神風・愛の劇場スレッド 第50話 『夢魔』前編(5/23付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: hidero@po.iijnet.or.jp
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 23 May 2000 12:03:31 +0900
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Lines: 440
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佐々木@横浜市在住です。

<8g80si$db2$1@news01cf.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

# 快調に筆(キー)がかっ飛んで長くなったので2分割。^^;;;
# こっちが、フォロー+前編です。

>>  このスレッドは神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
>>  神風怪盗ジャンヌの世界観を壊したく無い人は読まないで下さい。
>>  では、ゲームスタート!

という事でよろしくです。


>>  東映ならばまず「月」を出して頂かないと…。待ってるんです、実は(汗)。

あれほど一世を風靡した作品すら出てないんですよね。
# 売れると思うんですが。むしろあまり遅くなると商売にならないかも。

>>  ちなみにプリンセスナインにはやられました。LD全部買った直後にDVDが…。

最近で「ムッ」となったのは「トライガン」「ガウル」、OVAですが「ジオブリ」。
# … 全部ビクターやん。^^#;;;;;

>>  泣きながら全部買いました。

それはそれは。^^;;;

>>  それとも、リバーシブル(専門用語)な関係?

上になったり下になったり。

>>  あら、シリーズ構成壊しちゃいましたか(汗)

あ、お構いなく。たぶん私も頻繁に
石崎さんの予定をブチ壊しているでしょうから。^^;;;;;;;;;;;;;;;
# 前回のエピソードは、あまりハズしてなかった様で
# 胸をなで下ろしています。

>>  オチとしては、最終決戦後にいた筈の人がみんないなくなっていて、いなくな
>> った人に関わっていた筈の人も、その事を忘れてしまっていると(笑)。

で、居なくなるのは、まろんちゃんで都ちゃんが
まろんちゃんを捜す旅に出るんですね。(そりゃ第3部)

>>  ちなみにツグミさんが病院を出た時に落ち込んでいたのは、こちらのシリーズ
>> 構成に合わせて頂いたのでしょうか。申し訳ないです。今回、話を摺り合わせた
>> 積もりです。

毎度ながら手間をお掛けします。m__m
# リレーって、手の内の明かし加減が難しいですね。
# 詳しく予定をお話しすれば最初から統一されたシリーズ展開に
# なるのでしょうけど、出来れば自分のパートでは石崎さんにも
# 驚いてもらいたいという思いもありますし。

>> ★神風・愛の劇場 第49話 『複製物』

悪魔な皆さん(フィン含む ^^;)が大活躍ですね。
特にノインがまともに話に絡んだのは久しぶりな。(笑)
女生徒を強迫する教師って、とってもイヤ〜んな感じがして素敵です。*^^*
そして何よりも心掛けは格好イイのに最後がちょい情けない稚空が
いかにも彼らしいです。(ひどい言い方ですが ^^;)

ミストの昔語りはとっても気に入りました。(神が悪の元凶と m・・φ)
こちらの構成にも徐々に取り込んで行きたいと思います。
特に大きな矛盾はありませんから、すんなり行くでしょう。
それにアキコには優しい面を見せるというのもバッチリです。
この2人(どちらも人外ですけど)の関係は佐々木的今後の展開に
とても重要なのですが、まさにああいう関係で無いと困るので
非常に助かります。

# ちなみに某所のアーカイブの目次ページで
# 第49話の作者が私になってますが。^^;

# 本編行きます。佐々木得意の "げろげろダーク話" 発動。(笑)
## 気分が滅入っている時と食事前は読まないほうがいいでしょう。^^;


★神風・愛の劇場 第50話 『夢魔』前編


●桃栗学園・調理実習室

その日、学園の午前中最後の授業は調理実習になっていました。
実習室に集まっている生徒達。担当の教師が予め用意していた見本の
料理を味見する所から始めています。お題はミートパイ。
一口サイズに切り分けてあるパイを次々に手に取ると、
あちらこちらから感嘆と思しき声が上がります。

「さぁ、それでは皆さんも作ってみましょう」

教師の言葉が生徒達の間を縫って奔ります。

「先生、材料が足りません」
「アップルパイのはずでしたよね?」

生徒の誰かが応じました。

「心配いりませんよ。学園内で調達出来ます」
「学園内の…何処で…ですか」
「捜すのです。さぁ、お肉を提供してくれる代表を」
「先生、誰ですか、それは」
「判るでしょう、今、此に居ない人達です」

生徒達は周りを見回して、そして頷きました。

「日下部さんと東大寺さんが居ません」
「それと名古屋くんと委員長も」

教師は頷き、そして皆に諭すように言いました。

「それでは、今日は女の子を使いましょう」

生徒達は「はい」と返事をして実習室を出ていきました。
皆、赤い目を輝かせながら。

●同学園・保健室

保健室のベッドの上。その日、まろんは体調がすぐれず1時限目が終わると
すぐに此にきて休憩していました。休み時間に様子を見に来た都、稚空、
そして委員長が心配そうに覗き込んでいるのですが、
まろんは熟睡している様子でした。

「いい気なもんだよな」
「日下部さんは、別にサボっている訳じゃ…」
「これだけ気持ち良さそうに寝てれば同じよ」

話し声に気付いたのか、薄目を開いたまろん。

「あ、都だぁ…」
「だぁ、じゃ無いでしょ。どうなのよ、調子は」
「うん。もう平気」
「ならさっさと起きなさいよ」
「次の時間、何だっけ」
「調理実習」
「うぅ、急に眩暈が…」
「そんな事言わずに俺に何かつくってくれよ」
「自分でやって」
「何でもいいですけど、もうそろそろ行かないと」
「いいのよ別に。下ごしらえ終わった頃に顔出せば」
「それは顰蹙ものですよ」
「わかった判ったって。じゃ行くからね、まろん。後で顔出しなさい」
「うん。そうする」

都達は出ていってしまいました。
休み時間が終わると校舎の中でも保健室の辺りは特に静かです。
でも今日はずっと静かでした。耳の奥ではゴーゴーという雑音が
何故か鳴り止まないのですが。
どうやらまた眠ってしまったらしく、はっと気付いたときは
随分と時間が過ぎているという確信がありました。
と、ガラガラと音を立てて誰かが扉を開けて入ってきます。

「誰?都?」
「日下部さん、居るの?」

都ではありませんでした。別の女生徒の声です。

「今、起きようと思ってたトコなの」

まろんは答えました。すると。

「ううん。起きなくていいよ。そのまま横になってて」
「え、何で?」

女生徒がベッド脇に立ちました。

「その方が刻み易いでしょ?」
「刻むって、どういう意味…」

聞きながらも、まろんは半身を起こし始めていました。
何かがそうすべきだと囁いています。

「もちろん、日下部さんを」

女生徒は言い終わらないうちに後ろ手に持っていた庖丁を
降り下ろしました。どすっんと音がして、それからキリキリと
ベッドが啼きました。庖丁とスプリングが擦れています。
まろんはベッドの反対側に身を躍らせると、視線は逸らさずに
床の上の靴に足を滑り込ませました。

「何をするの!」
「皆で決めたのよ。今日のミートパイの材料は日下部さんと」

まろんは既に女生徒が正常ではないと判断していました。
多分、彼女は。

「東大寺さんよ」
「都!」

ベッドを勢い良く押し返すと、女生徒はバランスを崩して倒れました。
一瞬だけ、彼女に怪我は無いかと気になりましたが、それどころでは
ありません。都を捜さなければ。でも、きっと大丈夫。
稚空が一緒のはずだから。それと、委員長も。
そう思ったとき、まろんにわずかながら笑顔が浮かびました。
本人に悪いとは思いながらも、委員長が頼りになるかなぁと疑問だったからです。

●再び調理実習室

実習室の調理台は理科実験室と同じ造りで広々とした机が流し台を
挾んで2つずつ対になっています。今、その机のひとつを数人の生徒が
取り囲んでいます。机の上に横たえられた生徒を、その中の何人かが
押さえ付けています。

「どうしちゃったのよ、離して」

都の呼びかけにも応えるものはありませんでした。
ただ、薄ら笑いを浮かべているだけ。そして…。

●中央階段

廊下を突っ切って本校舎のホールへと入ったまろん。
階段を駆け昇るとざわめきが聞こえました。
2階の廊下へ飛び出すと椅子を構えた稚空が4〜5人の生徒に
囲まれているところへ出くわしました。

「稚空!」
「無事か、まろん」
「私は大丈夫。都と委員長は?」
「はぐれちまったんだ」
「何処で?」
「調理実習室へ行ったらいきなり襲われて」
「じゃぁ都達はまだ…」
「判らない。俺は大丈夫だから、まろんは」
「気を付けて、私、行くね」

稚空は自分で何とか出来るだろうと信じて、まろんは再び
階段に向かうと3階の調理実習室を目差しました。
しかし、途中の踊り場で、まろんは足を停めることになります。

「都!どうしたの?」

隅で都がうずくまっています。片手を壁について、もう片手で
お腹を押さえているのです。とても苦しそうに見えました。
でも何故か、まろんは近づいて都に触れるのをためらいました。

「どうして…」

都が言いました。絞り出すように、苦しげな息の下で。

「皆でミートパイを作るんだって。まろん知ってた?」
「しっかりしてよ都。皆、変になってるのよ」
「…そうかもね。ねぇ、まろん」
「何」
「どうしてあんたは何時も肝心な時に居ないの」
「え?」

よろよろと立ち上がった都が、こちらを振り向きました。
途端に踊り場の床一面がねばねばして、まろんの足を捕らえます。
見ると、都の身体は、ぼろぼろの制服で覆われていて
ほとんど裸同然でした。そして。

「もう、あんまり残ってないけど。まろんにもあげる」
「都…」
「ほら、あんたも欲しいんでしょ」

都が差し出した手の上には赤黒いつややかな塊が沢山。
そして手をどけた都のお腹には、ぽっかりと空洞があって
わずかに残った腸が垂れ下がって太股に纏わり着いてました。

「嫌っ」

口を押さえて後退りするまろん。壁を背にして座り込んでしまいました。
都がかがみ込んで囁きます。

「ほら食べなよ、まろん」

都は手にした肉塊をまろんの口許に押し付けました。
必死に抵抗しますが、口の中に温かい塊がぐいぐいと入ってきます。

「ぐっへぇっ」

都を押し退けて口の中のモノを吐き出すまろん。都が言いました。

「そうやって、私を拒絶するのね」

まろんの口の中の違和感が何時までも無くなりませんでした。

●日下部家

ガバッ。まろんが掛け布団を跳ね飛ばして起き上がると
そこは見慣れた自分の寝室でした。胸がむかついて仕方ありません。
こらえ切れそうに無い事がすぐに判り、まろんは洗面所に
駆け込みました。胃の中の物を全て吐き出しても、尚暫くは
吐き気が収まりませんでした。やっと落ち着いて寝室に戻ると。

「あんた、そんな所で何してるのっ?」

ベッドの脇、枕の上方に当たる机の上にミストが腰掛けて腕組みしています。
まろんの声に驚くでもなく、ゆったりとした動作でこちらを向きました。

「夢見が悪かったようだな、ジャンヌ」
「判ったわ、あのひどい夢はミストの所為だったのね」
「生憎だが、私には夢の操作はできぬ」
「嘘よ」
「嘘ではないさ」

ミストは姿勢を変えず話続けました。まろんはじりじりと
ドレッサーの側に回り込んで行きます。

「確かに我ら悪魔は人間の夢に干渉する術を使える」
「ほらね」
「話はちゃんと聞け」
「聞く耳持たないわ」
「夢に干渉するのを専門にしている悪魔も居るしな」
「何よそれ」
「夢魔という」
「あんたは違うって言うの」
「違う」
「でも同じことをしたんでしょ」
「夢魔は人間の夢に干渉して、その人間の欲望を解放する」
「欲望?」
「そうだ。だから普通は男ならイイ女の中で果てる夢を見るし
 女なら好きな男にどうにかされる夢を見る」
「全然違ったわよ!」
「おかしな話だ」
「別におかしく無いわよ、あんたが見せる夢ですもの」
「私は忠実に催淫の術を使った」
「何ですって?」
「だから欲望のままの夢を見る術だ」
「やっぱり、あんたの仕業じゃない」
「目覚めた後のお前の様子からして、私の所為ではないな」
「何でよ」
「術が成功したなら、お前は "うっとり" 目覚めるはずだ」

何を思ったか、つい赤面してしまったまろん。
ミストは見過ごしません。

「そう。そういう夢を見るはずなのだがな」
「だから全然違う夢だったって言ってるじゃない」

ミストは本心から不思議に思っているという顔をしています。
もっとも、まろんは悪魔の表情など根本的に信じてはいませんが。

「ひとつ聞くが」

ミストが言いました。

「何かしら」
「お前、変な趣味が無いか?」
「変な趣味…」

思いを巡らせるまろん。何人かの女の子の姿が脳裏をよぎります。

「別に私は」
「お前の女好きの事を言ってる訳ではないぞ」
「変な言い方しないでよ!」
「そういうのでは無くてだな」

ミストはそれから、ありとあらゆる人間の行為を一つずつ上げていきました。
幾つかは聞いたことがあり、また幾つかは、まろんには初めて聞く
代物でした。中には吐き気を催す物もありましたが夢の出来事とは違います。

「随分と物知りなのね」

まろんは純粋に感心していました。

「人間を誑かすのが仕事だからな、お前達の喜ぶこと
 嫌がること、全て心得ている」
「やっぱり、あんたの嫌がらせなのね」
「くどい女だなジャンヌ。お前に仕掛けたのは
 間違いなく欲望を呼び覚ます術だ」
「絶対に、ち・が・い・ま・すっ!」
「やっぱりお前の趣味が悪い…」

言い終わらない内に、まろんが箱ティッシュをミストに投げ付けました。
ミストはそれを首だけ捻って避けると続けて言いました。

「そうか。ジャンヌ、お前、物を "食う" 夢を見たか」

まろんは答えませんでした。それが答となるのですが。

「ふむ。性欲と食欲は表裏一体だからな。術が微妙にずれたか」
「私は、あんなもの食べたくなんか無い…」
「それも変だ。嫌いな食い物だったのか?」
「好きも嫌いも無い、絶対に食べるわけ無い物よ」
「だが、夢は絵空事では無い」
「どういう意味?」
「夢はお前の現実の体験と願望 "だけ" で出来ている」
「だからあんなもの食べないってば!」
「ならばそれはお前が現実世界で拒絶している物の象徴なのさ」
「私が拒絶しているもの…」
「精々考えてみるがいい。まだ夜は残ってる。
 もう一度、夢を見てみるのはどうだ?」
「うるさい!」

そう怒鳴ったときには、ミストは姿を消していました。

●オルレアン上空

ふわりと夜空に浮かんだミスト。月光の下で髪が光っています。
すぐ傍にノインが現れて言いました。

「あなたが夢魔の真似事をするとは」
「何か用か」
「どういうつもりです?」
「最近、ジャンヌは腑抜けているからな。
 もう少し推し進めて腰抜けにしてやれないかと思ったのだが」
「どうですか、いっそのこと、その方面に注力なさっては?」
「何が言いたい?」
「あなたは、やはりサキュバスだという事ですよ」
「消えろ」

言われるまでもなくノインは消えていました。

「それにしてもジャンヌだけでなく、私まで衰えたのか…」

暫く考え込んでいたミストでしたが。

「もう一度試してみるか」

そう言うとミストもまた夜に溶け込むように姿を消しました。

●山茶花邸

すっかり夜も明けて人々の新たな一日が始まります。
ベッドの上では目を覚ました弥白がぼんやりと自分の部屋を眺めています。
もっとも何処にも焦点は合ってはいませんでしたが。
ふと突然、目覚ましが鳴り始め、我に返った弥白はそれを止めました。
羽毛布団を剥いでベッドの上で正座をします。
そして両手の指を重ね合わせて胸元に寄せると、
はぁ、と小さく溜息をつきました。

「とてもいい夢をみましたわ」

つい独り言をいってしまった弥白。
ですが、独り言を言う前から頬は赤く染まっていたのでした。

(第50話・後編へ続く)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
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