神風・愛の劇場スレッド 第169話『青い蜜柑の香り』(その6)(02/14付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: 佐々木 英朗 <hidero@po.iijnet.or.jp>
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
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<20030207193955.4f870217.hidero@po.iijnet.or.jp>
Lines: 224
Message-ID: <Yo23a.2551$WC3.310686@news7.dion.ne.jp>
Date: Fri, 14 Feb 2003 18:11:29 +0900

佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。

例のやつ、第169話(その6)をお送りします。
#(その1)は<20030103161643.0b809aca.hidero@po.iijnet.or.jp>、
#(その2)は<20030110171137.5a399b4b.hidero@po.iijnet.or.jp>、
#(その3)は<20030117173829.3a42d41b.hidero@po.iijnet.or.jp>、
#(その4)は<20030126172602.7c30eea6.hidero@po.iijnet.or.jp>、
#(その5)は<20030207193955.4f870217.hidero@po.iijnet.or.jp>です。

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。



★神風・愛の劇場 第169話 『青い蜜柑の香り』(その6)

●オルレアン

食後のひとときの雑談の話題もそろそろ尽きてきた頃、少しだけ残っていたお茶を
一気に飲み乾してから都が言いました。

「私、帰るわ」
「え?まだいいじゃん。八時前だよ?」
「明日の事もあるし、眠くなって来ちゃったのよ。悪いけど」
「じゃ、泊まってけば」
「それはまた今度ね」

都はさっさと席を立つと一度キッチンへ寄って空の鍋と皿を抱えて玄関へと向かい
ます。途中でユキとアンに向かってバイバイと手を振ってから。ユキが軽く会釈をして
都を送り、まろんがすぐ後に続いて行きました。足先でサンダルを器用に並べ変えて
爪先を滑り込ませる都。その間に大あくびを二つしています。

「じゃ、おやすみ」
「おやすみ〜、また明日ね」
「あんたも夜更かししてないで早寝すんのよ」
「判ってるって」
「どうだか」

都はまろんの後ろの方へちらっと視線を走らせてから扉を開き、もう一度おやすみの
言葉を掛けてから自分の家へと帰って行きました。まろんは都が言外に注意した事に
対して苦笑しながら見送る事で応えていました。部屋へ戻る途中、まろんは都が二人の
客に何故無言で手を振ったのかと疑問に感じた事を思い出していました。
その理由は部屋に戻ってみて申し訳なさそうに話すユキと、そしてアンの姿を見て
すぐに判ったのですが。

「ごめんなさい、すぐに起こして帰りますから」

アンは両手を軽く組んでテーブルに乗せ、その格好のまま目を閉じていました。
良く見れば呼吸に合わせてかすかに頭が前後に揺れていますが、ちょっと見ただけ
では目をつむって考え事をしている様にしか見えません。アンは背筋を伸ばした
姿勢で器用に居眠りをしていました。

「いいのいいの。起こさないであげて、可哀想だから」
「ですが…」
「本当にいいって。だからもう少し帰らないで」
「すみません。それじゃもう少しだけ」
「疲れちゃったのかな」
「私が今日一日引っ張り回した所為ですね」
「もし良ければベッドを貸すけど」
「いえいえ、そんな事したらこの子本格的に寝ちゃいますから」
「もう本格的に寝ちゃってるみたいだけど」

まろんとユキはアンの姿を見、それから顔を見合わせると声を殺して笑いました。

「でも器用だなぁ」
「何がです?」
「だってほら。普通居眠りすると、もっとこう、俯いちゃうとか」
「ああ、アンの事ですか」

再度二人はじっとアンを見詰めます。やはり同じ姿勢で固まっているアン。

「気持ち良さそうな寝顔とカチっとした格好の違和感が何とも」
「ん〜」

ユキは少し考えてからおもむろにアンの額と後頭部に手を添えてぐいっと前に曲げて
彼女自身の組んだ手の上に乗せました。

「はい。普通の居眠りスタイル」
「わわっ、起きちゃうよ」
「大丈夫ですよ」

ユキの言葉通り、アンはそのままやはり身動きせずにすぅすぅと微かに寝息を
響かせていました。

「本当に良く寝ちゃってるんだ…」
「ごめんなさいね、お客様の家で寝てしまうなんて」
「だからいいって。もし良ければ今夜は…」

言葉の途中でまろんはふぁっとあくびをしてしまいます。

「あ、ごめんなさい。私こそお客様の前で」
「いいんですよ。目の前で寝ていられるとあくびって移りますよね」
「うんうん、やっぱりそうだよね」

そうは言ってもやはり客の前でのあくびは失態、まろんはそう思って何とかこれ以上
あくびをしないで済ますにはと考えを巡らせます。辿り着いた結論にテーブルの上を
見ますが、頼みの綱はしかし既に空っぽ。

「ユキさん、お茶のお代わりはいかが?」
「ええ、いただきます」
「ちょっと待っててね、お湯沸かして来ます」

口許に手を添えながら去って行くまろんの姿を見ながらユキは内心で呟きます。

「(我慢しなくて良いのよ神の御子、眠いのでしょう?素直に肉体の欲求に従いなさい
な。お友達は素直に従ったわよ。次はあなたの番…)」

そこまで考えてユキは素早く、しかし不自然にならないように注意して室内を
見回しました。ユキの懸念材料はテーブルに近い、最初とは違う壁際で丸まって
いました。膝を両手で抱えた格好で、両手の間に顔を埋める様にして。

「(あんたは最初っからそのまま寝ていればいいのよ馬鹿天使)」

ユキの耳にそんな相手の呟きが届きます。

「ごはん無くなっちゃったですですぅ…お蜜柑もあんまり残ってないですぅ…
今から行ったら稚空くんちの晩ごはんに間に合うかなぁ…」

こめかみが纔かに痙攣するユキ。

「(こいつ何で起きているの!さっきは何もして無いのに寝てたくせにっ!)」

両手をきつく組み合わせ、その上にあごを乗せてユキは考えます。

「(落ち着きなさい、落ち着いて。何故あの馬鹿天使の睡眠が誘導されないのか…
まさか耐性がある?…いいえ、そんなはずは無いわ。魔界の出身者なら可能性は
無い事もないけれど、単一種族で構成される天界の連中には耐性を持つ者が出るはずは
絶対に無い。では何か別の阻害要因が…温度は関係無いはずだし、この部屋は充分に
快適…明るさ?違うわね、明るくて眠れないなら先ほどだって寝たりしないでしょう…
別の何かが…何か)」

はっと顔を上げるユキ。思わずセルシアの方に顔を向けてその姿を凝視してしまいます。
当のセルシアは相変わらず俯いてぶつぶつ言っていて、見えていないはずの来客が
自分を睨んでいる事には気付きませんでしたが。

「(空腹か!こいつ、お腹が空き過ぎて眠れないのね?何て意地汚いの!)」

思わず声に出して罵りそうになり、慌てて目を逸らすユキ。再び椅子に真っ直に
座り直して考えます。

「(でも…実際に空腹だとしても満腹のアンのすぐ傍に居てそれを感じるはずは…)」

今度はアンの寝顔を凝視するユキ。

「(まさか…)」

ユキはそっと手を伸ばし、指先をアンのこめかみの辺りに触れさせます。その途端に
ユキの脳裏に、思考いっぱいに真っ白な世界が拡がりました。それは綿の様に柔らかく
温かく、そして染みひとつ無い単色の世界。

「(やっぱり…アンは夢を見ていない…違うわ、見られないのね…)」

ユキの顔が曇ります。そこに浮かぶ表情は哀れみと慈しみの混ざった様なものでした。

「(可哀想に…でも今はアンの心配をしている場合では無い)」

再び表情を引き締めるユキ。

「(アンの心は純粋に“眠り”その物に入っている。これでは睡眠だけしか誘導
出来ないわ。あまりこの子には使いたくは無いのだけれど…)」

ユキの思考の中に拡がる真っ白な世界にユキ自身が作り出したイメージが投射され
徐々に色が着いていきます。拡がる草原、咲き乱れる草花、一本の木にはオレンジ色の
実がびっしりと成っています。木の根元に座り幹に背中を預けて眠るアンの姿。
周りには空っぽの食器とまだ手つかずの料理が乗った食器が沢山並んでいます。
ユキは手を離すと何度かまばたきを繰り返します。視野が目の前の現実を写し出すと
同時に飛び込んできたのは腕を枕にして今は横に向いているアンの寝顔。少しだけ
開いた口許には笑みが浮かんだ幸せそうな顔です。それを見たユキの顔は対照的に
暗く曇っていました。

「(これはお仕事なの…お仕事…割り切らないと)」

ユキはそのまま席を立ち、テーブルを回り込んでゆっくり注意深くセルシアの脇を
通り抜けます。セルシアの囁やく様に小さな声が聞こえて来ました。

「そんなに食べられないですですぅ…」

立ち止まり後ろを振り返るユキ。爪先でセルシアの尻の辺りを一度、間をおいて
二度三度と突きます。しばらく様子を見た後、足を少し高く上げるとセルシアの
肩を足の裏でぐいと押し退けます。そのまま壁に沿って倒れたセルシアの顔にも幸せ
そうな寝顔が浮かんでいました。それを見たユキの顔にも満面の笑顔が浮かびます。

「そうそう、まろんさん」

ユキは声を出しながらキッチンの方へと歩を進めました。知らない間取りの家ですが
まろんや都が出入りしていた場所、そしてシューシューと言う沸騰した湯の立てる音が
ユキを正確に導いてくれました。

「眠れなくなるからお茶はハーブか何かにしませんか」

キッチンに置かれた小さめの椅子に座っているまろん。両手を膝の上に重ね、冷蔵庫に
もたれて目を閉じ口を半開きにした格好で身動きは全くありません。
ユキはその様子を見て口の端を吊り上げます。

「眠ってしまったら関係ありませんね、神の御子」

ユキはまろんを軽々と抱き上げるとリビングへと運びます。ぐるりとリビングを
見回し、少し迷って結局は床に横たえました。その脇にしゃがんでしげしげと
まろんの全身を眺め回すユキ。

「他愛無いですわ。これで私が男性でしたら、お楽しみの時間の始まりかしら」

ユキは服の上からまろんの胸をふにゅふにゅと突きました。

「でも生憎と私にそういう趣味は無いんですよ、良かったですね神の御子。
それとも残念かしら?まぁ時間はたっぷりありますから何かおもてなしを
考えましょうね」

立ち上がり部屋をもう一度見回すユキ。アンとセルシアは先ほどから同じ姿勢で
身動きひとつしません。ユキの顔に満足した様に笑みが浮かび、我慢出来なくなった
笑い声が始めはわずかに、やがて盛大にその口から漏れ出るのでした。

(第169話・つづく)

# 次回、いよいよユキのセカンドアタックに決着が。
## 予定通り(その7)で終われそうです。(笑)

では、また。

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