SM公開講座 「支配と服従」

§2 支配の心得



<奴隷の飼い方>


 Sadistが自分の奴隷が欲しいと思うのは至極当然の欲求ですね。

では、自分はなぜ奴隷が欲しいのか考えたことはありますか。

自由を剥奪されたMに屈辱を与えるのはSだけが得られる快感ですね。

服従させられる時の眼や表情は永遠の美の極致だと思います。

でも、それだけならSMクラブでもいいじゃないですか。

いつでも好きなときに呼び出して虐められるしお金がかからないから。

自分の好き勝手にできて命令すれば何でも言うことを聞く都合のいい女が欲しいと思

っているだけなら、ご自分をSadistと思うのをやめましょう。

それでも、人格を剥奪した感情を持たない性交人形をお望みならそれはそれでいいで

しょう。

そういうSMもあるんですから。

しかし、「支配と服従」の世界を目指すのであればもう少し考えてみてください。

奴隷を飼うということは奴隷のすべてを支配するということです。

ということは奴隷が生きていくことのすべてを管理する責任があるのです。

奴隷にすべてを捧げて服従することを誓わせるというのはそういうことだと思ってくだ

さい。

「支配と服従」の世界では、奴隷を飼うということは奴隷を管理するということなのが

おわかりいただけたと思います。

では、どのように奴隷を管理するのか、といいたいところですが、そんなことをお教え

するつもりはありません。

これから奴隷を飼いたいと思っている方が、ご主人様として自分で考え、自分のスタイ

ルで飼うために、参考にしてもらいたいことをあげてみます。

人それぞれ考え方が違うのですから、自分はどんなご主人様になりたいのか、よく考え

てみてください。



<M女性と奴隷の違い>

 自分の目の前にいる女性がMだとわかっているのであれば、すぐにでも奴隷にでき

ると思っていませんか。

どのような出会いであるにせよ、自分の奴隷になる誓いをたてるまではM女性はただ

単に相手がMだということを知っている女性に過ぎないのです。

自分の考える奴隷として相応しいかどうかよく観察しなければなりません。

あくまでも選ぶ権利はSにあるわけですが、M女性ならなんでもいいという態度では

困りますね。

奴隷にすると決めたときに、ご主人様に相応しい奴隷になれるM女として選んでもらえ

たんだということを自覚させるにはそれなりの態度でM女性に接しなければならないの

です。

私のご主人様はM女性なら誰にでも手を出すような方ではないという安心感、また、

そういうご主人様に自分は選んでいただいたのだという自負心が、強い信頼につなが

ることをお忘れなく。

初めて会うのに、頭の中は調教のことでいっぱい、ついでに鞄の中も道具でいっぱい

では、いつまでたっても「支配と服従」は遠い世界なのです。



<奴隷は貞淑に>

 M女性はどうしようもないほど淫乱な生き物、また、そのように育てるのが調教だと

思っていませんか。

間違いだとはいいません。が、あくまでもご主人様に対してだけであることをお忘れ

なく。

指一本触れなくてもご主人様のそばにいるだけで感じてしまうほどの奴隷に育て上げ

たいのなら、淫乱にではなく、貞淑に躾けなければなりません。

なんだか矛盾してますか?

つまり、ご主人様の前にいるとき以外は貞淑なレディでなければならない、またそうい

う女性に育てるのが、ご主人様の役目であるということです。

普段の生活とMとしての自分を大きな落差で切り換えさせるのは、ご主人様の大切

な役目なのですよ。

ぜひ、どこに出しても恥ずかしくない素敵なレディに育ててあげてください。



<奴隷はご主人様だけのもの>

 いまさら何を言い出すのか、ですね。

奴隷は身も心も捧げて服従するのですから。

でも、ご主人様はその服従に応えられる人間でなければならないとは思いませんか。

ただ虐めることが好きなだけの中身のない薄っぺらな人間では、奴隷が心から尊敬し

信頼して、愛情を捧げることなどできないのですよ。

奴隷の服従に足るご主人様として常に自分を磨くことをお忘れなく。

奴隷が飼ってもらえていることを誇りに思えるようなご主人様になっていただきたいの

です。

個人的な意見としては、今まで何人の奴隷を飼ったことがあるとか、どんなプレイが

得意だとか、自慢げに披露するような軽薄なことはしないでいただきたいのです。

経験が豊富であることよりも奴隷にとってはご主人様が唯一無二の存在であることの

方が大切なのですから。



<支配の心得>

 ここまでをお読みになってなんだかやる気の失せてしまった方は別として、多少なり

とも共感を抱かれた方は「支配」する側の人間としての資格があると思います。

奴隷を飼うということは人間を育てるということです。

§1でお話ししたとおり、M女性は自分を持て余すほど不安定でデリケートな生き物

であるからこそご主人様の「支配」を望んでいるのです。

けして、おとなしいからなんでも命令に従ってしまうわけではありません。

泣く、怒る、すねる、わがまま、どれをとってもノーマルな女性以上です。

どのように育てどのように飼っていくかはご主人様しだいです。

しっかりとした考えを持ち、SMごっこになってしまわないように。