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プロレタリアートの秘かな愉しみ

酒は少量、愉しんで飲むのが一番。深酒自棄酒はするものじゃない。飲酒運転も絶対に×。さらに、酒の飲み方で私が気になっているのは、分相応の酒の愉しみを知るべきだってことだ。ロマネ・コンティを飲むのが夢ならばそれはそれで構わないし、テイスティングそのものを趣味にするのならば財産叩いて研究すればいい。しかし、飲むのが目的ならば格付けなんて少なくとも庶民には関係ない。ワインの格付けはもともと欧州の階級社会の中で形成されてきたもの。貧乏人が城に忍び込んで王座に座って王冠を頭に載せて悦に入っていても仕方が無いではないか。何も知らず高級ワインを飲んだところですぐにお里が知れるわな。階級社会をぶっとばすアナーキーな行為と考えれば面白いってハナシもあるが、とりあえずそういう行為はワインの生産者や欧州の文化伝統に対して失礼だ。今年もあとわずかでボジョレーヌーボーの季節。収穫を祝い新酒を愉しむことは広く庶民にも許されるだろう。しかし、解禁日に成田空港まで行って飲む奴って、やっぱり何か間違っている。日本の商社やスーパーが現地で高値で買い付けているのはボジョレーヌーボーだけではなく、「顰蹙」も買い付けているとの話も聞く。もっと淡々と愉しめないものか。たくさんは飲まないが私も自宅で酒を飲む。庶民的な料理に合った庶民的な酒を選ぶのが身上だ。日本酒は時折行く新潟県内で地元の特別有名ではない酒造場の安い銘柄を買ってくるのが愉しみで、ワインに関しても地元のワインが大好きだ。原産地呼称管理制度なんてものもあって、とりあえず真面目に生産したものであれば、庶民が愉しむ酒としては十分な品質はある。無いのは格付けだけ。もし、新酒を楽しみたいのならば、生産者の顔が見えない地球の裏側のワインを選ぶよりも、誠実に働く地元の農家やワイナリーの人々と共に収穫を祝って地元のワインを飲んだ方がずっとヌーポーの趣旨に合っているのではないかとも思う。そんな私の秘かな愉しみはシュトルム。シュトルムとは発酵途中のワインを瓶に詰めたにごりワイン。あるのはこの時期だけ(今年は10月10日発売よん)。量もわずかしか作れず、毎年1ヶ月以内に完売してしまうのだが、ワイナリーでしか売ることが出来ないという酒税法上の制約もあるため、実は自分からワイナリーに直接出向けば案外簡単に入手できる。アルコール度数は5~6%程度、悪く云えばジュースみたいなものだ。格式としてもほとんど無いに等しいものなので、価格は750mlで1300円程度。ボジョレーヌーボーの若い味に秋を感じるのも風情なんだろうが、アレをホントに美味いと思って飲んでる庶民(素人)っているのかな。私はシュトルムの方に小さい秋とささやかな幸せを感じるけどね。(笑) 実はこのワイナリー、1999年に国際コンクールで金メダルを受賞し、誰もが知ってるあのオデコの広いソムリエ氏も大絶賛されているのだ。にもかかわらず「コンクールに迎合するワイン作りは往々にして没個性となりワイン本来のよさを失いかねません。そこでしばらくの間自分たちの作りたいワインは何なのか、個性とはなんなのかを冷静に追求する目的でコンクール出品を控えたいと考えております。」との声明を公開。このストイックさこそ表彰ものではないか。ホンモノの職人だあね。まあ、金の余っている人は薀蓄をツマミに高い酒を飲むべし。その方が経済が活性化するだろう。貧乏人の私は良いものを分相応に秘かに愉しみたい。

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