6章 衣食住
   10 吸血鬼じゃないのに・・・・

吸血鬼の伝説はかなり古い時代からあったようで、別にチスイコウモリとは何の関係もないのですが、暗闇を飛ぶ生き物=怖そうというイメージから結びついたのでしょうか。ブラム・ストーカーはチスイコウモリを知っていたのだろうか?

世界に1000種近くいるコウモリのうち、血液を食べるのは新世界の熱帯・亜熱帯に棲むヘラコウモリ科チスイコウモリ亜科のナミチスイコウモリ、シロチスイコウモリ、ケアシチスイコウモリの三種だけです。

ナミチスイコウモリは大型哺乳類を好むので、中南米に馬・牛・豚が家畜として持ち込まれると、個体数が増えました。狂犬病を家畜に伝染させるので嫌われています。洞窟や樹洞に100頭ほどのコロニーを造り、嗅覚・音・エコーロケーション・熱で獲物の位置を定め、いったん地面に降りてから足などに飛び乗ります。鼻に感熱細胞があるので、皮膚の毛細血管が多いところを感知して、カミソリのように鋭い門歯で傷を付けます。傷は全然痛くないようで、家畜は気付かずに寝たままです。ヒルと同じく唾液には抗凝血成分があるので、血は固まらずに滴り落ち、これをなめます。血液中のタンパク質を必要量摂取するためには、体重が30gほどなのに25mlもの血を必要とします。ナミチスイコウモリの学名はDesmodus rotundusといいますが、種小名のrotundusは丸々したという意味です。たっぷり食べて丸々となるのです。このままでは飛び難いので、20−30分間の食事中に余分な血漿は、どんどん尿として放出します。アブラムシみたいなものですね。

他の2種は主に鳥の血を食べています。個体数はずっと少ないです。

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