神風・愛の劇場スレッド 第65話『明かせない真実』(前編)(7/30付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 30 Jul 2000 23:41:59 +0900
Organization: So-net
Lines: 425
Message-ID: <8m1ers$i96$1@news01bj.so-net.ne.jp>
References: <8jphm0$d23@infonex.infonex.co.jp>
<8kas3s$bki$1@news01cd.so-net.ne.jp>
<8kemrl$7pn@infonex.infonex.co.jp>
<8ksgpb$l2f$1@news01cf.so-net.ne.jp>
<8kujuu$hlj@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<8kujuu$hlj@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

 こんにちわ。先週は有り難うございました。
 あの記事のフォロー記事も後で書きます(番外編2とも言う)。

 今回のお話は長いので、フォロー記事&前編、後編の二分割となっています。
 これは、フォロー&前編です。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
 作品世界が壊れるのが嫌な人は、読まないで下さいね。



>ですですっ。(影響されやすい性格 ^^;)

 セルシア語って難しいですですっ(笑)。

>確かに都ちゃんは体験の幅が広いですね。^^;

 都ちゃんに関しては、以前から裏設定があり、今回それを出しました。

>>> ★神風・愛の劇場 第63話『汚れ無き世界』
>
>ゲートが二重扉になっているのが興味深いです。最初に連想したのは宇宙船。
>でも、中はスペースコロニーだった模様。(笑)

 魔界を出した時に、書いた本人にはその気は無かったのにえせえふだと言われ
たので、今回はえせえふっぽく(嘘)。

>体裁だけ取り繕った理想郷って感じがします。
>もっとも、堅苦しい所程、ウラでは乱れているものなんですけど。(爆)

 ぎくぎく(汗)。

>しかし、何ですね、美味しそうなキャラです。天使達。特にセルシア。^^;
>当然、また出てくるんでしょうね。一度だけのゲストなんてもったいない。

 実は一度だけのゲストの積もりだったのですが(笑)、こうなった以上出番を
作らなくてはいけませんですですっ(笑)。

>★神風・愛の劇場 第64話『距離』

 なんと、一話で二日も進むとは…(笑)。
 これで父が悪魔に取り憑かれていて…という展開であれば、そのままシリーズ
の一話に出来そうな家族話です。これが和解の第一歩につながると良いのですが、
きっと道は平坦では無いのでしょうね。

 相変わらず鋭いツグミさんの感覚。
 それだけで無く、感覚から得た情報を整理して、推理していく能力が素晴らし
い。将来の名探偵かな?

 では、本編記事へと続きます。
 今回はいつもよりも「低い」です、ご注意(笑)。


★神風・愛の劇場 第65話『明かせない真実』(前編)

■名古屋稚空編 1/20(木)

●オルレアン エントランス

 その日の稚空は、都とまろんと一緒にオルレアンに帰って来ました。
 メールボックスを覗くと、何やら沢山郵便物が入っています。
 大半はダイレクトメールでしたが、中に新聞が二つ。
 一つは購読している新聞でしたが、もう一つは頼みもしないのに向こうから送
りつけてくる新聞なのでした。

「げ…」

 それを見た瞬間、都の方を見ます。
 しかし、行動を起こす前に都は「それ」を手にしていました。

「げげ…日刊恐怖新聞じゃない。
 暫く届いていなかったけど、まだやってたんだ…。弥白も相変わらずよね。
 何々? プライベート写真集? 
 そんなの作って自慢でもする積もりなのかしら?」
「そうらしいな」

 稚空は、弥白がこの前ばらまこうとした様な内容を「弥白新聞」にまた書いた
のでは無いかと危惧したのですが、紙面は新聞本来の内容である、弥白の提灯記
事が並んでいました。

「弥白さん、悪魔をチェックメイトしてからは元に戻ったみたいね」
「ああ」

 まろんのメールボックスにも「弥白新聞」が入っていたらしく、小声で話しか
けられ、稚空も肯きました。

●稚空の部屋

「アクセスの奴、まだ帰ってないのか?」

 アクセスが天界へ向かってから三日が過ぎました。
 もう帰っているだろう、と毎日思うのですが、今日もまだアクセスは帰って来
ていないようなのでした。
 まろんもフィンがいない間こんな気持ちだったのかと、ふと考えます。

 玄関から廊下を経てリビングに入りますが、やはりアクセスの気配はありませ
ん。
 ソファに腰を落ち着けた稚空は、まず「弥白新聞」を広げます。


「日刊弥白新聞(1/20)

 弥白様写真集撮影順調!
     驚きの大胆ショットも

 先週より某所にて撮影が開始された山茶花弥白様のプライベート写真集。
 撮影カメラマンの名前は公表はされていないが、誰でもその名を知っている世
界的に有名な写真家で──」


 隅から隅まで読みましたが、以前の弥白新聞の様に自身に関する話題しか載っ
ておらず、安堵します。
 新聞に掲載されている内容を見る限り、弥白は大会へ向けての新体操部の練習
にプライベート写真集の撮影にと、忙しい毎日を送っているようです。

 稚空は、新聞を丁寧に折り畳むと、納戸のストッカーの中に入れました。
 納戸の中には、「弥白新聞」のこれまでの号が全て整理され、収納されていま
した。

 リビングに戻った稚空は、愛用のパワーブックを広げるとインターネットに接
続します。
 そして、真っ先に毎日巡回しているホームページを閲覧します。

「弥白新聞Web(最終更新 西暦2000年1月19日)

 弥白日記

 1月19日

 今日は練習が無かったので、授業が終わってすぐに撮影に行きました。
 車で行ったのですが、その途中で変な子に会いました。
 人家もまばらな県道の歩道を足が悪いのか杖をつきながら10歳位の男の子が歩
いていました。
 気になったので、車を停めて貰って送りましょうかとその子に言ったのですが、
その子は、リハビリ中だから歩いて行きますときっぱりと答えたので、気になっ
たけど、そのまま撮影に向かいました。
 暗くなった頃にその日の撮影も終わり、家に向かっていると、その子がまだ、
さっきとは逆の方向に歩いているのが見えました。
 驚いて車を停めてその子にまた声をかけました。
 その子はまだ自分で歩くと言っていましたけど、有無を言わせず車に乗せまし
たの。
 車の中で色々その子の話を聞きましたわ。
 その子はこんな足になる前に、海に沈む夕陽を見るのが日課で、こうしてリハ
ビリ代わりに毎日海まで歩いているとか。
 でも残念な事に、今週は曇ったり雨が降ったりでまだ見る事が出来ない。それ
も、いつも誰かに助けて貰っていたので、今日こそは自分一人で歩いて行こうと
思ったら、日が沈むまでに目的地までたどり着けなかったとのこと。
 もっとも、今日も曇っていたから、辿り着けたとしても無駄足でしたでしょう
けど。

 ね、変な子でしょ? その子は家に続く分かれ道でその子を下ろしたんですけ
ど、まさか明日も同じ場所に向かって歩いていたりするのかしら──」


「こいつは…」

 弥白のホームページの日記に貼り付けられていた写真に、稚空は見覚えがあり
ました。
 それは、最早この世に存在しないはずの人間。

「高土屋全…そうか、この子が都の言っていた子か…」

 稚空は、都が出会った不思議な子の話を思い出しました。
 稚空は一旦オフラインにすると、メーラーを立ち上げてメールを書き始めます。

 宛先:山茶花弥白 <yashiro@…>
 件名:写真集について

 弥白へ。
 弥白新聞を見た。相変わらず元気そうで何よりだ。
 冗談かと思っていたら、本気でプライベート写真集を作るとの事で驚いた。
 大胆ショットとの煽り文句だが、まさかヌード写真集でも作る積もりじゃ無い
だろうな。
 俺には理解出来ないが、世の中にはセルフヌードを撮りたがる人も少なくない
らしいから、止めはしない。
 ただ、もし本当にそうだとしたら、配る相手は良く良く考えた方が良い。
 特に神楽はあれで堅物だから、そんな事を知ったら卒倒しかねないからな──」



「アクセスの奴…いつ戻って来るんだよ」

 夕食の準備をしながら、稚空はブツブツ呟きます。
 アクセスが帰って来たらお祝いをする積もりで、昨日からご馳走を作って待っ
ていたのです。
 ですが、今日もアクセスは帰って来る様子がありません。
 昨日作ったご馳走は冷蔵庫に入れてありましたが、流石に何日も置いて置く訳
にはいかず、帰って来る来ないに関係無く今日食べる積もりでした。

「一人で食べるのも何だな…。そうだ」


●オルレアン 7F廊下

 稚空は、まろんの部屋の呼び鈴を押しましたが、返事はありませんでした。
 部屋の鍵もかかっているようです。

「稚空!」

 留守なのかと思って部屋に戻ろうとすると、都に声をかけられました。

「まろんなら留守よ」
「そうらしいな」
「何か急用?」
「急用って程でも無いんだが…
 実は、夕食を作り過ぎたんでまろんを誘おうと思ってな」
「ほほー。そう言う口実で、まろんと自分の部屋で二人切りに…」

 ジト目で都は言いました。

「俺はそんな積もりで…」
「でも残念ね。まろんなら、今日は多分帰って来ないんじゃないかな」
「え!?」
「さっき、出かけて行ったわよ。行き先を聞いたら誤魔化してたから、
 きっとあの女の所ね」
「あの女?」
「あ、いや何でもない。とにかく、夕食は外じゃないかな」

 都の態度から、稚空はまろんの行き先が想像できました。
 女友達と言うには余りにも親密な二人。
 しかも泊まりと聞くと、何も無いだろうとは思ってもやはり不安に感じます。

「そうか…。それなら都、今日は家で夕食を食べないか?
 いつも夕食に呼んで貰ったり、おかず届けて貰ってばかりだからさ」
「いいわよ」
「え!?」

 都を誘ったのは、冗談の積もりでした。本当に普段の調子で誘ってしまったの
です。
 そして言った直後に、稚空は自分の軽率さを呪いました。
 都が来る筈は無いと。
 都には三度三度の食事を作ってくれる家族がいるというだけで無く、あの忌ま
わしき思い出の場所に自分から行きたがるとは思えなかったから。
 そして、その思い出の相手である自分と二人切りになりたがる筈が無いとも。
 にも関わらずあっさり肯かれ、逆に慌てました。

「良いのか?」
「自分から誘っておいて、何言ってんのよ。
 まぁ、まろんの代わりってのがちょっと気に入らないけど…。
 じゃあ、ちょっと支度して後で行くね」

 都はそう言うと、部屋の中へと戻って行きました。

(本当にあの時の事は吹っ切れたのか? 都…)


●再び稚空の部屋

 都が稚空の部屋を訪れたのは、夕食の支度がほぼ出来上がった頃でした。

「お邪魔しま〜す」

 都は、何やら紙袋を下げて部屋を訪れました。

「その荷物は何だ?」
「あ、これ? お呼ばれするだけじゃ何だから、お土産」

 そう言うと、都は袋から瓶を取り出しました。

「シャンパンか!?」
「そ。お父さんのをちょっとね」
「良いのか?」
「貰い物みたいよ。まだもう一本あったし。それとまだあるのよ」

 更に、袋の中からキャビアの缶詰、チーズなどが取り出されます。

「これも冷蔵庫に残ってたの。
 キャビアもイランに行ってた人のお土産なんだって」
「ううむ、これだけ貰っちゃうと、何だか悪いな」
「まぁまぁ、気にしないで」
「それにしても…刑事の娘が良いのか?」
「だからよ。父さんうるさいから、こういう機会じゃないとお酒も飲めないわ」
「ひょっとして都…結構いける口なのか?」
「ヘヘ…父さんがいない時、母さんとちょっとね」

 そう言うと、都は舌を出しました。



「ご馳走様! 美味しかった〜」
「お粗末様でした」
「流石稚空ね、料理も上手〜」

 そう言う都の頬は、シャンパンでほんのり赤く染まっています。

「結局一本丸々開けてしまったか…。都も結構飲めるんだな」
「まだまだ大丈夫よ」
「じゃあ食後酒でこれ行ってみるか?」

 稚空はキッチンカウンターの中に入ると、瓶を持って来ました。

「何これ?」
「まぁ飲んでみな」

 稚空はその瓶から少しだけグラスに注いで都に渡しました。

「甘〜い。何よこれ」
「貴腐ワインって奴さ。結構な値段なんだぜ、これ」
「稚空ってこんなの飲むんだ」
「俺じゃないさ。あいつが甘いの好きなんだ」
「あいつ?」
「あ…いや、その…」
「ふ〜ん、まろんとはもうそんな関係なんだ」
「違〜う!」
「違う? まさか、まろん以外の誰かと付き合っているとか?」

 都にジト目で言われ、稚空は答えに窮しました。

(弱ったな。まさかアクセスの事だなんて話せないしな…)

「そうよね。稚空、格好良いもんね。
 まろん以外に付き合ってる女の子いても不思議じゃないよね」

 都は酔っているのか、しつこく絡みます。

「俺はまろんだけだ!」

 言ってしまってから、稚空は自分の迂闊さを再び呪いました。
 自分の事が好きだと告白してくれた都。
 それを振った自分。
 そうでありながら、都を汚してしまった自分。
 その子の前で、俺は…。

「そう…だよね」

 都は急に寂しげな表情になると、ワインボトルを手に取り、手酌でワインをグ
ラスに満たすと、一気に半分ほど飲みました。

「おい、都無茶するな…」

 都は黙って足元に置いてあった紙袋からごそごそと何かを取り出しました。

「これ、稚空のでしょ?」

 都が取り出した物は、シャツでした。
 きちんとアイロン掛けされたそれは、確かに稚空の物のようです。
 どうして都がと一瞬思いましたが、すぐにあの時のシャツだと思い当たりまし
た。

「やっぱり稚空のなんだよね。
 ゴメン、もっと早く返したかったんだけど、きっかけを掴めなくて」

 都が差し出したそれを稚空は受け取ります。

「都が謝る必要なんて無い。悪いのは俺の方だ。
 その…今まで言えなかったけど俺、都に酷いことを…」
「その事なら気にしないで。あたし、今でも稚空の事が好きだから。
 だから、稚空とあんな事になっても…その……」
「でも俺は都に告白されて、それで振っておきながら…」
「それはあたしも同じ。あたしもまろんが稚空の事を好きだと知っていて、
 稚空の事を受け入れてしまったんだもの。
 あたしのした事は、まろんに対する裏切り」
「都は何も悪くない」
「有り難う。でも大丈夫。あたし、まろんにこの事はもう話して謝った。
 だから、この事はもう気にしないで」
「都」
「この事はお互いの気の迷いからの過ち、
 忘れましょう…って言うのが普通なのかも知れない。
 でも、あたしにはそんな器用な事は出来ない。
 だから、この事は良い思い出として取っておく事にする。
 だってあたし、初めて出会った時から稚空の事を好きだったし、
 稚空の心があたしに向いていないって知っても、
 その心は変わらなかったもの」

 都はグラスの残りのワインを今度は一口飲みました。

「だから、稚空にもこの事は良い思い出として覚えていて欲しいの。
 それとも、稚空はあたしの事が嫌い?」
「そんな事は無い。俺も今でも都の事は好きだ。
 もちろん、俺の一番はまろんだ。だから都はその次に好きだ」
「有り難う。でも、弥白はどうなのよ。元婚約者なんでしょ」
「あいつは、俺にとって特別な存在なんだ。
 だから、順番なんてつける事が出来ない」
「正直ね。上手く逃げられた気もするけど…」
「すまない…」
「良いわ。稚空があたしの事をまだ好きでいてくれて良かった。
 話を元に戻すけど、あの日の出来事は、稚空も良い思い出にして欲しいの」
「判った。都がそれを望むなら」

 流石に悪魔に取り憑かれていたのでその時の事は覚えていないとは言えません。

「ゴメンね。せっかく誘ってくれたのに、暗い話にしちゃって」
「いや…」
「それじゃあ気を取り直して飲み直しましょうか」
「おい、まだ飲むのかよ」
「あら、稚空のグラスが空〜。ほら、グラス出しなさいよ」
「いや、俺は…」
「あたしの酒が飲めないって言うの!?」

 都の勢いに押され、稚空はグラスを差し出します。
 グラス半分まで注いだ所でボトルは空になりました。

「あら? もうお終い?」
「ああ。飲みかけだったからな」
「まぁいいや、それじゃあ、二人の和解を祝して乾杯〜」
「乾杯…」

 グラスを合わせると、都は残りのワインを一気に空にします。

「あ〜やっぱり! 稚空も相当好きよね」

 都はキッチンカウンターの中に入り込むと、冷蔵庫の中から勝手にお酒を持
ち出します。

「程々にしておいた方が…」
「大丈夫! 今日のあたしは、とことん飲みたい気分なの。稚空も付き合って」

 見たところ、都の足取りはしっかりとしていましたし、口調も割と冷静です。
 顔は少し赤くなっていましたが、顔色に出ないより却って安全です。
 稚空は、都が飲んだ分量を計算して、決めました。

(もう少し、付き合ってやるか…)

(第65話前編:完 後編に続く)

 酔っぱらい都の活躍や如何に(嘘)。
 では、後編へと続きます。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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