TOUCH!!」と「テリー伊藤の愛とブログ」だったりする。久米さんも伊藤さんも既存テレビ業界の偉大なクリエイターだ。ネットテレビでも涼しい顔でプロのお仕事をなさっているが、このお二人に頼っているようじゃ、正直Gyaoの将来は正直暗いのではないか。何で還暦前後のオヤジさんたちなの? 赤字で番組予算が無いのなら20歳代の無名で有能なクリエイターを発掘して好きにやらせたほうが絶対に良いような気がする。真に時代を変えて行くのはそういう人たちだ。テレビ局を買収しようとしたり、既存のテレビ番組制作の枠組みの中で発想していたのでは、おそらく電波で済むものは済み、銅線で済むものは銅線で済んでしまうような気がしないでもない。むろん、技術的経済的に優れていれば代替化は進むだろう。しかし、代替はしょせん代替に過ぎない。IT革命って代替化のことだったのかいな? まあ、既存テレビと同じ手法を取るのもひとつの方法ではあるし、実際、Gyaoで大手スポンサーのCMが増えれば既存民放にとっては脅威なのかもしれない。しかし、メディアの覇権ってのは印刷機と聖書がセットであったように、その特性を生かし他のメディアを凌駕するような新しいコンテンツを創造して初めて握れるものなのだ。伝送路の変更だけなら電話工事屋さんに任せればよい。よって伝送路の品質を上げたNTTさんには金は払う。でも、我家ではテレビや電話はもう間に合っている。伝送路が良くなったからって、今以上にテレビを見るわけでもないし電話もかけない。セットで押し売りされても買わないものは買わないよ。「トリプルプレイ」で享受できる魅力的なコンテンツって一体何なのよ? 推進応援する人々は具体像を早急に示して欲しい。さてさて「自分に出来ないようなこと」を偉そうに吠えてるだけなので、そろそろお終いにするが、最後に気になったことをひとつ。「トリプルプレイ」って野球では守備側が首尾良くあっと云う間に3つアウトを取る「三併殺」のことだったよな。あれ?IT業界っていつから守備側に回ってしまったんだろ? それともこれは既存メディアの守備でトリプルプレイが成立し、IT業界の攻撃終了って意味かいな?

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