神風・愛の劇場スレッド 冬のスペシャル版 『火炎回廊』 第7章(2/5付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 5 Feb 2001 17:11:51 +0900
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佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。

これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。


妄想100話突破記念&冬だからスペシャル6本目です。
# 第1、2章<94a13v$akm@infonex.infonex.co.jp>、
# 第3章<94gv95$li5@infonex.infonex.co.jp>
# 第4章<94qqnh$59b@infonex.infonex.co.jp>
# 第5章<9535kq$jfn@infonex.infonex.co.jp>
# 第6章<95da1p$989@infonex.infonex.co.jp>の続きですので宜しく。

## ちなみにスペシャルが終わらなくても近々本編も再開予定です。(多分 ^^;)

# では、始めます。

★神風・愛の劇場 冬のスペシャル版 『火炎回廊』

●第7章・秘密

まろん、大和、そしてツグミの三人は、初めに通って来た通路を戻る形で
進んでいきました。ただし、今度は前から来るはずの盗賊達に不意打ちを
食らわない為に気配に耳を澄ましながらの前進です。それに先に行った都が
何処かに潜んでいるはずでしたので、通路の左右に並んでいる柱の陰も
一つ一つ確認しながらでしたから、歩みは遅々とした物でした。
まろんがツグミに囁きます。

「都、何処に隠れているんだろうね」
「それより、気になりませんか?」
「何が?」
「この神殿、外から見たときと中の通路の感じが違う様な…」
「そうかな」

二人の会話を何時の間にか傍に来て聞いていた大和も同じ事を考えていた様です。

「やっぱり変ですよね」
「だから何が?」
「この通路と同じような通路が四方にありましたよね」
「うん。言われてみれば確かにあったね」
「先程の祭壇の在った部屋に全部つながっているはずです」

大和の言葉に頷くツグミ。

「でしょうね。確かめませんでしたけれど」
「それ以外にも通路を横に結ぶ回廊が在ったように見えたのですが」
「それですよ。何処から抜けるのかしら、回廊に」

すると三人の頭上から声が降ってきました。

「此からよ」

一瞬身体を強張らせてから、三人は恐る恐る上を見上げました。
三人の遥か頭上にぼんやりと灯りが見え、その灯りに照らされて都の顔が
辛うじて判ります。

「何だ、驚かさないでよ」
「心臓に悪いです」
「それよりさぁ、あんた達」

都が言いました。

「そんな所でべらべら喋ってないでよ、待ち伏せにならないでしょうが」
「…」「…」「…ごめん」

通路の壁際、天井に近い部分に梁が迫り出している部分があり、
都はその上に上がっていました。そこから都が下ろした綱を伝って、三人も
同じ所へと上ります。全員が上がったところでまろんが聞きました。

「ねぇ、何処?」
「何がよ?」
「回廊に抜けられるんでしょ?」
「目の前に在るじゃない」
「?」

まろんは都が顎で指した方にランプをかざして見ました。
下からは梁に邪魔されて見えない位置に四角い穴が開いています。
梁に沿って横に長い穴で高さはあまりありません。
近づいて覗き込もうとするまろんの手を都が掴みました。

「覗くなら、先に覚悟しなさいよね」
「覚悟?」

ツグミがぽつりと漏らしました。

「…やっぱり有ったのですね」

都は聞き逃しませんでした。

「やっぱり?」
「もしかしたらとは思っていたんですよ」
「何時からそう思っていたの?」
「落とし物を見付けた時から」
「さっきは違うこと言ってたわね」
「確証が無いのに軽々しく口に出来る様な事ではありませんから」

大和は黙って聞いていましたが、まろんは我慢できなくなり話に割り込みます。

「私にもちゃんと教えてよ」

都とツグミは同時にまろんに顔を向けましたが、答えたのは都でした。

「生贄よ」
「生贄?」

都が見詰めると促された様にツグミが話しました。

「出発前に昔の魔術の話をしましたよね?」
「ロクアトを敵から守った罠の事でしょ?赤い砂の」
「ええ。でも、街一つそっくり囲む程の魔術ですよ、尋常では無いんです」
「それで生贄を使ったって事?」
「そういう事ですね。魔術を使った守備隊の存在が秘密にされた本当の理由も
 それでしょう。生贄が誰だったのかは記録には残ってない様ですが」
「この奥に…」

まろんは四角い穴を見詰めていましたが、意を決したのか中を覗きました。
穴はまろんの背丈の半分程先で終わっていて、その向こうは広くなっている
様子です。しかし、身を乗り出したものの、下に向かって闇が拡がっている
だけでした。

「真っ暗だし、ランプの灯りも届かないよ」
「ほれ」

都がまろんに綱を手渡しました。

「ランプを先に結んで下ろして見なさいよ」

まろんが言われた通りにすると、穴の奥の下、つまりは穴の奥に隠された
別の通路の床に徐々に光が届いて行きました。

「うわぁ、凄い数」

床には無数の骸が並んでいました。少なくとも灯りが届く範囲の床は
骸で埋め尽くされています。ですが、その骸達には足らない物が。

「でも変だよ、髑髏だけ無い」
「さっき在ったでしょうが、沢山」
「え?」

まろんは少し考えてから祭壇の部屋の事を思い出しました。

「ああ、あれが」

恐る恐る隣りに来て見下ろしていた大和が言いました。

「成程。生贄の首だけ祭壇の周りに飾っていたんですね」
「趣味悪ぅ〜」
「それだからこそ」

中を覗こうとはしなかったツグミが言います。

「数百年経っても完全には解けない強力な術が完成したんですよ」

三人は氷の洞窟に迷い込んだ時の様な寒気を感じていました。

(続く)

では、また。

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