From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 07 May 2000 17:45:44 +0900
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石崎です。
神風怪盗ジャンヌ妄想小説第45話
こちらが後編です。前編よりお読み下さい。
ジャンヌ世界を壊されたく無い人は読まないで下さい。
★神風・愛の劇場 第45話『刻印』(後編)
■東大寺都編
●桃栗学園 昼休み
昼休み。まろんは本を読んでいます。
「あらまろん。本を読んでいるんだ」
「うん、ちょっとね」
「ねぇねぇ、何の本よ。ジャンヌ・ダルク!?」
「そうよ」
「へぇ。歴史の本を読むなんて、まろんにしては珍しいじゃない」
「うん。ちょっと興味があってね」
「ふ〜ん。それよりさ、天気も良いし、外で身体動かそうよ」
都は、教室の入り口を指さします。
入り口には稚空と委員長がいて、稚空はバレーボールを持っています。
「あ、良いわね。ちょっと待ってて」
まろんは、本に白い鳥の羽根らしき物をしおり代わりに挟みます。
「あ、それ…」
都は、自分の部屋に残された『あたしの心』の白い羽根に似ていると感じます。
「ああこれ? 『天使の羽根』よ」
「えええ!?」
都は驚きます。
「う・そ☆ 鳥の羽根に決まってんじゃない。本気にした?」
「え!? そ、そんな事無いわよ。ただ、突然突拍子も無い事言うから、驚いちゃ
ったじゃない」
「フフフ…。この羽根はね、ちょっとした私の『お守り』なの」
「『お守り』ねぇ…」
都は、昨夜の出来事を思い出していました。
●放課後
「ごめんまろん。今日、午後の練習休むから、先生にそう言っといて!」
「あ、ちょっと都!」
午後の授業終了後、都はまろんにそう言うと、教室を後にします。
学園から、急ぎ足で家に戻ると、箪笥の中から父と母の着替えをテキパキと用
意します。
●桃栗警察署 ジャンヌ特捜班
「父さん!」
「おお都か」
桃栗警察署が謎の爆発事故(そういう風に公式発表ではなっています)で半壊
して以降、仮住まいを余儀なくされている刑事課ジャンヌ特捜班のプレハブに、
都は着替えを届けにやって来たのでした。
「ちょっと寒いわね」
「プレハブだからな…」
ぼそり、と冬田刑事が言いました。
「でも、良い所もあるんですよ。冷暖房が別系統だから、定時以降でも使えるん
です」
秋田刑事がフォローするように言います。
警察署の冷暖房は一部の部屋を除いて集中制御のため、定時以外の時間では使
うことが出来ないのでした。
「だからって、残業の山を押しつけられてんじゃないか、俺達」
書類の山に囲まれて、夏田刑事は不満を言います。
「まぁそう言うな夏田。監察が間近いんだ、仕方無いだろう」
「ああ、こんな時にジャンヌが現れてくれれば、この書類の山からも解放される
のになぁ」
「春田さん、元はと言えば、あんた達がそのジャンヌが現れた後の報告書その他
を適当に処理しているから、今になって苦労する羽目になってんでしょ!」
「都さーん。それは言わない約束ですよ」
「そうだ都。都の特殊装備関係の予算上の辻褄合わせも大変なんだぞ。春夏秋冬
だけを責めるな」
「え…?」
「警部、それは…」
春田に言われ、氷室はしまったという顔になります。
「ごめん…。そうだよね。あたし、警察組織の一員でも無いのに、警察の人や装
備やお金を自分の手足のように使って…。そりゃ、文句の一つや二つ、出るよね。
みんなゴメン。あたしのせいで、こんな苦労をかけて…」
「都…」
「着替え、ここに置いとくね。身体に気をつけてね」
都は、建物を飛び出します。
●桃栗町 昴の官舎
「はい、母さん、着替え」
「有り難う、都」
昴の入居している老朽官舎の一室で、都は桜に着替えを渡します。
「それで兄さんの具合は?」
「お医者様に来て貰ったんだけど、大丈夫、回復に向かっているみたいよ」
「良かった…」
「本当。一時は熱が下がらずに、どうなる事かと思ったけど…。それじゃあ、あ
と二・三日位様子を見ているから、お家の事は宜しくね」
「看病はあたしが代わるわよ」
「駄目よ。あなたは学校があるでしょ」
「でも…」
「そうだ都…僕は大丈夫だから、お前は学校に行きなさい」
寝ていたと思った昴の声がその時しました。
「兄さん!」
「ほら都。昴もそう言ってるわよ」
「うん、判った」
●桃栗町中心部 噴水広場
「はー。今日も一人、かぁ…」
ため息をつきながら、都は歩いています。
(そうなんだよね…あたしがジャンヌ捜査に首を突っ込んでいる事で、みんなに
メイワクかけているんだよね…。判ってはいた積もりだったけど…)
「あの、東大寺さんですよね」
「え?」
突然声をかけられ、都は驚いて振り返ります。
「ツグミさん?」
噴水広場にあるカフェの外のテーブルから、ツグミが手を振っていました。
どうやら足音だけで都を判別したようです。
「一緒に、お茶でも如何ですか?」
***
家に帰っても一人なので、都もお茶に付き合う事にしました。
「へぇ。今日もあの盲導犬のお見舞いに…」
「ええ。でも、病院は今日はお休みで、仕方がないので買い物だけした所なんで
すよ」
「でも、盲導犬がいないと、色々大変じゃないの?」
「イカロスは…盲導犬と言うより、友達や家族みたいなものなんです。私がもっ
と小さい頃から、ずっと一緒だったんですもの」
「ずっと一緒?」
「あ…」
途端に、ツグミは口ごもります。
言ってから、都もしまったと思います。
「大丈夫よ。あのイカロスは三代目。まろんがそう言ってたからそうなんでし
ょ」
都はウインクして見せますが、ツグミには見えないことに気がついて苦笑しま
す。
「あの…」
「いざとなったら、あたしが父さんに頼んで何とかして上げる。だって、まろん
の友達が泣く姿なんて、あたし見たくないもの。本当はこれ、まずい事なんだけ
どね。フフ…」
「東大寺さんって、私の思っていた通り、良い人なんですね」
「え?」
「日下部さん、東大寺さんの事を私に良く話してくれるんですよ」
「へぇ。割と頻繁に会ってたりするんだ…」
「ええ。日下部さんと出会うまで、私の友達はイカロスだけだったけど、日下部
さんと友達になって、私の世界が広がった気がするの」
何故かツグミが頬を染めているのが、都は少し気になりました。
「そうね。まろんは良い子だから…」
「でも、今はもっと友達が増えたから、もっと世界が広くなったわ」
「え?」
「だって私達、もう友達でしょ? それに…委員長さんも、名古屋さんも…」
ツグミは、手を差し出します。
「うん、そうだね」
都も手を差し出し、二人は握手します。
「本当は…イカロスの事、大体ご存じなんですよね」
「え?」
「知ってて、私を気遣って下さっているんですよね」
「お見通しって訳か…。まろんには聞いていたけど、凄い能力ね。警察にスカウ
トしたいわ」
「フフフ…それも面白そうですね。あ…今何時ですか?」
「午後5時位だけど…」
「いけない! もう帰らなくちゃ。今日は楽しかったわ」
「こちらこそ」
二人は、並んでレジに向かいます。
二人は別会計だったので、ツグミが先に支払いを済ませます。
(へぇ、ホントにあんな小さな印だけでお札を区別出来るんだ…)
都はついつい好奇心で、ツグミがお札を取り出す様子を肩越しに覗き込みます。
ツグミはそれに気付いていますが、いつもの事なので気にしません。
(あれ…これって…)
その時、都はツグミの首筋に今朝のと同じ刻印が印されている事に気付きます。
(うひゃあ。この娘、大人しそうな感じで結構やるじゃない…。こんなのつけて
歩いていたの…? そうか、目が見えないから、これにも気付かなかったのね)
都はちょっと驚きます。そして、どんな人が相手なんだろう…と考えて、ある
結論に辿り着きます。
(まさか…まさか…)
●オルレアン 都の家
家に戻った都は、夕食を適当に済ませて、洗濯物を放り込んで洗濯機を動かす
と、その間にお風呂に入ります。湯船に身体を沈め、今日一日の出来事を思い起
こします。
「あの娘が本当に…まさか…まさかよね…まろん…」
***
お風呂から上がると、洗濯物を乾燥機に放り込みます。
リビングで都はテレビもつけずにぼーっとします。
ややあって、何かを思いだしたかのように都は立ち上がり、自分の部屋に向か
います。
***
「あった…。でも、一本だけ?」
何故か捨ててはいけない気がして拾い集めた『あたしの心』を名乗る天使の白
い羽根。
それをしまった机の引き出しを開けると、何故か一本しか羽根は残っていませ
んでした。
「ねぇ、『あたしの心』さん。まろんの本当の気持ちは、どこにあるの? あた
しはどうしたらいいの? ねぇ、答えてよ…」
羽根を胸元に握りしめ、都は呟くのでした…。
(第45話 後編 完)
…と言うわけで女の子同士多角関係的展開にしてみました。
では次回も、あなたの心にチェックメイト! …だと良いですね。
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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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