発掘! 読書記録 1991年 その1




ディロン『ハッカー連続殺人事件』

☆『ハッカー連続殺人事件』
 ウォルター・ディロン  堀内静子訳
 <ミステリアス・プレス文庫39> 早川書房

 本の背表紙のあおり文句いわく
「”少し話しませんか”−−突然コンピュータ画面に現れる謎のメッセージ。
それは殺人者の罠だった。パソコン通信で若い独身女性にアクセスし、次々と殺人を
重ねながらまるで証拠を残さない犯人の正体とは?」

 パソコン通信している独身女性としては、ちょっと読むのが恐い本でありましたが、
好奇心には勝てず、つい手に取ってしましました。

 これで内容が、犯人が捕まらないホラー物だったりしたら、今頃は恐くてこんなこと
書いていられないところですが、ありがたいことに(!)ちゃんと探偵がでてくる
普通の推理小説(サスペンスに分類されるのかもしれない)でありましたので、
私も安心してパソコン通信を続けられるわけです。(笑)

 事件は上に書いたとおり、パソコン通信をしている女性をチャットに誘って
油断させ……というものであります。始めのうちは、犯人の行動と警察の行動が交互に
出てくるので、これは犯人の側に焦点をおいた犯罪小説かしらと、思ったのですが、
途中から退職刑事ハニガン(この人が探偵役です)が、孫のハッカー少年を使って
犯人を探そうとするあたりから、犯人探しが中心の話になります。
そして最後1/3のサスペンスっていったら、なかなかのもんです。
本当にノンストップサスペンス!! 面白いですよ。

 でもこの小説の一番印象に残ったのは、退職刑事ハニガンが、亡き妻を思いながら
部屋の中でひとりでタンゴを踊って泣くシーンなんです。

(91-08-24 21:41:09)




マキャフリィ『竜の貴婦人』

 アン・マキャフリィの『竜の貴婦人』をやっと読み終えました。
読み始めたら一気に読んでしまうんですが(なんせアン・マキャフリィは
別名「一気読みのマキャフリィ」という)、なかなか手が出せなかったのもので。

 この本の原題は”MORETA”、パーンシリーズでは有名なあの「モレタの飛翔」
のバラードのモレタが主人公の物語というわけです。
実のところ私がこの本を手にとるのを躊躇していたのは、このヒロインにあります。
レサやメノリぐらいの気の強さだったらいいけれど、キラシャンドラみたいな
とんでもねー女だったらどうしようと、思っていたのですね。

 が、心配は無用でありました。解説にもあるように、このモレタさん、
マキャフリィの女主人公にしては珍しく普通の人でありました。
まあ、気丈ですがレサみたいな女傑ではありませんで、今までのヒロインの中では
一番好感がもてました。(別にレサも嫌いじゃなけどね。)

 ストーリーは『竜の戦士』の時代より900年ほど昔、パーン全土に疫病が広がった
時のことを描いております。ほんどパニック小説みたい。
モレタの運命は、「モレタの飛翔」のバラードによって知っているつもりでしたが、
真実はもっとあっけなく、また残酷でした。

 読み終わってしばし茫然として、現実に戻ってくることができませんでした。
で、我に返ってから、あわてて以前のパーンシリーズを読み返して、「モレタの飛翔」
のバラードを探しました。(『竜の歌い手』の190ページに出てきます。)

 ファンにはお薦めですが、まだパーンシリーズを読み始めていない方は、
第1作の『竜の戦士』から読み始めたほうがよろしいでしょう。

 ☆『パーンの竜騎士/外伝2 竜の貴婦人』上・下
   アン・マキャフリィ著  幹 遙子訳  ハヤカワ文庫SF

ちなみに「パーンの竜騎士」の本編は、
『竜の戦士』『竜の探索』『白い竜』『竜の歌』『竜の歌い手』『竜の太鼓』
外伝の1が、『竜の夜明け』 です。

PS 三省堂にいったら、なんと『竜の貴婦人』のサイドストーリーの
   ”Nerilka's Story”を見つけ、買ってしまいました。
   今年中に翻訳が出るそうですが、それまでに読み終えることができるか!?

(91-08-24 21:41:49)




マキャフリィ ”Nerilka's Story”

ええと、『竜の貴婦人』外伝の Nerilka's Story やっと読み終りました。
なんせ英語なもので、もうろうとしか内容がつかめませんが、
短くいえば「有能なハウスキーパーは、幸福をつかむ」という話でした。
(ひたすらハウスキーピングの話が続いて、これはSFじゃないと思った。)
継母にいじめられて、王子様と結婚する、まったくの「シンデレラ」物語。
(ただし、それほど甘いわけではない)
ネリルカはどちらかといえば、レサより、ブレクに似ているようです。
普段黙っているが、ここぞというところで、底力を見せるタイプ。
結構地道なキャラクターで、好感がもてました。
年末には翻訳がでるそうですが、ほんとかな? 早く日本語で読みたいです。
(やはり、私の英語力では、細部がいまいち良くわからない)

ちなみにマキャフリィのペーパーバックは、CORGI(英国の出版社らしい) から
出ているのが手に入りやすいようです。(私の持っているのは全部 CORGI だった)
以下、どおしても原書で読みたいという人のための書名一覧
 DRAGONDAWN
 DRAGONFLIGHT
 DRAGONQUEST (←このタイトルちょっと笑える)
 THE WHITE DRAGON
 MORETA:DRAGONLADY OF PERN

 DRAGONSONG
 DRAGONSINGER:HERPER OF PERN
 DRAGONDRUMS

 NERILKA'S STORY & THE COELURA

あ、作者名はANNE McCAFFRY です。

(1991-10-20 15:57:48)




マカヴォイとマッキンタイア

★R.A.マカヴォイ  『ダミアーノ』(ハヤカワ文庫FT)
                       『サーラ』  (同上)
                       『ラファエル』(同上)
 中世イタリアを舞台に、楽士ダミアーノとその守護天使の活躍を描く「奇妙な」
 ファンタジー(どれくらい奇妙かというと、途中で主人公が変わってしまう ^^;)

★R.A.マカヴォイ 『黒龍とお茶を』 (ハヤカワ文庫FT)
 初老の女性と元は龍だったという謎の中国人が、 コンピュータ犯罪に
 巻きこまれてしまう、これまた奇怪な(?)ファンタジー

★V.A.マッキンタイア 『夢の蛇』 (サンリオ文庫/早川文庫SF)
 蛇を使って治療を行う、治療師の女性が誤ってその蛇を殺されてしまい、
 代わりの「夢の蛇」を探して荒野をさまよい歩く、どちらかといえば幻想的なSF。

マカヴォイは、「変な」ファンタジーばっかり書いている人です。
『ダミアーノ』なんて最初は真面目に楽士の少年の成長を描く作品だったのに、
最後の巻では、あっとびっくり、なんだこりゃあ!の世界ですから。
あら筋を説明したりするのは、はっきりいって無駄な作品なんです。
この人の作品の評価は、登場人物が気にいるかどうかにかかっていますね。

マッキンタイアは、オリジナルで良かったのは『夢の蛇』だけかもしれない。
あとは、ほとんど映画のノベライゼーションばかり。
映画版のスタトレ小説は、2以降はこの人が書いているのではなかったかしら。
私が読んだのは『スタートレック2』『スタートレック3』でしたが、
サービックさん(ヴァルカン人とロムラン人のハーフの女性士官)を主人公に据えて
いて、面白かったです。(私はサービックさんのファンなんです。)

私は、だいたい「マック」のつく、女流作家とは相性がいいみたい。

反対に相性がいまいち良くないのが、男流ファンタジー作家全般。
「男流」の描く女性って、どうも感情移入しにくくて。
大抵の人がいいというエディングス氏が、残念ながら私にはダメなのでありました。
(読めることは読めるけど、お金出して読みたいというほどではない。)

P.アンソニィのザンスシリーズは面白かったですが、
手に取るまでに何年かかったことか!今、早川SF文庫のほうで新シリーズが出ている
らしいですが、どうも「男流」だということで、躊躇してしまいます。

(1991-10-20 15:58:25)




『ミステリ・ハンドブック』

このところ、もっぱらミステリと心理学関係の本ばっかり読んでおります。
(SFも読むけどね。)で、それらの本の紹介をしようと思ったのですが、
その前にミステリのガイドブックの紹介をしておきます。
読む前に、ネタをバラされたらたまらんと思う方は、先にこれらの本でお目当てを
見つけて、読んでおいて下さいね。

★『ミステリ・ハンドブック』
 早川書房編集部編 早川文庫 1991年9月発行

 先に出た『SFハンドブック』の姉妹編です。
 内容は、「読者が選ぶ海外ミステリ・部ベスト100」、「ジャンル別ベスト10」
 作家、評論家の「マイ・フェイヴァイット・ミステリ」、「作家論特集」、
 「ハヤカワ・ミステリ文庫/既刊リスト」。
 最後のが一番役に立つかもしれません。ミステリ初心者が、面白いミステリを探す
 ために使うというよりは、ミステリマニアが、自分の読んだ本をチェックするために
 使うのに適しているような気がします。
 通読するんじゃなくて、辞典として使うべきなんでしょうね、「ハンドブック」の
 名の通りに。


★『別冊宝島63 ミステリーの友』
 JICC出版局 1987年4月発行

 では、面白いミステリを探すための本は? といわれたら、まずこれ!
 いろんな人がいろんなテーマでミステリブックガイドを書いています。
 たとえば、東理夫さんが「車」のテーマで「車好きのミステリー・ドライブ」
 赤木かん子さんが「子供」のテーマで、「大人も感激する児童書ミステリー」を
 書いているといった具合。
 エッセイ形式だから読み物としても面白いし、それぞれ自分のお気に入りの本の
 紹介をしているわけで、相性のよいエッセイの書き手の紹介する本はかなりの確率で
 「当たり」ます。(私の場合、赤木かん子さんの紹介する本は大抵「当たり」)


★『ミステリ散歩』
 各務三郎 中公文庫 1985年3月発行

 各務三郎氏はミステリ・マガジンの編集長だった方だそうで、私も名前だけは存じ
 ておりました。が、なにを勘違いしたんだか、私はずーーーとこの方は、男性名を
 使っている女性だと思いこんでおりました。
 だから著者紹介を見てびっくり。
 それはさておき、この本、いいですよ。エッセイとしてもガイドブックとしても
 一級品。
 なんせこの本で、10年来ずーと横目で見つつ手が出なかった「わらの女」
 (カトリーヌ・アルレー 創元文庫)を読む気になったんですもん。


PS. 『カッコーはコンピューターに卵を産む』
 読みたいけどハードカバー上下2冊は、経済的にちょっとキツイ。
 本の置き場所にも困るし(;_;)。会社で買ってくれるかなぁ...。

(1991-11-30 12:05:22)

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有里 (alisato@geocities.co.jp)
http://www.geocities.co.jp/bookend-ohgai/3941/

更新日:2001/04/08