神風・愛の劇場スレッド第45話「刻印」(前編)(5/7付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 07 May 2000 17:24:42 +0900
Organization: So-net
Lines: 376
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石崎です。

神風怪盗ジャンヌ妄想小説第45話 こちらが前編です。

ジャンヌのアニメ・原作の世界を汚されたく無い人は読まないで下さい。
では、ゲームスタート!




★第45話『刻印』(前編)

■堕天使フィン・フィッシュ編

●桃栗町中心部:桃栗タワー

 桃栗タワーの頂点で、まろんと都の様子を覗き見して、暫く孤独感に浸ってい
たフィン。

「そうよ! 私には魔王様だけなんだから…! さて、仕事仕事…。『駒』の様
子でも見に行こうかな…」

 自分で自分を元気付け、翼を広げて飛び立ったフィンは、郊外のツグミの家に
向かいます。

●桃栗町郊外:ツグミの家上空

「えっと、あの子は…。あ、いたいた」

 ツグミは、家の側にある林に向かっているようです。

「一体、何してるのかしら?」

 ツグミは、昨日の夢の出来事を確かめに林の中に行ったのですが、もちろんフ
ィンは昨日の出来事を知りません。
 フィンは林の中には入らず、そのまま待っていました。林はそれなりに木が密
であったので、翼がひっかかりそうだと考えたからです。

「あ、出て来たわ」

 林の中から一般道路の方向にツグミが出て来たのをフィンは見つけます。

「こんにちわ」

 頃合いと見たフィンは、ツグミの前に降り立ちます。

「あ…準天使フィンさんですね」

 ツグミはフィンに笑顔で答えます。

「『準天使』と『さん』は余計よ。フィンで良いわ。私達、友達でしょ?」
「判ったわ、フィン」
「ところで、まろんとは上手くやっているかしら」
「え! あ…は、はい…」

 ツグミが頬を染める様子を見て、フィンはちょっと意地悪してみたくなりまし
た。

「そう…。まろんは悦んでた? もう…したんでしょ?」
「え…そ、それは…」

 ツグミは顔をますます赤くします。

「フフ…赤くなっちゃって。かわいい」
「フィンの意地悪!」

 幸せそうなツグミを見て、フィンの胸がちくりと痛みます。

(そうよフィン・フィッシュ。これは私の『作戦』。私が望んだこと…。なのに、
この胸の痛みは何故? そうよ…まろんなんか…。私には、魔王様がいるんだか
ら…)

「あの、どうかしたんですか?」

 ツグミに言われ、フィンは我に返ります。

「あ…ごめんなさい。ちょっと考え事」
「好きな人の事でも考えていたんですか?」
「え!? や、やだなぁ。そんな事無いわよ」
「でも、いるんですよね」
「どうしてそんな事があなたに判るの?」
「私には、この神様から授かった『手』…心の眼がありますから。以前あなたに
触れた時、心が私の中に流れ込んで来たんです」

(ひょっとしてこの娘…何もかも承知の上なのでは…)

 知っていたから利用したとは言え、改めてツグミの『力』に驚くフィンでした。

「そ、そうなの…。そうね…いるわよ。今は訳あって遠く離れているけれど…」
「そうなんですか…。私はてっきり…」
「?」
「あ、何でもありません。あ、そうだ! フィンは天使なんですよね。だったら、
判ったら教えて欲しい事があるんです」
「教えて欲しいこと?」
「私、昨日不思議な夢を見たんです。ひょっとして天使のフィンなら、何か夢の
正体が判るかと思って…」

 ツグミは、昨日見た『夢』についてフィンに話します。

「…と言う訳なんです。さっき『夢』で見た場所に行ったんですけど、確かに、
誰かがいたみたいなんです。何だか気味が悪くて…」
「ふ〜ん。その『夢』で出て来た娘ってのが気になるわね。どんな娘だったの?
 ちょっとゴメンね」

 フィンは、自分の額をツグミの額にくっつけます。

「あの…」
「黙って。その娘の顔、『心の眼』で見たんでしょ。イメージして欲しいの」
「あ、はい」
「あら、この子…」

 ツグミの心からイメージを見た瞬間、夢が誰の仕業であるのか察します。

「知っているんですか?」
「ええ、まろんの知り合いよ」
「日下部さんの…」
「断言は出来ないけど、多分これは神様があなたに見せた夢なんだと思う」

 フィンはまろんを騙していた時のように、口から出任せを言います。

「神様が? まさか…」
「天使の私が言っているのよ、信じられない?」
「え…そんな…信じます」
「神様があなたに何をさせようとしているのかは判らないけど、きっと、あなた
にその娘の事を何とかして…そう、救ってやって欲しいと願っているんじゃない
かしら」
「でも…どうして私に?」
「それは私にも判らないわ。神様はあなたの『力』を借りたいと願っているのか
も知れないし、その娘の『心』をあなたなら理解出来ると神様が感じているのか
も知れない。いずれにせよ、あなたは『選ばれた存在』なのよ。あなたが何をす
べきかは、あなたが彼女の事を『見て』それから考えれば良いわ」
「判りました。でも、私は彼女の居場所を知らないわ」
「大丈夫。私が導いて上げるから。あなたの心の眼を開いて、私の眼を見て」
「はい…」

 ツグミは、フィンに心を開きます。

「あ…」

 ツグミは硬直します。その目は開き、赤く輝いています。

「まず、その前の道路へ出て、道なりに真っ直ぐ進むのよ」
「まず、その前の道路へ出て、道なりに真っ直ぐ進みます」

 フィンが何かを言う度に、ツグミはその言葉を抑揚の無い声で復唱します。

「あなたは、私と出会った事は忘れるのよ」
「私は、あなたと出会った事を忘れます」

「そうよ、良い子ね…」

 最後まで命令を伝えると、フィンはツグミに口づけして、翼を広げて飛び立つ
のでした。

(ミストにこれ以上、思うとおりにさせるもんですか…)

***

「あれ? 私は一体…。そうだ、出かける途中だったんだ。いけないな、最近
ぼーっとする事が多くて…」

 表の通りに出たツグミは、何故かいつもとは逆の方向に向けて歩き出します。


■日下部まろん編

●桃栗学園:新体操部室

 暫く二人の世界に浸っていたまろんと都でしたが…。

「いけない、もう授業始まっちゃう!」

 二人は慌てて服を着て、部室を飛び出します。

●教室

「おはよう!」

 都とまろんは二人で一緒に教室に入ります。
 まだ級友達は、それぞれ固まって何やら話し合っています。
 いつもの朝の教室の光景。

「やだ…」
「まさか…」
「あの子がねぇ…」

 でも、今日は何かがいつもと違う気がするのです。

「ねぇねぇ、何かあったの?」

 まろんは、自分の席の近くで話していた女子生徒達に声をかけます。
 すると、奇妙な事に、それまで喋っていた生徒達が、ぴたりと喋るのを止めた
のです。

(何だろう、この胸騒ぎは…それに…)

 何だか寒気がします。

(悪魔…? まさか…)

 スカートのポケットに手を突っ込みます。
 すると、いつもある筈の物が、そこに無いのに気付きます。

「ありゃ…」

 慌てて学校に行ったため、プティクレアを私服から移し替えるのを忘れていた
のでした。

「どしたのまろん?」
「え、あ…。な、何でもないわよ」
「ねぇまろん。何か嫌な雰囲気しない?」
「…そうかしら?」

 まろんも雰囲気は感じていたのですが、都を心配させたく無いのでとぼけます。

(何だろう。また嫌な事が起こらなければ良いのだけど…)


■名古屋稚空編

●オルレアン

「待ってくれ稚空。オイラも連れてってくれよ」

 朝、出かけようとしている稚空に、アクセスが声をかけます。

「え? 珍しいな。どうしたんだ?」
「ちょっと気になる事があるんだ」
「…悪魔か!?」
「判らねぇ。けど、何か嫌な予感がするんだ」
「そうか。判った、入れよ」
「悪い」

 稚空は鞄の中にアクセスを招きます。


●桃栗学園

「どうだ、アクセス?」
「う〜ん、良く判らないや…。何だか微弱な気配が沢山ある気がするんだけど
…」
「じゃあ、何かがいる事は確かなんだな?」
「う〜ん。これまでとはタイプが違う気がするんだ」
「新タイプの悪魔なのか?」
「判らねぇ。調べて見るから、稚空も注意しててくれ」
「判った」

 アクセスは飛び去ります。

「ん…ありゃなんだ?」

 ふと稚空がグラウンドの方を見ると、まろんがレオタード姿で走っているのが
目に入ります。

「またまろんは朝練を遅刻だな。それにしても…良い眺めだ…」

 暫く稚空は、まろんの様子を眺めているのでした。


■山茶花弥白&彼方木神楽編

●枇杷町 枇杷高校

「おはようございます」
「おはよう、皆さん」

 校門でリムジンから降り立つと、弥白は取り巻き達からの出迎えを受けます。
 校舎内に入ると、意外な人物が待ちかまえていました。

「お待ち申しておりました、弥白様」
「神楽?」


●枇杷高校 応接室

「あの…」
「何ですの、神楽」
「いいんですか、この部屋を使って…」

 枇杷高校の割と豪華な応接室で、神楽はそわそわしています。

「気になさる事はありませんわ。父がこの学校に多額の寄付をしておりますの。
この応接室も、私が入学する時に寄付で出来たものですから、いつでも私の自由
になりますわ」
「しかし…」

「失礼致します」

 その時、なかなかの美形の女子生徒が、盆に紅茶を載せて入って来ます。
 もちろん、女子生徒は弥白の親衛隊の一人です。

「あ、どうも…」

***

「それで学校まで来て何の用ですの、神楽?」
「はい、これを…」

 神楽は、懐からハンカチに包んだ何かを取り出して広げます。

「!」
「これが何だかお判りですね、弥白様」

 ハンカチの中には、何かの部品とガラス片がいくつか入っているのでした。

「さぁ、存じ上げませんわ」
「とぼけても無駄ですよ。弥白様。桃栗町の郊外の一軒家で、貴方が何をしてい
たか。この神楽の目は誤魔化せません」
「また私の後を尾行ていたんですの?」
「町中で貴方が誰かをつけているのを見て、ついいけない事とは知りながら…」
「もう私には構わないでって言った筈ですわ!?」
「そのような訳には参りません。以前から申し上げているように、貴方に何かあ
れば、稚空様が悲しみます。それに、私も…」
「神楽…」
「弥白様。もういい加減に、このような事はお止め下さい。こんな事がご両親に
知れたら、どんなに悲しむか…。稚空様だけを相手にしている内は、これも弥白
様の愛情表現と、この神楽、見守っているだけに徹してきました。しかし、無関
係の第三者まで巻き込むとは…」
「無関係ではありませんわ」
「え!?」
「日下部まろん…稚空さんの心を奪った女…。それだけなら稚空さんが選んだ事。
この弥白、黙って身を引きますわ。でも、あの女は…稚空さんだけを愛している
のでは無い。そんないい加減な女に、稚空さんを渡すなんて事は…」

 ティーカップを持つ弥白の手が震えているのに、神楽は気付きます。

「弥白様…?」
「お願い神楽。私は稚空さんに『真実』を知って欲しいだけですの。知った上で、
それでもなお稚空さんが日下部さんを選ばれるのであれば、素直に諦めますわ。
だから…」

 弥白は膝の上で拳を握りしめて震えています。
 それを見ると、いつも神楽はこれ以上弥白を諭すことが出来なくなるのでした。

「判りました…」

 神楽は、いつの間にか弥白の背中に回り、弥白の肩に手を置いて言います。

「でも弥白様。これだけは約束して下さいまし。もう決して人を傷つけるような
事はしないと…」
「判っておりますわ、神楽。この弥白、自分の情報で人を傷つけたりなど…」
「判っております」

 神楽は、弥白がこれまでして来た事を大体知っています。
 だから、弥白の言い分が少し間違っている事も気付いています。
 でも、それを指摘する事は神楽には出来ないのでした。

「あら? ちょっと見せて下さいます?」

 弥白は、神楽のスーツの手を取ります。

「ボタン、外れてますわよ」

 神楽のスーツの袖のボタンが一つ、外れているのでした。

「あ…気付きませんでした」
「替えのボタンはあるんですの?」
「あ、はい、一応」
「お脱ぎになって」
「え?」
「繕って差し上げますわ」
「え、あ、いや、これ位、自分で出来ます!」
「まぁ、照れちゃって。かわいいですわ」

 弥白は、神楽の上着を脱がせると、裁縫セットを持ってこさせ、ボタンを
縫い始めます。
 その様子を見守りながら、神楽は思います。
 この世間からちょっとずれたお嬢様を何があろうと絶対に守るのだと。

(第45話前編 完:後編へ続く)

 では、後編へ続きます。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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