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裸の王様、城を去る

鳴り止まぬ目覚まし時計が止まった。元銀行頭取は元々彼を担ぎ出した立役者だ。すべてを知る氏は98年までの清算を行わなければ破滅することも知っており、民主主義の目覚まし時計をセットした。ところが目覚まし時計は壊れていたのだ。遠くで聞いている分には心地よい響きも耳元で鳴り続ければヤカマシイ。何より目覚まし時計は起床し活動するために使うものであって聞き続けるものではない。スイッチが壊れて修理不能な目覚まし時計は当然お取り替え。彼の功績を称えるならばそれは田舎の既得権益に群がる利益共同体を完膚なきまでに破壊したこと。これは時代の要請であり、彼が改革の先駆者とされた理由でもあったが、彼が居なくとも遠からずその変化は訪れていたと思う。バブル崩壊以降に顕在化した制度疲労は国はもちろんどこの県にもあり、五輪とそれに伴う過大な公共投資が財政を圧迫していた長野県ではそれがいち早く2000年に革命的な変化として表れただけのことなのだ。2002年には国でも小泉内閣が発足し、賎民資本主義者による流血改革が始まったし、今年2006年、最後まで土建屋知事が居座った岐阜県あたりでも目覚まし時計が鳴り始めている。ところが先駆のはずの長野県ではこの6年間目覚まし時計がやかましく鳴り続けているだけで、ロクなリコンストラクトが行われていない。目玉の大きい元国会議員よろしく「小さなこともこつこつと」やっていると云えば聞こえも良いが、実態はNPOがやるようなことを県が直接行い話題を集めているような事業ばかり。全国で唯一、借金を減らした県などと大宣伝も打ってきたが、内実は嘘八百。特別会計分までもを算術式に加えて弾き出したイカサマデータを堂々と出してしまった。借金も減らしたが貯金も大幅に減らしてしまい、差し引きでは逆に借金が増えている有様。メディア操作の腕前だけは超一流なのだ。そんなこともあって遠くで見守る人々は「改革の方向性やよし」と未だに褒め続けているが、身近にいる人間はたまらない。特にヒステリックな目覚まし音を近くで聞かされ続けた県職員が健康を害する者が続出する始末。何故なのか。その内実を最も知っているからだ。何も知らない人々は怠け者の県職員と既得権益に固執する県議会という抵抗勢力が改革を阻止しているからとステレオタイプに信じ込んでいるらしく、彼が負けた今回の選挙結果によって改革が後退するだの利権政治が復活するだのと叫んでいるが、旧体制を担った連中や県民もそこまで馬鹿ではない。そんなものは6年前の政治状況なのだ。いまどき無駄な公共事業で食えると思っている土建業者などいない。業態転換までして必死に生き残ろうとしている業者も少なくない。時代は変わり、誰もが変わった時代の中で如何に生きていくかと考えている。革命家は用が済めば惨殺されるか失脚するのが歴史の常。破壊と創造を同時に成功させた政治家は少ない。自分が変えた状況に自分自身がついて行けなくなってしまうからだ。有能なブレーンとけんか別れを繰り返し、裸の王様になってしまうような人にこれ以上の期待するのには無理がある。成功事例とされる3セクしなの鉄道の黒字化でさえ、結局はHIS社長とけんか別れをしてしまった。3セクエムウェーブを黒字化した反改革派?市長の方が波風立てずに粛々と仕事をしているではないか。(笑) 現松本市長もサリンの報道被害者氏もみんな怒って去っていってしまった。そのあたりがすべて。外面は改革派のヒーロー、内実は知事の地位という最も古典的な「既得権益」に拘った改革貴族。私にはずっとそのようにしか見えなかった。今度は棺桶に半分足を突っ込んだような方が知事になった。失礼な書き方をしてしまったが、既に地位も名誉も獲得した御老人。ここで長野県を財政再建団体にする道筋を付けてしまったら、今までの地位や名誉も水の泡。昔から実直誠実で知られる方なので、歴史を戻し晩節を汚すようなことはしないだろうと信じたい。

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