神風・愛の劇場スレッド 第95話『黄昏』(12/9付) 書いた人:佐々木英朗さん
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From: hidero@po.iijnet.or.jp
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 9 Dec 2000 02:09:42 +0900
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Lines: 406
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<90csu5$peb$1@news01cg.so-net.ne.jp>

佐々木@横浜市在住です。

<90csu5$peb$1@news01cg.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

>> このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッドで
>> す。その手のが好きな人だけに。

という事で。


>> >>> >>> >>> >>> ★神風・愛の劇場 第85話『団欒』

>>  稚空と使う積もりで集めたとか(爆)。
>> #すると、神楽が将来犠牲になるのかな(違)

稚空と神楽では攻守が逆になりそうですね。(笑)

>> >>> >>> ★神風・愛の劇場 第90話『記録』

>>  一応設定年代をリアルタイムで設定しているので、5年前にISDNは無かろ
>> うかと思いまして。
>> #通販リストに電話やFAXからの分も入れてあるのはその所為

成程。確かに個人でISDN(INS64)を引く事が意味を持つ様になったのは
ここ数年ですからね。ISPの勃興以前は家庭では、ほぼ無意味でした。
# サービス品目(某NTTの商品)としては10年前には既にあったはず。

>> >>> ★神風・愛の劇場第92話『鈍感』

>>  二重身の話自体は、フィンとミストの会話で初めて出て来た部分なので、魔界
>> 由来の術だと思うのですが、それが人間界に伝わる過程で事実が若干歪んで伝わ
>> り、委員長が読んだのは人間界で伝わる話の一つという設定。

この辺はオカルト部門担当(笑)として、可能なら擦り合わせを試みてみます。
# ちょっと難しいかなぁ、今のところ。話の展開次第。

>> >★神風・愛の劇場 第93話 『自信』
>>  とうとう偽イカロスの首輪を手にしてしまったツグミさん。
>>  どうやらノイン作の首輪はツグミさんの神の手を上回ったようで。

なにせ最新科学技術の粋を集めてやっと「妙だな」程度の出来ですから。
もっとも第93話で書いた様に、あれが別な誰かの飼い犬の首輪の鑑定なら
ツグミさんは変だと指摘したはずなのです。自分の事なので差し引いた部分が
実は本質の部分だったという話なんで。

>>  自分で書いていて忘れていたのですが、イカロスの首輪はアニメ本編第30話
>> で悪魔に取り憑かれて消えてしまっていますので、ツグミさんの母親が購入した
>> 首輪は最早この世には現存していない(筈)な訳で。その部分も含めてきっちり
>> フォローして頂きました。

私も某所の呟きを読むまで完全に忘却の彼方。^^;;;
結論には影響しなかったので、こっちのネタ合わせは簡単だったのですが。

>>  都ちゃんや稚空はその事実を知らないのですが、知っている筈のまろんちゃん
>> もその事実を忘れ去っていたようで。

あのシーンのまろんちゃんの台詞は私の代弁です。(笑)

>>  どうやら、ノイン作の首輪はまろんちゃんの神の障壁に反応した模様で、この
>> 線から真実に迫っていくことになるのかな。

しばらくツグミさんの周りには不穏な影は無かったと思っていたのが
勘違いだった事に気付くという辺りがツボですので、まろんちゃん自身は
首輪の真贋は全然疑ってない…はずなのですが、後述の様に周りが
疑ってますから場合によっては、まろんちゃんが真実を追うという事はあるかも。
本当は気付いていいはずなんですけどね、今は別の事に目が眩んでいるんで。^^;
それに首輪がもう暫く都ちゃんから戻らない雲行きなので、
首輪に関するまろんちゃんの探索はお預けという所ですね。

>> ★神風・愛の劇場 第94話『再確認』

ミストとノインは首輪に対するまろんちゃんの力の反応をマイナスの
イメージで解釈した様ですね。
(そもそもあの二人がどう考えるかなんて考えてなかったなぁ。^^;)
すぐに出せそうな結果を敢えて避けて(残して)別な方法を続ける事に
ノインはこだわっているのは何故なのか。ミストがフィンの仕掛けの
詰め(仕上)を行うことを強くは望まないのは判る気がしますが。
ノインの匂わせている二つのアレはあっちとこっちか…、片方は
戦力でしょうけど、もう片方は何か役に立つのかなぁ。^^;;
# それとも何か見のがしているのか。(共著者の一人としては失格 ^^;)

それにしても意外だったのは、都ちゃん(含・その他2名)がまだ
首輪の真偽に関して疑っていた事ですね。ツグミさんが肯定したら、
その事実の前には疑問の予知は無かろうと思ったのですが、科学的な
分析に目を向けましたか。三人ともサスペンスドラマの見過ぎです。^^;
大体、誰が分析するのか考えているのだろうか>お三方。^^;;;
# 第93話での三人の最後の会話はツグミさんと共にイカロスの死を
# 厳粛に受け入れると共に、この件に関しては今後多くは語らないという
# 無言の宣言のつもりだったのですが、無言なだけに宣言とはならなかったか。^^;

ツグミさん、気分転換を兼ねて買い物に出かけましたか。
そしてツグミさんが歩くと誰かに当たると。(笑)

# そういえば、多分主役のはず(笑)の
# まろんちゃん本人がこの回は登場してませんね。^^;;;

# では、行きます。


★神風・愛の劇場 第95話 『黄昏』

●桃栗学園

2時限目前の休み時間。都は大幅に遅刻してきた理由をまろんに聞きました。
もちろん大方の察しはついていましたから、寧ろ確認したというのが
正しいのですが。まろんは朝の出来事をぼそぼそと話ました。

「はいはい。愚痴はもういいわ」
「だってさぁ…」
「まろんだって判ってるんでしょ、彼女がどういうつもりで
 あんたを送り出したのかぐらい」
「うん」
「なら黙って言う通りにしてなさい」
「でもね」
「それで昨夜はどうだったのよ、私達が帰った後」

ツグミがまろんに話した事が、はたしてまろんに対しての内証話だったのか、
それとも都に教えても構わない事だったのか判断がつきかねました。
そこで極く簡潔に話す事にします。

「泣いてないけど悲しんでない訳じゃないから、心配しないでだって」
「ふ〜ん」
「それだけ?」
「何となく、納得って事。ツグミさんらしい言い方ね」
「吐き出してしまえば楽なのにね」
「まろんが言うと説得力が無いわ」
「どういう意味よ」
「別に」

まだ何か言い足りない顔のまろんでしたが、次の授業が始まってしまい
渋々話を止めたのでした。それ以後、二人は共に何やら考え事をしていて
再び話し合ったのは昼休みになってからの事でした。
都は登校途中で皆と話した事を伝えました。まろんが言います。

「絶対反対!」
「何でよ」
「まだ昨日の今日なのに、イカロスの話を蒸し返すなんて。
 ツグミさんが可哀想だよ!」
「判ってるわよ、そんな事」
「じゃぁ」
「誰も、また押しかけて行ってツグミさんに話すなんて言ってないでしょうが」
「だって今、イカロスの毛を探すって」
「だからまろんが探して来るのよ」
「え゛?」
「あんたは御出入り自由なんだし、こっそり探す機会くらいあるわよ」
「だって、首輪も返すんだし」
「悪いけど、手続が遅れてるって伝えといて」
「嫌だよそんな事」
「じゃ、それはいいわ。私が言うから、その代わり」
「…」
「毛、見付けるのよ」
「…」
「まだ疑っているなんて話、聞かせたく無いんでしょ?」
「…判った」

黙ってやり取りを聞いていた委員長が言います。

「で、肝心なこと忘れていたのですが」
「何よ?」
「どうやって調べます?僕らの手に負える事じゃ無いですよね」
「そんなの私が何とかするわよ」
「事件でも無いのにですか?」
「…」

稚空が口を挾みました。

「都、あんまり無茶するな」
「でも」
「また親爺さんに迷惑かかるかも知れないだろ」
「…うん…」
「俺に心当たりが無い事もないんだ」
「稚空のお父さんの所?」
「まぁ、似たようなもんだ」

具体的には言いたく無いという感じでしたから、それ以上は都も
聞きはしませんでした。顔を見合わせるとまろんも不思議そうな顔を
していましたから、きっと同じように思っているのだと判りました。
委員長だけは。

「じゃぁ大丈夫ですね」

と、すっかり納得してしまっていましたが。

●桃栗町郊外

買い物から戻ったツグミ。途中で一緒になった全を連れてきていました。
自分の昼食の準備を兼ねて、全に料理を一つ教えるという話になったのです。

「僕、ハンバーグは出来てるのしか茹でた事がありませんでした」
「茹でる?」
「そでぃす。鍋にお湯を沸かせて封を切らずに入れます」
「……まぁ、そういうのもあるわね」
「違うのもあるんでぃすか?」
「普通は違うのよ」
「知らなかったでぃす」
「折角だから覚えて行ってね」
「は〜い」

左手でぎこちなく玉葱を刻むツグミを見て全は言いました。

「僕がやりましょうか?」
「そう?じゃ頼むわね」
「はい」

ツグミはその間にボウルへパン粉を入れると牛乳を加えてふやかします。
更に戸棚から手探りで香辛料の小瓶を取り出すと香りで必要な物を選び出しました。
それからフライパンにサラダ油をひいて熱し始めます。

「みじん切り出来ました」
「じゃ、この中に頂戴。熱いからフライパンの縁に触らない様にね」
「大丈夫でぃす」

そのまま暫く炒めていると、やがて玉葱はうっすらと飴色に。

「色が変わったでしょ」
「茶色くなりました」
「え?長すぎたかしら」

顔を近付けて匂いを確かめます。焦げた訳では無い様でした。

「あんまり色が着き過ぎない様にしてね、透き通ればいいから」
「判りました」

玉葱を別なボウルに移してあら熱を取ると挽き肉、玉子、そしてパン粉
を混ぜます。しっかりと混ぜ合わせると軽く塩と胡椒、そして。

「その茶色い粉はさっき買いませんでぃした」
「ナツメグって言うのよ。あんまり他の料理では使わないから、
 買うと余っちゃうと思ったの。後で今夜の分は分けてあげるから」
「有難うございます」

後は形を作って焼くだけ。最初の一つだけツグミが作って見せ、
それより後は全に任せました。焼く時も最初に一つ、ツグミが見本を
焼いて見せてから、残りは任せて脇でツグミが手順を教える事に。
ハンバーグを載せたフライパンを電磁調理器の上に載せます。
最初は火力を上げているのですが、見た目はまるで判りません。

「全君のお家の台所には普通のガスレンジがあるのよね?」
「えっと、普通って何でぃすか?」
「ごめん。つまり火が着くでしょ?」
「はい。それで煮たり焼いたりします」
「これは火が着かないから、火加減は音で覚えてね」
「音でぃすか?」
「そうよ」

途中、端を持ち上げて焼け具合を全に見せてからフライ返しを使い裏返しに。
そして蓋をして弱火にし、蒸し焼きに移ります。その間、全は言われた通りに
耳を澄ませてハンバーグの焼ける音の変化を聞いていました。
やがて出来上がった一つのハンバーグ。

「確かにハンバーグでぃす」
「さ、やってみて」
「はい」

火加減が目では判らない電磁調理器の所為で、焼き過ぎと生焼けを幾度か
繰り返しましたが、その内に焼いている時の音と焼け具合の関係を覚えた全。
最後の一つは綺麗に焼けました。真ん中にフォークを刺してひと呼吸待ち、
抜いたその先にそっと触るツグミ。

「はい。合格」
「本当でぃすか?」
「ええ。ちゃんと火が通っているわよ」
「有難うございました」
「どういたしまして」

それから二人でちょっとだけ遅めの昼食を摂りました。後片付けが終わると、
全は教わった事を忘れない内にと言って帰って行きました。
ツグミが持たせた香辛料の小分けされた包みと自分の買い物袋を下げて。



夕方。と言っても、もう日は落ちてしまっている時間。
ツグミは自宅に続く小道を駆けてくる足音を聞いて玄関を開けました。

「ただいま!」
「走って来なくてもいいのに」
「部活に出てたから、遅くなっちゃって」

荒い息を吐きながら途切れ途切れに話すまろんにツグミは微笑んでいました。

「御夕飯にしましょうか」

扉を閉めて中に入ると、がさがさと買い物袋を揺らしてまろんが言います。

「うん。何作ろうか。適当に買ってきたけど」
「ハンバーグでもいい?」
「あ、挽き肉は無いなぁ」
「それは大丈夫。実はね」

ツグミは昼間、全が来ていた事や料理を教えていた事などを話ました。

「それで作り過ぎたって事?」
「昼間の分は食べてしまったわ。残っているのは失敗作だけ」
「成程。胃袋に入れてしまえば同じだもんね」
「そうじゃないの。失敗作は別なものにしたから」

そう言ってツグミが見せた鍋の中にはそぼろが入っていました。

「焦げた所だけ落として作ったの。明日の朝にでも」
「う〜ん。流石ね」
「だから安心して。これから焼くのは新しく作った分」
「判った。でも、飽きない?」

ツグミは意味ありげな微笑みを見せてから言いました。

「こっちが本命だから」
「ん?」
「まずは着替えて来たらどう?」
「うん」

まろんが私物を放り出している寝室へ行っている間に、ツグミは
フライパンを熱してハンバーグを焼く準備を済ませていました。
そして、まろんがキッチンに戻った時には最初の一枚目を焼いている最中。

「私が焼いたのに」
「平気だから見ていて」

暫くしてツグミは左手だけでフライパンをあおり、ハンバーグを裏返して
見せました。

「おお〜」
「ちゃんと見てた?」
「凄いね。全くんも驚いたでしょ」
「昼間はやらなかったわ」
「何で?」
「ハンバーグを教えるのに、難しい料理だと思わせたくなかったから」
「ふ〜ん」

等と言っている間に一枚目は焼けてしまいました。次にかかるツグミ。

「あ、私も何か作る。スープとかは?」
「もう出来ているけど」
「じゃぁ、サラダ」
「冷蔵庫に」
「…暇…」
「テーブルの仕度して頂戴」
「は〜い」

出来上がった物を食卓に並べるのは二人でやりました。
メインは和風ソースのハンバーグ。一口食べてみたまろんですが。

「…ん?」
「あら、失敗?」
「違うの。美味しいよ、だけど何だろう、ちょっと変わってる」
「何が入っているか判る?」

もう一口、今度は何度もかみしめてみるのですが。

「甘味があるんだけど…」
「降参?」
「……あ、お豆腐だ!」
「はい正解」
「成程ねぇ」
「何となく健康的なメニューの様な気がするでしょ」
「うん、するする」
「本当はこっちが食べたかったのだけど、初心者の全君にいきなり
 応用から教えるのはどうかと思ったから」
「それで昼間は普通のハンバーグだったのね」
「そういう事」

それから暫く、二人は会話と食事を楽しんでいました。
ですが、突然まろんが黙ってしまったのでした。

「どうしたの?」
「私、ただのお客さんだね…」
「何故そんな事を思うの?」
「だって、私、何にもツグミさんの役に立ってない」

全部自分でやってみせたのは失敗だったかとツグミは思ったのですが、
今甘える事は互いの為に良くない事だという気がしていました。
だからツグミはこう言ったのです。ゆっくりと、静かな口調で。

「役に立って欲しいなんて思ってないわ」

まろんはうなだれて答えました。

「でも、私は」
「傍に居てくれるだけで嬉しかった。それ以上の事は望んでないの」
「ツグミさん…」
「私気付いたのよ。最近甘え過ぎていたなって」
「そんな事…無い」
「だから」

互いに相手の言葉を待っている時間は、たとえ短くでも苦しいもの。
そしてそんな時間が夕食の終わった後まで続いていました。

「私、一度家に帰るね」
「ええ。そうして」

その晩、まろんは再訪の約束をしないまま、ツグミの家を出たのでした。

(第95話・完)

# 連続して書く可能性を考慮した展開になっております。(笑)

では、また。

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