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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 25 Jan 2002 16:02:27 +0900
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佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。
# 引き続き佐々木パートです。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。
★神風・愛の劇場 第159話 『あなたの傍に』(後編)
●オルレアン
立ち上がらせてもすぐに座り込んでしまうツグミを何とか部屋へと連れていく
事が出来たのは、幸いにもイカロスが本来の役目を果たす為に必要な装具を
着けていなかった為でした。それ故にイカロスは盲導犬として働いている最中には
絶対に有りえない"飼い主以外の者の命令を聞く"という行動をとる事が出来たの
です。結局の所、イカロスを部屋に連れていく事によってでしか、そのまま
すがりついて離れないツグミを部屋に導く手段は無かったのですから。ひたすらに
泣き続けたツグミが何とかまろんの呼びかけに頷く程度に反応する様になった
のは午後に入ってからでした。その後は泣き疲れていたのか、ツグミが黙って
話を聞いていたおかげで順序立てて事情を説明する事が出来たのです。
「ツグミさん…」
泣き止んでも顔を下に向けたままのツグミに不安になるまろん。正直、罵倒でも
された方が気楽だと思ってしまう程に沈黙が続いた後でした。
「…あのね」
「もう」
「…」
「…大丈夫だから。取り乱してごめんなさい」
「私こそ、ごめんね」
「あなたの所為じゃない。判ってるの」
「ううん、私の所為だよ、だから怒って」
「怒る?どんな風に?」
「えっと、例えば…」
まろんは思い付くままにツグミが怒って大暴れする顛末を話しました。初めは
黙って聞いていたツグミでしたが、図らずもまろんが想像した怒りに震える彼女
のごとく肩を震わせて再び俯いてしまいました。もっともそれは笑いを堪えている
だけである事は容易に判る事でしたし、最後の方は我慢を諦めたツグミがクスクス
声を上げて笑っていたのですが。まろんが想像たくましく話し終えた内容に関して、
最初に感想を述べたのは稚空です。
「それが本当だったら面白かったがな」
「だって、そう考えるでしょ?普通?」
「考えないだろ普通」
「だってさぁ…」
「つまりそれは」
今度はツグミが言いました。
「日下部さんの中で私は乱暴者という扱いになっているという訳なのね」
「あ、いや、その、そういう訳でも無いんだけど…」
「もう一人ならいざ知らず」
「ごめん。だって、あっちのツグミさんの印象って強烈だったし」
「何がどう強烈なのか、じっくり聞きたいわ」
「此ではちょっと…」
言葉を濁して周囲にちらりと目をやるまろん。その様子を訝しむ稚空でしたが、
同時に詳しくは聞かない方が良い様な気もしていました。結局その話題は
トキの一言で打ち切りとなってしまいましたし。
「一つ良いですか?」
「ん?何?」
「そちらの方に関してなのですが」
「ツグミさんの事?」
「何故か我々の事が判る様子なのですが」
「うん」
「…」
「…」
「…それだけですか?」
「え?」
「いや、あのですね」
「つまりこう言いたいんだろ?」
トキの言わんとする事を察して、稚空が何故かツグミにはアクセスの存在が
判るらしいと知った時の出来事を引き合いに出しながら彼なりの理解を話しました。
稚空の話を聞く間、トキは何も言わず時々頷いたりするだけでした。そして。
「成程、事情は大体飲み込めました。しかしあまり良い傾向では無いですね」
「何で?」「そうか?」「そうかしら?」
「基本的に天界の存在は極秘なんですよ。それなのに我々の事を感じ取って
しまう人間が現れるとは」
「いいじゃん、別に」
「バレちまったモンは仕方無いだろ」
「先ほども言いましたけど、見えてませんよ?」
「もう結構です…」
この人間達が三つの世界のせめぎ合いの最前線に居るのだと言う事に、少々頭が
痛いトキでした。勿論そんなトキの思いなど知るはずも無いまろん。
これで問題は総て解決、と安易に結論を出しかけてふとある事を思い出してしまい
ました。慌てて記憶の引きだしを掻き回して過去の自分の行動を思い起こします。
そしてベランダに出ると、先日ツグミの家の玄関先から剥がして来た貼り紙を拾って
来ました。くしゃくしゃに丸められていた上に夜露にでも濡れたのでしょうか、
文字はかなり滲みぼやけてしまっていました。もっとも、まろんが衝撃を受けた
一文だけははっきりと読み取ることが出来ました。まろんはそれを手にしたまま、
暫くじっとツグミを見詰めていました。何と言って尋ねれば良いのだろうかと
迷っていたのです。ですが上手い言い方は思い付きませんでした。
「あのね、ツグミさん。私、聞いておきたい事があって…」
「そうそう、私も用があったのを忘れてた」
「じゃぁ、ツグミさんから先に」
「そう?長くなるかも知れないけど?」
「いいよ」
長い話は歓迎だとまろんは思っていました。その間にツグミのメッセージの意味を
何と言って尋ねるのか考える事が出来る、と思ったからです。しかしツグミの話は
他の事を考えながら聞いていられる様な内容ではありませんでした。
「…という訳で何だか知らない間に記憶が三日分ばかり抜けてしまっているの」
「どういう事?」
「それで、先ほどの話ではないけれど」
そこで一旦言葉を区切るツグミ。まろんは思わず身をのりだしてしまいます。
「その、何と言ったらいいかしら。最近また私かもう一人の方がが迷惑掛けたとか、
そういう事は無かった?」
「ううん。だって私、ツグミさんに逢うの久しぶりだし…」
「それならいいんだけど」
「……そっか、判った!そうだよ!」
まろんは全て合点が行ったとばかりに一人で頷いていましたが、すぐに自分だけ
しか納得していない空気を察します。そしてツグミの家で見付けた貼り紙の事を話し、
ツグミの記憶の混乱も含めて全部魔界の連中の仕業に違いないと言い切りました。
そして同意を求めるかのごとく再びツグミを無言で見詰めました。
「そうね、日下部さんの言う通りなのだと思う。私、そんな事書いたりしないし」
「だよね、良かった」
胸のつかえが取れた思いのまろんは深い溜息をついていました。ほとんど同時に
稚空も小さく溜息をついていたのですが、それに気付いたツグミとトキは敢えて
その理由を問おうとはしませんでした。トキは別段彼等或いは彼女等の関係に
興味が無かった所為ですが、ツグミの場合は実の所微妙に納得出来ない事が
あったからです。まろんの言う様な文面の貼り紙をした覚えは勿論ありません。
しかし貼り紙をした事自体ははっきりと覚えていますし、そもそも記憶が抜けている
らしいのは貼り紙をして出かけてから帰宅した後の事としか思えません。
本当にまろんの納得の仕方で良いのだろうか、何か考えるべき事が抜けている…
ツグミはそんな気がして仕方ありませんでした。もっとも折角納得して気分が
晴れたらしいまろんをがっかりさせたりしない様に、その事は一切口には
出しませんでした。
それに今日はツグミにとっても、より大きな事件がありましたから。
「日下部さん、私、そろそろ帰るわ」
「え?もっとゆっくりしてけば良いのに」
「それはまた今度ね。今日はお客様も大勢みたいだし」
「でもぉ…」
「それにイカロスを連れて帰って休ませたいの」
「そう…だね、それがいいかも」
ずっと黙っていた稚空が言いました。
「また何かあるといけないからな、俺が送って行く」
「私が送っていくからいいの!」
「大丈夫よ、私にはイカロスが居るから」
「…そうだったね」
「それと電話借りていいかしら」
「もちろん」
「タクシーを呼ぶわ。イカロスの調子も良く判らないし、念の為にね」
「うん、それが良いと思う」
ちょっとだけでしたが、まろんはイカロスに嫉妬の様な感情を覚えていました。
ツグミはそれに気付いていました。何かその事を紛らす為の言葉を掛けようか、
迷った末に結局ツグミは気付かないふりをする事にしたのです。
代わりに別な事は言いましたが。
「ところでね、日下部さん」
「何?」
「彼女、セルシアさんだったわね。何で泣いてるの?」
「え?」
まろん、それに稚空とトキが部屋を見回すと片隅に座り膝を抱え、そこへ顔を
埋める様にしてセルシアが確かに泣いています。トキが側に行って何事か
囁いていましたが、やがてまろん達の方に戻ってくると言いました。
「もらい泣きらしいです」
「何の?」
「ツグミ殿とイカロスとの再会に関してだとか」
「さっきからやけに静かだとは思ってたが」
「もしかしてずっと泣いてたの?」
「どうもその様で…」
「まぁ、嬉しいわね」
「純情な奴だな」
「何だか可愛ぃ…」
若干不本意、だとは思いましたが受け入れられているのであれば仕事の
支障にはなるまい。トキは何とかそう思う事で友人のあまりにも単純な
反応に対する気恥ずかしさを忘れようと努めるのでした。
(第159話・完)
# 前編と後編の尺バランスが今一つ。^^;;;
## 構成ミスって奴ですな。(ぉぃ)
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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