神風・愛の劇場スレッド 第170話『二つの故郷』(その13)(06/08付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 08 Jun 2003 18:52:58 +0900
Organization: So-net
Lines: 285
Message-ID: <bbv11s$c7v$1@news01dd.so-net.ne.jp>
References: <ba7jci$934$1@news01bg.so-net.ne.jp>
<baq5n2$j5j$1@news01bf.so-net.ne.jp>
<bbcacj$ek3$1@news01cb.so-net.ne.jp>
<bbus1g$3te$1@news01di.so-net.ne.jp>
<bbuvoc$mnk$1@news01bb.so-net.ne.jp>

石崎です。

 例の妄想スレッドの第170話完結編です。
 全体で1,800行程になってしまったので、(その11)〜(その13)までの
3記事に分けて投稿します。

 この記事は、(その13・完結)です。

#やっと終わった〜。

(その1)は、<b4eq3c$scr$1@news01ch.so-net.ne.jp>
(その2)は、<b51m9o$6fm$1@news01dh.so-net.ne.jp>
(その3)は、<b5k511$5qt$1@news01bh.so-net.ne.jp>
(その4)は、<b6p2k8$pmc$1@news01bf.so-net.ne.jp>
(その5)は、<b7tkbv$10s$1@news01cf.so-net.ne.jp>
(その6)は、<b97u9k$ag3$1@news01ch.so-net.ne.jp>
(その7)は、<b9l9b5$ghe$1@news01di.so-net.ne.jp>
(その8)は、<ba7jci$934$1@news01bg.so-net.ne.jp>
(その9)は、<baq5n2$j5j$1@news01bf.so-net.ne.jp>
(その10)は、<bbcacj$ek3$1@news01cb.so-net.ne.jp>
(その11)は、<bbus1g$3te$1@news01di.so-net.ne.jp>
(その12)は、<bbuvoc$mnk$1@news01bb.so-net.ne.jp>からどうぞ。

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そう言うのが好きな人だけに。



★神風・愛の劇場 第170話『二つの故郷』(その13)

●オルレアン・稚空の部屋

 ノインとの約束を稚空達は素直に守る積もりはありませんでした。
 セルシアに夕食を届けるという名目で、トキを体よく追い払ったアクセス達。
 もちろん、翌朝まで一緒に居てやれと因果を含めています。
 トキが出て行ってから、アクセスと稚空はコップを手に、隣室との間にある壁
に耳をそばだてました。

「聞こえるか? アクセス」
「全然。稚空は?」
「こちらもだ」
「素直に寝ちゃったんじゃないの?」
「それなら、あんな派手なことをして、俺達を遠ざける筈が無いだろう」
「どうする?」
「もっと近寄って確認する」
「それって犯罪」

 そう言いつつも、ベランダへと向かう稚空をそれ以上止めようとはしなかった
アクセス。
 それどころか、自分もいそいそと後をついて行きました。

「よし。行くぞ」
「おう」

 小声で肯き合った稚空達は、窓を開けベランダに出ました。
 出た、筈でしたが…。

「ここ、どこだ?」
「稚空ん家の玄関」
「戻るぞ」

 玄関のドアを開け、通り抜けるとそこは稚空の予想したとおり、自分の家のリ
ビングでした。

「やられた…」
「まさか、これって」
「ノインの仕業に決まってんだろ!」

 結局、夜が明けるまで、部屋に閉じ込められることとなった稚空達でした。


●オルレアン・屋上

 オルレアンの屋上でノインは稚空達が部屋から出ようと苦闘している様を呆れ
た顔で眺めていました。

「念のため、結界を張って置いて正解でしたね。それにしても…」

 ノインは、別の場所を映し出して溜息をつきました。

「随分と、仲の良いことで」

 自分のことを棚に上げ、そう言うノインなのでした。


●オルレアン・まろんの部屋

 カーテンの向こうで夜が明け始めた頃。
 まろんは極僅かな、そして深い眠りから目覚めました。
 目を開けると誰かの視線を感じます。

「おはよう」
「あ…おはよう」

 フィンに見つめられているのを知り、まろんは布団を自分の方に引き寄せます。

「何してたの?」
「まろんの寝顔を見てた」
「見るだけ?」
「少し、悪戯したかな?」
「ずるい」
「え?」
「私にも少し、お返しさせて」
「こらぁ。昨日、散々…」

 フィンが台詞を言い終わる前に、その口を塞ぐまろんなのでした。



 それから暫くして、フィンは起き上がりました。
 まろんに貸して貰った寝間着を脱ぎ捨て、術で自分の服を整えます。

「行ってしまうの?」
「うん。まろんはまだ寝ていて」
「そんな訳にはいかないよ」

 慌ててまろんは起き上がり、リビングまでフィンを見送りました。

「本当に、すぐに帰って来てね」
「判ってる」
「本当に本当だよ?」
「うん。判ったから、まろんも考えておいてね」
「え?」
「昨日、私が提案した条件」
「あれ、本気だったの?」
「睦言だからって、冗談を言った訳ではないわ。判った?」
「……うん」
「それから、私の留守中のことだけど」
「何?」
「多分、私の留守に、ノイン辺りがまろんにちょっかい出して来ると思う。やら
れるんじゃ無いわよ」
「またぁ?」

 まろんは、もううんざりと言う顔をしました。
 その表情を見て、フィンはクスクスと笑います。

「ミストが居ないから、そんな変な作戦はないと思うけど」
「は〜あ。早く帰って来てね」
「判った。それじゃあ、私は行くから」
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」

 そう言うと、二人はどちらからともなく唇を重ね合いました。
 窓を開けてベランダに出、飛び立ったフィン。
 その後ろ姿が見えなくなっても、まろんは手を振り続けていました。


●桃栗タワー

 オルレアンを飛び立ったフィンは、真っ直ぐにこの場所にやって来ました。
 思考接続でアクセスを呼び出すと、彼は程なく姿を現しました。

「フィンちゃん!」
「アクセス!」

 フィンの胸に飛び込んできたアクセス。
 その日のフィンは嫌な顔一つせず彼を受け止めました。

「魔界に行くんだって?」
「そう。その前にどうしても挨拶しておきたかったの」
「昨日はまろんと一緒だったんだってな」
「そう。まろんに大事な話をしたの」
「大事な?」
「アクセスにとっても、大事な話よ」
「え?」
「ねぇアクセス」
「何?」
「魔界の住人になる気は無い?」
「…冗談だろ?」
「私と一緒に暮らせるけど?」
「俺の望みは、フィンちゃんに天界に帰って来て貰って、一緒に暮らすことなん
だけど」
「え?」
「神様に直接お願いされているし…」
「そうだったの…。でも、今は無理ね」
「今は?」
「今の体制のままの天界には、私の居場所は無い。今、私が戻っても、私にとっ
てもアクセス達にとっても、それは不幸なことだと思うの。ありがとう。その気
持ちだけでもとても嬉しい」
「フィンちゃん…」
「ねぇ」
「ん?」
「キスして」
「ああ」

 フィンに促され、アクセスはフィンの唇に自分の唇を重ねました。

「それじゃ、行くね」
「すぐに、帰って来いよ」
「今回はすぐよ」
「判った。待ってる」
「うん」

 そう言うと、フィンは浮かび上がりました。
 見送ろうと、続けて浮かび上がろうとするアクセス。
 しかしフィンは彼を押しとどめて言いました。

「魔界の連中と待ち合わせているから、見送りは要らないわ」
「判った。じゃあ、ここで」
「じゃあね、アクセス」
「フィンちゃん。またな!」

 アクセスに手を振りつつ上昇していくフィン。
 やがて振り返ると、今度は急速にその場を離れて行くのでした。


●桃栗町のどこか・ノインの館

 旅立ちを前にして、フィンはノインを初めとする魔界軍の指揮官を労っていま
した。

「諸君らの活躍のお陰で、昨日は神の御子との会見を無事に終えることが出来た。
感謝する」
「して、ご首尾は」

 ノインは結果を聞いていたのですが、他の者のため、敢えて尋ねました。

「我が方より、これまでの経緯を神の御子に説明した上で、我々の側につく様、
提案した。そのための条件も示している」

 フィンがそう言うと、ミカサやトールン達はざわめきました。

「して、反応は?」
「急な提案に戸惑っているようだ。無理も無い」
「では、クイーンが帰還されている間は、休戦ということですか?」

 そう尋ねたのは、ミカサです。
 その後ろに控えていたユキは、休戦ならば、ミカサ様とお休みをとでも考えて
いるのか、期待の表情を浮かべているのがフィンからも見えました。
 最も、その期待の表情の意味は、フィンには理解出来なかったのですが。

「ノインには話したが、その必要は無い」
「しかし」
「ノインには私の留守中に指揮権を預け、状況に応じて神の御子を攻撃する許可
を与えている。ただし、もしも神の御子を倒す事が出来る状況となったならば、
倒す前に今一度、我々の側に投降するかどうか、尋ねるのだ。否ならば、消去し
ても構わない。その際、魂の回収だけは忘れるな」

 その言葉を聞き、がっかりした表情を浮かべるユキなのでした。



「それでは、私は魔界へと一時帰郷する」
「行ってらっしゃいませ」

 やがてノイン達魔界軍の幹部に見送られ、フィンは魔界へと庭先から旅立って
行きました。
 屋敷の周囲に展開した結界を通り過ぎ、その姿が見えなくなったところでノイ
ンは、思い出した様にミカサに呟きました。

「帰郷…。クイーンは確かにそう言いましたね」
「はい」
「クイーンは本気なのでしょうか?」
「は?」
「本気でクイーンは天界を捨て、我らが同胞になる積もりなのでしょうか?」
「その答えは簡単です」
「ほう」
「私は魔界の住人ですが、この街を捨てた積もりもありません。それが答です。
ノイン様は違うのですか?」
「そうですね。…もう、昔の事です。私の知る故郷は、今では消えてしまいまし
た。だから魔界だけが我が故郷と言えるでしょう」

 そう言うと、ノインは屋敷へと踵を返しました。
 そんなノインの姿を見て、ミカサは考えました。
 ノインは今では人間界を故郷とは思っていないのかと。

(第170話・完)

 3月1日(水)の朝までです。

#カレンダーの上でも春になってしまいました(笑)

●念のため、今後の決定済みスケジュール

3月2日(木)…地区大会団体戦 於 枇杷高校第一体育館
3月3日(金)…都とまろんのデート予定日
3月14日(火)…ホワイトデー

 第170話はこれで終わりです。
 次回からは、佐々木さんパートです。
 では、また。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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