神風・愛の劇場スレッド第34話前編(3/28付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 28 Mar 2000 12:42:11 +0900
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佐々木@横浜市在住です。

# 目出度く許可の朱印を貰いましたので。^^;

妄想第34話、こっちが前編です。

神風怪盗ジャンヌの本編や原作から逸脱した話を
読んでもイイよという方のみ以下をどうぞ。


★神風・愛の劇場 第34話(前編)

■アヴァンタイトル

1時限目が迫ってきたので逃げ出そうかと思い始めた委員長。
ドアに手を掛けると勝手に開いたので驚いてしまいます。

「何処にいくざますか」
「いや、あの、授業がそろそろ」
「安心するざます。今教室に寄って自習と言ってきたざます」
「…そうですか」

どうやらたんまり絞られそうな予感がしてきました。青ざめる委員長。
鳴り出した始業ベルがとても遠くに聞こえます。

■屋上にて

昼休みの教室では生徒達が食事を始めようとしていました。
弁当を広げる者や購買部に出かける者など。稚空も後者のクチでした。
教室を出ようとしたその時です。委員長が呼び止めました。

「名古屋くん、ちょっと」
「え、何だよ委員長?」
「つきあってもらえないでしょうか、屋上まで」
「後にしてくれないか?急がないと
 ウルトラビッグ焼きそばパンが売り切れちまう」
「これですね」

委員長が差し出した袋には、まさに毎日10個限定のパンが入っていました。

「どうしたんだよ。もう買ってきたのか?」
「そんなことより、これ上げますから、付き合ってください」
「本当にもらっていいのか」
「ええ、まぁ」

食い物につられて屋上へやってきた稚空。屋上でも弁当を広げている連中が
若干いましたが委員長はなるべく人気の無い一画に稚空を招きました。

「なんの用だよ、早く言えって」

そう言いながら稚空は既に委員長は見ておらず、焼きそばパンの
袋を破っています。そして一口。

「誰に相談すべきか迷ったんですが」

そう言うと折り畳まれた一枚の紙を差し出す委員長。
それを見た稚空は頬張ったパンをかまずに飲み込んでしまいました。

「うぐっ」
「どうしたらいいと思いますか?
 ボク独りではアイデアが浮かびません」
「委員長、これ何処で手に入れたんだ」
「今朝です。皆さんの家のポストで」

委員長はかい摘んで今朝の出来事を話しました。

「そうか。助かったぜ。あいつらにこんなの見せられないしな。
 参ったな、まったく弥白の悪ふざけには」

写っているのは事実なのですが、委員長にそれを知られない為に
言い回しを考えた稚空でした。委員長も作り物だろうと思っていたので
深く追及はしませんでした。

「しかし、こんな物他でバラ撒かれたら厄介だな」
「実はですね」

今度は学校での事を話す委員長です。一瞬ですが、絶句する稚空。

「な、先生にバレてるのか」
「取りあえずボクらだけで解決しますので
 見守っていてくださいって話しておきましたけど」

と、そこまでパッキャラマオ先生を説得するのにまるまる1時間を
要したのだと委員長は切切と訴えたのですが、稚空、全然聞いていません。
そして。

「良く判った。上手く先生を丸め込んでくれてサンキューな。
 これは俺が弥白に話を付けるべきだと思う。だから」
「はぁ」
「忘れてくれ」
「しかし、ボクも友人として放ってはおけませんから」
「いや。委員長は充分活躍してくれた。後は任せろ」
「でも、何か役に立てる事があるはずです」

食い下がる委員長にちょっと考えてから稚空は耳打ちしました。

「え、名古屋くん、そんな物何に使うんですか?」
「いいから。委員長なら手に入るだろ?」
「多分探せますけど、まちがっても外に放さないでくださいね」
「ああ、判ってる。閉じたシステムで使うから」

それだけ言うと稚空はすたすたと行ってしまいました。
稚空が持っていってしまった弥白新聞がちょっと残念な委員長でした。

■日下部家の人々

町でばったりとツグミに逢ったまろんちゃん。
鼻歌交じりでキッチンに居ます。

「2個作ってツグミさんの所に持っていっちゃおうかなぁ」

とか言っていると玄関の呼び鈴が鳴り響きます。

「誰よまったく」

ブツブツ言いながらも玄関に出てみます。

「おい、まろん。居るだろ」

稚空が来ていました。でも、何故こんな時間に?
ドアを開けると稚空が押し入ってきて、すぐにドアを閉めました。

「なによいきなり。勝手に入らないでよ」
「それどころじゃないんだよ」

稚空が広げた紙切れを見たまろんちゃんは鳥肌が立っていました。

「どうして?消してしまったはずでしょ?」
「俺に言うなよ。弥白のやつ、多分バックアップを持ってたんだ」
「ばっく…何?」
「コピーだよ、写真の」
「嫌だ、やだ、もう、インチキよ」
「落ち着けよ、もう一度やるしかないだろう」
「やるしかない…」

■桃栗警察署

敷地内に建てられたプレハブの小屋。半壊した警察署が建て替え中のため
一番立場の弱いジャンヌ特捜班は外に追い出されていました。

「何か寒いですね」
「まぁ、そう言うな。暫くの辛抱だ」
「寒いというと余計に寒くなる」

と、そこへアルミサッシを勢い良く開けて飛び込んできたのは秋田刑事。

「来ました!予告状です」
「場所と時間は」
「枇杷町、山茶花氏の邸宅です。今夜10時」
「出動だ!」
「(都さんに連絡しなきゃ)」

■山茶花邸にて

東大寺警部たちを出迎えたのは屋敷の執事でした。
ところが案内されたのは屋敷から離れた別な建物です。
同じ敷地なのに屋敷から車で5分かかりました。
着いたのは広々とした芝生の中にあるコンクリート剥き出しの平屋。
芝生のまわりは生け垣で囲まれているのですが、その垣根が途切れた場所が
一箇所だけあります。そしてそこに独りの女性が待っていました。

「お勤めご苦労様です。山茶花弥白と申します」
「東大寺です。新体操の大会で何度か演技を拝見していますが
 普段もお美しいですな」
「まぁ、有難うございます。
 でもどうして新体操に興味をお持ちなのかしら」

ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべている弥白。どうやら下心で
新体操を見に来ているのかしらと言いたげです。
その真意を覚った東大寺警部は慌てて補足しました。

「いや、娘が出場するものでして」
「そうでしたか。何処かで聞いたことの在るお名前だと思いましたの。
 桃栗学園の東大寺都さんのお父様でいらっしゃるのね」
「娘をご存知でしたか」
「ええ、まぁ色々と」

ちょっと引っかかる言い方でしたが、東大寺警部は仕事の話に戻します。

「早速ですが、ジャンヌとシンドバッドから予告状が来たそうで」
「その様ですね」
「落ち着いていらっしゃいますな」
「そうでしょうか」
「この予告状には "あなたの悪戯心頂きます" とありますが
 これが何のことなのかお心当りはありますか」
「さっぱり判りません」
「では我々をここに案内されたのは一体?」
「その予告状が此にあったからですわ」

弥白はそういって生け垣の切れ目を指差しました。

「そこに挿っていましたの」
「するとこの建物に何かが?」
「まぁ、ちょっとした私の趣味ですけれど」
「警備の都合がありますので、案内して頂けますか」
「かまいませんけれど、警備は必要無いと思います」
「何故です」
「ご覧頂きましょうね」

弥白は生け垣から枝を一本折ると芝生の方に向けて投げました。
ちちっ。投げ込まれた枝は小さな音を立てて燃え尽きてしまい、
芝生には何も落ちませんでした。

「なんと」
「芝生に落ち葉が積もらない様にする装置ですの。
 でも防犯の役にも立ちますかしらね」
「レーザー装置ですか」

秋田刑事が聞きました。

「そんな様な物です」

そしてすたすたと中へと入っていく弥白。

「大丈夫ですか」

ついて行きかけた東大寺警部が踏み止まって声を掛けます。

「どうぞ、ついていらして。
 この家の者のエスコートがあれば平気ですから」

とは言われた物の、腰が引けている東大寺警部達でした。
建物の前まで来ると更に奇妙な事が判ってきます。
窓が一つもなく、入り口以外には壁に通風口らしい穴が開いているだけです。

「入り口は此だけですか?」
「ええ。一つだけです」
「あちらの通風口の様な物は?」
「通風口ですね」
「いや、そういう意味では無くて」

くすくすと笑っている弥白。判っていて言ったのでした。

「中には格子がはまっています。仮に外しても、その奥には
 強力なファンが回っていますから無理に通ろうとすれば挽き肉です」
「ファンを壊してしまえば」
「その先は足場の無い20mの縦穴ですの」
「縦穴ですか?」
「ええ。この建物は地下4階までありますのよ」
「その縦穴の先は」
「空調ダクトに繋がっています。全て内側は高さ10センチ
 幅20センチ以下です」
「ふむ。すると正面からしか侵入は無理と」
「侵入も無理でしょうね」
「と言いますと」

弥白は入り口の上を指差しました。そして「私です」と言って
扉の上のカメラの様なものを見詰めています。

「誰か警備の者が居るのですか」
「いいえ。眼紋認識です」

夏田が肘で秋田をつついています。

「おい、何だって?」
「瞳の模様で個人を識別する装置ですよ」
「他人じゃ開かないって事か」
「そういう事」

中に入った弥白と東大寺警部達。中にはエレベーターが一機のみ。
ドアが開いてぞろぞろと乗り込みます。

「エレベーターの上から侵入することは」
「このエレベーターはリニア式ですから」
「はぁ」
「ゴンドラの上にケーブルは付いていませんの。
 シャフトとゴンドラの間の透き間はほんの数センチですから
 中に乗らなければ下には降りられません」

と言っている間に着いてしまいました。ドアが開くとそこには。

「凄い」
「それほどでもありません」
「これほどの規模のコンピューターを趣味でお使いとは」
「何となく溜まってしまうデータの整理の為ですの。でも、ここは
 データの保管の為の設備ですの。データの活用は自室からできます」
「活用ですか」
「ええ、出したり入れたり」
「投資とかなさっているとか?」

ちょっと考えてから弥白はこう答えました。

「取引に使っているのは間違いありませんね」

東大寺警部達には弥白が笑っている理由は判りませんでした。
再びエレベータが昇りだしたときです。
何故か途中でエレベータが止まってしまいました。
パネルを見ている弥白。

「どなたか、下に忘れ物でもされてませんか?」
「忘れ物ですか」

慌ててゴソゴソとポケットやらを探り出す東大寺警部他の面々。
ですが全員首を振っています。

「おかしいですね。30グラム程足りないのですけど」
「30グラムというのは?」
「このエレベーターは行きと帰りで重さが変わると途中で止まりますの。
 止まったら解除できるのは私だけ。勝手に入り込んで
 何か持ちだそうとすると閉じ込められるという訳ですね」
「敏感過ぎませんか?」
「データを入れる物、例えば光ディスク等は100グラムも
 ありませんから」
「あ」

すっとんきょうな声を上げた秋田刑事。

「何だ秋田、何かあったか」
「いえ。その、どうもハンカチを落としてきたみたいで」
「成程、そうでしたの」

弥白がそういってパネルを触るとエレベーターが動き出し、程なく地上に
到着しました。たとえ忘れ物でも、一度地下に置いてきたものは
容易には持ち出せないという事で秋田刑事のハンカチは
後日返却という事になりました。
弥白は不要と言ったのですが東大寺警部が説き伏せて
結局は生け垣の周囲を警官隊が取り囲む形となりました。

■山茶花邸本館

3階建洋風建築の傾斜のきつい屋根の上にある2つの影。

「ねぇ、本当にあそこが本命なんでしょうね?」
「ああ、間違いない。前に自慢してたからな、世界に4台のマシンとか」
「ふ〜ん。で、作戦は?」

返事をしない稚空=シンドバッド。

「ねぇ、聞いてる?まさか何も考えてないんじゃ」
「慌てるなよまろん。今、都の親父さんが上がってきたところだ」
「まめよね。東大寺警部」
「仕事だからな」

そしてまた暫く黙ってしまう稚空。やがて何かを耳から取り出しました。

「何それ?」
「東大寺警部のコートに盗聴機を付けておいたんだ」
「へ〜」
「中の警備の仕掛けが大体判った」
「じゃ、行きましょうか」
「まて、まろん。上手い手を思い付いたんだ。
 やってもらいたい事がある」
「その前に一つ。危ないから仕事中はまろんって呼ばないで」
「判った。ではジャンヌ、囮になって東大寺警部達を引き離してくれ」
「え〜、囮なんて脇役の仕事よ」
「誰が脇役なんだよ」
「シンドバッド」
「ジャンヌが潜り込んでもデータ消せないだろう?」
「うっ…」

渋々と稚空の作戦に従うことにしたまろんちゃんでした。

「ねぇ、シンドバッド」
「何だ、まだ何かあるのか」
「ここさぁ、何か気にならない?」
「何処が?」
「このお屋敷の雰囲気っていうか」
「別邸ほど怪しくはないだろう」
「う〜ん…」

漠然としたものしか感じられないので、これ以上は悩まないことにして
ジャンヌとシンドバッドは仕事にかかりました。

# 後編に続く(おい)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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