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休刊情報

68bf6d46.jpg30年間地元の書店に並んできたタウン誌が昨年いっぱいで棚から消えた。このタウン誌は地方都市で発行されるこの手の雑誌としてはおそらく最古。31の出版社が加盟するタウン情報全国ネットワークは、1月29日を「タウン情報誌の日」としているが、それは1973年にこのタウン誌が創刊された日に因んでいる。なんとわが街のタウン誌は業界のパイオニアだったのだ。そのタウン誌が休刊した。発行会社は解散、特別清算手続きに入り、社員20人は解雇された。発刊してまもない頃の同誌は、当時10代前半だった私にとってまさに街への扉だった。誌面からは60年代に米英で生まれた若者文化が都会を経由してようやく田舎都市に流れ込んできたような新しさもあった。その頃の地方出版物といえば新聞のような活版印刷が主流、このタウン誌はツヤのある紙に写植で印刷されているというだけでもナウかった。(笑) 私自身もプレゼントに応募したり投書欄を利用した記憶がある。今でも旅行に出かけるとその土地のタウン誌を買って街を歩くことがあるが、わが街のタウン誌は広告と割引券ばかりで薄っぺらな他の地方都市のそれと比べると内容のあるしっかりとした誌面で、それは永年にわたり密かに自慢できるものでもあった。しかし、近年わが街でも後発のタウン情報誌が複数刊行されている。これらの情報誌、装丁や写真など見た目には大手出版社の雑誌と変わらない出来だ。比べると老舗の方はかなり地味。既に私自身はタウン誌を買うことはあまりないのだが、家人が買うのはムックを除くとほとんど後発の方。数年前、老舗誌の方にファッションホテルの広告を見つけた時、これはかなり厳しい状況にあるのかなとも思ったものだ。そして遂に今回の決定。結果だけをみれば、さもあらんという状況はいくつもあることはある。この老舗誌の仕事をしたあるタレントが「現代を生きている若者の感性と大幅にずれてしまっている。」とその保守性を批判した文章すら読んだ。ま、その通りなんだろう。30年の歴史を持つということは30年間働いてきた方もいるということだ。実際、この編集部の平均年齢は高く社員率も高い。一方、後発誌のライターはみな若い。そして社員率は低い。もともと大手出版社の周辺で契約ライターやらアルバイト!をしていた連中なのだから、とりあえず仕事は出来る。こりゃ経費人件費等々考えれば営業的には勝負あって当然だ。しかし、どうなんだろ。こういう状況は昨今、他のメディア関連業種やサービス業種でも共通しているんだろうとは思うが、いくら競争社会だからといって40歳定年みたいな業界ばかり作ってしまって世の中の人々は本当に幸せに暮らせるのだろうか。社会に出ても社員として採用されず、30歳くらいなってやっと社員になったと思ったら40歳になったら感性が古くなったと定年。苦労したなりに仕事は出来る人々だから以降はフリー(自営)で食い繋ぐ。むろん、それは仕事師としては立派な人生だとは思うが、その仕事相応の報酬が得られているようにはとても思えない。一方で定年を65歳にしましょなんて話もある時代だというのに50代の人々が20代の連中と同じことやらされて競争してる業界なんてのは大局的にみれば衰退するんじゃないかとさえ思う。競争!競争!と発破をかけつつ我が身を削り衰退しているのが昨今の日本。若者、中年、年寄りが一緒に生き生きと働いている業界を探すのは難しい。

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