発掘! 読書記録 1992年 その1





大原まり子『エイリアン刑事』

☆『エイリアン刑事(デカ)』上下 大原まり子
                 朝日ソノラマ(ソノラマノベルズ) 91.12

異星からやってきた、知的寄生体の刑事と犯人。犯人は地球人の身体を次々に乗っ取り
ながら、伝説の犯罪王を狙い、一方、刑事は国家警察殺人課刑事のレイに寄生して、
犯人を追う。と、いうストーリーですが、作者が「最も自信をこめてお贈りする、
最長の長編」というだけあって、めっぽう面白いです。

『メンタル・フィーメル』や『ハイブリッド・チャイルド』の難解さは押さえられ、
「イル&クラムジーシリーズ」のノリでぶっとばす、愛と誠実(笑)のエンタティメン
トであります。もっとも扱っている題材や、犯人の寄生体が乗り移った人間に対して
おこなう人体改造の描写なんかは、いかにも大原SFですが。
3部作になるそうで、続きが楽しみです。

宿主のレイが意識不明のため、自力で地球人のふりをしなければならなくなり、
その途中で地球の女性刑事アキと恋に落ちてしまう、純情誠実な異星の刑事のラス君が
もお、可愛い可愛い。だから私は宿主のレイが意識を取り戻す下巻より、
寄生体の視点で描かれた上巻のが好きなんです。

こういう役に立つ寄生体と暮らすってのはどういう気分でしょうね。
思わず、しゃべるビフィズス菌なんぞを想像してしまいましたが、
それだとちょっとコワイ。
でも、知能が高くて宿主に献身的なラスみたいな寄生体なら、私も一体欲しいぞと、
思ってしまいます。


さて、この作品は、映画『ヒドゥン』とハル・クレメントの『20億の針』に
捧げられておりまして、そうなると、『ヒドゥン』も『20億の針』も見たくなるのが
人情ですよね。『20億の針』は、10数軒の書店を探したけれども見つからず、
現在書店に注文中です。
でも、映画『ヒドゥン』のほうは、なんともラッキーなことに私がこの本を読みおえた
1週間後にTVで放映されましてね〜。
で、これが、まったく大原まり子さんのいう通り「信じられないほどおもしろ」い映画
でありまして、私は熱狂してしまったのです。

(92-04-26 22:41:08)





ヒッチコックを読む

えー、カルトビデオ『ツイン・ピークス』にハマったついでに、
ヒッチコックにもハマってしまった有里でございます。
ビデオでヒッチコック映画を見ることはもちろんのこと、ヒッチコックを読むことも
楽しんでおります。映画を見て楽しんで、本を読んでは、気がつかなかった細部の
こだわりを楽しみ、そしてまた映画を見る。ヒッチコックは何度でも美味しい。
と、いうわけで、「ヒッチコックを読む」本の数々をご紹介いたします。

1.『ヒッチコック』 筈見有弘
      (講談社現代新書,1986) 550円

  お値段も手頃な新書サイズの本なれど、中身の濃いヒッチコック映画研究の入門書。
  読んだら、ヒッチコック映画を見たくなること受けあい。
  (そして、見てから読めばなお面白い。)
  ただし、作品毎に批評やあらすじをまとめているわけではないので、あくまでも
  読みものとして読む本ですね。


2.『ヒッチコックを読む』
     (筈見有弘編,ブックシネマティーク(2),フィルムアート社,1980)1854円

  作品別にあらすじと解説をまとめ、欄外に批評や小道具などのコラムを載せ、
  和田誠、渡辺武信らの評論を載せたヒッチコック百科。
  あらすじは、ラストのネタまで割っているので、注意が必要。
  私はヒッチ映画を1本見るたびに、この本で、見た映画の事を調べておりました。


3.『定本 映画術』 ヒッチコック/トリュフォー
               (晶文社,1990) 3800円

  ヒッチコックがトリュフォーに自作を語った、「映画の法典」と呼ばれる名著。
  「あの映画はこうして撮った、この映画は...」と、ヒッチが語ります。
  面白いですよ〜。3800円のお値段も高くないです。
  ヒッチコックに心酔するトリュフォーのあとがきは、感動ものです。


4.『ヒッチコック殺人ファイル』
       (キーワード辞典編集部,朝までビデオ5,洋泉社,1990) 1545円

  3と同じく作品別に解説をまとめた本。元ネタは多分3の本でしょう。
  ビデオの解説書なので、ネタは割っていません。1冊だけ買うならこれかな。
  でも読み応えは、3の方が上。ヒッチファンなら2冊買って併読すべし!


5.『ヒッチコックヒロイン』
    (梶原和男責任編集,シネアルバム129,芳賀書店,1991)2370円

 シネアルバムの一冊なので、ヒッチコック映画のヒーロー・ヒロインのグラビアが
 主体。もちろん、ちゃんとフィルモグラフィーも載ってます。


6.『ヒッチコック−−映画と生涯』上/下 ドナルド・スポトー
        (早川書房,1988)各2400円

 副題を「天才の裏側(ダークサイド)」といいます。一見、人の善さそうなヒッチ
 おじさんが、実はとんでもなく変人でヘンタイだったことが判る、めまいのする
 ような暗ーーーい本。


7.『アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ』
    スティーブン・レベロ    (白夜書房,1990)2900円

  ヒッチコックが、『サイコ』を撮るまでを詳細にドキュメントした本。
  内容も面白いのですが、この本の一番のお薦めは、「幻の」『サイコ予告編』の
  コマドリ写真でしょう。(なんせ、この予告編は本編より評価が高かったんだから。)
  訳註も詳細で、実に丁寧に作られた本です。白夜書房ってエライ。

(92-07-22 21:00:41)





ダイアン・デュアン『魔法使いになる方法』

☆『魔法使いになる方法』  ダイアン・デュアン 大出 健訳
               富士見文庫 富士見ドラゴンノベルズ 1991.5
☆『魔法使いになる方法2』 ダイアン・デュアン 大出 健訳
               富士見文庫 富士見ドラゴンノベルズ 1992.4

RPG小説をガンガン出してる富士見文庫から出た、児童文学の香りのする現代ファン
タジー。
舞台は現代のニューヨーク、本好きの少女ニータが、いじめっ子に追われて逃げこんだ
図書館で見つけた本が、『魔法使いになる方法』。
この本のおかげで魔法使いになったニータは、同じ様に古本屋でみつけた本によって
魔法使いになった少年キット、宇宙からやってきた魔法使いフレッドとともに、
異界の門を通って「もうひとつのマンハッタン」での光と闇の戦いに巻きこまれ。

……うーん、こう書いてしまうとこの本の魅力がすっぽり抜け落ちてしまう(;_;)
この本は、『ナルニア国物語』や、(ファンタジーじゃないけど)アーサー・ランサム
や、ディズニーの『メリー・ポピンズ』の延長線上にあるんです。
つまり日常的な子供の生活の上に「リアル」な魔法や冒険の世界がのっかっている。
(「リアル」っていうのは、頭の中だけで書いた薄っぺらな感触でなく、
 皮膚感触すら感じるというような意味です。)
登場人物(中には「人」じゃないのもいるんだけど)も、みんな魅力的で、「生きて」
いて、とびきり上等の子供の本が持つ「わくわく」と「ドキドキ」があります。

あ、だんだん何書いてんだか、わかんなくなってきた。
ともかく、クライマックスに出てくる「生命の名乗り」の詩は涙が出るほど感動的で
ありました。

続編の『魔法使いになる方法2』は、ニータとキットが鯨に変身して、鯨の魔法使い達
とともに、歌で闇を封じこめようとする話。「青の殺し屋」エドが、とても印象的。
こちらに出てきた鯨達の歌う「十二王の歌」もすごく感動的でしたから、
この作者はもともとは韻文の方が得意な人なのかも知れません。

(92-07-31 15:09:42)





『パソコン入門』『コンピュータ・ネットワーク』

☆『パソコン入門』        石田晴久著 岩波新書 1988年8月 580円
☆『コンピュータ・ネットワーク』  石田晴久著 岩波新書 1991年7月 580円

(;HOBBYにしようか;SOFTにしようか迷いましたが、結局ここにアップします。)

『パソコン入門』は、その名の通りパソコンの入門書ですが、読みやすくしかも
重要な事項はほとんど網羅している、なかなか奥の深い1冊です。

パソコンで何ができるかからはじまって、パソコンの歴史、ハードウェア(CPU、
ディスプレイ、キーボードとマウス、フロッピーディスクとハードディスク、プリンタ
光ディスク/DAT)、ソフトウェア(MS−DOS、FEP、BASIC、C言語、
マックOS、一太郎、1−2−3など)、パソコン通信、パソコンの将来までが
書かかれています。

88年発行なので、Windowsやブック型パソコンのことが出ていなかったりします
が、入門書としてはこれで十分だと思います。
なにしろわかり易い日本語(満員電車の中で読み飛ばしていても、内容がしっかり頭に
入るぐらい)で、パソコン用語は出てくるときにきちんと説明されます。
パソコンを全然知らない人にも理解しやすいかどうかはわかりませんが、
既にパソコンを使っている初中級ユーザーが自分の知識を確認するのには、
非常に役立つと思います。
また、できればバリバリの上級ユーザー&マニアの人にも、判りやすい文章の参考と
して読んでいただけたらと思います。(^_^)

『コンピュータ・ネットワーク』は、ネットワーク概論でして、電話網、パソコン通信
LAN、ISDN、OSIの7層モデル、TCP/IPなど、ネットワークの重要事項
は、ほとんど押さえてあります。

私が感激したのは、モデムの項であります。
モデムのマニュアルを見ながらの
「CCITT方式って何? ATコマンドって何? フロー制御って何?
  V.42って何? MNPって何?  あーーー!!もうやだーーーっつ!!!。」
という疑問が一遍で氷解すること受けあいです。

(92-12-27 16:29:00)


2000/05/02 追記
10年も前の本なので、技術的な面では使い物になりませんが、
パソコンの歴史などの基礎をチェックするのにはまだ使えるかもしれません。

[Home] [読書記録]

有里 (alisato@geocities.co.jp)
http://www.geocities.co.jp/bookend-ohgai/3941/

更新日:2001/04/08