発掘! 読書記録 1991年 その2




クーンツ『ストレンジャーズ』
★『ストレンジャーズ』上下 ディーン・R・クーンツ
              文春文庫 1991年8月発行

 夢遊病に悩まされる、作家、得体の知れない恐怖に怯える女医や少女。
 「彼らにその記憶はないが、一年前の夏、彼らはあるものを"見て"しまったのだ。」
 「引き寄せられるように、かれらはトランキリティ・モーテルへと向かう。」
 という、サスペンスホラー。何が起こるのか!?と、ハラハラドキドキさせながら
 合わせて厚さ4.5センチの文庫本2冊を一気に読ませます。
  前半かなり怖いですが、後半になると「友情」やら「家族愛」やらが
 出てきて、(それまで十分怖がらされていたもので)なにやらホッとします。
 クーンツは、ステーィヴン・キングよりは恐くないし、ラストも暗くないものが
 多くので、好きなんですよね。子供の使い方や、登場人物の性格描写も巧いし。

 クーンツでは、同じく文春文庫から出ている「ライトニング」も、お薦め!
 美少女が危機に陥るたびに救いの手を差し述べる、雷鳴と共にやってくる男は
 何者か?というお話。 寝る前に読み始めて、読んでいるうちにのめりこみ、
 気がついたら夜中の2時にベッドの上に正座してして読んでいた
 (寝っころがって読む本じゃないです) という、シロモノです。
 「カエルのエピソード」が笑えます。
 あ、「ライトニング」は、登場人物表を読むとネタばれしてしまうので、
 読まないようにね。

(91-11-30 12:05:43)




筒井康隆『残像に口紅を』

★『残像に口紅を』  筒井康隆
           中央公論社 1989年4月発行

 REE、ぜま両氏のお薦め本ですね。ほうぼう探してやっと見つけました。
 この本、なんと後半部分が袋とじになっておりましていて、封を切らずに出版社に
 持っていけば、代金を返してくれるそうですが、もちろんしっかり最後まで読んで
 しまいました。

 世界から、ひらがなの音がひとつづつ消え、その音をもつ言葉と、その言葉の差し
 示すモノまでもが消えていく話です。こう書いてしまうと簡単なようですが、
 実際にやってみるのというは、とんでもないことなのですね。どんどん語彙が
 狭められていくなかで、自分の文体を保ちつつ、「小説」を書いていかなきゃ
 ならないんだから。
 しかし、そのオソロシイことを成功させてしまっているんですねぇ。

 第3部に至っては、世界から言葉が3分の2消えてしまって、カウントダウンの
 状態といってもいいのだけれど、それでも「小説」は続く。わずか11個の音で
 とんでもないことをやってくれるし、かの「がん。がん。がん。」は、確かに
 涙が出るほど感動的です。(これは、読まないとわかりません。)
 すごいですよ〜。

(91-11-30 12:05:43)




井辻朱美『地球追放』
★『地球追放』 井辻朱美 沖積舎 1990年3月発行

 短歌集です。作者は、ファンタジーの翻訳でお馴染みの井辻朱美さん。
 まあ、正確には、詩人で歌人の井辻さんが翻訳をやっているわけですが。
 さて、短歌がなんでSFのボードに出てくるのかといいますと、
 短歌がSFしちゃっているからなのですね。
 短歌を引用していいかどうかわからないので、目次からいくつか題を拾ってみます。
 「暗黒星雲」・「地球年代記」・「シャンブロウ」・「立体都市」・「月光都市」
 「春の方舟」・「黄金の髪の海賊」・「妖精王」
 どうです?
 私なんぞは、題を見ただけで快感で背中がゾクゾクします。
 「シャンブロウ」は、もちろんあのC.L.ムーアの「シャンブロウ」のこと。
 砂の惑星や「地球の緑の丘」のことを詠んだ歌もあります。

 書名の「地球追放」は、中井英夫氏の詩からだそうで、中井氏のファンである私は
 どうりで波長があうわけだ〜と、納得していまいました。

(91-11-30 12:06:03)




菊池秀行『グッバイ万智子』

★『グッバイ万智子』 菊池秀行 (イラスト/北原文野)
           集英社スーパーファンタジー文庫 1991年11月

 「乗っていかない?」ある夏の日、風来坊の少年に声をかけたのは、万智子と
 名乗る娘。こうして二人の旅は始まる。二人は、それぞれ別の何者かに追われて
 いたが、その「敵」の攻撃も万智子を守る不思議な力の前には無力だった。
 と、いうようなお話であります。

 菊池秀行の作品ではありますが、ヒジョーにさわやかでリリカル(^_^;)な
 雰囲気であります。(いや、菊池秀行は、元々こういう雰囲気なのかな?)
 ラストがね、いいですよ〜。 ぜひぜひ続編が読みたいですね。

(91-11-30 12:06:03)




波多野 鷹『都市に降る雪』

★「都市に降る雪」 波多野 鷹
          ハヤカワ文庫ハィ!ブックス 1991年11月発行

 内容は結構アブナイ。雰囲気が一番近いのは、大原まりこの「未来視たち」、
 菊池秀行+あしべゆうほの「ダークサイドブルース」あたりでしょうか。
 勧善懲悪が好きで、登場人物に感情移入して読む人には、
  結構フラストレーションがたまるかもしれません。(アタシャ、タマッタ ^_^;)
  まあ、誰に感情移入するかによりますけどねぇ。

 この本の献辞にいわく
 「イマジネイションの源泉となった『ドリーマー』 『スターレッド』
  『パトロールシリーズ』他、たくさんの作品とその作者に感謝を。」
 これで、ニヤリとした人は、読んでみるのも一興かと。どのシーンがどの作品に
 つながっているか、考えながら読むのも面白いです。

(91-11-30 12:06:03)

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有里 (alisato@geocities.co.jp)
http://www.geocities.co.jp/bookend-ohgai/3941/

更新日:2001/04/08