神風・愛の劇場スレッド 第154話『傍観者』(10/14付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 14 Oct 2001 14:18:57 +0900
Organization: So-net
Lines: 512
Message-ID: <9qb785$d74$1@news01bi.so-net.ne.jp>
References: <9om5k4$lie$1@news01cc.so-net.ne.jp>
<9p184l$p9c@infonex.infonex.co.jp>
<9po8cv$ho1$1@news01dj.so-net.ne.jp>
<9poaug$211$1@news01ci.so-net.ne.jp>
<9q62k5$ss0@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

> 佐々木@横浜市在住です。

 こんにちは。
 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
です。そう言うのが好きな人だけに。

#今回もやや低いのでご注意。

> >> >>> > >> ★神風・愛の劇場 第148話『使い道』
>
> # これは提案ですが、大きく話が動く際には1話毎にバトンタッチしなくても
> # 構わないのではないでしょうか。そこにこだわり過ぎていたかと最近思うのです。
> # 或いは第***話が2〜3週にわたるとか。
> # 私としても後日数回分自分のパートを続けて出したいかなと思う話がありますし、
> # この展開と次の展開の間は周りを動かさないで欲しいと思う事、ありません?

 提案の件、了解です。もしもその様な展開になった時には、前後編にするなり
して、同じ話数で2〜3週程続ける形にしたいと思います。その際には末尾に次
回も自分パートと宣言すると言う事で如何でしょうか。

#…で、お休みの方はフォロー記事(可能なら番外編)に徹するも良し、フォ
#ロー記事は1話終了後にして次の展開を練っても良い訳ですし。

 クライマックスが近くなるにつれて、話を大きく動かす形になると、確かに1
話交代だとやり辛い部分があるのは感じてはいました。
 話がなかなか進まないので、少し話を進めるべく地区大会の作戦話を用意した
のですが、それで一気に欠点が露呈したようですね。

#これは私の責任(滝汗)。

 ただ、一人で話を進めすぎるのもリレー小説では無いなとも感じているので、
可能な限りこれまでの形式を尊重したいと思っています。

> >> >>> > ★神風・愛の劇場 第149話 『留守』

> それと本節のフォローにおいて私は「フィンの狙いどおり」という部分を
> 「まろんを傷心に追い込む」という部分を主眼として解釈し、
> 「目的はおおむね達成」と理解していました。したがってその後の
> ツグミさんに関してフィンが関知する意味は無いだろうと判断して
> 前回のフォロー内容となった訳です。

 フィンの狙いのに関しては考えは一致していたのですが、(フィンが直接手を
下した訳には無いにせよ)一度目的を達した後では、(復縁した後でも)同じ手
を二度とは使わないという事ですよね。

#ノインがツグミさんを利用して同じ事をしているのはさておき(笑)。

 既にツグミさんを利用して何かをするのはノインの役割に移っていて、フィン
は自分の手駒に手を出されるのは不愉快だけれども(だからツグミに全君の事を
警告した)、もうこれ以上彼女には手を出さない。それが必要以上に無関係な人
間を巻き込まないという魔界の方針とも一致しているし、自分もこれ以上ツグミ
を巻き込みたくないと思っている。

 実のところ上記方針でツグミさんとフィンの関係を自分自身で書いて来たのに
も関わらずその辺りを突っ込んだのは、本編で結局フィンは殆ど手を下すことな
くまろんちゃんが傷心に浸ってしまったので、結局の所フィンちゃんは当初、ツ
グミさんに何をしてまろんちゃんを傷つけるつもりだったのだろう…という個人
的興味からですので、深く気にされないで頂ければ幸いかと(滝汗)。

#気を悪くされたら大変申し訳ないです。

> ## どうやら二重に話が噛み合っていなかった様で。
> ### 噛み合わないのは毎度の事ですが。(笑)

 私の読解力が不足している事にして下さい(笑)。

> >> >>> ★神風・愛の劇場 第150話『二人きり』
>
> 50%くらい予想どおりという所でしょうか。
> # 全面的にミスト本人とは意外。憑依を使ってくるかと思ってました。

 憑依は考えたのですが、フィンと一夜を明かすのは予定の行動でしたので、そ
れは出来なかったのです。
 それで、見た目も相手に応じて如何様にも変化させる事の出来るミスト自身の
出番となった訳ですが、問題となったのは佐々木さんは承知の事ながら読者様向
けに書くと、ミストに委員長が触れた時にどうなるのか? という部分。
 抱き心地が違ったりしたら興ざめだよなぁとも思ったのですが、ミストの姿を
纏う術には触り心地を錯覚させるという部分も含まれているという事で見解を一
致させ、前回の話に至りました(笑)。

> >> >★神風・愛の劇場 第151話 『お勧め』
>
> >> #ちなみに現在、某F氏の某妄想ともリンクさせる方向で話を進めています
>
> # 既に世界観は共有しているはずでしたから、もっと直接的に
> # 話が相互に重なるって事でしょうか。^^;

#その積もりです。
#某妄想のあの話は、本編の上でも非常に重要な台詞が出て来ますので(謎)。

> >> ★神風・愛の劇場 第152話『大芝居』
>
> しかし委員長の方はそうは思っていないので勝手に話が通じ、更には
> 秘密を共有していると思い込み、そのまんま仲間意識がだんだんと
> 憎からぬ気持ちに変化して…。*^^*

 誤解から始まる何とやらもあるという事で(笑)。

#原作では学生の時に出来ちゃった婚みたいだし(謎)。

> ミストは本性を抑えて都ちゃんらしく振る舞う事に全力を上げていた様子。
> 上手く騙し続けられた事もご機嫌の理由の一つだったのですね。

 術を使えばどうとでも操れるところを敢えて使わない事により、食事を行う以
上の深い満足感を得たという事です。

> そんな状態ながらも偽都ちゃんと委員長の姿を見て、祝福する気持ちと
> ほんの少し寂しさを味わっている感じのまろんちゃん。
> しかし、本当の都ちゃんの気持ちを誤解する事になってしまいそうではあります。
> # これはこれでモメ事の種かなぁ。ミストの策略みたいだし。

 誤解に伴うもめ事はラブコメの基本です(笑)。

> ★神風・愛の劇場 第153話 『ぬるま湯』

 都ちゃんと一夜(いや、御休憩か(笑))を過ごした後、委員長がどのように
変化するのかを自分でも考えていたのですが、やっぱり都ちゃんに対して妙に自
信をつけてしまったようで。
 でも委員長の足りないのは、才能では無く自分を信じる心だと思うので、多分
これは委員長にとっては良い方向に働くのかも。

 しかしながら都ちゃんの方は全くそれに気付かずに、前日にフィンから委員長
達が自分の噂について知っていると聞かされた後だけに、逆に自分の事をまろん
ちゃんや委員長が心配してくれていると感じ取ってしまったのですね。

 で、二人の様子を見ていたまろんちゃん。
 きっと委員長達の関係について大きな誤解をしているに違いなさそう。
 上記にもありましたが、委員長と都ちゃんの間を取り持とうと、余計なアクシ
ョンを起こしてしまいそうです。

#そう言えばすっかり忘れていたのですが、あの写真を見た後の稚空に対するま
#ろんちゃんの描写を自分で書き忘れていました。
#多分、表面上は今までと変わりなく接していたのでしょうけど。

 では、本編へと進みます。


★神風・愛の劇場 第154話『傍観者』

●オルレアン・まろんの部屋

 その日の放課後の練習は、翌日が地区大会である事もあり早めに終わりました。
 都と一緒の帰り道、ツグミの家に寄ろうかとの考えが頭を過ぎりましたが、そ
れは思い止まりました。期待して裏切られるのが怖かったからです。

「じゃあね。今日は早く寝るのよ」
「判ってまぁす」

 部屋の前で都と別れ、まろんは自分の部屋の扉を開けました。

「ただいま」

 誰も居ないのは判っているのに、ついそう言ってしまいます。
 言ってから、リビングに灯りがついているのに気がつきました。
 昨晩寝る前に灯りを消して、今朝は灯りをつけてはいない筈でしたから、誰か
がこの部屋を訪れたのは明らかでした。
 それに気づくと、ここの所沈み勝ちだったまろんの表情が明るくなりました。
 一人暮らしの現実を考えれば、犯罪者が居る心配をしても良さそうなものです
が、この時のまろんには別の予想──願望──がありました。
 そしてリビングに入った時、その予感は現実のものとなりました。

「お帰り、まろん」

 リビングにはこのところあまり姿を見せなかった客人の姿がありました。
 客人が誰であるかに気づくと、まろんの顔はますます明るくなり、その名を呼
びながら客人の元へと駆け寄るのでした。

「もう、今までどこで何してたのよ」

 ソファに座っていた客人──フィンを抱きしめ、暫くそのままでいました。
 それに対してフィンはされるがまま、じっとしていました。
 やがてまろんは顔を上げ、フィンを見上げました。

「夕食、食べて行くよね。これから作るんだけど。それとも、お風呂に先に入ろ
うか。あ、そうだ! チョコレートがあるんだよ。この前、バレンタインだった
から…」

 そう言えば前にフィンとお風呂に入ったのはいつだろうとまろんは思います。
 フィンが帰ってきたのが1ヶ月と少し前。
 それだけの間しか経っていなかったにも関わらず、まろんは前にフィンと一緒
に過ごしたのが何時だったのか思い出せませんでした。

「(色々あったから)」

 言い訳に過ぎない事は判っていました。
 最近は他の誰かの事を常に考えていたので、フィンの事を頭の片隅に追いやっ
ていただけ。
 稚空もツグミも都さえも、自分から離れて行こうとしているのかもしれない今
になって、それも本人が目の前に現れてから彼女のことを思い出すのは、何て都
合の良い考え方なのだろうとの思いが頭の中を過ぎります。
 だからこそまろんは思います。今日はフィンだけのことを見つめていようと。


●オルレアン・ミストの隠れ家

「クイーンがジャンヌと接触したようよ」

 キャンディーの中をどうでも良いという表情で覗き込んでいたミストは、映像
を下のソファに座っているノインに見せてやりました。

「お手並み拝見といった所ですか」
「どうなると思う?」
「クイーン程の力があれば、今の日下部まろんを加護する神のバリアーなど、恐
るに足りない筈」
「そんなことを聞いているんじゃないわ」
「では何を?」
「ジャンヌの生殺与奪の権をその手に握った後でどうするかよ」
「私にも予測出来かねます」
「我らに殺される前に一思いに楽にしてやるか、それとも身も心もぼろぼろにす
るか」
「さもなくば何も出来ないか。クイーンは人間に対する感情は甘いところがあり
ますから」
「賭けてみる?」
「良いでしょう。しかし何を賭けるのです」
「そうね…。ジャンヌに止めをさす権利ではどうかしら?」


●オルレアン・まろんの部屋

「…うざい」
「え?」
「うざいのよ、まろん!」
「きゃっ」

 フィンは急に立ち上がるとまろんの腕を払い、まろんを床に突き飛ばしました。
 突き飛ばされたまろんはそのまま床に背中から叩き付けられました。

「フィン、何する…」

 フィンはまろんの胸倉を掴み、持ち上げました。

「……」
「ねぇ、どうしたのフィン? どうしてそんな怖い顔をしているの?」

 魔界から帰って来たフィンがまろんに対して不機嫌なのはいつもの事。
 でも、これまでは暫くするとフィンはすっかり大人しくなってまろんのなすが
ままでいてくれたのです。
 きっと、魔王の手先なのがばれて、私の前では素直ではいられないのね。
 一緒にいてさえくれれば私はそんな事、全然気にしないのに。
 今までそう、思い続けていたのです。

 しかし今日のフィンは、どこか違う雰囲気を漂わせていました。
 それまでのフィンは怒っていても、それは強がりにも見えました。
 だからまろんはフィンに対してややもすると強引に接して来たのですが、今目
の前にいる彼女から感じられているのはただ心からの怒りのみ。

 だからまろんはいつも彼女を組み敷くのに使う力は使いませんでした。
 自分の事を魔界の者共から守ってくれている、淡い緑の障壁。
 それを使えば、フィンのことを易々と抑え込むことが出来る。
 だけど、今は。

「『神のバリヤー』なら、今の私には効かないわよ」

 まろんの心の中を見透かしたように、フィンは言いました。

「え!?」
「だからもう私は、まろんの思い通りにはならない」
「ああっ」

 まろんを持ち上げていたフィンは、今度はまろんを床の上に押し倒しました。

「今まで、私の事を散々玩具にして」
「それは…フィンだって悦んでいたじゃない」
「本気でそう思っているの?」
「え?」
「私がまろんの力を恐れ、従順に振る舞っていただけとは考えないのね」
「だって私とフィンは友達じゃない」

 まろんがそう言うと、フィンは笑い出しました。

「フィン?」
「私とまろんが友達? まろんは私の事を本当にそう思っていたの?」
「本当だよ。ううん、友達以上──家族だとも思ってる。フィンだってそう言っ
てくれたことがあったじゃない。今日からフィンが私の家族だって」

 未だフィンが神の使いだと自称していた頃。
 孤独に悩むまろんに、フィンはそう言ってくれた事があったのでした。

「嘘ね」
「嘘じゃないわ」

 自分に覆い被さるフィンを抱きしめようとまろんが伸ばした手。
 それをフィンは払いのけました。

「フィン?」
「最初は、魔王様から頂いた使命のためについた嘘だった。だけど、まろんと一
緒に暮らしていく内に、段々まろんの事を家族とも友達とも思えるようになって
来た」
「じゃあ…」
「魔王様の力を強めるために必要な『美しい心』がある程度集まって、魔界に還
ることになった時、本当にまろんとは離れたくないと思った。だけど、それは間
違っていた」
「私だって! フィンが帰って来ることをずっと待ち続けて…」
「再び魔王様の使命を受けてこの人間界に降り立った時。そして再びまろんと出
会った後で、私は自分が間違っていたことを悟ったの」
「どういうこと?」
「結局、まろんは自分の寂しさを埋めてくれる人であれば、誰でも良かったのよ。
ううん、人で無くても良かったのよ」
「そんな事無い!」
「私の意志などお構いなしに、まろんは私の事を玩具にして弄んだ」
「そんな事…無い…よ」
「最初は確信が持てなかった。でも、まろんがツグミとつきあいだした頃から、
疑惑は確信に変わったわ」
「ツグミさんとの事を知ってるの?」
「まろんのことは、何時でも見ていたから」

 フィンがそう言うと、まろんは顔を赤らめました。

「まろんにとって私は、自分の寂しさを埋めるための玩具なのよ」
「違う!」
「だからツグミが自分から離れた今、こうして私の事を求めようとする」

 懲りずに自分に伸びていたまろんの左手をフィンは掴みました。

「痛…」
「本当は嫌で嫌で堪らなかった。まるで玩具で遊んでいるかのようにまろんに触
れられる事が。魔王様に頂いた使命でなかったら、近づく事すらしたくなかっ
た」
「違う、違うよフィン!」
「本当は私、まろんのことが前から大嫌いだったのよ!」
「!」

 まろんは自分の中で何かが壊れた音が聞こえたような気がしました。
 フィンの事を愛し続けていさえすれば、きっとフィンも応えてくれる。
 現に今までも、魔界のクイーンとも呼ばれる力を持ちながら、決して私には直
接力を振るおうとはしなかった。
 フィンも本当は私の事を愛してくれているから…。

「私がまろんの事を愛している? 見当違いも甚だしいわ」
「フィン、あなた…」

 今考えていた事をフィンに言われ、まろんは驚きました。

「そうよ。まろんは知らなかったかもしれないけど、私の特技は人間が言うとこ
ろのテレパシー能力。だから、あんたの考えていることもある程度は読めるのよ。
全てでは無いけれど」
「だったら私がフィンを心から愛している事だって…」
「ああ判るわよ。でもそれは違う。まろんが私を愛しているのはあくまでも
『物』としてなのよ。まろんの私に対する愛情は、お人形に対するそれと同じ。
私には判る」

 フィンにそう断言されると、本当にそうであったような気がします。
 だとするならば、今まで私がフィンにして来たことは…。

「終わりね、まろん」
「嫌…」
「もう私とまろんの関係は終わったのよ」
「そんな…」

 絶望の淵に沈むまろん。
 そんなまろんの唇にフィンは自分の唇を重ねました。

「!」
「これでお別れよ、まろん」
「フィン…」
「でもその前にこれまでのお礼、しなくちゃね」

 フィンは、まろんの制服のリボンタイに手を伸ばすと、するりとそれを解きま
した。

「暴れちゃ駄目よ。破れちゃうから」
「何、するの?」
「これまで散々まろんが私にした事」
「嫌…」
「ならば知りなさい。今までどんな思いをして私がまろんと接していたのかを」


●オルレアン・ミストの隠れ家

「どうやらショータイムの始まりのようよ。見る?」

 キャンディーを覗き込んでいたミストは、ニヤニヤしながらノインに言いまし
た。
 もっともミストがそう言わずとも、テーブルの上に置いてあったキャンディー
から別の角度から映された映像が浮かび上がっていたのですが。

「あまり覗き見は趣味では無いのですが」
「賭けはあたしの勝ちのようね」
「意外でした。クイーンがここまでするとは」
「要するに、クイーンもジャンヌの事を憎んでいたってことよ」
「本当にそうなのでしょうか?」

 釈然としない思いで、ノインはそれでも目の前の映像に見入っているのでした。


●オルレアン・まろんの部屋

 リビングの中は静寂に包まれていました。
 若干の衣擦れの音と吐息を除いては。

 それはフィンにとって、予想外の出来事でした。
 フィンの下にいるまろんは全くの無抵抗。
 フィンが何をしようとも、どこに触れようともまろんは動きもしなければ声一
つ上げようとはしませんでした。
 苛ついたフィンは、手に力を込めて少し乱暴にしてみました。
 その時だけ、少し苦痛の声を上げるのですが、その後は無言。
 唇をぎゅっと噛みしめ、耐えている様子。
 その唇から血が出ている事に気付いたフィンは、とうとう耐えきれなくなって
叫びました。

「少しは抵抗してみなさいよ! 声を上げてみなさいよ!」

 それまで目を瞑っていたまろんは、目を見開きフィンのことを見つめました。
 真っ直ぐに見返されたフィンは、慌てて目を逸らしました。
 まろんの目を見ると、決心が揺らいでしまう。心を見透かされてしまう。
 そう感じたからでした。

「これは…罰なの」
「罰?」
「うん、罰だよ。私が今までフィンの気持ちのことなんて考えずに、フィンのこ
とを一方的に愛していた罰。つい最近まで、私のことを心から愛してくれる人な
んて殆ど居なかったから、少し優しくされるとそれで舞い上がって…」

 フィンが気がつくとまろんの瞳には涙が浮かんでいました。

「今までごめんね、フィン。私の愛情を一方的に押しつけて。だから今度は私が
受け入れる番。フィンが私にしたい事、何でもしても良いよ。それでフィンの気
が済むのなら」

 まろんはそう言うと、再び目を閉じました。
 フィンは再びまろんの身体に触れました。
 びくん。
 まろんが反応するのが判りましたが、それきりまろんは再び身動き一つしよう
とはしませんでした。
 どんなにフィンが手を動かそうとも、まろんは声一つ立てずにフィンに身を任
せていたのです。

「馬鹿馬鹿しい!」

 暫くして、フィンはそう叫ぶと立ち上がりました。

「フィン?」

 急に身体が軽くなったのを感じたまろんは、目を開けると身体を起こしました。
 その時には、既にフィンはまろんから離れていて、窓際に立っていました。

「フィン!」
「さよなら、まろん」

 そう言うとフィンは、逃げるように窓を開けると夜空へと姿を消しました。

「フィン……」

 まろんは、へなへなとその場に座り込み、肌寒さを感じるまで暫くそのまま嗚
咽を続けているのでした。


●オルレアン・ミストの隠れ家

「どうやら賭けは引き分けのようで」
「いいえ、どちらかと言えば私の方に近いわよ」
「やはりクイーンは天使としての出自からは逃れられないようですね」
「あの根性無し。あんなに容易く目的を果たす機会は無いだろうに」

 本当は私は安心したのですがね。
 そうノインは心の中で呟きました。

「しかし、クイーンは一定の成果を上げました」
「それは認めるわ」
「後は我々の仕事です」
「それでさっきの賭けの事だけど」
「6対4…いえ、7対3でミストの勝ちで良いでしょう。私としては、ジャンヌ
様の魂をこの手に出来れば、誰が手を下すのかについては拘りません」
「あら、そうなの」

 拍子抜け、そんな表情をミストはノインに見せるのでした。


●桃栗タワー

 その日の寝床はこの街で最も高い建造物であるタワーの展望台の上に決めまし
た。
 当日の作戦では傍観者に徹することになっていましたから、その時までここで
見ているつもりです。現場の様子を見るつもりなら、都やまろんに渡してある天
使の羽根を通して見る事が出来るのです。

 今日、自分の本当の気持ちを改めてまろんに気付かされました。
 さりとて、再度の裏切りも出来ませんでした。
 そちらへの愛もまた本物だったのです。
 結局、自分もまろんと同じだったということかとフィンは自嘲するのでした。

 前線の指揮官として非常に不本意なことながら、ノインの提案を飲んだのは、
きっとその事が自分で判っていたからなのだろうと思います。
 きっと自分はこれから、彼女の事を想いつつ、彼女に手をかけたミスト達を密
かに恨んで生きていく事になるのだろう。
 それはとてもお互いにとって不幸なこと。
 本当なら、自分で手をかけてしまえば、後は自分一人で悩めば済む事なのに。

「(逃げ道を用意してくれている?)」

 成る程、憎むべき相手がいれば、それを糧にして生きていくことも出来る。
 今まで彼もそれを糧に生き続けて来たのだから。

「余計なことを」

 そう呟くと、フィンはごろりと鋼鉄の寝床の上に横たわるのでした。

(第154話 完)

 2月18日夜までのまろんちゃん+魔界の皆様でした。

#鬼畜に徹しきれなかったです(笑)。

#次回の佐々木さんパートの次の第156話から、地区大会編に入る予定です。
#どの程度の分量になるのかは判らないのですが(汗)。

 では、また。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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