神風・愛の劇場スレッド 第161話『私の中』(2/15付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: 佐々木 英朗<hidero@po.iijnet.or.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Message-ID: <20020215120849.5c4db527.hidero@po.iijnet.or.jp>
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<a2qvu3$5f0@infonex.infonex.co.jp>
<a3j3ch$1uh$1@news01be.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

<a3j3ch$1uh$1@news01be.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。



>> >>> >★神風・愛の劇場 第157話 『還る』(その1)

>>  魔界とは言いながら、普通の人達が暮らしている世界なのですね。
>>  悪人ばかりが暮らしている訳ではないと(笑)。

何しろシルクの様なへろへろ君でも生きて行ける世界ですから。^^;

>> #本シリーズを通して、実は天界側の方が悪いのでは無いかという気も少し

# 「ワル」は天界の方が大勢居そうです。

>> >>> #せっかく助けて貰ったのに(いや、本人は助けられたとも思っていなさそ
>> >>> うで
>> >>> #すが)。
>> >思ってないでしょう、全然。(笑)
>>  ああ、なんて可哀想な弥白様(笑)。

でも置き土産くらいはあるかもしれなひ。(ん? ^^;)

>> >>> ★神風・愛の劇場 第158話『嵐の後で』
>> >弥白様も一般大衆と同じ扱いで入院してしまわれたのですか。;_;
>>  某事務長兼使用人の陰謀とも思われ(笑)。

公私混同。(笑)

>>  逆に真相を知ることにより、事態が改善することもあるかも。
>>  弥白様に関しては、黒幕が居なくなった事ですし。

えへへ。(<- コイツ、何か企んでいるゾ ^^;)

>>  実は佳奈子ちゃんに関しては、一文を投稿前に削除しています。
>>  その一文を以て佳奈子編を終了することすら可能だったのですが、佐々木さん
>> の書かれていたようなこともあるので、もう少し登場して貰うことにしました。

折角なので少し活躍?してもらいました。(笑)

>> >★神風・愛の劇場 第159話 『あなたの傍に』(前編)
>> #天界には電話が無かったのか(笑)。テレパシーがあるからかな。

# 一般大衆(天使)の生活水準は中世ヨーロッパレベルを想定しています。^^;

>>  しかしここまでのボケ振りだと危なすぎて、まともな任務を与えられそうに無
>> いのが少し困ったかも(笑)。
>> #特に設定はしていないのですが、こういうボケボケな娘に限ってとんでもない
>> #パワーを秘めていたりして(笑)

# 何となく凄いのかもしれないという印象はあります。(笑)

>> >★神風・愛の劇場 第159話 『あなたの傍に』(後編)
>>  何故かツグミのことを乱暴者だと思っていたまろん。
>>  本編だけ読んでいると、二号さんは別とすればええっ? という印象ですが、
>> 稚空の前で言い淀んでいたところを見ると、まさか夜の話ですか(爆)?

ツグミさんと2号さんを同時に見た人間は居ないので、別人だとは思っていても
微妙に印象がダブってしまう事がある…といった感じです。

>> ★神風・愛の劇場 第160話『癒す』

何となくノインはフィンに魔界陣営から去る事を勧めている様に見えます。
# 義理よりも愛に生きる…というのは他人事では無いはずですが。^^;

お疲れ都ちゃんは弥白様とちがって真っ直帰宅だった模様。
# やはり弥白様の入院は事務長陰謀説は本当なのか。(笑)
事件の記憶はかなり確かな様ですが、一番のキモの部分は例によって
気付かれては居ない訳ですね。とりあえず情況に大きな変化は無しと。
もっとも都ちゃん的にはフィンは大いなる味方扱いな訳ですから、
そう思われているフィンの方に寧ろ重荷になりそうですが。
フィンと都ちゃんの営みはどちらかが一方的に受け止めているのとは
違っている様に感じました。どちらか一方では無く互いに癒す関係かなと。
都ちゃんの記憶を上手く操れないのは難しさだけでなく、フィンの中に
その事自体の是非を問う気持ちが残っている所為だから?とも思ったり。

# では次いきます。

★神風・愛の劇場 第161話 『私の中』

●名古屋病院

夜中にふと目覚めて、そこが慣れ親しんだ自分の部屋では無く、清潔だが
何処か寒々しい白いシーツの掛かった病院のベッドの上だと気付いた時、
弥白は無性にそこから逃げ出したい気持ちに駆られていました。普段から
一人で眠っているはずなのに、何故か寂しくて堪らない気持ちになります。
相部屋の他の患者達の寝息さえも遮ってしまっているカーテンの間仕切りを
横目で見ながら、弥白は足早に廊下へと出て行きました。
灯りが落とされ、非常口を示す緑色の常夜燈だけが廊下の端に見えています。
深夜の病院はまるで誰一人として存在しないかの様にしんと静まり返って
いました。ぽつんと立ち尽くし、長く伸びる廊下を見渡します。右手方向にも
左手方向にも他に灯りは見えず何も気を引く様な物すらありません。それでも
何となく、何かに近付く事が出来る気がして建物の中央に向かっているはずの
廊下を進みました。

ぺたんぺたん

厚みの無いスリッパ特有の足音が廊下の先まで走って行って弥白の耳元へと
戻って来ます。そしてその他には何の気配もありません。
やがてしばらく行くと廊下の一部を広げた形で用意された休憩室になっていました。
病院の敷地を見下ろす様に広くとられた窓から青い月光が射し込んでいて、まるで
昼間の様に隅々まで見渡す事が出来ます。その明るい視界の中に一人の
少女が居ました。窓辺の長椅子が途切れた場所に立っていて、こちらには
背を向けています。空高く昇った月を見上げている為に、顎から首筋へと
伸びる曲線が陰になって見えました。そっと窓硝子に添えた手の先で、
人指し指がくるくると文字でも描く様に動いています。少しずつ傍に寄って
見ると小さな声で何かを呟いているらしく、口許が揺れて見えました。
弥白はその横顔に魅入っていました。何故かとても愛しく感じます。
やがてそれが知らぬ顔では無かった事に気付いた時、相手もまた弥白に
気付いたらしくこちらを振り向きました。横顔からはわずかに見えていた
瞳が、正面を向いた今は月灯りを受けた眼鏡に遮られてしまい窺う事が
出来ません。その所為か一瞬にして顔付きが変わってしまった様にも
思われ、弥白は身体を強張らせてしまいました。相手はその事を感じた
らしく、極く小さな声で囁く様に話しかけて来ました。

「今晩は、弥白様。驚かせてしまいましたか?」

やはり間違い無かったのだと、弥白はやっと安堵しました。正直、人違い
かもしれないとも感じていたのです。何時に無い雰囲気の佳奈子を前にして。

「佳奈子さんも同じ病院にいらしたのね」
「はい。弥白様、お身体の方は?」
「ありがとう、私は平気よ。佳奈子さんは?何だか顔色がすぐれない様に
見えますわ」
「ご心配には及びません。月灯りの所為だと思います。顔色の事は」
「そう。それならば良いのだけれど」

何時の間にか隣りに立っていた佳奈子の声が弥白の耳元に届きます。

「有難うございます。弥白様に心配して頂けるなんて感激」
「まぁ、大袈裟ね…」

弥白が顔を向けると精一杯の背伸びをした佳奈子の顔がそこにありました。
顔の半分が陰になっていて、その陰の側の瞳がガラスの向こう側に光っています。
単調な青い光の中であるはずなのに、佳奈子の薄い唇が濡れた桃色に染まって
見えました。弥白は急に目を逸らしたい気持ちになっていたのですが、佳奈子の
瞳が吸い寄せる様に弥白の瞳を見上げている間はどうする事も出来ませんでした。
やがて佳奈子は足が疲れたのか、背伸びを止めてよろよろと弥白の傍を
離れました。離れながら、弥白の手をそっと取ると窓辺に誘います。

「座りませんか、弥白様」

弥白は返事をしたつもりでしたが、声は出ずただ頷いただけでした。
作り付けの長椅子に並んで座る二人。しばらく互いに黙っていましたが、
佳奈子がほんの少し弥白に身を寄せる様な仕草を見せてから話しかけて
来ました。顔は俯いていて、自分の爪先の辺りを見詰めている様でした。

「弥白様」
「…何かしら」
「こんな風に誰かと…」

弥白は続きを促す様にそっと佳奈子の横顔を見詰めましたが、佳奈子の方は
横目で恥ずかしげに一度見上げると更に深くうなだれてしまいました。
それでも声は一語一語はっきりと弥白の耳に届いて来ます。

「誰かと何時も二人だけの時間を過ごせたら」

続く言葉が無い事を確かめる為に、間を置いてから弥白は応えました。

「それが出来たら素敵ね」
「…はい」
「でも、中々思い通りには行きませんわ…」
「そんな事は」
「え?」
「大丈夫です、弥白様。願ってさえいれば必ず」
「そう…だと良いのだけれど」

再び睡魔が襲ってきたのか、弥白の意識は段々と霞んで行きました。
佳奈子の言葉もまた、とても遠くから聞こえる気がしました。

「……誰……邪魔………簡単ですよ」



シャッ

少々甲高く耳障りな音がすると同時に閉じた瞼越しにも周囲が明るくなった
事が判ります。一日の始まりを告げるざわめきが段々と意識の中に入り込んで
来て、まどろみを邪魔しました。そして頭上から呼ぶ声が降ってきます。

「おはようございます、山茶花さん。ご気分はどうですか?」
「佳奈子さん…は?」

カーテンが開け放たれた窓を背に、看護婦が弥白の顔を覗き込んでいました。

「ええと、どなたですって?」
「さっきまで、そこに」

弥白はベッドの脇に置かれたパイプ椅子に目を向けました。看護婦もその視線を
追ってちらりと椅子に目をやりましたが、すぐに笑顔で弥白に向き合いました。

「消灯前に面会に見えた方でも居たのかしら?」
「違うの、夜中に」
「夜中?」
「ええ。月灯りが眩しくて」
「夢でも見ていたのでしょう、多分」
「夢なんかじゃ…」
「だって、朝までカーテンを閉めておいたでしょ?月は見えないと思うけど」
「そうじゃ無いの」

看護婦は控えめで相手を不愉快にさせない様に注意深い声で笑いました。
それから弥白に慣れないベッド故に眠りが浅かったのでしょうと言うと、
他の患者達の様子を見る為に離れて行ってしまいました。釈然としないまま、
再びベッド脇の椅子に視線を落とす弥白。そこには昨夜就寝前に脱いで置いた
カーディガンが最後に見た時そのままに畳んで乗せられているばかりなのでした。
やがて朝食が運ばれ、決して多くは無いそれを半分近く残して済ませると
如何にも仕事の合間に顔を出したという風情の神楽が現れました。

「寄り道などしていて良いのかしら」

昨日ずっと弥白の傍に居た為に仕事が溜まっているのであろう事は容易に
想像が出来ましたから、弥白なりに気を使ってみたつもりでしたが当の
神楽には皮肉めいて聞こえてしまった様子でした。やや顔を曇らせつつ、
それでも精一杯冷静に応える神楽です。

「どうやらお元気になられた様で安心しました」
「一晩眠りましたもの。少しはね」
「本当はゆっくりお休みになれなかったのでは?」
「まぁ、どうして?」
「看護婦が夢見がよろしく無かった様だと言っていましたから」
「やっぱり」
「は?」
「ここは神楽のテリトリーなのね。ここでの私は駕篭の鳥」
「患者の様子に気を配るのは当然の事です」
「そうね、お仕事ですものね」
「弥白様…」

弥白は暫く神楽の顔を見詰めるとクスっと笑いました。

「ごめんなさい。嫌な言い方ね」
「わざと仰有ったのですね」
「ええ。神楽の困った顔が見たくなったの」
「ひどい話です」

溜息をつく神楽を見て、弥白は再び小さく笑うと話題を変えました。

「それで、私は何時まで足止めなのかしら?」
「検査の結果に問題はありませんでしたので、ご気分がよろしいのでしたら」
「じゃ、帰りますわ」
「そうですね。ご自宅でゆっくりなさった方が良いでしょう」

神楽の言葉を最後まで聞かずに弥白はベッドから飛び下りていて、神楽を
ヒヤりとさせていました。家の者が置いていった着替えのバッグを手にすると
神楽をじっと見詰めます。

「一つ教えて欲しいのだけれど」
「はい」
「大門佳奈子さんという方も入院しているわね?」
「ご学友の方ですね、確かにいらっしゃいますが」
「容態は?」
「それは…」
「守秘義務?お友達の様子を聞く事もいけないと仰有るの?」
「いいえ、そういう訳では」
「まさか…悪いの?」
「怪我は大した事は無いのですが、精神的にはまいってしまっている様です」
「面会、出来るかしら」
「多分まだお休み中ではないかと」
「まだ寝ている?」
「昨夜は少し強めの安定剤が処方されていた様ですので」
「それでは、一晩ぐっすり?」
「ええ。火事でも目が覚めないくらいに」
「そうなの…」

弥白は少し考えて、話は出来ずとも退院前に一度顔を見るだけでもと決めて
いました。それから神楽に向けて言います。

「それと」
「はい」
「着替えますので出ていって下さいません?」
「し、失礼しました」

神楽は間仕切りのカーテンを引きながらそそくさと退散して行くのでした。

(第161話・完)

# 第158話の名古屋病院編直後(19日深夜)から翌朝まで。
# ふと猛烈に佳奈子ちゃんの事を書きたくなったりした訳です。(笑)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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