From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 03 Feb 2002 19:28:31 +0900
Organization: So-net
Lines: 532
Message-ID: <a3j3ch$1uh$1@news01be.so-net.ne.jp>
References: <a0h7dk$7an@infonex.infonex.co.jp>
<a161f2$310$1@news01bb.so-net.ne.jp>
<a283qv$4se@infonex.infonex.co.jp>
<a28j8r$5ka@infonex.infonex.co.jp>
<a2qvu3$5f0@infonex.infonex.co.jp>
石崎です。
hidero@po.iijnet.or.jpさんの<a283qv$4se@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。
こんにちわ。先週はお休みして申し訳ありませんでした。
># 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
># 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
># 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。
ということで宜しくお願いします。
>>> >>> ★神風・愛の劇場 第156話『誤算』(その1)
>
>この前後に関しては関係者の記憶がすっぽ抜けるのかと思っていたのですが、
>どうも第158話を読んだ限りでは外野の記憶は残っている様子ですね。
># また面倒な事にならないと良いのですが。
最初の構想ではその予定だったのですが、そろそろ主人公周辺も真相に気付く
頃合いかなと感じましたので。
>>> >★神風・愛の劇場 第157話 『還る』(その1)
>
># 羽根の宛先は1枚は自明でしょうから言ってしまいますが三枝親父の元へ。
># もう一枚の宛先は内証です。^^;;;
…ということは、この飛ばした羽根が後で出て来るという事かなと楽しみにし
ておきます。
>天界が「天使」という形でしか住人を受け入れていない世界であるのに対して
>魔界はあるがままを受け入れる世界というのが私の認識(設定)です。
>ですから貴族などと呼ばれて活動しているノインの様な者の他にも、
>単に暮らしているだけの元人間も少なからず居るだろうと考えています。
魔界とは言いながら、普通の人達が暮らしている世界なのですね。
悪人ばかりが暮らしている訳ではないと(笑)。
#本シリーズを通して、実は天界側の方が悪いのでは無いかという気も少し
>起源はキスマークだったりして。(爆)
その設定、頂き(笑)。
>遠来の客人が野宿ってのもマズいでしょうし、女性が稚空の家に泊まる
>なんて話はまろんちゃんが認めないだろうと。^^;;;
そう言えば稚空と都ちゃんの関係に関する誤解はまろんちゃんにはまだ解けて
いなかったことを思い出しました(笑)。
#当事者がいなくなった現在、この誤解が解かれることは永遠に無くなってしま
#いましたが。
>>> #セルシアを地上界にもっと早く降ろしておくべきだったかも(笑)。
>
># 混乱に拍車が掛かる気が。^^;;;;;
逆に何も考えていないセルシアの行動が事態の解決を早めたりするかも。
#前回のツグミさんの前に出てしまったセルシアとか。
>膨らませて下さい、後の話に都合の良い様に。(笑)
># ちなみに「先"へ"行っております」にしてあったと思いますが。
>## ココ、1字の違いを随分悩んで決めたので。^^;;;
……本当だ。失礼しました。
ちなみに第157話に触発されて、天界と魔界の設定を若干書き換えています。
それと共に、魔王様とフィンちゃんとノインの関係も若干変更。
>ミストは(ミストの想像以上に実力のあった)フィンに止めを刺されてしまい
ます。
ミストが消滅したのはまろんちゃんの「神のバリヤー」による効果だったのか
と思っていたのですが、フィン自身の力も寄与していたのですね。
ミストがフィンに普通に勝つつもりでいたとすると、本当は封印を解くまでも
無く普通にまろんちゃんに勝てるつもりでいたのでしょうか。
決闘場所にフィンが現れ、まろんちゃんとの決戦を控えた状況下でミストと戦
闘に入る前の話については、今回自分なりの解釈で書いてみました。
書いてから、佐々木さんの想定とは違うかもと感じたのですが、全体のストー
リーへの影響は無いだろうということでそのまま投稿します(ぉぃ)。
#恐らくは何らかの手段(多分羽根)で、ミストの決闘場所を知ったフィンが、
#ミストを詰問しに現れたというのが佐々木さんの構想だと思います。あの場に
#フィンが現れてミストと戦闘を始めるのはノインの予定外の話であったのかも
#しれませんが。
>それが件の妙な呟きのシーンです。
>自分が何処に居るのか探る(思い出す)為に周囲を観察したといった感じ。
ノインとまろんちゃんとフィンのことを認識していた訳ですが。納得。
>>> #せっかく助けて貰ったのに(いや、本人は助けられたとも思っていなさそ
>>> うで
>>> #すが)。
>
>思ってないでしょう、全然。(笑)
ああ、なんて可哀想な弥白様(笑)。
>>> ★神風・愛の劇場 第158話『嵐の後で』
>
>弥白様も一般大衆と同じ扱いで入院してしまわれたのですか。;_;
某事務長兼使用人の陰謀とも思われ(笑)。
>この事件以前から大分自分の置かれた情況、もっと具体的には悪魔の暗躍を
>感じていただけの事はあって弥白様の記憶はかなり確かな模様です。
今回の事件に関してはかなり意識的に関係者の記憶を残していますので。
>その事がどう今後に影響しますか。決して良い影響では無いでしょうけど。
逆に真相を知ることにより、事態が改善することもあるかも。
弥白様に関しては、黒幕が居なくなった事ですし。
>さて我らが(笑)佳奈子ちゃんは重要参考人(違)扱いです。
>彼女の場合、いまだにウラの保護者が健在ですので証言に関しても
>本人の意識とは別にフィルタが掛かっている可能性が大きそう。
実は佳奈子ちゃんに関しては、一文を投稿前に削除しています。
その一文を以て佳奈子編を終了することすら可能だったのですが、佐々木さん
の書かれていたようなこともあるので、もう少し登場して貰うことにしました。
>まろんちゃんとフィンって図らずも敵味方に別れてしまった恋人同士みたいな。
今まで素直に感情を口にせず、それが故に戦いを避けてきた感のあるフィンち
ゃんですが、思いを素直に認めた上で、それでもまろんと戦う覚悟を決めている
様子ですので、かなり手強い敵となるものと思われます。
># 桐嶋センパイは御休憩で無くお泊まりだったのですね。(爆)
投稿してから後悔したのですが、シルクは直前まで魔界にお出かけなので、桐
嶋先輩が何時お帰りだったのか、本当はご存じ無い筈なんですよね。
#ま、色々と証拠が残っていたということで(笑)。
>## フィンの語った内容はフィンが魔界に来た際の経緯を伺わせる部分が
>## ありますが、何となく別経路で聞いた石崎さん素案よりも佐々木素案っぽい
>## ニュアンスがある様な無い様な話を振られている様な。(謎)
お聞きした話と第157話を元にほんの少しだけ設定を変更したものの、基本
となる話は変えていない…そんな感じでしょうか。
>★神風・愛の劇場 第159話 『あなたの傍に』(前編)
天界から増援を降臨させた時に、セルシアは動かしやすい一方で、トキに関し
ては扱いに困るのかなと考えていたのですが、まろんちゃん達や仲間の天使達に
振り回される役所で意外と活躍(?)しているという印象。
セルシアがボケキャラだとすると、トキが突っ込みというだけかもしれないで
すが。
本妄想の序盤からずっと引っ張っていたイカロス怪我→誘拐編が漸く解決。
一度退院して帰りかけた時に私パートでミストに誘拐させてしまった訳ですが、
この時はイカロスがツグミさんの所に戻ってしまうと、まろんちゃんとの関係が
疎遠になってしまうのかなと思ってこうした訳なのですが、今回のまろんちゃん
のツグミさんに対する嫉妬の様子を見ると、佐々木さんの構想では、イカロスが
退院した後でまろんちゃんとツグミさんの間に隙間風を吹かせるのが、本来のシ
リーズ構成だったのかなと感じました。
#本編でもイカロス死亡の件をきっかけにまろんちゃんと一時期疎遠になった訳
#ですし。
結局二日遅れで桃栗体育館の崩壊を知ったツグミさん。
ツグミさんからの電話上下逆で受けてしまうセルシアがナイス。
#天界には電話が無かったのか(笑)。テレパシーがあるからかな。
ツグミさんからの電話を受けた稚空がまず真っ先に自分に惚れた可能性を考え
てしまうあたりは、流石元ナンパ少年。
最初に説明して落ち着かせてからイカロスと再会させようというまろん達の小
細工は、やっぱりセルシアのお陰でパーとなってしまいました。
しかしここまでのボケ振りだと危なすぎて、まともな任務を与えられそうに無
いのが少し困ったかも(笑)。
#特に設定はしていないのですが、こういうボケボケな娘に限ってとんでもない
#パワーを秘めていたりして(笑)
>
>★神風・愛の劇場 第159話 『あなたの傍に』(後編)
イカロスが生きていた真相を話すと、ツグミさんが怒って大暴れすると思い込
んでいたまろんちゃん。
自分と魔界の者共との戦いに巻き込まれてイカロスが誘拐されたのだと知った
ら暴れ出すと思ったという事でしょうか。
何故かツグミのことを乱暴者だと思っていたまろん。
本編だけ読んでいると、二号さんは別とすればええっ? という印象ですが、
稚空の前で言い淀んでいたところを見ると、まさか夜の話ですか(爆)?
貼り紙の件から、自分の周りで起きている出来事の真相に気付き始めているツ
グミさん。
そして、イカロスが戻って来たことからまろんちゃんとツグミさんとの間の関
係にも変化が訪れそうです。
では、本編へと進みます。
★神風・愛の劇場 第160話『癒す』
●桃栗タワー
倒壊する桃栗体育館からまろんを連れて脱出したフィンは、彼女をオルレアン
に送り届けた直後、引き留めようとするまろんを振り切って、少し前まで寝泊ま
りしていたこの場所にたどり着きました。
そのまま倒れ込むように横になり、寝てしまったフィン。
本当は今すぐにもやることがあったのですが、今は何よりまろんを助けるため
に消耗した力を回復させる必要がありました。
フィンが再び起き上がったのは、丸一日が経過した夜。
これからの行動について考えていると、何者かが自分の側に現れました。
「クイーンよ」
「ノインか。何の用?」
フィンは少々身構えつつ問いました。
まろんを救った行動について問われるかと思ったからです。
もっとも、それに対する回答は用意してありましたが。
「お伝えしたい事があるのです」
「伝えること?」
「はい。ミストの姿が薄れ始めています」
「弱っているってこと?」
「器を維持出来なくなるだろうという意味においては」
「所詮、あいつにとっては入れ物じゃない。それに確か彼女の正体は」
「それだけでは」
「何よ?」
言い淀んだノインを問い詰めようとしたフィンですが、ノインはそれには直接
答えようとはしませんでした。
結局、フィンがノインが言い淀んだ理由を知るのは、翌日の朝のことになりま
す。
「それ故に、ミストは日下部まろんに最後の勝負を挑むようです」
「私闘は許していない筈よ」
「だからこうして報告しに来ている訳で」
「まぁ良いわ。それで?」
「ミストはイカロスをまろんに返したようです」
「どうやら本気のようね。あのまろんそっくりの幽霊は?」
「彼女は本来あるべき場所に還りました」
「ふぅん」
「クイーンよ」
「何?」
「貴方の進む道は、我々とは異なるのかもしれません」
「何が言いたい」
「大義と、愛と。どちらを取るかは貴方の自由です」
「な!」
自分とまろんとの関係を言っているのだと気付き、反論しようとしたフィン。
しかし、その前にノインの姿は消え去っていました。
●オルレアン・東大寺都の部屋
偽物の怪盗ジャンヌの一撃により意識を失った東大寺都が意識を取り戻したの
は、名古屋病院へと向かう救急車の中。
当然の事ながらまろんや稚空達のことを心配した都でしたが、病院で海生より、
稚空から桃栗学園の関係者は全員無事との連絡があったとの話を聞かされ、取り
敢えず安堵しました。
ちなみに怪盗ジャンヌの安否については判らなかったのですが、こちらの方は
何故か絶対に無事だという確信がありました。
手当と診察の上で帰宅を許された都は、迎えに来た兄、昴の運転する車の中で
眠りに落ちました。
再び都が目を覚ますと、そこは自分の部屋のベットの上。
何時の間にかパジャマに着替えさせられていた事に気付き、少し恥ずかしく感
じ顔を赤らめた都は、起き上がってトイレへと往復する過程で身体のそこかしこ
の筋肉が痛むことに気付きました。
「そっか…」
どうしてこんなに身体中が痛いのか。
都は、その原因に直ぐに気付きました。
常識から考えれば、悪夢としか思えないような光景。
しかし、自分の太股に巻かれていた包帯は、その夢が現実であることを示して
いました。
新体操の地区大会会場に現れた偽物の怪盗ジャンヌ。
自分とまろんを襲って来た桐嶋先輩や山茶花弥白、そして委員長。
自分が発揮した、人間の限界を超えた力。
桐嶋先輩を抱きかかえた敵の男が呟いた言葉。「悪魔」
そして、偽物だと自分で語った偽怪盗ジャンヌが、本物の正体がまろんである
と話したこと。もっとも、それは偽物の怪盗ジャンヌの誤解であったようなので
すが。
それらが全て、頭の中に蘇りました。
「そうだ、羽根…」
あの時、自分を守ってくれていたフィンのくれた白い羽根。
確か、レオタードに刺していた筈だったけど。捨てられて無いよね。
都が見回すと、学習机の上に件の羽根が置いてあり、都は安堵しました。
枕元の時計を見ると、既に時刻は午前0時を回っていました。
もう、まろんは寝ちゃってるかな。
でも、あたしのことを心配してくれているかも。
まろんに電話をしようとして、自分のPHSが鞄の中に入っていたことに気付
きました。
「(体育館、無くなっちゃったんだよね)」
県立桃栗体育館が倒壊したことは、中にいた全員が避難したことと併せて海生
より知らされていました。
すると控え室に置いてあった鞄は瓦礫の山の中かも。
そう思いかけた都でしたが、床を見るとその鞄が置いてあったことに気付いて
驚きました。
きっと、まろんが持ち出してくれたんだ。
そう思い、やはりお礼を言おうとまろんの家に電話をかけてみた都。
しかし、電話の向こうからは呼び出し音が聞こえて来るばかりでした。
「(やっぱりもう寝ちゃってるか)」
そう思い、都は電話を切りました。
PHSを机の上にある充電器にセットした都は、白い羽根を手にしました。
「フィン…」
羽根を手にし、その羽根の持ち主の名を呟きました。すると。
ドンドン。
外から、窓ガラスを叩く音がしました。
まさか。
慌ててカーテンを開くと、果たしてフィンがベランダに立っていました。
*
フィンがオルレアンの都の部屋を訪れたのは、羽根を通してまろんと稚空、そ
して天使達が皆眠りについたのを確認してからでした。
ノインが何を考えて魔界を裏切っていると疑っているのであろう自分にミスト
の作戦を注進に及んだのかは判りませんでしたが、自分のことを試しているだと
感じました。
まろんのことをどうするのか、この時点でフィンの心は決まっていたので、ミ
ストの行動を座視する積もりはありませんでした。
しかし、その前にフィンにはすべきことがありました。
ここに来るまでの間、フィンは羽根を通して自分の大切な人達の動静を確認し
ました。
まろんは稚空や天界の天使達と、明日の決戦について協議中でした。
セルシアの太股を撫でているまろんの様子を見て、クスリと笑うフィン。
家に帰っていたツグミは、既に寝床に入っていました。
そして都も眠っている様子でした。
東大寺家には都と母の桜しかおらず、桜もソファで眠っていることを確認した
フィンは、ベランダから都の部屋に入ろうとすると、都は直前に目を覚ました様
子でした。
本当は眠っている間にことを済ませたかったのですが、起きているとあれば仕
方無く、窓を叩きました。
「フィン!」
内側から勢い良く窓が開けられると、都が飛び出て抱きついて来ました。
「都…」
都の頭に手を乗せたフィンも、都のことを抱きしめました。
ほんの少しの間、二人はそうしていましたが、すぐに部屋の中に招き入れられ
ました。
ベッドの上に腰掛けるように薦められたフィン。
目の前の椅子に腰掛け、平気を装っている都の身体は全身筋肉痛で悲鳴を上げ
ていることが判ったので、お茶を入れて来ようとする都を止めました。
「昨日は大変だったわね」
「え? 昨日!?」
「だって、体育館が無くなったのは昨日じゃない」
「そっか。丸一日寝てたんだ、あたし…」
どうやらフィンが寝ている間、都も眠り続けていた様子でした。
これなら、面倒が少なくて済みそうね。そう思い、フィンは安堵します。
「そうだ。フィンにお礼を言わなくちゃ」
「お礼?」
「この羽根のお礼」
都は、机の上に置いてあったフィンの羽根を手にしました。
「この羽根のお陰で、まろんを守って戦うことが出来たから」
フィンの心臓が高鳴りました。
都の思考を読むことにより気付いてはいましたが、都は体育館での出来事をや
はり記憶していたことがはっきりしたからです。
大会直前の夜、フィンは都に自分の力の源である聖気をほんの少し分け与えま
した。
それは、ミストとノインが体育館の中で散布した、人間だけを眠らせる薬の影
響が都には及ばないようにするためのもので、都が正気を保ったまままろんの側
に居ることにより、まろんを精神的に戦いづらくすることがその目的でした。
「フィンが言ったとおり、あたし、まろんの事を守ったよ。ありがとう。最後ま
で守ることが出来なかったのが悔しいけど」
更にフィンの緊張は高まりました。
体育館の中で使用したのと同種の薬をこの家の中に散布し、人間としての都を
眠らせることで、あの夜のことは都は忘れていると思っていたのですが、それす
らも覚えている様子だったからです。
「そう…。頑張ったのね、都」
フィンは、都が体育館の中で経験した出来事を最後まで黙って聞いていました。
話が終わると、フィンは立ち上がり都を抱きしめました。
「痛…」
小さく、都が呟くとフィンは手の力を緩めました。
「身体中、痛いのよね」
こくり、と肯く都。
「まだ横になっていた方が良いわ」
「でも…」
都が何事かを言う前に、強引にフィンは都を抱きかかえ、ベットへと運んでい
きました。
少し抵抗する素振りを見せた都ですが、やはり少しでも身体を動かすと痛いの
でしょう、すぐに大人しくフィンのされるがままとなりました。
術で布団を持ち上げたフィンは、都をベッドの上に横たえました。
目を瞑る都は、何かを待っているよう。
勝手に、自分を待っているのだと決めつけたフィンは、そのまま都と唇を重ね
ました。
唇を放すと、都は目を開けてフィンの目をじっと見返して来ました。
自分の心を見透かされているような気がしたフィンは、思わず目を逸らしてし
まいます。
「大丈夫。すぐに身体を楽にしてあげるから」
フィンの下にいる都は、何も答えませんでした。
それを同意の印と取ったフィンは、都のパジャマに手をかけようとしました。
「やっぱりするんだ」
ふいにそう言われ、フィンは慌てて手を放しました。
「ごめん。嫌だった? でもこれは違うのよ」
「どう違うの?」
「これは、貴方の身体を治療するための儀式なの」
「儀式?」
今ここで話す分には、別に良いか。
どちらにせよ、都に受け入れて貰わなければいけない事だし。
そう考えたフィンは、ベットの縁に腰掛けなおし、都に説明を始めました。
「私達はね、自分達の子供を持つことが出来ないの」
「え? 何それ」
「ここから話し始める必要があるの」
「そう。でも、だったらフィン達はどうやって生まれるの?」
「私達は、私達の創造主によって創られし生き物」
「そうなんだ」
「だから私達は愛し合う意味の無い生物」
「そんな事無いと思うけど」
「そうね。人間は繁殖以外に愛し合うことに意味を持つ生き物なのよね。私達も
そう。愛し合うことそれ自体に意味を感じ、触れ合うの。後には何も残せないと
知りながら」
「……」
「でも、触れ合うことには別の意味もあるの」
「何?」
「人間は怪我をして血を流し過ぎたら、他の人から血を分けて貰うわよね。私達
もそう。命の源を愛する者から分けて貰うの」
「輸血みたいなものかしら?」
「その為にも私達は触れ合うの。直接触れ合う方が効率が良いから」
そこまで話すと、フィンは都の様子を伺いました。
都は目を閉じ、考えている様子でしたがやがて目を開けるとフィンに向けて肯
きました。
「良いよ。来て、フィン」
「有り難う。判ってくれて」
再び都の上にフィンは覆い被さりました。
「静かにしてね。母さんがいる筈だから」
「大丈夫。良く眠っているわ」
「だったら起こさないように」
フィンは都に肯きました。
「心を楽にして、私を受け入れて。都」
そう言うと都は肯き、目を閉じてフィンを待つのでした。
*
夜明け前。
暗闇の中、むくりと起き上がったフィンは、横で寝ている都の頬に手を触れま
した。
昨晩(正確には今日の晩ですが)、フィンは都の警戒心を解きほぐしつつ、そ
の心の中に入り込み、都の持つ体育館での出来事の記憶を改変しようと試みまし
た。
しかし、人の記憶を操作する術はノインなどが考えているよりもずっとデリ
ケートな作業で、結局、記憶操作は不完全なまま終えざるを得ませんでした。
「(記憶を混乱させることが出来ただけで良しとするか)」
懸念材料を残したまま、時間が迫っていることもあり、フィンは気持ち良さそ
うに寝ている都を起こさないように立ち上がりました。
そして身支度を整え、窓からベランダへと出ようとする所で都の方を振り返り
ました。
「さよなら、都」
フィンは都にそう呟くと、ベランダから飛び立って行くのでした。
*
窓から入り込む光で、桜はリビングのソファで目を覚ましました。
夫の氷室の帰りと、眠り続けていた都が目を覚ますのを待つ内、つい眠り込ん
でしまったのでした。
ダイニングのテーブルの上にある食事には手がつけられていなかったので、恐
らく氷室は帰って来ていないのだと理解しました。
都の部屋の様子を伺ってみると、都は未だにすやすやと寝息を立てて寝ていま
した。
何時までたっても目を覚まさない都のことを心配して、その日の昼間に桜は医
者を呼びましたが、特に異常は無いと判り、そのまま都を寝かせておくことにし
ました。
結局、再び都が目を覚ましたのは、その翌日の夕方になってからなのでした。
(第160話 完)
都ちゃんに関して、やや話が途中ですが切りが良いので。
話が戻っていますが、2月20日〜21日の都ちゃんとフィンちゃんでした。
では、また。
--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
|